コンビニの店員はいつだって大変なのかもしれない。
神社の鳥居をくぐり抜けたところで、ふと思い出した。
「あ、そうだ。夕飯…」
家の冷蔵庫にはロクな食材がなかったし、寄り道してコンビニで何か買って帰るか。
そう考えながら、近くのコンビニへ向かう。
コンビニの前に着くと、妙に人だかりができていた。
なんだ?新作スイーツの発売日とかか?
そんなことを思いつつ、特に気にせず店内へ入る。
すると──俺の視界に、長い金髪をなびかせた女性が飛び込んできた。
「……ん?」
レジカウンターに立つその女性は、
制服の胸元に「研修中」と書かれた名札をつけていた。
年齢は……俺よりちょっと上くらいか?
顔立ちは端正で、まるで雑誌の表紙を飾るモデルのような美貌。
正統派の美人、ってやつだ。
それにしても……どこかで見たことがある気がする。
「音無さん、昼休憩いっていいっすよ」
突然、バックヤードから出てきた派手な赤髪の男が、
大きなあくびをしながら言った。
「はい!じゃあ後お願いします!」
金髪美女はにこりと笑って軽く会釈すると、そのままバックヤードへ消えていった。
彼女のいたレジに並んでいた男たちが、一斉にため息をつく。
まるで楽しみにしていたイベントが急に中止になったみたいな、そんな落胆ぶりだ。
……って、おいおい。
さっき、音無さんって言ってたような……。
一気に頭の中で、昼間の出来事がフラッシュバックする。
俺の家に不法侵入してきた、あの音無?
まさか……いやいや、ありえないだろ。
とはいえ、ありえないと思いつつも、何か胸騒ぎがするのも事実。
一度確認した方がいいか……?
……いや、まずは晩飯を買おう。
俺は考えるのをやめて、店内の棚へと足を向けた。
デラックス幕の内弁当を手に取る。
値段は……まあまあするな。けど、今日はちょっと豪華にいこう。
そう思いながら、レジの列へと並ぶ。
しかし、列がやけに長い。
どうやら、このコンビニは店員が少ないらしく、
今は赤髪の男しか接客対応していないようだ。
人手不足か?それともただのシフトミスか。
そうこうしているうちに、俺の番が回ってきた。
「……ったく、店長…まだ来ねぇのかよ」
ぶつぶつと文句を言いながら、
赤髪の男がめんどくさそうに幕の内弁当のバーコードを読み取る。
「680円です」
声にやる気が感じられない。
ふと、彼の胸につけられた名札に目をやる。
──「赤井」。
赤い髪の赤井……なるほど、覚えやすいな。
俺は無言のまま、自動支払機に千円札を突っ込み、お釣りを受け取る。
「ありがとうございました」
無感情にそう言い放つ赤井。
店の空気も含めて、妙にドライな対応だ。
まあ、特に気にすることでもないか。
弁当の袋を持ち、店を出た、そのとき。
「ちょっと来て!」
突然、腕をぐいっと引っ張られた。
驚いて振り返ると、そこにいたのは──先ほどの金髪美女。
え?何?
混乱する間もなく、彼女は俺の腕を引いたまま、店の横にある従業員入口へと向かう。
「おい、ちょっと待て!」
「いいから!」
半ば強引に引っ張られ、俺はそのまま店の中へと連れ込まれた。




