第1話 バイト帰りに目の前が閃光(スパーク)した
「お先に失礼しまーす」
アルバイト先である近所のスーパーでの仕事を終えて、高校二年生の私、佐久間瑠衣は今から帰宅する。
今日は看護師のお母さんが夜勤の日なので、夕飯はスーパーのお惣菜コーナーで買った焼そばとツナマヨのおにぎりを食べる予定である。
社員割引が利くのでちょっぴりお得に買えるのだ。
(今日もバイト疲れたな~。帰ったらお弁当食べてすぐ寝よう…)
とか考えながら夜道を歩く。時刻は9時過ぎ。
住宅街に入ると夜道は薄暗い街灯のみで真っ暗。
でもあと5分も歩けば自宅のマンションに着く。
スマートフォンの画面を見ながらボチボチ歩く。友達からLINEきてるかな。
その時、ふと声が聞こえた。
『助けて…誰か、助けて…』
「え?」
思わず後ろを振り返る。しかし、誰もおらず、閑静な住宅街のため、しんと静かだ。風で揺れる木の葉の音だけがカサカサと鳴っていた。
(気のせい…?にしてはしっかり聞こえたような)
そんなことを考えていると、背中がぞくりとしたので、瑠衣は早足で家に帰ることにした。
『だれか、だれか。助けて…』
やはり声が聞こえる。瑠衣はごくりと唾を飲んだ。
(まさか、どこかで痴漢とか…!?どうしよう、私に何か出来ることがあるだろうか)
肩にかけていたトートバッグの中をまさぐると、出てきたのはスーパーの制服のエプロンと財布のみ。あとは手に持つスマートフォンくらいか。
(通報くらいなら出来るかも!?あとは…)
トートバッグにストラップとしてついていた防犯ブザーがあった。
母さんがアルバイトの帰り道を心配して持たせてくれたものだ。
(よし、じゃあこれを引っ張って…)
『…みつけた』
すぐ後ろで声がした気がした。驚いて振り向くと目の前がまばゆいくらいの白い光に包まれた。
私は閃光した。
つづく