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第3話 魔女化へのタイムリミット

「どうぞ、紅茶を入れました」


キッチンの方から神父服を着た背の高い男、御影(みかげ)がティーカップをトレイに乗せて歩いてくる。

3LDKの天井の低いマンションに、彼がいるだけでなんだか圧迫感がある。

そして、瑠衣(るい)の座るソファーの前にあるテーブルに優雅な動作でティーカップを置いた。

「あ、どうも…」

暖かいカップを手に持ち、口をつける。

(美味しい…。これ、よく飲むアールグレイに似てる…)

「紅茶も茶器もお宅のをお借りしました」

「!!」

瑠衣(るい)はもう何も言えなかった。ただ心の中でこの男のちゃっかりさに恐怖していた。


「落ち着きましたか?」

御影(みかげ)はそう言いながら、テーブルの反対側の床に腰をおろした。

そしてちゃっかり、自分の分の紅茶も用意して口をつけている。


「ええと、あの、状況がよく飲み込めなくて…」

「では、まずあなたの今の状況と、これからのお話をしましょう」

「は、はい!」

瑠衣(るい)は背筋をのばし、姿勢を正してきちんと座った。

もはや御影(みかげ)のペースである。


「もう一度いいますが、あなたに悪い魔女が憑依しました。このままだとあなたの精神と肉体をゆるやかと乗っ取り、あなたは魔女に支配され、魔女そのものになるでしょう」

「あの、なんでそんなことに…?」

しょんぼりと俯きながら呟くと、その様子を見て御影はにっこりと笑いながら説明する。

「推測ですが、

まず1つめ、あなたが魔女が肉体を捨て、精神体のみになったときに近くにいたから。

そして2つめは、あなたが若い女性だから。やはり乗っ取るなら年寄りより若い方がいいですからね。あと同性の方が都合がいいですし。

最後に3つめは、あなたに多少なりとも魔女の素質があったからですかね」

「はあ…」

「ため息ばかりですね。話を続けますよ。

このままだとあなた自身が悪い魔女になってしまう。我々としては、このままあなたごと捕まえてしまうのもありなんですが…」

「は!?」

「それではあまりに人道的ではないので」

「はあ…」

「魔女があなたを完全に乗っ取るまでまだ時間があります。タイムリットは1ヶ月~2ヶ月弱ですかね。その間に、あなたには修行をしてもらい、逆に魔女をコントロールしてあなたの一部にしてもらいたいんです」

「修行…?あのもし、その修行が間に合わなかったら…私はどうなるんですか?」

「そうですね、魔女と同化してしまうとあなたの肉体の主導権は魔女のものになるでしょうね。精神もいつの間にか魔女の中に溶け込み、あなたの自我は消えてしまうでしょう」

「それって、つまり死ぬってことですか…?」

瑠衣(るい)が恐る恐る質問をすると、御影はまたニッコリと笑った。

「自我がなくなるということは、人によってはそうでしょう。けれど実際は魔女の一部として生きていくことになるのですから死にはしないでしょう。

だけど、安心してください。我々がついています。そのような最悪の事態にならないように万全のサポートをさせてもらいますから」

「ええ…でも…」

「ひとまず、今日は遅いからもう寝てください。明日まだ木曜日、学校がありますね。学生の本分は学業ですから、しっかり朝起きて行ってきてください。今後の詳しいお話しは下校後にまた」

そう言いながら御影(みかげ)は立ち上がった。

終始目を泳がす瑠衣(るい)を見て、話を切り上げたようだった。


「それでは私はお暇しますね。あなたのスマホに私の連絡先を登録しておきました。何かあればそちらへかけてください。それでは」

ぽかんとした顔で瑠衣(るい)は玄関へ向かって歩いていく御影(みかげ)を見送った。

情報が多すぎて頭が追い付いていかない。


(私はこれからどうしたらいいの…?)



つづく

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