楽しい、村生活、終了
第12章
ケルフが、魔力検査を受ける前日に帰宅したミルサーチと一緒に神殿に来ている。親としてご挨拶したいらしい。今日は多くの平民が検査を受けているので、神殿の前で待っていると、親子連れを見かる。
カーズ親子は、ホーリーを見つけて寄ってきた。
「ホーリー、来てくれたんだね」ケルフが言う
「もちろん、お母さんが皆さんにご挨拶したようで、お母さん、こちらはカーズ村長と奥さんのリリーさん、そして、友達のケルフよ」
「初めまして、ホーリーの母親のミルサーチです。いつもお世話になっています」とミルサーチは頭を下げる。
カーズ親子は、ミルサーチの美しさと儚さに驚いている様で、一拍置いてから急いで
「こちらこそ、良い隣人に恵まれて、いつも感謝しています」
「ケルフ、どうだった?」
ケルフは、ミルサーチに挨拶した後に、「多分、行く事になるらしい‥‥」と、不貞腐れて言う。
「そうなんだ。でも、土魔法が覚えられる、いいじゃん!粘土も探せるし」
「まあな‥‥」
(いいの?探してくれるの?ありがとう)
親同士が話している隣で、ケルフとおしゃべりしていると、レアテム代官が直々にやって来た。
「皆さんは、お知り合いですか?」とホーリーに聞く、
「ええ、隣の村の村長さんのご家族です」とホーリーは答える。
「さて、この後の貴族学校入学説明会に、ミルサーチさんとホーリーも出席でよろしいですか?」と、レアテム代官は言う。
「レアテム代官様、わたし、まだ、8歳ですよ?」
「今回、8歳以上に通知を出しているが、お母様から聞いていないのか?」
「‥‥‥」
聞いてない、聞いてなかった!ミルサーチを睨むと、
「あら、伝えてなかったかしら?」と、悲し気に俯く。
「じゃ、ホーリーも一緒に行けるの?」
「アデルたちは?」
「アデルたちは、魔力持ちじゃないから‥‥」
「そっか、そうだよね」
親たちは、レアテム代官を待たせる事が出来ずに、さっさと、領主邸の中に入って行く。
「ホーリー、行こうぜ、移動魔法陣で、冬もホーリータウンに行けるかもよ?」とケルフが元気づけるので、ホーリーは少し頷くが、貴族学校に入学したら、私には色々あるのに、トホホホ‥
◇◇◇◇◇◇
大きな領主邸の1階に、大広間があり、貴族たちも一緒に集められたようで、結構の人数がいる。
「今年、この領土から新入生を送り出す人数が足りず、8歳以上の子供たちを王都の貴族学校に入学させる事になりました。貴族、5名、平民、5名です」
平民、5名と発表されると、会場内はザワザワする。多分、5名は多いのだろう?
「5人しかいないのかよ‥‥」とケルフは言うが、例年なら0か1名くらいと知っている。
その後、壇上で、貴族の紹介が始まり、伯爵家2人、子爵家1人、男爵家2人が並んだ。今年、9歳の入学予定だった領主様のご子息は病気で、今年は、見送られたらしい‥‥わたしも、病欠したかったと心の中から思った。
貴族の紹介が終わると、平民の紹介が始まる。
ケルフ・カーズ(村長の息子の為に名がある)
ホーリー・ペーター(ペーター家が戸籍に載せたために名がある。現在、廃爵)
ナイル(テーラーの娘)
マーコブズ(医者の息子)
ギャラグ(兵士の息子)
ホーリーだけが、8歳で他の4人は10歳だ。3人は街に住んでいて、農村出身はケルフだけになる。文官の説明を着ていると、王都は隣の領土らしく、馬車での移動は3日間、従者は1名だけで、平民は、いなくてもいいらしいが、全寮制の為、従者がいないと大変だと説明があった。
「ケルフはどうするの?」
「プレジーを連れて行く、ホーリーは?」
「プレジーを貸してもらう」
「‥‥‥、おい、男子寮と女子寮は別々だぞ!」
「いいの、ずっと、ひとりで生活しているのに、なぜ、従者が必要なの?お金がかかるでしょ。でも、王都までは、ケルフ達に一緒に行って欲しい、道がわからないから‥‥、荷物もあるしね」
「ああ、そうだな、一緒に行こう。でも、いいのか?お母さんと離れて、寂しくないのか?アデルなら泣き出して大変だ」
「寂しいけど、今後の為だもの、魔法を覚えれば、お母さんも、ホーリータウンに行ける様になるかも知れないでしょ?」
「そうか、ミルサーチさんのためにも、出来上がったワインを、ワインセラーにいれないとな‥‥」
「あのね!ワインセラーじゃないよ。みんな、勘違いしている‥‥」
その後、制服などが支給され、平民は下着や靴下、布団等も支給される。紙クズの入った布団ではなく、綿の布団だ。教科書、文房具などは、学校で用意されているようで、助かると心から思った。
説明会が終わってから、ホーリーとケルフは、粘土や芋、ワインはどうすると話していると、カーズ村長とリリーさんは、ミルサーチの為に沢山の花を植えると話していた。
ケルフとふたりで、なぜ、花を植えるのかと聞くと、ホーリーだけなら、野菜でいいが、ミルサーチが、元気になって、村に住むなら家の周りを整えて、お花を植えた方がいいと真顔で答えられた。
「ぷっ‥‥‥、ケルフ、笑いすぎだよ」と、お腹を抱えて笑っているケルフに一発蹴りを入れる。
「‥‥‥、イヤ、ごめん、ごめん、ホーリーは小石を撒いただけで満足していたから、おかしくって!花って、発想がまったくなかった。ごめん」
「だって、泥が跳ねるでしょ。レンガを焼いたらレンガでどうにかする予定でした!」
「そっか、まだ、レンガも焼けてないしな、ごめん、ごめん、なぁ、蹴るなよ」
お互い入学準備に追われるが、一度、ホーリータウンへ向かう事を約束して別れた。
◇◇◇◇◇◇
アパートに戻ると、ホーリーは、ミルサーチを問い詰めた。
「どうして、黙っていたの?」
「私の方の仕事が忙しくなったのと、この国の情勢が少し変わってきたからよ」
「どこかの国と戦争するの?」
「さぁ、どうでしょう?貴族学校へ行けば、皇族もいるはずだから、そこから情報を得るといいわ」
「ミルサーチはどこかに行くの?カーズさん達、寂しがるよ」
「いいえ、ホーリータウンにも行きたいから、まだ、ここに残るわ」
数日後、慌ただしくアレクサンダーと街を出発し、ホーリータウンへ向かう。カーズ村に着くと準備万端で、村人が待っている。ケルフも忙しい中、手伝ってくれるようだ。
「今回は、3日で帰りますので、よろしくお願いします」と頭を下げた。
いつもの入り口からホーリータウンに入ると、村人たちは、計画通りに動き始める。ホーリーの水汲みも組み込まれているので、アレクサンダーには、もうひと仕事を頼み、バケツを運ぶ。
バケツリレーのメンバーはいつものケルフ、プレジー、ホーリーだ。3人は、貴族学校に持って行く物の話をしながら、川で水を汲む。
「ホーリーは、アレクサンダーも連れて行くのか?」
「そうよ。貴族の子たちも魔馬を連れてくる子もいるらしいよ」
「貴族学校って、想像できないよな」とプレジーが言う。
「そうだね、でも、私達は5年も通わなくていいのよ。勉強を頑張って、魔法を使いこなせれば早期に退学できるから、気が楽よね」
「ホーリー、実は、俺たちの叔父さんは貴族学校を出て、王都で暮らしているんだ」
「そう、凄いね」
「叔父さんは、すごく頭が良くて、この村の子供に勉強も教えていたし、教材も残っているから、この村の子供は町の学校には通っていない」
「叔父さんは、貴族の誰かと縁づいたの?」
「そうだ。結婚して、男爵家の戸籍に載せてもらった。だから、王都に早めに着いて、叔父さんの所に寄るつもりだけど、ホーリーはどうする?」
「私は、早めに着いたら買い物かしら、実は、従者がいないでしょ、寮の部屋を改造したいのよ、王都の大工さんをグリーク工房で紹介してもらったから、大丈夫よ」
「部屋の改造って、必要なの?」
「魔術が使えない内は、用心したいの。世間は怖いのよ」
「??????」
ホーリータウンは大忙しで、収穫と貯蔵を済まして、ワインの樽も綺麗に並べ、冬用の薪もどんどん割って頂き、女の子たちは、花壇に種を撒き、最後に、また、来年、会いましょうと別れた。
「またね、絶対!」




