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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争32

 部屋には屍が転がっていた。机の上に突っ伏す者、畳みの上に寝転がる者、壁に寄りかかりぐったりと座る者等死屍累々である。その中の一人が震える手をなんとか持ち上げ、麦茶入りのコップを掲げると高らかに宣言した。


「みなさーん、お疲れ様でしたー」


 鉄家の居間ではお疲れ会が開かれているのだ。しかし皆ぐったりしているだけで覇気も陽気も一切無い。


「何とか……なりましたね。結局の所毎度ながらのギリッギリの勝利だったわけですが!!」

「はいー。また一歩間違えば大惨事でしたー」


 アイシスに続き相槌を打つエルマ。


「まさか夢生獣達が結託しー、尚且つー金導夢兵装まで合体するという予想外の展開でしたからねー……いやあ危機一髪でしたー」

「まさか今までもこう、ギリギリの綱渡りの戦いだったんですの??……まったくもって通常の神経ではやってられません、正気の沙汰ではありませんわね」


 フラウニの問いに彼女以外が無言で頷きで返してやれば、フラウニはその返答に眉を寄せて首を横に振るだけだ。世界を取られるか、守り通せるかを天秤にかけて戦う……それを幾度と、毎回もこなしてきたと言えば聞こえは良いが、それが常に薄氷の上の勝利であったと言われれば流石に呆れを通り越して頭が痛くなるのも納得がいく話であった。


「だが今回の事で一つ解かったことがあります」

「なんの事だよ??」


 アイシスの真剣な呟きに正宗が不思議そうに問い返す。


「貴方の、アルヴァジオンの事です。アレはヤバイ、マジでっ!!乗ってる分にはいいですが、周囲で暴れられている分には生きた心地がしませんっ!!」

「い、今更ですかーっ!!その役目、今までいっつもわたしだったんですからねーっ!!」

「ちょ!!興奮するなエルマ、イタイッ!!」


 真剣な顔でのアイシスの、本当に今更のボヤキに過去散々な目にあって来たエルマが突っかかったのだ。これまでアルヴァジオンに正宗と乗っていたのはアイシスであったため、彼女はアルヴァジオンの破壊力を肌身で感じたことが無かったのである。遠くに離れていても一撃で消し飛ばされるであろうドラゴンヘッドのブレス。繰り出される術式の破壊力。桁違いのソレ等は距離をとっていたとしても身に危険を感じる程の脅威であったのだ。今まではエルマが一人それに脅えながら身を隠していたわけであるが、今回やっとアイシスもその危険さを痛感したと言うわけだ。


「まったく、これだけハチャメチャな戦いを繰り返してきたのでしたら、アイシスさん達のやる気がなくなるのも……なんだかわかる気がいたしますわ」


 夢生獣に負ければこの世界はその手に落ちるのだ。それはユメミールの落ち度から始まった結果であり、ユメミールが今まで築き上げてきた世界の盟主という立場からすれば他の世界から大バッシングを受けても仕方の無い重大失態ともなる。更に言うのであればソレは新たな戦いの火種ともなりうる事柄であった。仮にこの世界が夢生獣の手に落ちたとするのであれば、彼らに毒されたこの世界はその配下が溢れるような世界と塗り替えられる。そして塗り替えた世界を根城に他の世界へと侵攻の手を伸ばし勢力の拡大を謀っていくのだ。その結果、どれだけの被害や犠牲が出るかは想像に難くない。だからこそ、なんとしてもその火種だけは起こさせてはいけないのだ。それだけ重要である用件であるにもかかわらず……、


「まぁ頼れる戦力がこれだけだからな、心がプレッシャーに耐え切れなくなってもおかしくはねーな」


 正宗が鼻で笑うように言う。今ある戦力は正宗にアイシスにエルマにフラウニの四人だけなのだ。ポッコルにガープを加えたところで大した数ではない。対するは一体で世界と戦い、己色に塗り替えるという化生──夢生獣なのだ。本来夢生獣の撃破封印などは世界一丸で挑むような大業である。この地球のある世界が聖力や魔力などに溢れていないと言う事柄、更に言えば彼等が封印されていた事により力を失っていた事が良い方向に作用し、夢生獣達の活動はある程度抑制できている。とはいえ、正規聖士数人程度で挑むような相手ではない。アイシス達が女王候補という優秀な才能を持っていたとしても、手を出す事すら無謀と言える相手なのだ。そういった意味では彼女達は十二分以上の戦果を上げているといっても過言ではない。ただ、そのストレスや心労に心が壊れてないか??と問われれば、決して良い回答はできないのも確かなのであるが。


「しかしですねーっ!!これでついに6体っ!!半数以上の無生獣を撃破封印したのですよーっ!!」

「快挙、正に快挙と言って過言じゃありません……過言じゃありませんよね??」

「ありませんわよ、誇らしすぎる戦果ですわ。この補給もままならない世界の中、よくやっている以上の異常な戦果であると思われますわ」


 エルマの言葉にアイシスも、そしてフラウニも乗る。それだけは喜ばしい事であり、現時点で世界を何とか護り抜けいてることには変わりは無いからだ。


「えーと、全部で何体だったっけ??」

「10体、あと4体だポ。ただ、一向にユメミールからの支援が無いことの方が……心配ポ」


 目の前のガープが変態している赤い宝石をクルクル回して遊びつつ、ポッコルが正宗に返答する。


「心配つーと、なんの事だ??」

「支援が未だ来ないと言うことは、いまだ世界間航路の状態が安定してきていないということポよ正宗。確かにここは特異点のような世界だから世界間の航路が一度崩れると千年万年単位でおかしくなる事も考えられるんだけどポが……」

「確かにー、通常ではあまり考えられませんねー……」


 ポッコル達の話にエルマも首を捻る。


「であるのでしたら、夢生獣側で妨害をいまだ継続していると考えるべきですわね」

「ふむ、本来なら世界間航路が安定へ戻っていく所を意図的にかき回し、乱している……考えられますね」


 フラウニの言いたいことをアイシスも同調する。彼女達は世界間が乱れる直前に何とか辿り着いたが、夢生獣達からすれば封印されて衰弱しており、追っ手が来るのも確実でそれを座視している程の余力は無かった筈なのだ。もし仮に、乱した世界間航路が安定していくのを傍観し続けていたのなら、ユメミールから自分達を討伐する為の戦力が送り込まれてくる事となる。ならその経路を乱し断ち続け、ユメミール側が戦力を送り込めぬうちにこちらの世界を攻め落とし自分達に優位な世界を創り上げると言うのは当然の考えだ。


「てことは何か?やっぱり残りも全部俺等で対応せにゃならんのか??」

「そういう事態も考えうる、と言うことですわ。しかしながらわたくし達は大々的に索敵や航路整備に乗り出すことは出来ませんでしょう??」


 大々的に聖力を使う、そんな事をすれば正宗達の所在が夢生獣達にバレる事となる。エルマが色々手を回している為詳細はバレていない……と思いたいワケであるが、残りの四体が共謀して……いや、一体だけでも不意を突いて襲い掛かって来たとしたらひとたまりもない。


「常に後手に回るしか戦いようがありません、ですから夢生獣達が渡航妨害を続けていたとしても、ソレに対しても何も手が出せないと言うことなのですわ。ここはユメミール側からの打開策を期待したいところ……ですが……」

「うまくいってーいないのでしょーねー」


 エルマの吐き出すような一言に一同の空気が重くなる。


「しかしまぁ今回は本当よくやったポ。向こうが合体なんかしてきた時はもうダメかと逃げそうになったポよ??」

「いや、お前はそうでなくともいつも逃げようとしているじゃないかっ!!」

「アイシスさんの言うとおりですわ。ですけれども……やはりと言いますか、流石は封印指定された怪物“夢生獣”でしたわね。合体しておらずとも一体一体強力でしたし、正直わたくしのナイトオブユメミールでは歯が立ちませんでしたわ」


 フラウニのトーンが落ち込んでいく。全体的な勝敗は別として、フラウニ自身としてはやはり自身の勝敗に気を落としていたのだ。聖士の中でも実力者であるフラウニとしてはたとえ相手が夢生獣であったとしても後れを取るつもりは無かったのだ。だが結果として、“切り札”すら切って、自機を自壊する程まで追い込んでも一体として倒すには至らなかったのだ。


「アレが無生獣の凄さですね、ウルフェンでも単体を抑えるのが精一杯でした。長期戦になっていたのなら私も負けていたでしょうし、合体夢生獣には手も足も出なかったでしょう。しかしそれとまともにぶつかり合えるんだから……、はっきり言って正宗のアルヴァジオンは異常すぎると言っていいですね」

「まー、確かにアレ程なら夢生獣達が苦戦するのも理解は出来てしまいますねー」


 アイシスの愚痴とも取れる言葉に、エルマが麦茶を飲みながら呟き同意を示した。が、その中に含まれた微妙なニュアンスを聞き逃すアイシスではない。


「なんです??さては何かわかったのですか!!正宗とアルヴァジオンの秘密とかっ!?」

「まー、ちょっとですがー……いろいろとー」

「ちょっとエルマさんっ!!一体何を隠しているのですっ!!口を割りなさいなっ!!」

「まーだーダメですー!!仮説で検証中ですー!!こればっかりはアイちゃんにもフラちゃんにも譲れないのですー!!」


 何かに感づいたかのような顔のエルマを問い詰めるアイシスとフラウニ。だがエルマは愉悦顔を浮かべるだけで話そうとはしない。アイシスとフラウニが取り押さえようとするが、それも器用に避けてからかって見せている。


「何でもいいから、俺を巻き込まない方向でなんとかならんもんなのか」

「それは無理な話というものポね」


 姦しい女性陣を他所に項垂れる正宗であった。

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