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プロローグ

 暑い日差しが窓から差し込む廊下。

 教室の中とは違って静かなそこで待ちながら、先生の声がかかるのを待つ。

 隣のクラスの前で待っていたもう一人はさっき呼ばれたみたいで中に入っていった。

 私もそろそろ呼ばれるはず。


 胸に手を当てると、その手にもドキドキと鳴る心臓の鼓動が伝わってくる気がした。

 転校も初めての事ではあるけれど、同年代の子にこんな格好で会うことも無いからそう言う意味でも緊張してる。

 速まる鼓動を落ち着かせるように深呼吸して、私は先生の呼び声を待った。


「入ってきなさい」


 待っていた声が聞こえ、深く息を吸って決意を固める。

 あとはもう思い切って教室の中に入るだけだ。

 足を進めると少し静かになっていた教室が騒めく。


「え? なにあれマジ?」

「今どきあんな格好する子いるんだ?」


 驚きと、ちょっとした嘲笑(ちょうしょう)

 こうなるだろうことは分かっていたけれど、実際に聞いてしまうとちょっと落ち込む。

 だから教壇に立って正面を見るときも、少し(うつむ)きがちになってしまった。


「今日からこのクラスの仲間になる星宮だ。皆仲良くするように」


 担任の畠山(はたけやま)先生がお決まりの文句を言うと、私が自己紹介をする番だ。


星宮(ほしみや) 美来(みく)です。よろしくお願いします」


 格好が恥ずかしいこともあり、いつもの様な元気を出せない。

 かろうじて皆に聞こえる程度の声を出すと、私はペコリと頭を下げた。


「名前だけはアイドル並みに可愛いんだな」

「名前負けでしょ、完全に」


 そんな感想が聞こえてくる。


「あんな地味女じゃなくて、名前負けしない可愛い子が良かったな」


 その言葉通り、今の私はとても地味な格好をしていた。

 腰まである長い黒髪は二本の三つ編みにきつく結っている。

 メガネはライトグレーのサングラスになっていて、肌色とのコントラストが悪い所為か顔色自体も悪く見える。

 そんな見た目だから、皆が地味だ何だと言うのは初めから分かっていた。


 でもこの格好じゃなきゃいけない理由があるんだから仕方ないじゃない!


 そんな文句を心の中に留めながら、隣のクラスも似た感じなんだろうなと思った。

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