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第7話 魔女化の反動

「という訳で、あなたと同い年の魔女を見つけましたので、その方をあなたの学校へ転入させます」


さらりと御影(みかげ)はまたとんでもないことを言い出す。

「えっ、なんか発想が飛躍してませんか!?てか魔女!?」

「安心してください。日本に住む魔女です。質素な暮らしを美徳として自然とともに生活する心穏やかな人達です。悪い魔女ではありません」

御影(みかげ)瑠衣(るい)を安心させるように、ニッコリと笑いながら言う。

いつもの御影(みかげ)のペースに乗せられそうになるが、そうはいくかと瑠衣(るい)は質問を投げ掛ける。


「…魔女に良い悪いがあるんですか?」

「人に仇なすのが悪い魔女、人を助けるのが良い魔女、ですね。

私は悪い魔女を取り締まったり、監視したりすることが仕事でして、あなたの魔女修行を受け持つにはいささか力不足でしてね。

ならば本業の方に指導して貰うのが一番だと思いまして派遣することになりました。その方にはあなたの家庭教師兼お友達になって貰う予定です」

「お友達…」

「あなたの今日の体調不良も新くんには言いづらかったのでしょうが、女性同士なら言いやすいと思うんです」

「まあ確かに…。

って!そうだ、この怠さはいったいなんなんですか!?生命力を吸われてるとか言ってましたけど」

「魔女があなたの生命力を吸収して、自己修復しているからですね。

我々の攻撃で魔女の命は風前の灯火でしたから、あなたの中で眠り、魔女としての力を取り戻すため、蓄えている最中といったところですね。いわばあなたは養分です」

「養分…」

ポツリと呟くとなんともまあ、嫌な響きだった。

「私たちはあなたを助けるために動いてるんです。これからは体調が悪くなったり、気がかりなことがあったら、何でも言ってください。なんとかしますから」

「…なんとか出来るんですか?」

じろりと見つめると、御影(みかげ)はポケットから手のひらサイズの巾着袋を取り出した。

中を開くとシンプルなペンダントが出てきた。先端には透明な雫の形の石がついていた。

「これは水晶です。常に身に付けてくださいね。体が軽くなると思いますよ。

これはあなたの精神の安定のための物です。お守りと思ってつけてください」

後ろを向いてください、と御影に言われてその通りにすると、首にペンダントをつけてくれた。

シルバーの細くて長いチェーン、ペンダントトップは小振りな氷のように透明な雫型の水晶。どんな服装でも合いそうな可愛らしいネックレスに少し嬉しくなった。

「可愛いです、これ」

「気に入って頂けたようでなによりです」

ふっと軽く微笑んだ御影(みかげ)の顔は今までニッコリ作り笑顔よりとても自然な顔だった。

瑠衣(るい)は自分の状況を理解して、気恥ずかしくなった。

男性からアクセサリーをプレゼントされるのは初めてなのだ。

しかもそのアクセサリーを御影(みかげ)瑠衣(るい)の首につけてくれたのだ。

体がポカポカと火照るのを感じた。


「他に質問はありますか?」

「あ、えっとじゃあ…御影さんについて教えてください!」

「…私ですか?」

「えっと、年齢とかお仕事のこととか教えて貰えたら、もっと信頼できるかな?って思って…」

上目遣いでお願いしてみると、御影(みかげ)はふぅとため息をついた。

「なるほど、分かりました。私は御影司(みかげつかさ)、年は32歳。仕事はとある教会で魔女たちを管理する仕事をしております」

32歳と聞いて、御影(みかげ)の顔をしげしげと眺めてみる。眼鏡の奥の顔は、若く見える。しかも端正な顔立ちをしている。結婚はしているのだろうか?

「一回り年が違うんですね…25歳くらいかと思ってました」

「年を取ればあなたも分かると思いますが、32歳ってのはまだまだ青二才なんですよ」

謙遜なのか本音なのか、瑠衣(るい)が分かりかねていると、御影(みかげ)はベンチから立ち上がった。

「さて、お話しは以上ですかね?外は冷えます。家の前まで送りますので帰りましょう」

「はい…」

(とりあえず、取り急ぎ聞きたいことは聞けたのかな…?)

それでも目処がついたような気持ちにはなれなかった。

色々聞けてスッキリしたような、逆に謎が深まったような、悩ましい気持ちになった。


つづく




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