神殺し。
神に会いに行く、と簡単に言ったが、いくらそういう世界であれどホイホイと会えるわけではない。神の座す頂へと繋がる試練の祠を越えて初めて、謁見が叶うのだ。
私は集落の彼らを、家族だと思っていた。群れの仲間だと。こんな私を迎え入れてくれて、食べさせてくれて、色々な事を教えてくれた。彼らが私をここまで育ててくれたのだ。そんな彼らを一瞬で殺し奪った神を、私はどうしても許せなかった。
たかが猫である。
何の魔法も使えない、多少戦えるだけの猫である。
そんなたかが猫が、試練の祠に挑む。
滑稽だと、無謀だと、笑わば笑え。
私は神を許しはしない。死んでも構わない。
ただ、無駄死にするくらいなら、一矢報いてから死にたい。
私は、神に、牙をむくのだ。
耳が千切れようと、尻尾が無くなろうと、左脚が切り飛ばされても、私は祠を進んだ。首から上が残っていればいい。神のあぎとへ喰いつけるだけの力さえ残っていればいい。そう思いながら最後の試練を越えて、右手も無くなった身体で神の元へと辿り着いた。光り輝く壇上におわす神に向かい、
「ミークハインの神よ!!なぜ殺した!!私の家族を!!なぜ私の家族でなければいけなかった!!!!なぜだ!!!」
血塗れで血反吐を吐きながら叫ぶ私の前に、きらきらと輝く神と呼ばれる存在のものがふわりと降りてきたが、私の目には雄か雌かも判らない容姿の小さな子供に見えた。そして、その神は予想外の事を告げたのだ。
『そうしなければならなかった。わたしとて、殺したくて殺したわけではない。』
言っている事が理解出来なかった。
したくもなかった。
『 』
まだ、何か、言おうとしていた、気もするが、
それ以上、ききたくもなかった。
左手と右脚が残っている身体に、片方折れたが牙もある。私は力の限り地を踏みしめて神のあぎとへ喰らいついた。ずいぶんと血を失ってしまった身体で、生命尽きるまで牙を離すまいと決めて。
神と呼ばれるものは、やはり生き物とは違うようで、痛みも無い様子だった。それでも家族を喪った深い哀しみを、ほんの少しだけでも分からせたかった。力の限りで喰らいつき、振り払う素振りも見せない神を憎々しく睨みつけながら私の意識は途切れた。




