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お休みは有意義に

時間は掛かるものの最初に比べたら随分と早く魔力の糸通しができるようになった頃、筆頭魔法使い様が鬼の様なことを言い出した。


「うん。このサイズはもう大丈夫そうですね。」


「では!いよいよ特級魔法を教えて頂けるのですね!」


「次はこのサイズでやってみましょう。」


そう言われて出されたのはいつもしている糸通しのビーズよりも一回り小さいサイズのものであった。


「な、何故…。」


「特級魔法を身につけるのにはいくつか条件があるんですよ。

例えば、宮廷魔法使いはこのサイズのビーズよりも2回りか3回り程小さいビーズでの糸通しを30秒で行えることが前提条件になりますね。

そして、そのいくつかの条件を満たした上で、適正試験を受けて貰い、初めて習得するのです。」


なんて面倒くさい。

そんなの今まで一度だって聞いたことないわよ。


「それは当たり前ですよ。

基本特級魔法なんて宮廷魔法使いしか使えないものなんですから。一般にこのことが知られることなんてないんです。」


またも読心術かと思う様な見事な解答をくださる筆頭魔法使い様。

段々恐ろしくなるわね。


「貴女が顔に出し過ぎなんですよ。」


「そんな馬鹿な。(わたくし)は未来の王子妃ですのよ。感情を顔に出すなんて、そんなこと有り得ませんわ。」


「んー…。そうですね。でも私にはとてもわかりやすく見えますが。」


なんたる失態!王太子殿下といい、筆頭魔法使い様といい、そんなに(わたくし)って顔に出るのかしら…。これは王子妃教育をまた受け直さねばならないわね。

…あの厳しい…。考えたら寒気がしてくるわ。


ズーンと落ち込んでいると笑い出す筆頭魔法使い様。


「あははっ!そういうところがわかりやすいんですよ。」


本当によく笑いますわねこの方。

その綺麗な御顔を一度張り倒して差し上げたいわ。


「まぁまぁ、そんなに怒らずに。

特級魔法を取得するためのプランを練りましょうか。」


誰のせいよ、全く。


学園への復帰はあと一週間の予定なのだけど、それでは確実に間に合わないので長期的な計画を立てることとなった。

一先ず、この一週間は魔力の糸通しを主に行い、基準となるサイズのビーズにスムーズに魔力の糸を通すことを目標とした。


そしてそれができるようになれば次なる条件に取り掛かる、というようなことを繰り返すことになるとのこと。

復学後は週末の学園が休みの時に筆頭魔法使い様の時間が合えば見てくれることとなった。

まぁお忙しい方ですからね。仕方がありませんわ。


そんなこんなで、残り一週間はみっちり練習に付き合って頂けるそうなので、この一週間でもうワンサイズビーズを小さくしてみせますわ!







ぱぁんっ!!


まぁ意気込んだのはいいけれど、そんなに上手くいくわけないわよね。


ぱぁんっ!!


「これで何個目ですか?」


「…21個目デス。」


「ビーズのサイズを小さくした途端にこれですか。全く、所詮はお子様ですね。」


く、悔しいぃい!!

けれどもどうにもうまくいかないのよ!

ほんの一回り小さくしただけでこんなにできなくなるの?!


「いいですか?穴のサイズに合わせようとするのではなく、予め穴に入るサイズを作るのです。」


「やってますわ!でも圧縮しすぎてビーズに通そうとするの弾け飛ぶんですっ!」


「あまり考えすぎなくていいんですよ。そうですね。お手本を見せましょう。」


そう言うと筆頭魔法使い様はスルーっと、魔力の糸を作って見せる。

それがすごく綺麗でまるで金糸のよう。


そして、ビーズを手に取り、魔法で浮かせると、すいすいーっと穴に魔力を通していく。その早いこと早いこと。


「こんな感じです。」


ものの十秒足らずでビーズを編み、ブレスレットを作ってみせる筆頭魔法使い様は流石としかいいようがなかった。その名に恥じない腕前ですわね。


「暫くはもつと思いますので貴女に差し上げます。」


そう言って(わたくし)の腕に今し方作ったブレスレットを付けてくださる。


「待ってください。暫くもつ、とは?」


「んー…。たぶん一週間はもつと思いますよ。」


「へ?!い、いっしゅうかん!?」


(わたくし)が何をそんなに驚いているのかと言いますと、そもそも魔力は体内から作り出せるものであると同時に空気中にも飛散しているものでもあるので、可視化して圧縮したとしても、手元を離れればすぐに自然と同化して消えるものなの。

魔力量を多く圧縮すると数時間はもつこともあるけれど、どれだけ有能な魔法使いでも死に物狂いで相当頑張っても三日もつかどうか、というくらいなのに。


それを平気な顔で一週間と言ってのけたこの方は何者なのかしら。


「もう少し長い方がいいですか?」


「ひぇっ!い、いいです!大丈夫ですわっ!」


まだいけると?!

恐ろしすぎてそんなもの付けられませんわ。

と、いうかそんなに魔力を圧縮したものが万が一弾けたら(わたくし)…。

そんな怖い想像が浮かんでゾッとしていると、ケラケラと笑う筆頭魔法使い様。


「心配しなくても弾けたりしませんよ。貴女と違って私は優秀な魔法使いなので。」


ドヤ顔でそう言われるとやっぱり腹立ちますわ〜!


「まぁ仮に弾けたとしたら粉微塵にはなるでしょうけど。」


「…………お返し致しますわ。」


「はははっ!冗談です!」


「筆頭魔法使い様の冗談は笑えませんわ。」


「その筆頭魔法使い様って言うのやめませんか?これから長い付き合いになるわけですし、何より、私は貴女の師範となるのですよ。」


「では、フォンギアス様と。」


「うーん…。固いですね。気軽にエデュラス、とでも。それか呼びにくければエディ先生と。」


「なんですか先生って。」


「ふふっ。師範ですから先生かなと思いまして。」


「……。」


そうドヤ顔で言われると呼びたくなくなるわね。


「では、エディ様と呼ばせて頂きますわ。」


「わかりました。」


陽の光に照らされながら微笑むエディ様はまるで後光さす女神様のようで危うく昇天しそうになりますわね。


「では、(わたくし)からも。

師範と言うならその敬語は必要ありませんわね。」


「そうか。じゃあ敬語は無くして普段通りにさせて貰う。」


「えぇ。では、改めてよろしくお願いしますね。エディ様。」


「こちらこそよろしく。アイリス。」



握ったエディ様の手は美しい見た目とは違い、(わたくし)とは違ったごつごつとした男の人の手であった。


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