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京都にエルフ!? ~5000年を生きた大魔法使い、オーバーツーリズム問題に挑まんとす~  作者: 南野 雪花


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第4話 鞍馬天狗はエイリアン!?


 酒呑童子との第一回会談は、まあまあ満足できる結果だった。


 具体的な話ができたわけではないが、まずは相手のスタンスを知り、こちらが無原則に人間の味方をしているわけではないということをしっかりと印象づける。

 交渉(ネゴシエイト)の初手としては上出来だろう。


「四天王の五人はいたけど、茨木童子はいなかったわね。別行動でもしてるのかしら」


 高級乗用車の助手席でクンネチュプアイが小首をかしげた。

 酒呑童子の側近たちのことである。

 彼の酒好き鬼には多くの鬼が付き従っていたが、幹部クラスは六人だ。


 まずは茨木童子。

 副将格というか女房役というか。女鬼なので、ぶっちゃけ恋人同士なのだろう。さすがにプライベートなことまで根ほり葉ほり訊くわけにはいかないけど。


 そして、熊童子、金熊童子、虎熊童子、星熊童子、いくしま童子という五人の四天王だ。


 なんで四天王なのに五人いるのかとか、熊だらけじゃねーかとか、最後の一人の仲間はずれ感がハンパないとか、本当はものすごくツッコミを入れたかったのだが、さすがに遊んでいる場合ではないのでクンネチュプアイは我慢したのである。


 空気の読める女という自称は伊達ではない。


「むしろ拙がアイさまに突っ込みたい気分でいっぱいです」


 運転中のエモンの言葉だ。


「おかしいわ。ちゃんと仕事をしたはずなのにエモンが評価してくれない。まるでブラック企業ね」

「アイさまはブラック企業で働く方々に心から謝罪するべきかと。こんなものではありませんぞ」

「たいへん申し訳ありませんでした」


「ともあれ。茨木童子どのに関しては別居中だとか、別れたとか、そのような噂が流れておりますな」

「詳しく」


 食いつくエルフ美女であった。

 人外とはいっても女性である。大好きなのだ。コイバナが。


「それ以上のことは知りませんて」

「つかえないわねえ」


 やれやれとエモンが肩をすくめる。

 ゴシップ好きの彼女に辟易している彼氏って風情である。

 目の醒めるような金髪碧眼の美女と頭頂部が薄くなりはじめてるくたびれた中年男、というかなり珍しい取り合わせだが。


 ちなみにエモンの姿は変化の術をもちいたものなので、好きこのんでこんな格好をしているだけだ。

 どんな姿でも、自由自在に取ることができるのである。


「次に酒呑童子にあったとき訊いてみよう」

「やめてあげてくだされ」


 別れた女のことをしつこく訊かれたりしたら、さすがの酒呑童子だって泣いちゃうかもしれない。


「え? 良いお酒もっていくよ? 手土産に」

「やめてあげてくだされ」


 念を押すエモンであった。

 酒で籠絡しようとか、あんたは源頼光か、という言葉を飲み込んで。


 京都の未来を占う大切な交渉中にコイバナなんぞが始まったら、緊張感さんが背中に羽を生やして逃げていってしまう。

 鞍馬(くらま)山の彼方まで。


「あ、鞍馬っていえば、天狗(てんぐ)連中はどういう立ち位置なわけ? 鞍馬寺もかなーり外国人観光客多そうなイメージだけど」


 牛若丸(うしわかまる)が修行したことでも有名な鞍馬山は、鞍馬天狗たちの本拠地である。

 そして鞍馬寺というのは、彼らの窓口機関みたいなものだ。


「とくに目立った動きはありません。静観の構えといったところですか」

「ま、そりゃそうか。金星人には他人事だしね」


 肩をすくめるクンネチュプアイであった。


「彼の異星人たちにとっては、百年以下の単位の出来事など誤差のようなものでしょうからな」

「長命種ってやーねー」

「おまいう」


 ともあれ、天狗というのは日本産の妖怪ではない。それどころか地球産ですらない。

 彼らの出身は金星で、この惑星には外交チャンネル設立が可能かどうかを調査するためにやってきた。


「でもまあ、久しぶりにサナート司令に会うのも良いわよね。明日でも行ってみようかな」

「中立陣営の強化、ですか? アイさま」

「たんに旧交を温めるだけだって」


 くすくすと笑う。

 金星人たちの地球駐留部隊、その指揮官がサナート・クマラである。

 鞍馬寺が本尊としている護法魔王尊というのが、まさにその人のことだ。


 伝承では六百五十万年前に地球にやってきたとされているが、さすがにそれは盛りすぎというもので、実際には四千年ほど昔の話である。


 で、地球人との理性的な対話が可能か、国交を結ぶことで互いに利益があるか、そんなことを調査しているわけだ。

 ちなみに牛若丸に稽古をつけた鞍馬天狗も、調査隊員のひとりだったらしい。


 美少年っぷりに入れ込んで、いくつかの地球外の道具オーバーテクノローアイテムまであげちゃったというから、たいそうな溺愛っぷりである。

 義経が愛刀にした今剣(いまのつるぎ)とかね。


 さすがに当時というか、現代の地球の科学力でも作れないような超兵器を渡しちゃったのは問題になり、その隊員は更迭されて本国に帰ったとかなんとか。

 今剣も、実在したかどうか判らないよーんってかたちに伝承がねじ曲げられた。


「ですが、アイさまとサナートさまがまみえるということ自体が政治的な意味を持ちますよね」

「そりゃそうよ。さしあたりはそれが狙いかな」


 天狗の介入があるのか、と、周囲に警戒させることが目的のひとつだ。

 妖怪の勢力も、人間の勢力も、天狗たちの武力には遠く及ばない。

 持っている技術力が違いすぎるから。


 残念ながら地球の科学力では惑星間を一日で往復したりできないし、反重力発生装置を内蔵した戦闘用プロテクターを作ることもできない。

 もし金星人たちが本格的に地球攻略に乗り出したら、世界最強を誇るアメリカ軍だって半日くらいで壊滅してしまうだろう。


 だからこそ、どの陣営も鞍馬山には手を出せないのだ。積極的な交渉だって躊躇われる。

 なんかの間違いで怒らせるのは非常にまずいから。


 クンネチュプアイのように、個人的なツテがあるわけではないのだ。


「んー、でも、考えてみたら陰陽師たちに会うより先にサナートに話を通した方が良いかもね。その方が交渉がラクそう」


 考える仕草をする。


「そうですかねえ。ですがアイさま。こんな言葉がありますぞ?」

「なに?」

「ラクをしようとして手を抜くと、かえって面倒なことになる、と」


 前方を見つめたまま苦笑するエモンだった。



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