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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争31

「か、勝ったーっ!!勝ちましたーっ!!そしてなによりーっ!!生ーきーてーまーすぅー。よかったですーあああーもう死んだかー、詰んだかー、と何度も何度も思いましたけどー、どーにか!!どぉにかー、何とかなりましたー!!」


 泥と土と埃と煤にまみれた全裸のエルマが歓喜の叫びを上げていた。最早人工建造物どころか何もかもが消し飛び、焼け爛れた地肌とクレーターだけが残る惨状だ。火星の大地と言われても信じるであろう程に、何もない。エルマの近くにはうつ伏せで泥まみれとなっている正宗が死んでおり、その横にはボロ雑巾と化したぬいぐるみが転がっている。


「正宗、お前いきてるポか??」

「死んでるわ。いや、マジ死んだかと思った。つーかなんか地下水染み出てきた、起こしてくれブクブク……」


 勝利の代償に溺死しそうになりながらも何とかなったと安堵する。最後に放った一撃の衝撃に、自滅しなかったのは軌跡に近い幸運であったと言えよう。兎も角全裸状態のため、疲弊して異常に重く感じる身体を酷使しながらポッコルが耳から取り出したバスタオルに身を包み込む。見上げれば雲一つ無い蒼く高い空、その向こうにはムーブメントが霞んで見えている。ただそこに一つ、見慣れない物が浮いている。


「それで、アレはどうするんだ??」


 正宗達が下から見上げるそれは色の交じったカラーボールのような物であった。夢生獣達の粒子が集まった彼等の魂みたいな物だとエルマは言う。彼女はポッコルから三つのソフトボールのような物を受け取ると、空中のそれに向かい放り投げた。投げられたボールがカラーボールの近くで停滞すると、そのボールに粒子が色ごとに別れ吸収されていく。全部の粒子を吸い尽くすと地面に落下し、モゾモゾと蠢いた後一際強く輝いて微動だにしなくなるボール達。


「夢生獣ベクマー、ワニゲータ、ゾウール、撃破封印完了ですー!!」


 泥まみれのバスタオルに身を包み、茶色と緑と灰色のボールを掲げあげたエルマの気分は最高潮のようである。


「いやー、あれじゃないですかねー。夢生獣一挙に三体も同時封印したのってー、わたしが初じゃないですかねー」

「その通りだろうけど、殆どはエルマの功績じゃないポッ!!正宗と、このポッコルの犠牲が大部分を占めているはずポよっ!!」

「えぇー、そこはわたしも頑張ったんですから加えてくれないとー」

「いーじゃねーかポッコル。これでエルマの武勲が上がったんだろ??三体封印は初の快挙、いやぁ一挙に女王候補筆頭に名乗り上げたんじゃねーの??」


 正宗の皮肉にエルマの顔色が一気に悪くなる。


「……わたしの戦果はーなかった事にしま──」

「確かに正宗の言うとおりポね。ポッコルの認識違いだったポ。女王の方にはポッコルの方からしっかりと伝えておくポよ」


 今後女王候補と言う立場から解放され、暢気に生きたいエルマとしてはそれは悪手の一言であった。必死にポッコルの説得に掛かっている。


「さて、それよりもこれからどうするんだ??」


 そんな言い争っている二人に正宗は疑問をぶつける。するとどういう事かと二人が正宗に視線を戻すではないか。正宗はそれを受けつつ周囲を見回す。映るのは日本の日常とはかけ離れていると言うような破壊された地肌の荒野。


「こんな状態だけど……、元に戻せるのか??」

「残り少ないですが聖力はありますからー、ソレは問題ない……の……ですけれどー……」


 そう言いつつエルマの顔が強張っていく。どうやらその後の事態を把握したようであった。


「ん??どうしたポ??さっさと通常空間に戻して完了ポ」

「いえー、そのー……ここって元に戻ったときー、……一体どの辺りなのでしょうー??」

「「…………」」


 その質問にはポッコルも正宗も回答を持ち合わせてはいない。激しい戦いによって都市がニ・三個とは言わず山や陸地が灰燼と化すほどに破壊され、地形までも激変させてしまう程の激戦だったのである。その結果として今、自身達がいる正確な場所、それが全くわからないのだ。


「とりあえず隣町とか、そんな近場なとこじゃないと思う」

「ということは戻ったら昼間の街中にバスタオル一枚で放り出されるというわけポね」

「いえいえー、どこかの民家の一室とかー、はたまた山肌の地中の中という事だってありえますよー」

「やっぱわからないワケか……しかもバスタオル一枚で??どーしろっていうんだっ!!」


 服は弾け飛び、当然にして財布や小銭すら持っていない。ただ、走って帰るとかそういう距離や場所ではないことは断言できるのだ。


「待て待て、落ち着けっ!!……そうだアイシスっ!!アイシス達に連絡はつけられないんかっ!!」


 正宗の指摘にエルマは頭を悩ませるが首を横に振る。


「アイちゃん達がどこにいるのかわからないとーちょっと難しいですー。とりあえずは見渡せる範囲にもいませんしー……」


 エルマが遠い目をすれば言わんとしている事も理解できた。この惨状である、アルヴァジオンに乗って戦っている時は考えてもいなかったが……、


「戦いに巻き込まれていたら、もうこの世にいないポね」

「ポッコルッ!!そんな話口にするなっ!!」


 地平が見えるレベルでいろいろ消し飛んでいるのだ、当然にしてあり得ない話ではなかった。


「というかどーするポッ!!あんま時間はなさそうポよっ!!」


 そう言いながらポッコルが天を仰ぐ。空を覆いつくす青空の向こうにうっすらと巨大なムーブメント達が映し出されているのだが、ソレ等がピクピクと痺れを切らすように蠢き始めているのだ。あまり間を置

く事も無く因夢空間が解除され世界が目を覚ますに違いない。


「そうなったら何十……いや百万人以上の被害って事に」


 正宗達が住んでいる街ですら40万人規模の都市なのだ。更に2つ程の都市が破壊されてたり、キメラエクスマキナが山々をぶち抜いたりしているのだからそれ以上の人民の命が消えたことになってしまう可能性すらある。実際こうして桁違いの人命の命を消し飛ばしている正宗の心境や心労をエルマとしたら心配していたわけであるが、それ等を気にした様子は一切ない。既に心が死んでしまっているのか、それともまるで核ミサイルの発射ボタンを押したかのように他人事みたく感じ取っているかなのかは定かではないが、狼狽も動揺も今の正宗からは感じ取れなかった。それよりもこのまま被害が確定したのならば、それは最早負けと同じでもあるのだ。瞬時にして日本の国土の一部が都市も山も吹き飛ばされ荒野と化したこととなり、何がどうとかは置いておいても現実的に“通常ではあり得ない事”が起きたのだと世間一般に露見してしまう。


「ま、まずいですよーっ!!そんな事になってお母様の耳にでも入ったとしたらー……」


 都市の被害だけでもとんでもない数値なのだ。エルマの顔色が悪くなっていく。


「こうなったら森や林、或いは隠れるところがあることを願って戻すしかないポよっ!!」

「その結果、公然猥褻かなんかでしょっぴかれる可能性もあるんだけどな」


 仮に隠れるところがあったとして、果たしてその後も無事であるのかも正宗は気にしていたのだ。バスタオルのみということは大っぴらに活動できないと言うことだ。今は因夢空間だから平気であるが、通常空間に戻ればそこは灼熱の日本の夏。長時間隠れなければならない状況となった場合、当然に熱中症や脱水症の可能性は高くなる。そうなったのならリアルに死活問題だ。いや、バスタオルのまま保護されても社会的には死ぬだろう。しかしながら我慢に我慢を重ねれば生命的に死ぬ可能性があるわけで……。


「ここは自分に露出狂の性癖があると言い聞かせる暗示を……」

「いかんっ!!正宗の精神状態が危険な方に崩れ落ちていっているポよっ!!」

「あーもーっ!!これ以上言い合っている時間はありませんーっ!!」


 概算を導き出していたエルマがバスタオルの胸の部分から符を一枚取り出した。修正の時間などを考慮に入れると、最早考えを纏めている時間などは無かったのだ。


「えっ!?いまどこから出した!?その下になんか隠してんのっ!?」

「わたしの残りの聖力ですーっ!!目覚めの時よー!!因夢は散り、正しき夢へと戻りなさいー。そして時は動き出ーす!!」


 符が輝きそれを高々と放り投げるエルマ。ロケットのように空へと昇っていけば弾けて粒子と化し世界へと溶け込んでいった。途端にして始まるのはノイズ音。次第に大きくなるそれが耳障りとなれば、激しくモザイクを描き始める世界の情景。モザイクが奔ればその場が元に戻り、まるで早送りされるジグソーパズル作成のようにビルを、木々を、路を、人を組み上げていく。


「おお……おおお……」


 次第に元の姿を取り戻していく周囲の外観。人の姿、机や書類棚……、


「いかんっ!!どっかの事務所のど真ん中だっ!!」


 モザイクが走る中エルマと二人、急いで離脱を開始する。中途半端に修正されたドアを開け放ち、壁の穴から飛び出して外の大きな倉庫の中に身を寄せた。瞬間、夢世界であった因夢空間が弾け飛ぶ。同時に物や自然、人がかもし出す音が怒涛の如く正宗達の鼓膜を打ち始めた。


「な、なんとかなったな」

「これからーどーしましょー」

「因夢空間の展開は??」

「夢見てたばかりですからねー、暫らくは難しいですねー」


 バスタオル一枚とはいえ、締め切られ空調の聞いていない巨大な倉庫の中は尋常じゃなく暑い。直射日光下ではないとはいえ、締め切られ空気の動きもない為ダラダラと汗が流れ落ちてくる。


「こうなったらポッコルッ!!お前だけが頼りだっ!!走って家まで帰って財布と着替えを持ってきてくれっ!!」

「ポッ!!何言ってるポっ!!ここがどこかもわからないポよっ!?正宗の家まで何十キロあるとおもってるポ!?」


 そういわれてはグゥの音も出ない。


「第一着替えとかどう持ってこればいいポ??ポッコルがそんなもの持って走ってたら注目を──」


 そこまでまくし立てていたポッコルが突如として消えてしまった。


「どーやらアイちゃん達も無事だったみたいですねー。あちらに召喚されたようですので待っていれば助けは来るでしょー」


 エルマの安堵の声を聞きつつ正宗も息を吐く。後は地獄のような蒸し風呂に耐えるだけであった。

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