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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
人類の敵はやっぱり人類!?
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人類の敵はやっぱり人類!?2

「いくら力が戻ってきているといえど、あんな怪物を好敵手として相手取るとか……やはり同胞共は狂っているとしか言いようがないメー」


 軋む音が充満する操縦席の中、ラムダッチャがぼそりとぼやいて見せた。地球という惑星のあるとある世界に辿り着いた夢生獣達、しかしそこは聖力や魔力発達のしなかった……陰陽で言えば陰の世界であった。周囲の陽の世界の“陰”の存在となるべく生まれたその世界は、確かにそれ等周囲の陽の世界をつなぎ留める要の役割をしていた。陰として生まれたが故にその世界には聖力や魔力といったものが非常に希薄、無と言っていい世界環境であり、聖力や魔力などをむさぼり食う夢生獣達にとっては“栄養の少ない”地獄のような世界と言えたのだ。その為、封印される以前の力にまで回復させるのに非常に時間が掛るのだ。だが、ただ時間が掛かるだけなら何の問題もなかったのだ。何せいままで封印されていたのだ、そんな夢生獣達にとって栄養が少ないとはいえ、ゆっくり回復出来るその世界での環境はバカンス感覚にも近いものであったのだ。問題は、そんな彼等を再び再封印する者達が現れた、“追っ手”が差し迫ってきたという点にあった。そんなこと自体も本来ならば大したことではないのであるが、その中に存在してはならないのような怪物が居たとなれば話は変わってくる。夢生獣をもってして“怪物”と言わしめるソレの力は凄まじく、まともにぶつかっては返り討ちは必至。しかし、他の世界に行こうものなら、それこそ追っ手を放った世界達が大軍を持ってして、夢生獣達の活動を止めに来るに違いない。その数多ある勢力の中には、確かに夢生獣達ですら無視できない勢力もあるのも事実なのだ。しかしながらこの世界の環境は、そんな勢力達の脚を鈍らせているのもまた、事実であった。


「八方塞、であるならまだアレの相手をするではなく、別の世界の戦士達を相手した方がマシだメー」


 夢生獣ラムダッチャの出した結論はそれである。夢生獣達の方針として、陰と陽の世界間の航路を乱し妨害を行っている。その荒れ用は夢生獣達を持ってして危険となる程であるのだ。航路妨害は敵対勢力の追っ手を防ぐのと同時に、自身等の逃げ道も塞いでしまう苦肉の策であったのだ。しかしながらラムダッチャの駆るナイトメアラムダッチャにはその荒れた航路の荒波を突破できる秘策が備わっていた。外皮羊毛装甲ケンプウールシェルがそれである。強固な特殊増殖装甲が機体全体を包み上げ、破損しても自己修復し機体を保護、猛烈に荒れた世界間の航路を箱舟のようにして渡ることが可能であったのだ。それでも、ラムダッチャはできるだけ荒れの少ない路を探り進んでいる。


「今頃はカウカッタが討たれているかもメーね。これで肉の中で最優はラム肉であると証明されたと言って過言ではないメー」


 ラムダッチャはそう言いながらワイン片手に思いにふける。


「マトン、そしてラムにあうのはやはり葡萄酒に限るメー」


 操縦席内は軋み音こそすれ快適に保たれている。ケンプウールシェルがあるとはいえ、夢生獣の金剛魔導夢想兵装であっても荒れた世界間の渡航には危険が伴うのだ。転寝しながら過ごす長い航海の末、航路内は荒れてはいるがそれでも難関箇所は越えたようで揺れや異音が小さく少なくなったようであった。そんな弛緩しきった操縦席に響く甲高い接近警報音。


「メー??」


 警報音に起きる間もなく、ラムダッチャは操縦席から転げ落とされる羽目となった。予想だにしてなかった衝撃、慌てたように椅子に座りなおすラムダッチャ。


「なんなんなんだメー??」


 続いてまた振動が操縦席を襲う。意識を金剛魔導夢想兵装へとつなげれば、この世界とあの陰の世界を繋げる異空間内に自分とは別種の存在を多数感知したのだ。それ等はナイトメアラムダッチャの前方を塞ぐように展開……いや、それ等の前にもう一隻、その船を追いかけているようである。


「んー??これは、どっかの誰かが軍に追われているメーか??」


 よくよく観察してみれば、この空間内でその一隻の船を多数の船が追いかけ攻撃しているようであった。先程の振動はその追っての放った攻撃が逸れ、ナイトメアラムダッチャの近くで炸裂したのが原因のようなのだ。そして再び響き渡る別の甲高い音。


「……追っ手共の“ピンガー”メーね」


 世界間を繋げる異空間、世界間航路空間では目視など役には立たない。船と言いながらその航行は潜水艦の潜水航行に近い感覚の物なのだ。どうやら追っ手の艦艇はナイトメアラムダッチャを、逃げる船のの味方艦、或いはその拠点であると誤解したようであった。その攻撃の矛先を、ナイトメアラムダッチャにまで向け始めたのだ。


「まったく。今はこの程度とはいえ、荒波の中世界間航路に潜りこむなど自殺行為にも程があるメーが……攻撃してくるのなら話は別メーよっ!!」


 ラムダッチャが夢生獣に違わない獰猛な笑みを浮かべる。その両手の蹄をワキワキと動かし操縦桿を嬉々としてとったのだ。


「誤射だろうと手を出してきた事を、後悔させてやるメーッ!!」


 ラムダッチャの意思に応じてナイトメアラムダッチャが覚醒する。確かに世界間を渡航する船達には目視が不可能な環境である。だが、機体と同調する金剛魔導夢想兵装となるなら話は別だ。ラムダッチャは明確に敵を視認し、それ等に敵意を向けたのだ。白い塊の中から鋼の頭部を覗かせて、凶悪な羊の一鳴きが波動となって放たれた。魂が砕かれるようなその波動に、荒れていた航路が身をよじりのたうつように暴れ回りはじめた。凶悪な獣の咆吼、それを浴びた空間が震え上がっているのである。途端にして艦隊達は右往左往し始め、ついに味方艦同士の衝突も始まったのだ。


「シープシプシプ、さぁさぁ混乱の中、抗えぬ眠りの中に落ちるメーよ」


 笑うラムダッチャ。再度の波動を受けた艦隊は更なる荒波に飲まれ、船体ごとへし折られ自沈していく物が現れ始めた。中には四方に武装を乱射し、フレンドリーファイヤから爆沈する艦も見られ始めている。ラムダッチャが放ったのは睡眠魔法。強力な夢生獣の力に操舵手もろとも眠りに着き、そして悪夢を見せるというおまけつき。自身を犯す悪夢に狂乱へと陥れられ、絶望から逃れようとあがき抵抗行動した結果がソレである。闇雲にトリガーを引き、悪夢を晴らそうと足掻き、最後は楽になるため自ら命を絶つのである。狂い散っていくそれ等烏合の衆を愉悦を持って眺めるラムダッチャ。


「メーメー!!……んん??逃げていた船はどうやら無事のようメーね」


 艦列を乱し崩壊している追っ手艦隊に対し、追われていた船はそのままナイトメアラムダッチャの方へと近づいてきている。


「…………」


 不遜なその船に攻撃を見舞おうし、思いとどまるラムダッチャ。逃走するその船はそのままナイトメアラムダッチャの脇を抜けて進んでいく。


「まっ、こちらに攻撃していなし見逃してやるメー」


 龍の住まう窮地の地域から脱出し、一暴れして鬱憤を晴らしたラムダッチャは今気分が良い。無害なその船を見逃し、轟沈し泡を撒き散らす艦隊の横を悠々と通り過ぎていく白い塊。そして嵐のような世界間航路の船旅を終えたナイトメアラムダッチャはその身を持ち上げ、いよいよ別の世界へと浮上するのである。


「渡りきったメーっ!!」


 スパークの中を抜け、幾万のブロックを砕くような重低音を響かせて、白い鋼の塊が別の世界へと現出する。


「メー??」


 宇宙というか、そこは正にエーテルに満たされた海。観測できる惑星や衛生はアブクに包まれるように点在し、恒星から発せられる熱と光とは別に無数のアブクが天の川のようにエーテルの海を横切り潮流のように漂っている。それら別世界の光景とは別に、現れたナイトメアラムダッチャを迎え撃つかのように展開している艦隊があった。結界か気泡か、同じくアブクに包まれたそれら艦隊はラムダッチャの行く末を塞ぐように展開しており、その数はただ事ではないことを示しているようであった。あまりのことにラムダッチャが固まっていると、その艦艇が順々に輝きを放つではないか。まるで多くのマスメディアの取材陣が上げるフラッシュの華のようで、


「メーッ!!メーッ!!」


 滅多撃ちの法撃にナイトメアラムダッチャが晒された。


「先程の艦隊は先遣隊かなにかだったメーか??こっちが本体メーッ!?」


 艦法射撃の直撃を浴びながらも冷静に分析するラムダッチャ。それはおよそにしてラムダッチャの現出を予期して展開されていた者達ではないであろう。想像するに先程逃げていた船に由来するモノと推測できたが、今はそれどころではない。見れば艦を包む気泡から幾つもの白い帯がラムダッチャに向け発射されたではないか。各艦から放射状に放たれたそれは泡の航跡を引きながら、志向性ミサイルのようにナイトメアラムダッチャ目掛けエーテルの海の中迫ってくる。艦隊中から放たれたそれは数の暴力だ、避けようにも数が多すぎて不可能だ。雨の雫を全て避けろと言っているにも近い事柄である。──だが、


「因夢空間、展開メー」


 嬉々としたラムダッチャの笑みと共に、ナイトメアラムダッチャを中心に世界に波が奔る。耳障りなノイズが広がり──そして世界は一瞬で眠りに着く。雨のように迫ってきていたミサイル群はその動きを止め、艦隊も大部分の動きは封じられていた。

「ほぅ、この因夢空間でも動ける者が少しはいるようメーね。……しかしっ!!」

 白いモコモコの中から鋼鉄の手足、そして角が渦巻く鋼の頭部が露出される。ソレこそ因夢空間に適応された決戦兵装。


「この、ナイトメアラムダッチャを止められる者がいるメーかメェェエエ!!」


 発狂する魔の羊に、動きをみせていた艦艇も悪夢に落とされ再び動きを失っていく。いや、狂乱したかのように、因夢空間に囚われ停まっている自軍に突進し、一気に爆発の火を広げていった。ある物は炸裂し、あるものはエーテルの圧力に圧壊していく。アブクにまみれ、波打つように破壊が広がっていくエーテルの海。その中から、飛び出してくる人型の姿をした物がある。


「ほう、金導夢兵装を使える者がいるメーかっ!!……では、どれだけやれるメーッ!!試してやるメーッ!!」


 押し迫る影を喰らう獣、それこそが夢生獣の本性であった。


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