7 サイチの街
朝日が昇る頃、私は目を覚ました。
早朝に起きるのには慣れている。
起きないと叔父と叔母に暴力を振るわれるからだ。
そんなことよりも、先を急がなくちゃ。
まだ数日だけど、浮いて進むのにも少しずつ慣れてきた。
よしっ!
今日も進むぞぉぉぉ!!
上を見るとマロンがこちらを見て応援してるかのように見えた。小さくて可愛い応援団のように『ピユゥ』と声援をくれた。
この坂を進んで、頂上に着いたら国境が見えるかもしれない。
「もう少し進んだら頂上だ」
頂上まで来ることが出来た。
「わあぁぁ……夕日が凄く綺麗。
国境はまだ見えないけど、大きそうな街が見える」
街には明日行けそう。
とにかく今日はここで野宿だから、ベットが置ける場所を探さないと。
「んっ?
わあぁぁぁ!
すごく大きな木……」
昨夜のような洞穴はないけど、大木が何本もあり、枝が無造作に伸びて畳2枚分ぐらいの平べったくなっている部分でマロンが待っていてくれた。
『ピユゥ!』こっちだよと呼んでいる。
んっ?
かなりの数の足跡、これって魔物のだよね。
マロンとあの木の上で寝た方が良いのかもしれない。
このくらいの高さなら、魔物が下を歩いても大丈夫そう……かな。
そうと決まれば即実行!
この大木、ハシゴのようになってて登りやすいな。
「よっと!
はあぁぁぁ、登れたぁ!」
下を見ると、結構高さがあるな。
マンションの三階と四階の中間くらいだから、私が気配を消して、静かにしてれば大丈夫そう。
「マロン、気配を消しててね。
私も頑張って消すから」
もう寝ようと思っていると、ガサガサと茂みが揺れ、人の話し声が聞こえてきた。
私とマロンは暖かい毛布にくるまり、上から2人組の男性の話を盗み聞きして分かったことだが、この2人組の正体が判明した。
国王が放った騎士だ!
私とマロンは見つからないように、気配を消し、浅い息で様子を伺い、耳を傾けると。
「まだ国境を越えてないらしいですね」
「まあな。ガキの足だと、この辺に来るのもあと2日はかかるだろうな。
いや、あのガリガリな身体に体力のないガキだ、4日はかかるだろうよ。
フレディはどうする? 戻るか?」
「そうですね、見つけ次第殺せとの命令ですし……。
一度戻りましょう」
「まぁ、戻るとするか。
ん? ここは確か……おい、戻るぞ!
急いでだ!!」
年上騎士のクレーがグイッと首に腕を回し、新人騎士のフレディを引きずった。
「ぐえっ、クレー先輩…く、首!」
「おぉ、悪ぃな」
涙目で首を押さえ息を整えてから言葉を発した。
「……それで、何かあるんですか?
あっ、クレー先輩、待ってくださいよ!」
「移動しながら話してやるから、静かに歩け。
ヤツらに感付かれたら終わりだ!」
「終わりって何がですか……」
遠のきかけた声に聞き耳を立てていると。
「ここにいたら食われるんだよ!
つまり、アイツらの良い餌ってことだ!!」
2人の騎士は来た道を逃げるように走って戻って行った。
そんな会話を聞いた私は、息が「ヒュッ!」となったが、それでも我慢して通り過ぎるのを待ち、足音が聞こえなくなるまで何も考えられなかった。
あれから何時間がたったのだろう。
もう寝ようと横になったが、今度は地響き?
えっ、何か音が聞こえる。
足音……だけど、人間ではない足音だ。
きっと騎士の人達が言っていた魔物? モンスターだろう。
そう思った私は、声が出ないように片手で口を押さえ、震える体を逆の手で抱き、身を縮めて気配を察知されないように消した。
黒い影から足音の主が見え、目を大きく見開き、ギョッとした。
そこには。
10匹以上の三つ目ウルフの群れがいたからだ。
三つ目ウルフは遠吠えで仲間を呼び、その仲間と狩りをするモンスターで、私のように弱い者は餌にされて終わりだ。
ここから動かず、このまま通り過ぎるのを待つしかない。
ドクドクと鼓動が早くなるが、動かなければ大丈夫だと思っていたが、三つ目ウルフは大木の周りをウロウロしたり、匂いをクンクン嗅いでいる。
嗅覚が鋭いから見つかったのかも!
あれ?
三つ目ウルフは諦めたのか、大木から離れたあと、群れで別の場所へと移動を開始した。
数時間前までいた騎士を追いかけるのかと思ったが、逆方向へ行っている。
私はホッと胸を撫で下ろし、気が緩んだのか、いつの間にか眠りについていた。
昨夜は怖いことばかりだったので寝不足だ。
大きな欠伸をしながら目を擦り【ピカピカ】と光る草を手に取った。
【薬草】と、目の前で表示されている。
こっちは【毒消し草】【五色キノコ】【野イチゴ】【ミント】【ローズマリー】などなど。
いっぱい取ったなぁ。これを売ればお金に困らない。
よぉーーし、街を目指すぞぉーー!
この丘を下り、大きな街を目指した。
おぉぉぉぉ。
遠くで見た時と違って、近くで見ると迫力ある大きな門だ。
見上げて門を見ていると、門番さんとバチッと目が合ってしまい、私は少しぎこちない歩き方になってしまった。
王都である【メリデン】から逃亡していることがバレたのかと思い、一瞬息が止まり近付く門番さんを見ることが出来ず、その恐怖心からギュッと力いっぱい目を閉じた。
「……ヒュッ(バレたのかも、どうしよう!)……」
「お嬢ちゃん一人かい?
(身体中細すぎてガリガリだな、大丈夫なのか?)」
「あっ、えっと……わ、私には……家族も身内もいません(声が震えちゃった)」
門番の男性は硬い表情で何かを考えていたが、柔らかい顔になり、ボサボサで汚い頭を優しく撫でてくれた。
「(口減らしか)モンスターがうろついてるから、街に入っておいで」
「あ、ありがとうございます。
あの、薬草やキノコを売りたいのですが、場所が分からなくて」
「ここは【サイチの街】で、ローバル国内で一番大きな港街だ。
このサイチの街は北に山があり南に港があるから毎日賑わっている。
素材などを売るなら、ギルドで買取りしてもらうといいよ、その方が安全だからな。
ほら、あの大きな建物は見えるかい?」
コクリと頷き答えると、再び優しく頭を撫でると同時に笑顔で話してくれた。
「あれがギルドだよ」
丁寧にお辞儀をしてから、笑顔で感謝の言葉を口にした。
「教えていただきありがとうございます。
さっそく行ってみます」
「(か、可愛いなぁ)あ、ギルドで売るんだぞ?
間違ってもそこら辺の店で売らないようにな、ぼったくられるから気をつけて行くんだぞ!」
「はぁーーい!」
門番さんにとびっきりの笑顔で手を振ってから、ギルドを目指した。
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