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楽しい、村生活③


 第10章

 

 次の日も、順調に寝坊をして、アレクサンダーに水と餌と魔力を与え、水汲みに行く、水汲みはいつの間にかルーティンに入っていて、行かないと気持ちが悪い。その後、家で、ザルや籠を編んで、大量に持参した小麦粉に取り掛かる。


 パンも欲しいし、クッキーやケーキにも挑戦したい。昨日、リリーさんの差し入れにヨーグルトやチーズも入っていたのだ。どうやら、牛を飼っているようで、この時期は保存の為に色々加工するらしい。


 今回、奮発した大袋の小麦粉3袋、一人で食べるには数年分にもなりそうだが、主食はケチらない、ミルサーチさんの家では、やはり少し遠慮があって、台所で遊ぶ事は出来ない、そこはちょっと大人の考えが芽生える。


 「さぁ、簡単に蒸しパンを作りましょう。芋も果物もあるし何を入れても美味しいよね。蒸篭も作ってもらったしね‥‥」


 蒸しパンを作り、パンも天然酵母で作り、頂いたジャムを使ってクッキーも作る、出来上がったら、ベットでゴロゴロしましょう。


 「ビバ!引きこもり!」と叫び、昼寝をする。


 夕方になると、リリーさんが来て、少し話をする。大量の小麦粉製品を見て少し引いていたが、魚や肉を持って来てくれた。


 貴族学校に通う為の注意点を聞かれたので、制服の他にも普段着も用意した方がいいとか、テーブルマナーは覚えて置いた方がいいとか、わかる範囲で答えて、蒸しパンやフランスパン風のパン、クッキーをお返しした。


 「それと、この芋の保存方法を真似してもいいかしら?」


 話を聞くと、芋を蒸して村を通る商人たちに売ったところ、好評だったらしいが、芋はそんなに残っていなくて、今度は、薄くスライスして、売る事にしたいらしい。


 「それなら、2、3日、干してから売った方がいいですよ。甘味が増します」

 「ほんとう?ありがとう」


 今日も、リリーさんは、思いっきり手を握り感謝をして帰って行った。


 部屋も片付き、食料も確保できたので、次の日からは粘土を探す事にした。山ぶどうの蔓で、背中に籠を作り、お弁当や水筒を入れて粘土探しを始める。


 そこに、アデルたち3人が寄って来た。

 「どこに行くの?」

 「粘土を探しに行ってくるね」

 「粘土って、少し掘らないとわからないよね?」

 「そっか、スコップも持って行こう」家に引き返す。


 「あのね、あのね、昨日のパンとか、すごく美味しかったよ」とミルが話しかけに来た。

 「そう、また、来月も作るね」と、少し、女の子同士の会話も楽しむ。3人共、素直で可愛いのだ。


 おしゃべりしていると、アレクサンダーに急かされて粘土探しが始まった。とにかく大きな木の下でまずは探しましょう。


 アバウトな手製の地図に目印になる木を書き込んで行き、その下を探す。木が何本あるかもわからない状態での作業は時間がかかりそうだ。


 「どこかに研究発表したいくらいだ」と呟いていると、ケルフとプレジーと会う。


 「何してるの?」

 「木を目印に土の状態を記入しているの」

 「ふ~~ん」


 「これが、ここなの?この木で、家は、こっちで、川が流れているでしょ?ウサギはここ当たりで、枇杷の木はこの辺だよね」


 「ちょっと、書き加えていい?」

 「いいよ、字が書けるの?」

 「ああ、昔、叔父さんがいた時に、村の子供達は習ったんだ。ずっと、教材は残っているから、カーズ村の子供は、ここで、読み書きができるになる」

 「すごくいい事で、叔父さんは立派な人だね」

 「‥‥‥」


 その後、少し掘ってみたが、普通の土で、粘土質ではない


 「川の近くの方がいいのでは?」

 「そっか、行ってみる」


 それから何故か3人で、粘土を探し始める。期待の川沿いにはなく、意外にも森の丘陵地が一番いい感じだった。


 「結界ギリギリだな」

 「ギリギリだけど、立派な丘だよね」


 とりあえず、鍋が作れるくらいの量を掘り起こして、この日は終了した。途中で昨日のパンで作ったサンドイッチや蒸しパン、クッキーを3人で分け合って食べて、帰ってからお風呂に入って、そのまま次の日までぐっすり眠った。


 次の日は朝のルーティンを終えると、差し入れのお弁当を頂き、初めて作業場に入って粘土を捏ねた。


 「最初は、土鍋が欲しいんだよね。冬はやっぱり鍋でしょ」

 「色々な鍋があってもいいよね?マグカップも欲しいね」と一人で話しながらずっと捏ねる。


 お昼は、魚のスープを作ったり、肉も、どうにか加工してアパートまで持ち帰る形にした。リリーさんが色々な物を差し入れしてくれるから、帰省した娘が都会に帰るような荷物だ。


 食料関係が落ち着いてからは、粘土の掘り起こしと、捏ねに時間を割いて、1週間は終了し、粘土は床下に収納した。


 カーズさん達も芋の植え付けが終了したようで、笑顔でカーズ村に招き入れてくれた。カーズ村に入って、人口の多さに驚き、農地の広さにも驚き、商人の多さにも驚いた。


 「カーズ村は活気があってすごいですね。人も多いですし、宿屋もあっていいですね」

 「1軒だけだが、街道沿いで、1年中営業しているよ。今の時期は、どの地主も商人の通行を認めて、それなりに稼いでいるからね」


 「街道沿いに、宿屋と休憩所は商人達には必要ですよね」

 「ホーリータウンも、数年後には商人が立ち寄る立派な村になるさ」


 「‥‥‥」


 お世話になった人たちに別れを告げ、ホーリーは石壁に囲まれた街に戻った。戻ってもミルサーチの姿はなく、代筆屋と奉納に明け暮れて、次回の準備を備える。涼しくなったので、下着や防寒も念入りに備え、代筆屋からタダで貰った紙くずを、馬車いっぱいに詰め込んで出発する。


◇◇◇◇◇◇


 マラソンのスタートランナーのように、開門を待ち、有料道を通り、カーズ村でカーズさんに挨拶をして、家に到着する。極めて順調だ。


 カーズ村を通るとまだ外は夕焼けが広がっていたが、アレクサンダーは元気いっぱいだ。


 「水は溜まってるかしらね?アレクサンダー、お疲れ様ね」と思いっきりなでて、キスをする。前回は雨が少なかったのか、雨どいの水瓶は十分な量ではなかった、今月はどうだろう。


 2階のテラスから覗いてみると、いい感じで溜まってる。


 「いいね~~、食器洗いやお風呂が楽になりそうだ」


 そして、高い位置からふと見ると、カーズ畑は、畝に沿って緑の葉っぱが見える。すごい成長ぶりだ。


 夜は、カーズ邸からもらったお弁当を食べて、お風呂に入って寝た。1か月ぶりでも違和感なしで、心からくつろげる。


 当然、次の日の朝から、みんなは働きだし、ホーリーは寝坊し、台に置かれてる朝食を食べる。


 アレクサンダーに餌と水と魔力を与え、水汲みに向かうと、ケルフとプレジーがついて来て手伝ってくれる。


 「今回も、粘土づくりするの?」

 「うん、粘土も探すけど、紙の再生をしようと思ってる」

 「紙って、再生できるの?」


 普段は、ミルサーチが代筆屋の紙を魔術でトイレットペーパーにしてくれていたが、最近は留守が多くて、不足している。自分で何とかしなくては‥‥‥


 「初めてだけど、道具は職人の町で揃えて来たので、頑張ってみる予定。ぬるぬるしている葉っぱとか知ってる?」


 「ああ、その辺にある大きな葉っぱは、ぬるぬるしてるぞ」


 「おお、ありがとう」


 水を運びながら、大きめの葉っぱを取って集めて行く、名前も知らない葉っぱだが、なくなる事はない程に、生育している。


 「草刈りの仕事がないだけでも、皆さんに感謝しなくては‥‥」

 「そっか?村の人間は、草むしりが趣味みたいなもんだからな‥‥」


 (イヤイヤ、違うよ、腰とか本当に痛いと思うけどね。体のつくりが違うのか?)


 二人は、紙の再生に興味津々で、そのまま、手伝ってくれると言う。


 「畑はいいの?」

 「俺らは、村全体の事を考える人間だからいいんだ」

 「おお、そうなんだ、偉いんだ」


 それから、作業場に荷物を運び入れて、いつもの大鍋で紙グズを煮る。紙くずになっているのは、代筆屋が、魔術でシュレッター処理をしてくれているからで、機密文書が外にバレないように、大きな布袋に溜めて、後で、燃やすは事が、絶対に駄目な職場である。


 「なんで、燃やせばいいんじゃん」

 「燃やす為に、外に出るでしょ?それが、駄目なんだよね。他の人の目に、触れされてはいけない大事は書類が多いから、その場で、バラバラにしてもらうの、その後は、当然、燃やすのだけど、私は特別に頂いたのよ」


 「なんで?」


 「お尻を拭くから‥‥」


 「‥‥‥」 二人はしばらく固まった。


 

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