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絆の秘密 回想

 二年前、中学三年の春の終わりごろ。

 私は不審者に襲われた。

 と言っても、乱暴をしてくるようなものではなくて「君可愛いね、ほら俺のどう思う?」なんて言って裸体を見せてくる変態系だったけど。


 その時は頭の中でその変態と不審者という言葉がつながった瞬間脇に回し蹴りを入れて逃げたから良く見てはいない。


 繰り返すけれど、見てはいない!!


 とにかく、そういうのを学校に伝えないわけにもいかないから両親を通じて連絡を入れて貰ったんだけれど、どこからか襲われたのが私だという情報が漏れてしまった。


 今ではちょっとした黒歴史だけれど、小学生の頃から正義のヒーローを気取っていた私と奏は容姿の良さもあって結構人気者だった。

 でも、懲らしめていた不良達には忌々(いまいま)しく思われていて、そういう連中にここぞとばかりに面白おかしく吹聴されてしまったんだ。


 不審者を殴って逆に病院送りにしただとか。

 物珍しいからってガン見しただとか。

 私に取って不名誉で事実無根なことを言いふらしていた。

 私に近しい人達はあり得ないと言ってそんな噂全く聞き入れてなかったんだけれど、そこまで近しくない人達は面白おかしく話していた。

 一番(たち)が悪かったのは悪意無く言いふらしている人達。

 彼ら(いわく)


「美来がそんなことしないって分かってるから話してるんだぜ?」

「美来のこと信じてるから言えるんじゃない」


 だそうだ。

 本人達は言った通りに私を信じてくれているんだろう。

 でも、それを聞いた人までそうとは限らないんだ。


 結果、不名誉な噂は通っている学校に限らず同地域内にまで広まってしまった。

 とは言え身近な人は噂を本気にしていなかったし、以前よりちょっと地元が歩きづらくなったって程度だった。

 学校の中でも嫌われている不良達辺りからは(ののし)られたけれど、どちらかと言うとその不良達の方がみんなから嫌われていたし大した被害はなかった。


 そのまま夏休みに突入して、休み明けには噂も落ち着くだろうって私もみんなも思ってたんだ。


 ……でも、その夏休みも半ばという頃。

 たまたまその日は両親だけ実家の墓参りのために一泊してくるということで、家に私と奏しかいない日だった。


 そんな日に私は親のパソコンで暇つぶしにネットサーフィンをしていた。

 そして見つけてしまった一番仲の良い友人の裏アカウント。


 噂は事実だとか、それよりもっとひどいことをしているとか散々書き込まれていた。

 今だったらもう少し冷静になって考えれるだろうけれど、当時の私はそこまで強くはなかった。

 それに、なんだかんだ言っても噂に気疲れしていたんだと思う。


 その友人の裏アカウントを見た途端、呼吸がしづらくなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって……。

 とにかく逃げ出したいという感情だけが溢れてきた。


 そうして私はスマホと財布だけを手に、衝動的に家を飛び出した。


 とにかく地元から離れたいと思った私はかなりの距離を電車に乗り、見知らぬ土地へと行きつく。

 とにかく遠ければいいと思っていたから場所なんて気にしていなかったけれど、今思えばこの学校周辺の駅だったんだろう。


 そこでの一晩で何故か【かぐや姫】なんて言われるようになっちゃったみたいだけれど、それはまた別の話だ。


 その一晩で色々なことがあって、冷静になって駅に戻るとそこにはスマホのGPSを使って私の居場所を特定して来た奏がいた。

 白んできた空の下、奏は私を怒ることはしなかった。


 パソコンの画面はそのままにしてきていたから、私がどうして家を飛び出したのかは理解していたらしい。


 ただ、叱る代わりに言われたんだ。


「俺達は初めから一緒に生まれてきたんだ。今後何があっても、俺はいつでも一緒にいるから! 俺だけは絶対、お前を裏切らないから! だから美来、お前は一人じゃない。一人で抱え込まなくていいんだ」


 双子として生まれた私達は決して一人じゃない。

 どんなに離れていても奏との絆は切れることはない。

 それを言い聞かされた。

 私は泣きながら何度も頷いて、奏の言葉を身に沁み込ませた。

 私は奏に救われたんだ。


 あの時の言葉があるから私は一人だと不安にならずに済んでいる。

 あの時の言葉と、奏という存在が私の支えだ。


 もし大人になって道が分かれたとしても、あの時の言葉が支えになってくれるだろうって確信できる。

 どんなに離れたとしても、共に生まれてきた存在がいるということが私と奏の支え。


 ケンカだってするし、腹立たしく思うことだってある。

 でも、心の奥底。

 根元の部分では切れない糸で繋がっているって信じられる。


 その糸は家族の絆。

 普通の家族の絆よりも少しだけ強い、双子の絆だ。


 だから、私は大丈夫。


 そしてその後、奏に付いてもらって裏アカウントの友達に確認を取ってみた。

 でもその子はそんなアカウントなんて全く知らなかったらしい。


 調べてみると裏アカウントを使っていたのはその友達の小学生の頃の悪友で、面白そうだったからやってみたなんてふざけた事を抜かしたので奏と共にぶちのめしておいた。

 そうして友達との仲も険悪になる事はなく、夏休みを終える。

 はじめに思った通り、夏休みを終える頃には噂も落ち着いていて、普通の日常が戻って来た。



 とまあ、そんな事もあったから今の状況もそこまで辛いとは思っていなかったりする。

 でも、それでもしのぶと一緒に遊んだり出来ないのは寂しいからさっさと終わらせたいところだ。


 面倒だけれど、ここを乗り越えられなきゃ大元にたどり着けないからと、私は気を引き締めた。

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