第4話 護衛が出来ました
御影さんが帰った後、瑠衣は放心状態であった。
ひとしきりぼーっとした後、手荷物のことを思い出して、トートバッグを探したらリビングのわかりやすい場所に鎮座していた。
思わず中身を確認をしたが、案の定何も盗られていなかった。
夕飯に買った焼きそばとおにぎりもちゃんとあった。
(泥棒ではないみたい。かと言って信じて良いかと聞かれると悩む…。でも道で倒れていた私を一応家まで運んでくれたんだよね…?)
夢か何かだったのだろうかとも思ったが、飲み終わった紅茶のカップ2つがテーブルの上にあり、いつのまにか登録されていたスマートフォンの電話帳には『御影司(みかげつかさ』と書かれた名前と電話番号が載っていた。
(フルネーム、みかげつかささんって言うのね…。てか、スマホのロックをかけてたはずなのに、どうやって登録を…!?)
あの丁寧な物腰の不可解な男を信じていいのか。
悶々と悩みながら、瑠衣は床に就いたのだった。
朝、お弁当の用意をするために早起きしようと思ったが、中々ベッドから起き上がれず、瑠衣は遅刻寸前の時間に起きた。
(やばい、急がなきゃ。お昼は学食で済ませば良いか!)
とか考えながらバタバタと登校の準備をする。
茶色のセーラー服に身を包み、白いスカーフをつける。黒い学生カバンを肩にかけて家を出た。
マンションのエントランスからバタバタと出ると、瑠衣は声をかけられた。
「佐久間瑠衣さんですよね?」
「え?」
振り向くと、知らない男の子がいた。
黒髪の短髪で、切れ長でつり上がった狐目みたいな顔をしていた。同い年ぐらいだろうか、背は昨日の御影ほどは高くはない。ほっそりとした体型の男の子だった。
ただその男の子は、瑠衣と同じ学校の茶色の学ランを着ていた。
「あの、俺、御影司さんに言われて君に…」
そこまで言われて、瑠衣は「あ!!」と声をあげた。
少年はびくりと肩を震わせる。
「あの、どなたか存じ上げませんが、このままだと遅刻しちゃうので駅まで走りませんか!?」
「あ、はい…」
瑠衣は少年が頷いたのを確認したら一目散に走り出した。
とりあえず、今は学校!
彼はきっと昨日の関係者なのかもしれない、でもとりあえず話は電車に間に合ってからだ。
「な、なんとか間に合いましたねー」
「はい…」
なんとか発車直前の電車に間に合った。車内のポールを掴みながら、はあはあと肩で息する。
冬場だが、瑠衣も彼もしっとりを汗をかいていた。
「…で、えっと、すみません。お名前聞いても良いですか?」
電車が動き始めて安心したので瑠衣が促すと、少年は緊張した顔つきで少し黙ってから話始めた。
「俺は、首藤新。高2だから、君の1つ年上だ。今日は御影さんに言われて朝から君の家の前で待っていた」
「え…」
意図が見えなくて瑠衣は言葉につまる。1つだけだが年上なのも発覚して少し驚いた。
「えっと…、私を待ち伏せしていたってことですか?」
「それだと俺が変態みたいだろ…。俺は、君の監視と言うかボディーガードというか、とりあえず司さんに雇われたんだよ」
「雇われたとは…?てか監視?え?」
困惑する瑠衣をみて首藤新は焦ったように弁明する。
「雇われたっていうか、俺と司さんは従兄弟で、半分ボランティアというか頼まれたというか…、とにかく、君のことが心配だから常に見守れって言われてるんだよ!てか司さんから聞いてない!?」
捲し立てられて、瑠衣は更に混乱する。
て言うか、聞いてない。
そのとき、スマホがブブブッと震動した。ショートメールを受信したようだ。
思わず画面を見るとちょうど御影からだった。
『今日から首藤新という男の子が君の護衛になります。彼なら学校も同じなので何かと便利で安心でしょう。相談事やこれからのこと等は彼からは聞いてください。
御影』
「…えーと、つまり…?」
「このタイミング…あの眼鏡、分かってやってるのか?」
なにやらぼそぼそと愚痴を漏らしている。
御影の悪口ということはなんとなく分かった。
「つまりはその…、とりあえずこれから1ヶ月間、君の送り迎えをさせてもらうことになったから」
「はい…?」
つづく