人類の敵はやっぱり人類!?21
「顕現っ!!アルヴァジオンッ!!」
外殻を砕き割り、産声を上げるのは金の乱流を纏った黄金の龍。突如として現れた巨龍の姿に、鋼の騎士を包囲していたジッジル部隊が浮き足立つ。超巨大兵器も驚きを隠せない感じであった。
<来ましたのねっ!!正宗さんっ!!正直ナイスタイミングでしたわっ!!>
ジッジル4を5機ほど下したフラウニーナであるが、流石の彼女もその物量には敵わない。加えて最後の敵巨大兵器からの攻撃に、大きくダメージを受けたことで大きく聖力量も減少させているようだ。
「今の内ですー、フラウニーナはガーちゃんとのリンクをすすめてくださーいっ!!」
<そうさせてもらいますわっ!!>
フラウニーナとナイトオブユメミール、そこにガープの力をリンクさせれば彼女は特級の騎士となる。無論、悠長にその間を待ってくれる敵はいない。戦斧を突き出し、その先端から法撃にて牽制するジッジルの機体。同時に、回り込むように左右から別のジッジル部隊がアルヴァジオン達目掛け襲い掛かってくる。しかし──、
「よくも散々やってくれたなああっ!!一方的にボコスカやられる気持ちを思い知れええっ!!」
興奮し、怒気を露わに吠える正宗。
(どうしましょーか……)
流石にエルマは一瞬黙考した。アドレナリンが出て少々興奮状態の正宗、敵勢力を叩くならまさに最高の状態である。しかし今回の敵は完全な怪物である夢生獣とは違うのだ。獣の要素を残す獣人と言うが、要は異世界での人……人間である。いかな倒した所で相手方は無事という話だとは言え、ヘタをすればそれは正宗の心に大きな傷を残すかもしれない。それを黙してこのまま闘いを優位の進めるか……、迷う間もなくエルマは正宗を諫める事にした。
「マー君、落ち着いてくださーい。相手は獣人、即ち“人”ですよー。わたしとしてはマー君にトラウマが出来る方が心配ですー。適度で良いので無力化するだけで良いですよー」
正宗の事を考えず彼を犠牲にして使い潰す気などエルマ達には毛頭無かった。だが、
「知るかっ!!殴ってきたなら殺し返すっ!!痛みを知らなきゃ相手は下がらないっ!!つけ上がらせるから抑止にならないっ!!だからこそ、潰す時は潰すと決めたっ!!やらなきゃやられ放題なんだからなっ!!」
完全にブチ切れ状態で手も付けられない。夢生獣達との闘い含め、今まで溜めてきたストレスがマズイ方向に放たれつつあった。
「お前等ぁあああっ!!」
「マー君落ち着いてぇええー」
正宗の咆吼にヒビリ散らし五機のジッジルが半狂乱の如く法撃を放つ。その直撃ももろともせず、爆炎の中を突き抜けるように現れた金龍。戦斧を持って応戦したジッジル一体が、その前蹴り一発で木っ端微塵に砕け散った。砕け散る僚機を呆然と見つめるもう一機を片腕で掴み上げ、ボールを投げるような勢いで他の機体目掛け投げ飛ばす金龍。投擲されたジッジルの機体は空中で四肢を断裂させながら他の機体に直撃し、それを受け止めた機体と共に衝撃に耐えられず破片と液体金属を撒きながら粉と化して沈む。瞬く間に三機を失った残りのジッジル二機の足が止まる。あまりの出力差に一瞬躊躇したのだ。その瞬間、龍が飛び込み身体を捻るように一回転すれば、金の尾が轟音を響かせつつ一閃された。立ち尽くした二機は上下に剪断しされ、衝撃波が追いついたかのように間を置いて粉々に砕け散る。何をすることもなくジッジル一部隊が、金剛マナ夢想兵装一部隊が消え失せる──その事実に獣人達が恐怖しないわけがない。
「このまま残りも、すり潰すっ!!」
「りょ、了解ですーっ!!ではー、さっさと終わらせちゃいましょー!!」
正宗のブチ切れ具合にヤバイものを感じ取ったエルマは潔くサポートに徹することにした。
「今ので敵方は半狂乱になってますねー、こちらに全機の意識が集中しまくってますー。おっとー、マー君一斉法火が来ますよーっ!!」
怪物級の龍の出現、それから目を反らせる者達などいない。その存在に、その破壊力に、注意を払わずには居られない。怒れる龍から目を反らせば次の餌食は自分かも知れない……ジッジル含む敵の眼はアルヴァジオンにだけ向けられている、今にも火を噴きそうな方陣と武器を構えて。
「そんなもん、効くかああああっ!!」
「了ー解ですー。防御障壁展開、聖力流入量増加、励起発動ーっ!!」
一瞬身を低くし、突貫する金龍。迎撃すべくジッジルの戦斧から一斉に法撃達が放たれた。それ等はアルヴァジオンに直撃するまでもなく、不可視の壁に粉砕され光の粒子と化して消し飛んでいく。突破するアルヴァジオンだが、ひと味違う爆発にその足を止められる。猛烈な雷撃と速射される爆裂弾の如き衝撃。しかしそれでも龍の障壁すら砕けない、ジッジル部隊が超巨大兵器のもとまで下がり体勢を立て直す。
「おっとーっ!!中にはなかな強力なのもありますねー。マー君、後方のあのデカブツには少し注意を払って下さいー」
「聞こえたなフラウニーナッ!!アレに注意しつつ、このまま押し返して隙を作るっ!!」
<了解しましたわっ!!>
正宗は障壁を前面へと展開させ、そのままアルヴァジオンを再度突貫させた。障壁ごと金龍が突き進む。それは正しく動く壁、ブルドーザーというかラッセル車の突撃に近い。受けた法撃の爆炎を壁ごと押し返し迫ってくるのだ。たまらずジッジル部隊は戸惑い、そのまま乱射する者、迷った挙げ句回避に移る者と二択の選択肢を取る。しかし一歩遅くジッジルの大半が障壁の直撃に晒され宙を舞った。腕が砕かれ、足がもげ、障壁の直撃を受け圧壊させられるジッジル達。金龍の突撃に全滅しかけたジッジル部隊を救ったのは、超巨大兵器の張った障壁であった。
「ぐっ……」
「かなりの聖力量ですよーっ!!あなどれませんーっ!!」
障壁同士の激突にたまらずジッジル部隊も吹き飛ばされる。しかし、吹き飛び転がされたジッジルの機体はアルヴァジオンの背後から現れた白銀の騎士の横撃を受ける事となった。倒れる機体、起き上がる機体、修繕に専念する機体、全て隙だらけっ!!フラウニーナのナイトオブユメミールに体制を整える間もなく屠られていく。
「大勢は決まりましたねー。残りのジッジルは四機、そしてあのデカブツですー」
<ジッジルの方はわたくしが受け持ちますわ。正宗さんはあのデカブツをいわして下さいな。多分アレ、
今回の事件の首謀者達ですの>
「了解したっ!!」
槍を構え飛び出していく銀色の騎士の機体を背に、正宗は正面のデカブツと改めて対峙する。船の両舷についた無骨な腕、船底から生えた両足などが一際ゲテモノ感を醸し出している。船首には潜水艦の魚雷菅のような蓋が付いており、甲板には砲台のような法火器が見て取れた。
「ああは言っていたけど勝算はあるんだろうな??」
「フラウニーナのことですかー??ガーちゃんとリンクしたのでしたらジッジルの四機程度問題はありませんよー」
「こっちの方は??」
「これはこれで見る所はありますねー。ベースはドーベルのガーム級戦闘型世界間潜界航行艦のようですがー……」
「世界間旋回……??」
「潜水艦の潜るに世界の界で潜界ですー。要するに世界間を繋ぐ別世界、わたし達は世界間航路と呼んでいますがー、その航路へと潜ることを意味しますー。つまりそこに潜れその中で戦闘できる艦、とどのつまり異世界潜水艦みたいなものですねー」
デカブツを見ている正宗の視界にそのデータが表示される。しかしそれを見た所でそれがどんな物なのか、どれだけの物なのか判らないから意味がない。表示を消すように念じれば直ぐさま視界はクリアになった。
「戦艦なんて相手にして……大丈夫なのか!?」
「多分問題ありませんよー。あの程度なんて、夢生獣達に比べれば屁でもありませんー。マー君はそんな夢生獣にすら勝っているんですから大船に乗ったつもりでー……いや、今回は怪獣映画ですねー。怪獣映画の怪獣役になったつもりでぶっ潰してやって下さいー」
流石は元戦艦というべきか、その異形はアルヴァジオンよりも巨大である。まぁ戦艦に手足が生えているのだから巨大さ加減は判らなくもない。
(しかし、怪獣映画の怪獣役と言ってもな……)
どうにも、今の構図は巨大怪獣大激突といった感じでどっちも怪獣に見えるではないか??と思ってしまうのだ。先のジッジル戦は確かに怪獣映画っぽくはあった。40メートルはある龍のバケモノが、20メートルクラスで群がるジッジル部隊を足蹴にするのである。怪獣対自衛隊のように相手を粉砕する様は怪獣っぽくはあったろう。しかし、今度の相手は向こうの方がデカイのだ。
「いずれにせよっ!!やってみるしかねぇっ!!」
意を決して突撃すれば、案の定というべきか相手の法術火器が火を噴いた。衝突する爆発と雷撃。衝撃はそれなりにあるが正宗とアルヴァジオンの勢いを止められるほどではない。強引に突破し掴みかかれば、相手も然る者、その手を取ってアルヴァジオンを引き倒そうと絡み手を繰り出してくる。
「なん、のっ!!」
足首までメリ込むほどに地面を踏みしめ、強靱な足腰にモノをいわせ耐えてみせる。そのまま逆に絡んだ相手の腕ごとアルヴァジオンの腕を引き抜いてやった。何かが断裂する振動と引き裂かれる破砕音が伝播する中、デカブツの腕が龍の力に耐えられず見事に千切れ跳ぶ。フラフラと足下をふらつかせながら後退し、横転しそうになりつつもズルリと新たな腕を生やし再生してみせるデカブツ。そのまま体制を立て直し近距離からの主砲と艦首雷撃をぶっ放してきた。法撃の雨がアルヴァジオンへと降り注ぐ。
「うっざいっ!!」
その直撃を受けながら、かまわず踏み込み近接して振り下ろす拳。デカブツの主砲群を甲板もろとも粉砕し、返す刀の拳で横から艦首を思いっきり殴りつけた。拉げ、砕かれもげるデカブツの艦首と雷撃発射口。艦前方を大きく損傷させバランスを崩し後退するデカブツであるが、その破損部位を驚くべき速度でモリモリと修復させ、再び姿勢を保ち体勢を立て直し立ち向かってくる。
「な……なんだコイツのこの回復力!?」
「ってーっ!!ええええっ!!なんですかこの聖力数値はーっ!!」
大声を上げたのはエルマ。近接攻撃して敵と接触した事によりより詳細な敵機の情報を得たのである。
「なんて事してくれてんるんですかー、この馬鹿共はああー!!」
脆くヨタヨタしている癖に、その回復力だけは異常なのだ。意識を内へと向ければ紋章板の前で頭を抱えているエルマがいる。その様子は尋常ではない。
「どうした??なんか問題があるのかっ!!」
「スキャンの結果ー、この回復力の源が判明したんですーっ!!この回復力は圧倒的な聖力によるものですー。先の障壁の出力といいー、恐らくこの馬鹿共は世界樹の種をエネルギー源としているようなのですよー」
「世界樹の種??」
そういわれてもピンとこない正宗。
(世界樹のってアレだよな??ゲームとかで出てくるデカイ木……)
正宗の知識では妖精やエルフが信仰したり護っていたりする巨大な樹木である。その葉や実などはある時は進化用の素材であったり、ある時は死者を生き返させる為のアイテムとかである。それがそこまでの力を発揮する物だとは正宗にはどうにも想像できなかったのだ。
「しかしこれはー、これはナンセンスですーっ!!世界樹の種をこんな形で使うなどー……暴走しだしたらどうするつもりなんですかーっ!!」
「だからっ!!何なんだよ世界樹の種って!!」
その間もアルヴァジオンの攻撃に壊し直されを余儀なくされるデカブツ。
「世界樹の種というのはー、その名の通り世界を作る樹の種の事ですーっ!!その種の成長方法は単純明快ー!!根を張った世界を養分にして成長するのですよー。例えばこの地で芽吹けば地球に根津いてその成長をつづけー、やがて他の星や宇宙までも食い尽くして新たな世界樹の世界を造り上げるんですー。そんな神木の種なんですよーっ!!」
「そんなのの種だからこんな馬鹿げた回復力を生めると??」
「こんなのは序の口の筈ですー、ですけどそれは超危険行為なんですよー!!火の粉の飛び交う中ー、ダイナマイトを抱えて走り回っているようなものですよー」
いつ導火線に火がついてもおかしくない状況であった。
「火が付いたらどうなるっ!?」
「火が付いたならー、種の発芽が始まったのならーこの世界は死にますー」
(はい、また死んだー)
最近死とか世界滅亡とか身近になりすぎて感覚が狂ってきている正宗。今回も挨拶程度に世界の死がやってきたのでもうそういう事は意識の外へと追いやるようにしてしまう。その間にやっとこさ姿勢を戻せたデカブツは一息ついているようであった。
「育って世界形勢を始めたらどうなるかはわかりませんー。この世界を養分に聖力に溢れる世界を造るかもしれないですしー、ただ世界樹が成長する一本の樹木だけの世界になるのかもしれませんー。その辺は種がどう育つのかは予測もできないのですがー、結局の所“この世界が養分となって死ぬ”のは確定してしまうんですー」
「ふっざけんなっ!!そんなのは回収っ!!世界樹の種は回収だっ!!」
世界樹の種が発芽して、成長する世界樹に地球も宇宙も世界も総て飲み込まれる……そんな事になってはたまらないっ!!一気に決着をつけるべく、強引にデカブツとの間合いを詰めるアルヴァジオン。
(そんなことになる前に中から引きずり出し、取り除いてやるっ!!)
パワーにものを言わせ、脆い装甲ごとぶち抜いてデカブツ内部からの回収を考える正宗。
「エルマっ!!世界樹の種の位置はっ!!」
「ここですーっ!!」
正宗だけに見えるマーカーがデカブツの内部に付く。そこ目掛け邪魔するデカブツの腕を粉砕し、ガードも出来なくなった脇腹(?)から右手を突っ込んだ。火花上げ、耳障りな金属音を響かせながらその内臓を取り出すべく龍の爪が突き進む。
「あ゛??」
しかし、突如として突っ込んでいた腕が動かなくなったことに疑問を覚える正宗。自らの──アルヴァジオンの右腕を直視すれば、腕の侵攻を阻むべく何かが蒔きつき締め上げ始めていた。龍の腕に巻き付いてきたのは機械ではない、植物による触手であったのだ。




