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京都にエルフ!? ~5000年を生きた大魔法使い、オーバーツーリズム問題に挑まんとす~  作者: 南野 雪花


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第34話 楽しい現場


 チームの女性率があがった。

 なにしろ今まで、女なんてクンネチュプアイしかいなかったのに、茨木童子と白音が加わったから。


 対して、男は酒呑童子とエモンとサナート、そして命である。

 四対三で、まあバランスは悪くない。


 数には入れられなかった四天王の五鬼がぶーぶー言っているが、一顧だにされなかった。

 そもそも、べつにこれから合コンをしようってわけでもないので、男女比とかはあんまり関係ない。


「関係ないなら、わざわざ言う必要はなかったのではないかと」

「そもそも、あたしように美少年を用意してないのが納得できないわぁ」


 エモンとサナートの意見も、あまり重要ではないだろう。

 だいたいヨッパライのタワゴトだから。


 クンネチュプアイたち三人が到着したとき、だいたいみんなできあがっていたのである。

 仕事にもなんにもなりゃしない。


 そのため、今日は顔見せのみで本格的な稼働は明日からということになったのだ。

 もちろん、京都市内の巡回である。

 ときには一人(ピン)で、ときには二人(カップル)で、マナー向上委員会(仮称)の人々をバックアップする。


 彼らは基本的に観光客に声をかけないし、よほどのことがないかぎり注意もしない。

 ただ、迷惑を被っている店や、他の客から助けを求められる可能性というのも考えられている。


 で、助けを求めるくらい迷惑な客ということになると、間違いなくトラブルに発展するだろう、ということも。

 そういうときにこそ、妖たちの出番だ。


 なにしろ彼らは人間に殴られたくらいではダメージを受けないから。


「だからといって殴られっぱなしというのもまずいのよね。相手を調子に乗らせちゃうし」


 とは、クンネチュプアイの言葉だ。

 一方的に殴られている動画などがインターネットに投稿されたりするのもまずい。

 京都が無法地帯みたいに思われたりする可能性もあるし、動画を撮った人と撮られた人を追いつめすぎる結果にもなりかねない。


「……優しいんですね。クンネチュプアイさん」


 ただひとり素面な白音が話しかけてきた。

 手に持っているのはジュースだ。

 酔っぱらって帰ったら上司に怒られちゃうからね。しょうがないね。


「私は正義の味方ってわけじゃないからね。悪は絶対に許さない! なんていうつもりはないのよ」


 ビールを持ったまま肩をすくめてみせるエルフ。


 SNSなどにときおり投稿される、暴言や暴力行為の動画などに、鬼の首でも獲ったかのように、あるいは気が狂ったかのように返信する者たちがいる。

 彼らは自分の正義を疑ってもいないだろう。


 主観的には、ものすごい正義のヒーローだ。


「けどね。この国の人間ってやりすぎるから」


 エルフの表情はほろ苦い。

 自分が正義だと思えば、いくらでも残酷になる。


 二〇〇〇年代の初頭に発覚した耐震強度偽装事件などもひとつの例だろう。事件に関わった人が罪に問われるのは良い。しかし、一級建築士の妻がマスコミや世間に追いつめられ、自殺したのは別の問題だ。


「自殺するヤツが心が弱いんだ、なんていう人は、いじめやブラック企業の問題で自殺した人にも同じことを言うんでしょうね」


 ふうと、酒精の混じった吐息。

 ちょっと喋りすぎたかな、と、表情が語っているように白音には思えた。

 なんでも知っているエルフにとって、あるいは成熟した宇宙文明の金星人たちにとって、地球人類とはどれほど愚かで矮小に映っているのだろう。


「クンネチュプアイさん……」

「ともあれ、私たちはネット民どもに話題を提供してあげたいわけじゃないからね。トラブルの芽は摘めるうちに摘んじゃうって話」


 くーっと缶ビールを飲み干す。

 たぶん、いろんな言葉を一緒に。






 宴会で一日潰れてしまったが動きとしてはそんなに変更はない。

 京都市内を適当にぶらぶらするだけ。

 えらく簡単な仕事だが、ただ歩いているだけというのもけっこうしんどいのである。


「そして、俺はやっぱりアイとコンビなんだな」

「むしろ私以外の誰と組むつもりだったのか訊きたいわね」


 横を歩く恋人をじろりと睨みあげるクンネチュプアイ。

 翌々日である。

 まだ市役所から人員は出ていないが、計画そのものは動いているのだ。


「エモンさんとかなら、気を使わなくていいなーと」


 そしてしれっと応える命だった。

 恋人と過ごすのはそりゃ楽しいが、仕事なんだからいちゃこらしてるってわけにもいかない。

 仮に気分が盛り上がったって、ラブホテルに入っちゃうってわけにはいかないのである。


 その点、エモンなら適当に雑談でもしながら過ごせば良いだけなんで気楽だ。


「サナートは?」

「違う危機感がある」


 金星人たちは美少年好きだからね。

 しかも司令は、マッチョ系から儚い系まで趣味の幅が広いらしい。


 あと、酒呑童子と一緒というのは論外。

 陰陽師と鬼のコンビとか、他の陰陽家に見られでもしたら大騒ぎになってしまう。


「もちろんアイ以外の女と組むつもりはないから、茨木童子も白音もないしな」


 このあたりはきっぱりと言う。


「もう一つ選択があるわよ。一人(ピン)っていう」

「それは寂しすぎる」

「わがままねえ」


 くだらない会話を楽しんでいると、ハンドバッグの中でクンネチュプアイの携帯端末が震えた。


「しもしもー」


 謎の言語でエルフが電話に出る。


「ガラケー……バブル語……」


 ぼそりと呟く命だった。近いうちにショップに連れて行こうと決意しながら。

 ともあれ、やはりトラブルの連絡である。


「祇園。いくわよ。ミコト」

「了解」


 駆け出す二人。

 最もトラブルの多い地域のひとつだ。


「また舞妓が絡まれたか?」

「基本はそれなんだけどね」


 クンネチュプアイが肩をすくめる。

 それだけだったら連絡なんかこない。視線作戦を実行している妖たちで充分に対処できることだ。


 このケースは、義侠心に富んだ別の観光客が注意してしまったらしい。

 舞妓さんが迷惑しているじゃないか、やめろよ、と。


 そこで引き下がるような常識的な相手なら、そもそも迷惑行為なんかしない。当然のように止めた相手に掴みかかった。

 こうなるから、誰も旅先で注意なんかしないのである。

 相手は気が大きくなっているのだから。


「でも、この場合は注意した方も気が大きくなっていたみたいね。義侠心って気が」

「それでケンカ沙汰か」


 命も苦笑しかしない。

 絵に描いたようなトラブルの構図だ。


「掴まって。ミコト。跳ぶ(・・)から」

「跳ぶって?」


 差し出された手を握る。

 次の瞬間、二人の姿は祇園にあった。


「転移魔法よ」

「まじか……」


 おもわず周囲を見まわしてしまう命だった。

 陰陽の技を使う彼だが、さすがにこんなデタラメな力は持っていない。

 一キロ以上の距離を一瞬でゼロにしちゃうとか。


「魔力の消費も大きいし、あんまり使いたくないんだけどね」


 ぺろりと舌を出すクンネチュプアイ。

 目の前には、今まさに殴り合いが勃発しようとしている。

 

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