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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
人類の敵はやっぱり人類!?
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人類の敵はやっぱり人類!?10

 居間にはテレビの音だけが響いている。いや、耳を澄ませば虫の音が耳へと入ってくる。山腹にある鉄邸は夜になるとその立地上静寂に包まれる。ただこの季節、その周囲を囲む木々に紛れ虫達は合唱を奏でるのだ。


「……実に趣深い」


 視界の中にテレビを入れながら正宗が呟く。それは彼女達が来る以前までは当たり前にあった静寂。自分以外居ない家の中に会話は無く、山腹にあるが故に鉄家の周囲には自動車などの走行音も聞こえてこない。虫の音色に紛れ彼方から響いてくる鉄橋を走る夜行貨物の滑走音が、木霊のように山間に反響するのが聞こえてくるくらいだ。


「こんなに静かだったんだ……」


 正宗は畳の上へと寝転がり目を閉じる。一人では大きすぎる部屋も家も、今ではいたる所で同居人の気配を感じさせている。


「最高じゃないかっ!!やっぱりこう、プライベート空間はしっかりと保たれないとなっ!!」


 今その根源たる彼女達はいないっ!!最高に……いや、最高に近い開放的な心理状態に陥っていた。


「なに騒いでいるポ??ポッコルがテレビを見ているんだポよ??気を利かせて静かにするのが当然ポ??」


 そんな正宗に向け机の上で煎餅を齧りながらテレビを眺めるぬいぐるみが言い放つ。


(コイツさえいなければ完璧だったんだが。よりによって一番の摩訶不思議の塊が俺の安寧を邪魔しやがる)


 ぬいぐるみが物食いながら喋り動き回るとか、まったくもって常識外の塊だ。


(いや、外観がぬいぐるみなだけで生物……なんだよな??)

「ちょっ!!ポッコルの腕と足を引っ張るなポッ!!なにするポ糞正宗っ!!」


 気になった正宗がポッコルをつまみ上げれば盛大な抗議を行ってくる。かまわずぬいぐるみを弄繰り回していると、来客を告げるチャイムが鳴った。ポッコルを机の上に再び放り投げると立ち上がり部屋を出て玄関の方へ向かう正宗。


「まったく、こんな時間に誰ポ??しかし日が暮れるのが早くなったポねー。夏の時はこの時間帯はまだ明るかったっポよ??」


 机の上で起き上がれば、ポッコルは壁に掛かった時計を確認しつつ外を見た。窓の外は既に暗く、空には気の早い星々が自己主張を始めている。季節の移り変わりの速さに感心していると、正宗がそっと室内に帰って来るではないか。ポッコルが視線で追えば正宗は何も言わずに着座する。しかし、その間にもチャイムは鳴り響いており……というか、


「どうしたポ!?何で帰ってきたポ正宗!!チャイムまだ鳴りまくってるポよっ!!」


 ポッコルが不安そうに玄関の方向を向く。未だ玄関の方からは連打されるチャイム音が鳴り響いている。


「……この小雨の中なんか知らん幼女が立っていてな、ニヤニヤ笑ってこっちを見上げてきたんだよ」

「……何それ超怖い、時季外れのホラーな話は止めて欲しいポよっ!!」

「正直俺も気味が悪くて即座にドアを閉めた結果が、コレだ」


 表情の死んだような正宗の言葉の裏ではチャイムが狂ったように鳴らされていた。流石にポッコルも震え上がる。


「特に昨今は誘拐とかいろいろ世間も怖いからな、だからそのまま無視することにしたワケだ」

「それであんなにチャイムを乱打しているわけポね??」


 外から喚き声が、同時にチャイムも鳴り響いている。明らかに常軌を逸した──、


「そりゃシカトされたら怒り狂うのは当たり前ポね、罵詈雑言が凄いポよ」

「だが知らない子供なんだぞっ!!良くある放置子の可能性もあるし、それだったら家に入れたら今後粘着される可能性もあるっ!!最悪の場合は幼女誘拐疑惑で捕まるという事だって考えられるんだぞっ!!」


 正宗の言い分は過剰反応だ……と反論しようとして口をつぐむポッコル。実際ありそうなので何も言えなかったのだ。その横で携帯をとる正宗。


「って、ポオォッ!!」


 それを眺めていたポッコルだが刺すような気配に戦慄する。こっそりと背後を見れば窓にへばり付く奇っ怪な幼女の姿。狂気を孕んだような表情で怒声を上げ、窓枠にしがみつきガラスに顔を押しつけているではないか。


「……アレが、そうポ??」

「アレがそうだ」


 顔を背けつつ電話を掛ける正宗に習い、ポッコルも顔ごと動かし視界から消す。どれだけ怒声と罵声を上げれば気が済むのだろうか??鬼気迫る幼女の叫びが周囲一帯に木霊している。これが住宅街であれば苦情殺到ものだが、鉄邸の立地はそんな素晴らしい所ではない。


「……このままで問題ないポか??」

「暫くの我慢だ、一応対策はした」


 見知らぬ狂気に晒されながら、正宗とポッコルは心を殺してTVを呆然と眺め過ごす事にした。そんな二人の態度に更に激しさを増す狂気。暫くすると窓を赤色回転灯が照らし出し、幼女の怒声に交じり他の怒鳴り声も聞こえ始めた。次第に幼女の声が別の声に交じり遠ざかっていく。


「ようやくご到着だ」

「警察ポっ!!」


 今度は逆に正宗とポッコルが窓へとへばり付く。見ればパトカーが停車しており、降りた二人の警察官が幼女を補導すべく話しかけているのが見えた。平伏しながらも抵抗を見せ始める幼女。雨の中、鉄家の玄関前で問答による喧騒が拡げられている。


「何か想像以上に揉めてるっぽいポよ??」

「って、マジかよっ!!幼女つええっ!!」


 暴れる幼女を取り押さえようとした警察官を、幼女がその細腕で引きはがし投げ飛ばしたのだ。もう一人の警察官が驚愕した顔を見せつつ幼女の確保に動くが幼女は捕まらない。昏倒していた警察官も立ち上がり再び幼女に向かって飛びかかっていた。


「カウンターっ!!強烈な右に首が捻り上がったポ。あっ!!警官が一人崩れ墜ちたポ!!」

「おっ!!もう一人が無線いじってるぞ!!応援を呼ぶの、うおっ!!すげぇ跳び蹴りだっ!!」


 瞬く間に警官二人を無力化した幼女。


「正宗、二人とも倒されちゃったポよ」

「つーかあの身体能力、明らかにお前達側の人間っぽいんだけど??」


 あんなに軽々大人の警官二人を幼女が叩き伏せるなど格闘技を習っている程度の話ではない。そして鉄邸へと出向いてきたとなるとどう考えてもアイシス達絡みとしか考えられない。ポッコルに視線を向けるが、


「残念ながら聖士には該当する人物はいないポ」

「どういうことだ??じゃあ別口の異世界人ってことか??こっちの世界には来れないんじゃなかったのか??」

「その筈ポ。実際ユメミールから援軍も支援も……って、こっち見たポよっ!!」


 ポッコルの言葉に視線を戻せば、雨降る中幼女が不敵な笑みを見せ正宗達を凝視してくる。そして猛然と走り寄ってきた。その顔は、さっきのまでとは明らかに違っている。警察を呼んで排除仕様とした事を、敵対行為ととらえられたようである。


「さっさと逃げるポよ正宗っ!!」

「わかってらっ!!」


 即座に立ち上がりながら必至に足を動かす正宗。その前を、圧倒的な足の回転で進むポッコルの姿。逃げる正宗達からは見えないが、背後から奇声を上げる声が迫って来ていた。幼女が玄関へと飛びつけば、一瞬閃光が走り絶叫とと共に幼女の動きが停止する。その火花のような音は正宗達にも聞こえ、ショートしたかのように一瞬鉄邸の明かりが消えた。


「ハッハーッ!!エルマが仕掛けた防犯装置っポッ!!」

「勝手に物騒なものつけてんじゃねーよっ!!助かったけどっ!!」

「そう言っても理力の強い者が触れると作動する仕組みだからこっちの者達には影響ないポッ!!」


 光丸に蓄積された聖力を瞬間集中させて障壁を張ったのだ。蓄積した聖力値が低下したのか停電のように照明が明滅する。その間も廊下を爆走し裏口から脱出を試みようとした正宗達であるが、今度は裏口の向こう側でも閃光が走るのが見えた。


「こっちもダメポッ!!上に逃げるポッ!!」

「上なんかに逃げたら逃げ場ねーじゃねーかっ!!」


 怒鳴りあいながら正宗とポッコルは方向転換し一気に客室棟の階段を駆け上がる。裏口の方からはドアの吹き飛ぶ音がし、幾人もが一斉に侵入してくる足音が聞こえてくる。しかし二階へと昇りきった途端、今度は客室前の廊下へと人影がガラスを砕き突入してきたではないか。一斉に着地、と、すぐさま正宗達を標的に据える姿など映画やドラマで見る特殊部隊の動きそのものだ。


「の、昇るポよぉおおお!!」

「ふっざけんなっ!!お前等弁償する気あんのかーっ!!」


 ポッコルに続いて更に上へと逃げる正宗だがそれどころではない。窓ガラスを二桁単位で割られているのだ、交換工賃などを考えたらどう考えても手痛い出費どころではない。それでも侵入者から距離をとるべく三階へと向かう。


「ポッコルはこんなところで死んでいい存在ではないポッ!!逃げて逃げて……泥水をすすってでもて時間を稼ぐポよおおおッ!!」

「時間稼いだところでどーなんだっ!!」

「きっとおよそ多分、アイシス達が異変に気付いて助けに来てくれるポよっ!!」


 どこまでも他人任せ、ポッコルのそのスタンスに呆れつつも頼もしく思う──間もなく、


「あっ!!」


 案の定というべきか、上階から降りてきた影を認識した瞬間、正宗の意識は闇へと落ちた。

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