26 月(ルナ)とルルナ
ベルおじ様だ。なんか急いでるみたい。だけど顔がこわばっており緊張しているようにも見える。何かあったのかな?
この変に落ち着かない不安感はなんなんだろうか。
ジッと見ていたから視線を感じたのだろう。こちらを振り向いたベルおじ様は、私を見つけ駆け寄った。それがまるで今から地獄に1歩踏み込んだかのように腹の底からザワザワと感じていたからだ。
でも慌ててるような?
「ベルおじ様、ごきげんよう…」
肩を掴まれ、ヒョイっと抱き上げられた私はベルおじ様の行動にアタフタと戸惑った。
「無事だったか! いい、挨拶なんていいんだ。
もう手配は済んだ、ここから隣国へ行くよ」
「えっ、隣国へ行くのはまださきなのでは?」
「事情が変わった。
私の兄から手紙が来てな、ルルナと神獣様、そして女神様の眷属であるマロン様は直ちに隣国へ渡れとのことなんだ。
理由はルルナの養父の前で話す」
ただ事ではないと心が叫んでる。マロンとスオウに視線を向けた。
『ルナ、大丈夫だ。
ベル。隣国へ渡る際は、ワレが信頼出来ると見込んだ大人を数名指名していいな?
隣国は安全な場所だ、だがルナにとっては初めて見る世界と場所だ。エメルロ一族のベルなら分かるな?』
「はい。分かっております。
我々一族は……もう誰一人として失わせることはしたくないのです。極秘の話も養父であるテオルには話さねばならない。それを理解したうえで覚悟を聞かせてもらうつもりです」
スオウはコクリとうなずき、ノックのあとギルマスことパパの部屋へと入った。
そこにはローラン、ドルバル、レイブン、レン、ドリアンのいつものメンバーが集められていた。
部屋に入るとベルおじ様は前回のように魔法をかけ、私を下におろした。
隠密行動していたレンとドリアンに小走りで駆け寄り。
「レン、ドリアン!」
勢い良くジャンプしてレンに抱きつき、ドリアンはバインボインなお胸だから普通に抱きついた。勢いをつけると、バインボインのお胸に……息が…。それにしても、形のいいお胸だよね。
「レイン! 無事だな?
可愛いお姫様の元気な顔が見られて良かった」
(きゃぁぁぁぁぁ、レンの久しぶりのギャップ萌え来たぁぁぁぁぁ!)
強面の顔なのに声色と言葉は優しい。それに、最近は笑顔も増えたから、より一層イケメンになってる。
「可愛いレイン。貴女が無事で良かったわ」
スタイル抜群で顔も女神様のように綺麗で……お胸が特に良い!!
「ドリアン、大丈夫だった? 怪我とかしてない?」
顔を横に振るドリアンを見て安堵した。
ベルおじ様を見て。
「緊急事態…なんでしょ?
私が聞いても大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。
むしろ、貴女に……いや、ルルナには話さないといけない。
話は長くなるが聞いてほしい、我々一族の極秘の話を……だ」
ここに集められたメンバーは顔を見合せて戸惑ってる感が見て分かる。そんな中、先に口を開いたのはパパだった。
「閣下、そのような極秘の話を我々にして大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。我々一族の長であるお爺様の許可は貰っている。
我らと共に隣国へ渡ると決め、神獣様とマロン様、ルルナが信頼する者に限られるがな」
ホッと息を漏らすみんな。極秘の話と言われたら緊張もするよ。私はいまだに緊張してる。
『ピュルル』
『ルナ、大丈夫だ』
「マロン、スオウ。ありがとう」
ベルおじ様に視線を送り、大きくうなずいた。
「我々エメルロ侯爵の一族には秘密があり、それは体に流れている血だ。
血族の中から生まれてくるのが【神獣の主に命を救ってもらう者】だ。その主になれる者は生まれつき心臓が悪く、魔力も無い【虚弱体質】でいつ命の炎が消えてもおかしくないほど弱々しい。
……この者が亡くなる寸前、異世界から神獣様の主が現れ、主となるその者の中へ魂が入り2つの魂が一体化し、消えゆく命を守り。神獣様と、この世を正しい方向へ導くと言われている。
これはエメルロ侯爵家に代々伝えられてきた極秘の話だ」
ベルおじ様は私を見てこう言ってきた。
「貴女は……ルルナと魂を一体化し異世界から来てくださった方ですね?」
ギュッと服を掴み、俯いた。そして、深呼吸を2回ほどして顔を上げ口を開いた。
「はい、そうです。ベルナール・コールラン閣下。
私は異世界の地球での記憶もありルルナの記憶もあります」
静まり返る一室。私はみんなの顔を見回したが、スオウとマロン以外の者の気持ちが分からず気まずさえあった。ここから直ぐに立ち去りたいとさえ思えたからだ。そんな私にベルおじ様は質問をしてくる。
「貴女の……異世界でのお名前を聞かせてもらっても?」
「地球の日本でのことをお話します。
私は【小川月】と申します。家名は小川で名は月です。
歳は25歳で、死因は身内に殺されました……。
私は地球の日本、異世界でも身内に罵られ働いたお金さえ搾取されていました。この世界のルルナでさえ、酷い虐待をされ罵られ国を追放されました。これが弱いルルナのままだと死んでいたことは確かです!
他に聞きたいことはありますか?」
悲鳴にも聞こえる声に、みんなはローバル国の王族とダメンズ男爵家に怒り心頭。
そんなみんなに少しだが恐怖を感じた私は、顔に出てしまっていたようだ。
「すまない。怖がらせるつもりはなかったんだ。
貴女とルルナがどんな人生だったのかを聞きたかった。
今は幸せかな?」
ホッとする言葉に緊張の糸が切れたのかポロポロと涙が出て止まらない。そのうえしゃくり上げるかのように号泣してしまった。
幼子のスキル。ギャン泣き発動!!
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ!」
「ルナ!!」
泣いている私を抱きしめてくれたのはギルマス、私の優しいパパだった。
「大丈夫だ、ルナもルルナも同じだ。
異世界でも何でも、ルナは俺の大切な娘だ!」
「パパ……ヒック…あり……がとう」
ギュッと抱きしめ返した私を抱き上げ、ベルおじ様を見たパパ。
「閣下、この子が生きてきた環境は俺らが体験したことないほど辛かったはずです。
俺らでこの子を守り、毎日を笑顔にしてあげましょう」
「あぁ、そうだな。
ルナにとっては見慣れない世界だが嫌いにならないでほしい」
フルフルと顔を横に振り。
「嫌いになってないよ。だって、今はとーーっても幸せだから!!」
ドルバル、レイブン、レン、ドリアン、ローランを見るとみんな大きくうなずく姿を見て安堵し私の笑顔が戻り。
「みんな大好きだよ!」
効果抜群の破壊力のある笑顔と言葉にキュン死した者が数名。ではなく『キュン萌え』で倒れただけだった。
倒れたレイブンとドルバルを見たマロンが、2人の頭を『コツンッ! コツンッ!』とツツいてる姿を見て、みんなと爆笑してしまった。
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