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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
人類の敵はやっぱり人類!?
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人類の敵はやっぱり人類!?20

  戦況は優勢であるといえた。立案した作戦通りに敵は動き、今のところ封じ込めに成功している。


「よいぞよいぞっ!!そのまま押し込むのじゃっ!!」


 サイワルサーは展開している獣人達へ最後の檄を飛ばすと、甲板まで現出している巨大な影へと駆け上る。一度煙の上る山を見る、そして艦内へと入れば自動的にハッチは閉まっていった。暗い艦内を進む彼女の前の扉が次々に開いていく。辿り着いた先に待っているのは既に準備万端であろう二人の従者。


「スケールッ!!カクシンッ!!準備はどうであるかっ!!」

「お嬢っ!!世界間潜界航行艦の改造、バッチリ完了しておりますぜっ!!」


 振り返ったカクシンがサムズアップしながら応答する。同時に各計器に灯が灯り、艦の心臓が唸るように鼓動し稼動し始めた。それを見ながらサイワルサーが椅子へと腰掛ける。


「お帰りなさいませサイワルサー様。只今“世界樹の種”の接続を完了いたしました」


 スケールは頷くと滑るように自身の席へと戻り、通信術式を操作してサイワルサーの方へと視線を向ける。


「よかろうっ!!最終チェック、ドーベル傭兵隊長へと繋げよっ!!」


 サイワルサーの号令を受けカクシンとスケールは即座に行動へ移った。直ぐさま、スケールが視線を返して来る。サイワルサーはそれを受け、静かに声を上げる。


「隊長殿、聞こえておるかの??」

<おお、サイワルサー殿、感度良好ですぞ>


 応答した隊長の声が制御室へと木霊する。


「これより“潜界航行艦改良型鉄巨人トッカンゴー”を起動する。お主達も残る全戦力を投入せよっ!!」

<了解した。では私も出させていただく。御武運を>


 モニターへと視線を向ければ、残りの15個のコクーン達が励起を開始しているのが見て取れた。金導夢兵装25機と術鉄巨人10機、そしてこのトッカンゴーがサイワルサー達の切り札、全戦力である。特にトッカンゴーは意欲作であり、絶界域に突入し破損し航行不能となったクロノが保有していた世界間潜界航行艦を改修改造したものであった。貴族が保有していたとはいえ攻撃兵装は旧式、それをサイワルサー達が保有する秘宝秘術、そして獣人達が回収してきた最新資材を使い違法改造することで桁違いの性能を発揮することに成功しのだ。ただ、防御障壁関係に関して言えば一見すべき価値はあった。そこは歴史ある貴族であったタカイオ家の保有していた世界間潜界航行艦だけあって、その防御力でサイワルサー達に続いて航路を突破できたのだ。改修した攻撃兵装に流用した防御兵装、そこに革新的な動力機関を搭載する事で稼働させようとしているのである。そのエネルギー源として採用したのは“世界樹の種”。世界樹の種のとんでもない聖力生成力にて艦全体の出力を確保し、多くの秘宝や秘術の同時併用を実現させたのだ。最早そんじょそこらの金導夢兵装では太刀打ちも出来ない領域に足を突っ込んだその性能こそ、サイワルサー達の保有する“鉄巨人術式”の優秀さでもあるといえた。鉄巨人術式はただの劣化金導夢兵装を造るだけのものではなく、術鉄巨人やトッカンゴーにいたるまで本来金導夢兵装となり得ない物を柔軟に取り込む事のできる、それこそ次世代の主力術式兵装であるといえるものであったのだ。ただ、開発した本人達はそんなつもりは毛頭無いのは別として。


<四番機、大破しましたっ!!>


 通信獣士からの伝達通信を受けサイワルサーはメインモニターへと視線を移す。そこには砕けるジッジルと、刺し貫いたナイトオブユメミールの姿が映し出されていた。


「搭乗者の方はどうじゃ!?無事かっ!!」

<問題ありません。呪具は砕けましたが使用者は無事のようです>

(……流石にぶっつけ本番だったから、の。想定通り動いてくれて何よりじゃ)


 その報告に満足する。呪具とて万能ではないが、今は十分仕様通りの性能を発揮している。


「さて、ついに彼奴等も金導夢兵装体を出してきおった!!ここからじゃぞっ!!」


 サイワルサーは声を張りつつ画面に映るその騎士の姿を凝視する。大界ユメミールが誇る正式採用金剛聖導夢想兵装ナイトオブユメミール。騎士を思わせるシルエット宛らその強固な装甲、攻撃力、機動力はどれをとっても流石と言っていいほどの一級品である。飛び抜けた性能があるわけではないが、オールマイティーに全ての能力が高水準であるということはただただ脅威であると言えていた。それを駆るのは圧倒的戦闘能力を誇るユメミールの聖士達なのだ。その中でも、因夢空間で活動できる者ともなれば本当に一握りのエリート中のエリート、夢聖士達だけである。その強力無比な力を、サイワルサー達は身をもって知っている。ユメミールの王城へと侵入したあの時を、かの大界の女王に嬲られ刻まれたあの恐怖がサイワルサー達へと甦る。


「乗り越えていくのじゃ!!如何に夢聖士といえど人間じゃっ!!圧倒的物量で押し潰せば勝機はあるっ!!」


 その為の作戦であった。先手を打ち、夢聖士達の動きを限定する為に法火を集中させる。しかしそんな事をすれば目的となる施設が破壊される恐れがある。夢聖士達を足止めするほどの火力と、施設破壊を免れる方法……それは、夢聖士達に世界の見る夢の中、即ち因果律改変夢幻空間術式を展開させる事であった。そうして夢聖士達に後手を踏ませ、その間に物量で押し切るのである。破壊した跡は、世界覚醒の際に元に戻せばいいという寸法だ。


「了解ですサイワルサー様。第二陣の金剛マナ夢想兵装部隊の指揮は隊長殿に一任する」

<心得た>


 サイワルサーの言葉をスケールが伝達すれば、隊長から短い返信が返ってくる。彼の駆るジッジルのハンドサインを受け、即座に行動に出るジッジル部隊。その間に駆動音を高めていくトッカンゴー。


「最終チェック完了、お嬢っ!!機動させやすぜいっ!!」

「よしっ!!トッカンゴーッ!!発進じゃっ!!」


 サイワルサーの声を受け巨大な影が立ち上がる。七色の境界から身を乗り出して、巨大すぎる身体をこの世界へと踏み出していく。金導夢兵装を遙かに凌駕するその巨体が進み出そうとした、その瞬間っ!!声を上げる間もなく法撃展開していた術鉄巨人部隊が壊滅した。


「高密度聖力反応値を感知──はぁ!?じゅ、術鉄巨人部隊壊滅」

「──!?」


 スケールの焦ったかのような報告に息を飲むサイワルサー。カクシンも何事かとトッカンゴーを急停止させた。高密度聖力反応値を感知した時には壊滅してしまっていた術鉄巨人部隊の状況に、誰しも驚きを隠せていない。それもその筈、トッカンゴーのセンサー群がそれ感知した時には法撃が着弾していたのだ。劣化しているとはいえ金導夢兵装クラスの術鉄巨人の装甲を、感知される間もなく一瞬で吹き飛ばすその威力。流石のトッカンゴーも直撃を食らえばどうなるかわからない。


(この距離、威力でこの速度と精度っ!!あの女王クラスのバケモノでもおるのかっ!?)


 咄嗟にその術者をカメラで追えば、スクリーンに映し出されるのは中空で姿勢を直す一人の夢聖士の姿。


(ユメミールの聖士序列一位、“脳筋魔女”のアイシス=ニール=ダイキスかっ!!噂には聞いておったがここまでとは、の。まったく何という才覚ぞっ!!)


 その杖の先が、別働隊として動くジッジル部隊へと向けられる。


「二発目を撃たせるでないぞっ!!艦を目標へ向けよっ!!主砲術式展開、目標はあの夢聖士じゃっ!!」

「あいさーっ!!」


 立ち上がり鉄扇を振るったサイワルサーに応じ、カクシンがスロットルを開ける。Uボート潜水艦に手足が付いたような独自なフォルム。スーパーサトウの敷地を粉砕し、地上へと這い出たその巨体が蠢き出す。中国の奥地でスケールとカクシンによって鉄巨人術式を組み込まれ、潜界航行艦の能力を用いて亜空間を通って持ってきた目玉兵器だ。今出さずにいつ出すというのか、決戦の時は今なのだっ!!


「了解ですっ!!主砲術式展開します」


 その甲板に鎮座した主砲が旋回し砲身のように付いた長い板を対象に向け固定させる。


「目標入力、聖力伝達、装填完了、撃てますっ!!」


 スケールの操作を受け照準が定まれば、途端にしてその砲身がわりの長い板の周りを術式陣が囲み上げていく。それは奇しくもラブリーアイシスの造り上げたマジカルバレルに酷似していた。そこに流されるのは“世界樹の種”から創り出される莫大量の聖力という名の炸薬である。準備は完了、後はトリガーを引くだけだ。


「よし、発し──」


 しかし、サイワルサーが法撃開始を命じようとしたその瞬間、轟音と共に大地が揺れとんでもない量の土煙を上げた。爆煙のように広がった土煙はトッカンゴーの視界すら覆い尽くしていく。


「こ、今度は一体なんじゃ??何ごとじゃっ!!」

「どうやら山崩れみたいですぜっ!!」


 カクシンの声に視線をやれば、確かに山が崩れ地肌が露出していた。だが、その間に夢聖士の少女の姿はかき消えてしまっている。


「ヤツはっ??何処へ行った??」

「目標、見失いましたっ!!いや……これは……別の所からの、召喚術式によってそちらへ呼び出された為かと推測できますっ!!」

「別の場所……って、人体召喚術式じゃと!?そんな術式……術式……まぁ、無いわけでもない、の」

「アッシ等も似たような物いっぱいもってやすからねぇ」


 スケールの報告に驚いて見せたサイワルサーであるが、カクシンの言う通り自分達も似たような効力を持つ界宝を保有していた。ただ、界宝であったことからも判るとおりオーパーツに近い物であり決して簡単に模倣できる術式では有り得ない物であるのだ。


(しかしアチラにはあの“糸目魔女”がおるからのっ。あの者であるならあるいは)


 昨日の接触により相手の聖士達の顔は割れている。その中に術式における天才がいたことをサイワルサーは確認している。そう、サイワルサーはエルマイールの技術と知識があればあるいは再現の可能な術式構築が出来るのではないかと予想したのである。


「まぁ今はよいわっ!!索敵怠るでないぞ!!今の者に横から奇襲されては話にならぬからの、主砲そのまま、雷撃戦用意発射管ひらけっ!!目標、右舷の金導夢兵装っ!!」

「了解、雷撃術式発射管全門開放っ!!照準右舷敵金導夢兵装、発射っ!!」


 艦首に搭載された発射管8門から飛び出す高速飛翔体。地形変動に混乱する最中、ジッジル数機と近接戦を繰り広げていたナイトオブユメミールへと一瞬で到達し術式が炸裂、指向性電撃の華が咲く。貪り付くようにナイトオブユメミールへと襲い掛かれば、盾と左腕を犠牲にしつつ火花を上げ後退するナイトオブユメミールの姿。これが通常の潜界航行艦のこうげきならいざ知らず、世界樹の種を動力源としたトッカンゴーの攻撃にはさしものユメミールの金導夢兵装とて被害を免れないでいた。


「良いぞっ!!続いてゆく、目標そのまま次弾装填、主砲発射後追撃として──」

「お嬢っ!!」

「今度は何じゃっ!!」


 カクシンの上げた怒声にサイワルサーとスケールが視線を向ける。カクシンはハンドルから手を放すと無言でモニターを指し示した。


「なん??金の……卵じやと??」


 サイワルサーが目を見張る。そこには露出した地肌の上を転がる巨大な金の卵の姿があった。

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