貴族学校①
第13章
出発当日、カーズさん達は2台の馬車を用意して、ホーリーは、アレクサンダーとグリーク工房の馬車、計4台の馬車で街を出発した。本当は、アレクサンダーの箱馬車だけでの出発だったが、グリークさんも王都に用事があると言って、シママと一緒に来てくれたのだ。
「ケルフ、この子はシママよ。シママも10歳だから同じ年でしょ。仲良くしてね」
「シママです、よろしくお願いします。カーズ村長には、この前、お会いしました」
「ああ、グリークさんの甥っ子さんだね。途中で、2泊するからよろしくね」
「はい、僕、宿屋に泊まるのは初めてで、楽しみです」
「俺たちも初めてだ」とケルフとプレジーも挨拶を交わす。
男の子たちは直ぐに打ち解けて、シママはケルフ達の馬車に乗ったりもしていた。アレクサンダーは、ホーリータウンの人参や芋を食べさせ、ゆっくりと走らせる。魔馬は、やはり、普通の馬よりも馬力がある為、いつものようなスピード違反ギリギリの走りは、させないようにした。
最初の町は、小規模の町だけど宿屋が充実している。王都まで、まだ距離があるためここで一休みする為の町だ。
「ホーリー、起きろ!居眠り運転だぞ!」
「お昼寝の時間がないから、アレクサンダーに、つい、任せちゃった。眠い、宿屋に着いたの?」
「ああ、今日の荷物を持って降りろ、シママが馬宿に行って来るってさ、早く、宿屋に入って寝ろ」
「うん、ごめん、この後1時間くらい寝かせて」
カーズ村長が受付をしてくれて、ホーリーは、部屋に入って着替えると、ベットに倒れ込んだ。3人は町の探索に出かけたようで、夕食の時に色々話してくれた。
「ホーリー、明日の出発は大丈夫か?」
「大丈夫よ。カーズ村に行く時も、アレクサンダーの上で寝ながら行くんだから、慣れてるわ」
「慣れてるって、周りから見たら、魔馬が女の子の死体を運んでいるように見えたぞ」
「そうなの?つい、寝ちゃうのよね。でも、みんながいるから安心だわ」
ホーリー以外は、まったく安心できない顔をしているが、とにかく、子供たちを早く寝かせる事にして、大人たちは、明日の準備を引き受けてくれた。
翌日の朝は元気いっぱいな様子だったホーリーだが、昼食後にはアレクサンダーの上で眠り始めた。
「少し、休みますか?」
「そうしましょう。見てるこっちが、ひやひやします」
ホーリーを、ホーリーの馬車で寝かして、みんなは、お茶休憩に入る。
「魔馬って、ずっと、魔力が必要なのかなぁ?」
「どうだろう、魔馬をコントロールしながらだから疲れるんじゃないか?」
「こんな小さな体で引くんだ。大変なんだよ。でも、アレクサンダーの事を信用しているのだろう、死体状態で起きないし、アレクサンダーもこちらの馬車に良くついて来てる。すごい馬だ」
「このまま、ホーリーは馬車の中で寝かせて出発してはどうだろう?」
「試してみますか?」
「落馬されるよりは、安心ですからね」
「アレクサンダーに水と芋をいっぱいやるか」
「ホーリーの馬車に、芋と大根とソーセージがいっぱい入っていたよ」
「ああ、いつもの事だ」
「え!いつもなの?」
「アレクサンダーの餌は、ホーリーも食べられる物ばかりだからね」
「‥‥‥」
「次の町は、プラザって言う町だよね。久しぶりに名前のある町だね」
「ああ、ここは別の領土だが、王都に近い分、賑やかだぞ」
その後、アレクサンダーの自動運転でぐっすり眠ったホーリーは、元気いっぱいになり、プラザ町の探索に出かけた。
「ホーリー、もう眠くないの?」
「全然、元気いっぱいよ。アレクサンダーには感謝しかないわ」
「この町で何か買いたい物ある?」
「魔術具を買いたいの」
「魔術具を買いたいのか?」
「そうよ。ケルフも、いくつか魔術具を購入して置いた方がいいわよ。私たちが、魔法を使えるようになるまで、何があるかわからないでしょ?」
「具体的には?」
「そうね、ランプとか、映像魔術具や、侵入防止の魔術具、とにかく、入学後しばらくは、魔物群れに人間が飛び込むような感じだから、反撃の魔法を覚えるまでは、警戒が必要だと思うわ」
「そっか、そうだな、魔術具を売ってる店を探そう」
今日は、大人が休む番で、アレクサンダーと子供4人は、団体行動を条件に外出を許された。
「ホーリー、本当にそのギルドカードが使えるの?」
「大丈夫よ。全国共通だし、いつもこれで買っているし、購入代金は宿でカーズさんに入金してもらうから、遠慮せず使って頂戴、支払いは各自のお父さんですがね‥‥」
「伯父さんも持っているの?」
「そうよ。いつもこれでグリークさんに払っているのよ。現金より安心よ」
4人は、中型の魔道具展を見つけ入ってみる。40歳くらいの店主がいて、お客はチラホラいる。
「ホーリー、これは?」
「通信魔術具?」
「これがあれば、寮が別々でも話せるかな?」
「距離と魔力量にもよるのでは?」
「そうだよね」
4人でわいわい話していると、おじさん店主が、貴族学校内では禁止されている魔術具があると、教えてくれた。通信魔術具は2回生からは使えるらしい、映像魔術具や侵入防止の魔術具はOKだった。
「後は、電気ケトルのような魔石ポットは必需品だと言われた」
「ホーリー、そんなに買って大丈夫なの?」
「平気よ、土地も買ったでしょ?」
「ああ、そうだった。いつもケチケチ暮らしているから忘れてた。ホーリーは金持ちだった」
3人は、どうやら貧乏くさいホーリーしかイメージにないらしい。
「君たち平民の新入生だね、普段着はどうするのだ?」
「これが、普段着ですけど‥‥」
店主は、ホーリーとケルフ達を見て、
「男の子は大丈夫そうだが、君は駄目だ。女の子はズボンを穿かないからね」
「でも、わたし、魔馬に乗っているんです」
「忠告だけど、校内ではなるべく目立たず生きるんだ。ズボンなんてとんでもない」
「いいかい?自分が覚えたい魔法を覚えるまでは、目立たずに生きろ、それが魔力持ちの平民だ」
「ご店主さんも貴族学校を出たのですか?」
「ああ、まぁね、どうしても作りたい魔術具があったから、入学を希望したんだ」
「それは、どんな魔術具ですか?」
「これさ、薬草を分別する物だ。母親が薬師で、薬草の分別に時間がかかっていたからね」
店主のリンさんは、自慢の薬草分別機を説明してくれた。
「ご店主、魔石で動くなら、僕にそれを売って下さい。僕は普通の平民ですが、母親が薬師で、お土産にしたいです」
その後、魔術具の店主は、4人に沢山の話をしてくれて、王都で物を揃えるよりも、このプラザ町で揃えてた方が、節約になると言って、ホーリーの為に洋服のお店も紹介してくれた。
4人の荷物をアレクサンダーの馬車に入れて、宿に戻った時には、既に夕食の時間で、グリークさんとカーズ村長にこってり叱られた。
しかし、翌日、王都で揃える予定の物を、プラザ町で購入した。ご店主にもう一度、会いに行って、グリークさんとカーズ村長も、服を買い足し、着替えてからの出発になった。
「ホーリー、後2時間くらいだ。人が多くなるからなるべく起きていてくれ!」
「大丈夫です。二人が服を選んでいる間、みんなで寝てましたから‥‥」
(意外に、選ぶのに時間がかかった。靴まで新調したからね。おじさんたちは‥‥)
それでも、夕方には王都に着いて最後の宿屋に入った。王都に入るには何度も検問があったが、貴族学校への入学許可書でスルスルと通してもらえた。
「許可書がなければ、門の外で野宿になる所だったな」
「そうだね、宿屋の紹介までしてもらって、助かったね」
「この時期は、全国から集まるんだ。何度も確認したくないだろう」
「この身分証明書、凄いね」
その後の宿屋でも効力を発揮して、スムーズに泊まれたが、やはり、値段は高かった。夕食時に、
「ホーリーは、明日には寮に入るのかい?」
「はい、この値段はちょっと、長居できませんね」
「わし達も弟の所に行くよ、グリークさんは?」
「ええ、安宿を見つけるか、友達の所に泊まります」
「グリークさん達とはすぐに会えるけど、ケルフ達とは2週間後だね。カーズ村長、王都までありがとうございました。いつかまた、ホーリータウンで会いましょう」
平民にとっては、お高い宿での夕食は、貴族学校への予習となった、あぁ!テーブルマナーが大変だった。




