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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
人類の敵はやっぱり人類!?
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人類の敵はやっぱり人類!?14

 やはりというべきか、本来起きてはいけない事態が発生したのだ。というか、よく今まで起きなかったと言った方がいいのか、今後の付き合い方を考えるべきである事案であった。


(昨日に至ってはついにというか、本当に一度死んでた……らしいし)


 自室のベッドの中で腹をさする。まだ鈍痛のようなものが残っているようで、それでいながら健康体のようでとどうも感触がおかしい気がする。一瞬、自分の腹が破裂したかのような衝撃の記憶が甦ってきて背筋が凍った。寝返りを打ちつつその感触をぬぐい去ると、負の流れからバリバリに割られた窓ガラスと砕けた壁面、壊れた家財という現実が思い出されてきた。


(ガラス代だけでどれだけかかるんだろう……)


 獣人達と聖士達の戦闘による家屋へのダメージは計り知れない、被害額や普段の生活に戻れるまでの時間を考えるだけで身震いが来る。いかんいかんと思考を変えるために深呼吸を繰り返す。兎にも角にも今必要なのはそれ等への対処であった。


(窓は……業者に頼んだところで一日で終るのか??というかその前にまず何とかしとかないと、現在進行形で雨が入ってくる現状じゃあダメだよな??ダンボールをもらってきてガムテープで固定??いや、それよりベニヤ板……いや、ブルーシートのほうが安上がりか??いやいや、その前にまず掃除だ掃除っ!!あんな大量のガラス……次のうめるゴミの日っていつだっけか)


 心配事で目が覚めるとか最悪の目覚めである。残念ながらそのまま布団に入っていても考え事が色々と浮かび上がってきてしまうだけだ。仕方が無いと嘆息すれば、ベッドから起き上がり着替えを始める。


「……目覚ましが鳴る前に目が冴えちまったな」


 ブツブツ文句を言う間にも問題事が脳裏に浮かんでくる。とりえず顔を洗って腹に物を入れ、それから居候共と話を詰めようと考えた。


「……ていうか、一体なんなんだよ??」


 慣れない早起きをしたのも、ソレの影響があるのだろうか??どうにも外が騒がしい気がするのだ。引っ切り無しにヘリの音が聞こえてきている気がするし、遠くからサイレンの音が鳴っている気がする。尋常ではない雰囲気の外の雰囲気に首をひねりつつも洗面台に向かい、そして居間へと顔を出した。


「おはようさん」

「おはようございます、調子はどうです正宗??」

「マー君おはようございますー」

「朝食、もうすぐ出来上がりますわ」


 正宗が入れば珍しく皆顔を揃えていた。フラウニが調理し、エルマが食器類をならべ、寝不足顔のアイシスは座っているだけである。


「皆早いな」

「フラちゃんは朝食の準備してますからーたいてーいつもこんなですけどー、アイちゃんがこんな時間に起きてくるのはわたしもびっくりですー」

「ん、どうもヘリコプターの音が少々気になって……」

「やれやれ、必要な時にしっかり寝れないとか、アイシスも聖士としてまだまだ未熟ポね」


 アイシスがガラス戸の向こうを気にしていると、ポッコルが生あくびを噛み殺しながらやって来た。


「獣や魔獣の声なんかは大丈夫なんですっ!!その、聞きなれない機械の音に敏感になっているだけなんですっ!!」


 聞き慣れないも糞も、既に半年近く日本で過ごしているのにその言い訳はどうかしていると一同が視線を向ける。


「エルマさんこそ徹夜の時を除き研究で寝坊してくるのがあたりまえなのですから、あまり人の事は言えませんわね。それより皆さん配膳手伝ってくださいな」


 フラウニに言われ各人黙々と配膳を手伝った。出来立ての朝食は御飯に味噌汁、漬物に目玉焼きとシンプルだ。いただきますをすれば慣れた手つきで箸を操り朝食を進めていく一同。ユメミール人であるアイシス達であるが、箸の扱いも、味噌や醤油に出汁の味付けも、最早慣れたもののようであった。


「それでそっちの客室棟の方なんだけど、学校行っている間に掃除とか頼めるか??」

「ガラスが全壊ですものね、防犯的にも何とかしたいところですけど……エルマさんどうにかできまして??」

「んー、流石にちょっと難しいですねー。幻術を張ってー、空き巣などの不届き者や鳥さん達の侵入などは防げるでしょうけどもー、昨日の様に雨や風はどうしようもありませんー。最終的には業者さんに頼みませんと根本的な解決にはなりませんよー」

「それはわかってるけど、あのガラス全部張りかえるってなると金が……」


 正宗の一言に皆溜息を付く。砕けたドアや割れた床などは放置するとしても、風雨の為にガラスだけは何とかしたかった。


「それだけじゃないポよ??一番の問題は夢生獣達にこの場所を知られた危険性があるポ」


 建物内で聖士と獣士がぶつかり合ったのだ。当然にして戦闘出力の理力波動を夢生獣達は感知した筈である。夢生獣が封鎖している絶界域で高出力の理力反応を出せるとなれば、現状アイシス達以外には考えられない筈なのだ。


「そうだよなー。俺もなんか殺されちゃったりしたらしいし、今回みたいに家に乗り込まれて壊されたりしたらたまったもんじゃないよなー。……やっぱりアイシス達には出て行ってもらって──」

「まだ可能性の話ですっ!!可能性のっ!!話なんですっ!!本当に夢生獣側に知られたかは確証が取れたわけじゃありません。……というかこれから寒くなるのですよね!?後生ですよ正宗ぇぇぇお願いですから私達を追い出さないで下さいぃぃぃ。ここまで一緒に戦ってきた仲じゃないですかーっ!!」

「おーねーがーいーしーまーすーよーマー君ーっ!!」


 箸を放り出してアイシスとエルマが正宗に縋りつく。しかし正宗の表情は渋い、なんと言っても一回は死んだのだ。謎のエリクサーらしき劇薬を飲まされ回復し生き返ったという話であるが、そんな怪しい物をホイホイと使わないで貰いたいところが本音であった。


(いや、使われなかったらそのままあの世行きだったんだろうけど……つーか俺本当に人間のままなのか??ゾンビとかになってねーだろうなぁ??)


 異世界の薬品を使ったりして副作用とか大丈夫なのだろうか??それも人の命を生き返らせるほどの効能だ、何も問題ない……と確実にいえるのであろうか??正宗の腹の周りがキリキリ痛み始める。


「しかしだな、宿を提供するにしても……その相手が無能とあっては……なぁ……」


 その彼の物言いに反発するように怒気を高めるアイシス。


「私は自分で言うのもなんですが優秀な──」

「そんな優秀なアイシスさんは折角とっ捕まえた諸悪の根源を……どーした??」


 続く正宗の言葉にビキリと固まるアイシス。正宗はそれを見据えると、今度は横に座る別の者へと視線をズラした。その先では首を限界まで捻り明後日の方を向いたエルマが口笛を吹いている。


「拘束術式がどーのとか、下手な抵抗をすれば切り伏せるとか言ってたけど、スルリと抜けられ逃げられちまったのは……どーしてなんだろうなぁ」

「あれはー、なんといいますかー流石はユメミールの警戒網を突破してきた大界盗といいますかー、こちらとしてもなんで抜けられたのかワケわからない程レアなアイテム使われた為と言いますかー……決して拘束していたわたしの術式が悪いわけではなくアイテムを出すのを見逃したアイちゃんがわるいといいますかー……」


 何やらボソボソ呟きながらエルマがダラダラと脂汗を流している。


「わ、わたくしはどうですの??」

「家事全般をこなしてくれるフラウニには頭が上がらない。是非とも今後とも部屋を使ってもらいたいところです」


 その正宗の言葉を聴いていやらしい笑みを浮かべ、臍を噛む二人を見下す視線を飛ばすフラウニ。


「こうなったら最後の手段ですー。何とかこれでー」


 エルマが買収工作に出る。差し出された布きれを正宗が無情にはたき落とせば、一瞬のうちに顔を赤くしながら回収に走るアイシス。


「ポッコ──」

「いらない」

「ポッコルは──」

「いらないっ!!食ってテレビ見るだけのぬいぐるみなんてなんの価値がある!?」


 取り付く島もない言葉のナイフにポッコルは顔を青くし、作り笑いを浮かべながらリモコンを操作する。


「な、なんか嫌な空気が流れているポね~、とりあえずテレビでもつけるポ~」


 そうしてリモコンをいじり電源を入れチャンネルを切り替えザッピングをすれば、どこもかしこも緊急ニュースで持ちきりのようであった。その異様さに正宗達もニュースの内容に釘付けとなる。画面内には目を引くテロップの中、空撮された映像が映し出されていた。


<えー……先程から申し上げているように犯人グループは昨夜より施設を占拠しており、現在周辺一体は緊張状態となっているもようです。施設周囲一帯を警察官が厳重に包囲し、現場では緊迫した空気が流れている模様です。また、警察関係者によりますと犯人グループ鎮圧の為に機動隊の突入を検討しているという情報も入ってきております──これに関してはどうですか、コメンテーターの杉浦さん>

<相手はコスプレ武装集団で100人規模なんでしょう??機動隊でどうにかなるんですかね??県を通して自衛隊の出動を要請した方がいいんじゃないですか??>


 ワイプの中でMCとコメンテーターが言葉を交わす。画面に映し出されているのは空撮される多くの警察車両に囲まれたスーパーマーケットであった。


「あ、あれ??これスーパーサトウ……じゃ、ないですか??」


 アイシスの搾り出すような震えた声がする。確かに良く似た地形が近所にあることを知っている。更に言えば、彼女の言うように周囲の景色や建物、なにより店にかかっている看板から見てもTVに映っているのはアイシスがレジとして勤めに行っているスーパーサトウに間違いは無さそうであった。その事実に背筋が凍りつく。


「……えっ!!じゃあ今ヘリがガンガン飛んでるのはこのせいなのかっ!!」


 100人規模の武装集団が施設を占拠したとなれば確かに全国ニュースだ。いや待て、先程コメンテーターはなんと言っていた!?コスプ……、


「動きがあったポッ!!あっ!!」


 施設から顔を出した一団をヘリからのカメラの望遠ズームが明瞭に映し出していた。人の頭部に獣のような耳をピクピクさせた日本人離れした顔面偏差値の人物達、途端にして警察車両の一部が火を噴き、窓の向こうからドーンといった音が聞こえ……そして遅れて画面の中でその車両が爆発する。警官達が飛び散る破片から頭を護りながら散り、それを遠巻きに見ていた野次馬達に避難を促している。


<えー只今犯人グループにより警察車両が爆破、警察車両が爆破されましたっ!!>


 画面の中でMCが声を荒げている。最早機動隊や特殊部隊の突入は確実、最悪は自衛隊への出動命令がと話が進んでいっているのだがTV画面のこちら側はそれど頃ではなかった。あの特徴的な獣耳、コンバットスーツに身を包む集団、そして警察車両を爆破した謎の攻撃。


「爆破術式ー……っていうか、どーみてもドーベルの獣士達じゃないですかーっ!!あの人たち一体何やってるんですかーっ!!」


 エルマが頭を抱え叫び上げた。


「まさかここから撤退した後、この近くに橋頭堡を築き上げていたとは……これは、参りましたわね」


 フラウニもまさかそこまでするとは思っていなかったのか、言葉をなくしている様子であった。ただ、いわれて見ればマナ……つまるところ聖力補給は異世界人にとっては死活問題なのだ、後のなくなったドーベル獣士達がそのような暴挙に出ることも十分に考えられたわけであった。ただ、フラウニ達もまさか獣士達がそこまで追い詰められ、且つ打開策もなくこの地に来ているとは想像しておらず、なんにせよ今少しの猶予があるものと勝手に想像していたのだ。その間に話し合い打開策を見つけられれば……というスタンスだった為に、まさかこんなに早く強攻策に出るとは露にも思っていなかったのである。付け加えるなら、フラウニ達も夢生獣案件を抱えているのだから自分達のことで一杯一杯であった事も理由の一つとなっていた。


「あわわわわわ……こいつ等は何考えてるんですっ!!これでもし、この世界を中心に何か事が起こったとしたら……」

「間違いなくわたくし達のせい、と女王は判断いたしますわね。更にそこへ夢生獣まで干渉してきたのなら手もつけられなくなりますわ。確実に世界の認識が覆りますわね」

「この方達ー、この世界の属性が裏返ったらー、下手したら幾つもの世界がぶっ飛ぶって知ってやているんですかねーっ!!絶対知らないでやってますよねーっ!!」


 絶界域は強力な陰である。故にその陰に多数の陽の世界が結びついていた。しかしその要である陰が陽として裏返ったのなら、一体どうなるのか??同極同士が反発しあうように、最悪世界同士が反発し合い世界間が裂けて弾け跳ぶ。そうなればその衝撃は結びついている世界以外にも伝わり多大な被害を出すはずである。聖力や魔力がない世界でそれを露見させ、知らしめ……世界の在り方を根本から覆す可能性のある行為だ。その世界に住む物の認識は、世界にも影響を与える。陰陽がひっくり返る切っ掛けには十分なトリガーであり、正に暴挙であると言えた。


「あの捕まえた捕虜はどうしてんだ!?アイツから詳細を聞き出すしかねーだろ!?」


 正宗が言えばアイシス達は食事をそのままに急ぎ客室棟へと足を向けた。エルマの隣の部屋へと駆け込めば、家具のない殺風景な部屋の中心に寝かされた人影がある。法陣の編みこまれたマットの上に寝かされ、その四方の隅に別の陣が敷かれており、その上には辞書や雑誌、小説に漫画などが積み上げられている。


「な……なんだこりゃ!?」

「これが睡眠学習術式です。アレ等置いた書物から必要な知識を刷り込むわけです」


 アイシスの回答に感嘆の息を漏らす正宗。その間にもエルマが横たわっている獣人の横に回り、その頭部に貼り付けていた符を引き剥がす。途端にビクンと身体を震わせ目を開き身体を起す獣人。


「……はっ、ここは??」


 彼の口からでてきた日本語は正宗にもしっかりと聞き取れた。


「そんなこと今はどうでもいいっ!!確かクロノ=タカイオとか言いましたか??貴方達の計画はどうなっていたのです!?」


 アイシスが問い詰めるが寝起きで混乱しているのか彼も眉を寄せ首を傾げるばかりである。


「埒が明きませんわね、それでは自分の目でご確認下さいな」


 フラウニはそういうと獣人を立たせ居間へと案内していく。その間にこちらが置かれている現状を簡易ながら彼に説明していった。居間に辿り着くころには、彼の顔色はかなり青いものとなっていた。

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