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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争30

 アルヴァジオンの全身が光に覆われ、急激に四肢から力が抜けていくのを正宗は感じ取った。高熱でも宿ったかのように身体が……、アルヴァジオンの機体が重くなっていく。既に立っていることですら困難、果てしない頭痛と眩暈、這い上がってくる悪寒に身震いを始める。


「どうなってるポッ!!」

「これはーっ、浸食型の弱体術式ですーっ!!」


 エルマイールはそう言いながら紋様盤の上の手を走らせた。忽ちにして新たな術式が彼女の手の中に紡がれて、それを即座に紋様盤へと押し付ける。それでも操縦室はエラー表示に埋め尽くされ、相変わらず正宗が呻きを上げて苦しんでいる。


「抵抗術式走らせていますー、マー君、時間を稼いでくれればその内に無力化出来る筈ですー!!」

「直ぐには無効化出来ないポかっ!!」

「敵の出力が出力ですからーっ!!どーいう了見か知りませんが、この数値はアルヴァジオンをも超えていますー。こっちが普通の金導夢兵装だったなら抵抗も出来ずに消滅してるレベルですよーっ!!」


 金導夢兵装を消し飛ばすほどの術式に抵抗しつつ、それでも機体を維持しているのだ。それ自体が離れ業に近いと言えるのだが、目の前に敵がいる以上どうしてもそれ以上を求めてしまう。持続的に効いてくるソレはまさしく強力な毒のようで、それに対して即座に抵抗術式を構築して対抗して見せるエルマイールの補佐力は圧倒的にアイシスよりも上であった。


「パラメーター変更して再度アタックー!?」


 エルマイールの施した対抗術式を無効化すべく、呪いも変質しながら浸食の手を伸ばしてくる。エルマイールもそれを阻止すべく手を動かし対抗術式に補正を掛けていく。水面下のでの攻防のお陰で、アルヴァジオンの状態はなんとか現状維持するに留まっていた。


「とはいえ呪いのこの出力がいつまでも続くとは思えませんー、時間をかければ次第に打ち勝てる筈ですー」


 強力な呪いとはいえ所詮放出されたイメージ、術式である以上、その継続力には限度があるに違いない。


(確かに待っていれば、持久力で上回れるんだろうけど──)


 アルヴァジオンの眼を通して見える正宗の視界に、鬼気迫る巨象が猛進してくるのが映る。


(──そうさせてくれる筈はねーよなっ!!)


 エルマイールの言葉に、行動に迷う正宗。時間稼ぎをすべきか、それは出来るのか。或いは反撃すべきか、ガードするのか避けるのか、正宗に実戦のやり取りの引き出しはないに等しい。しかし巨象の突撃には迷いが一切なかった。正宗の一瞬の迷いの隙をかいくぐり、重量にものを言わせた突撃がモロにアルヴァジオンへと刺さる。同時に、双方の装甲も見事に弾け、砕けた。


「どうなっているポッ!!アルヴァジオンの装甲も砕けたポよっ!!」

「纏わりついてる弱体化の光のせいですーっ!!フレーム構造までには至っていませんがー、装甲は浸食されて脆くなってるんですーっ。他にも影響は機体スペックの至る所に現れ出ていますーっ!!膂力に反応速度、動体視力に思考速度も低下中ー、マー君注意して戦ってくださいーっ!!」


 エルマイールに言われるまでもなく、それは正宗も重々承知している。四肢が重く、力が入り難い。浸透した光がそれらを阻害しているようで悪寒が走っている。


「は、破損した装甲が修復されないのはなんでポ??アッチも壊れたままなのはなんでポ!!」

「先程も言いましたけど抵抗術式を走らせつつ機体維持もしてて聖力的にキツいんですーっ!!想像以上に纏わりついている光の魔力値が高いんですよー!!これ、まるで怨念のようですよー!!ただー、あちらの魔力数値も計測上はあまり高くありませんー。多分あちらもカツカツなんですよーっ!!」


 ポッコルとエルマイールの怒鳴り合いの間にも、アルヴァジオンとカンピオーネゾウールの肉弾戦は継続していた。しかしその戦いは一方的なもので、明らかにカンピオーネゾウールの方が動きが良く有効打を与えている。すかさず強烈なワンツーがアルヴァジオンの頭部を捉え、ポックル達も激震に襲われモニターも砕け火花が散る。


「な、何しているポよ正宗っ!!特訓をっ!!今こそアイシスとの特訓を思い出す時ポッ!!」

「うるせーっ!!こちとらこれでも精一杯やってんだっ!!」


 金導夢兵装が肉体の延長線である以上、その操作云々には正宗自身のセンスと技術が反映される。この夏アイシスとの特訓でスパーなどをこなしてきた正宗であるが、そんなのは所詮付け焼刃だ。剣道的間合いや体捌きは出来ても、格闘や関節技におけるイロハは肉体に染み付いているわけではない。数週間訓練した程度、基礎をかじった所で歴戦の猛者に対応出来る程の優秀さを正宗は持ち合わせてはいないのだ。猛烈且つ苛烈なカンピオーネゾウールの猛攻を受け続ける。砕け飛ぶ金の破片。──されど、


「チィッ!!」


 強引に、龍が腕を横薙ぎに振る。恐れるように、機敏に後退するカンピオーネゾウールの巨体。一見その反応は大げさのようにも見えた。


「この大きな回避行動は恐らくこちらのパワーを警戒してのことでしょー。ゾウールも相当消耗している筈ですー。それは破損個所修繕へ魔力を回せていないことからも明らかですー。そんな状態でアルヴァジオンの、しかもシルバガントレット装着状態の一撃を受けては持たないのでしょうー」


 紙一重の回避など簡単に出来る物ではない。安全な試合であれば話は別であろうが、これは死合いなのだ。かすっただけで致命傷となる破壊力、その上でそれら全てを回避して、尚且つ絶対に勝たねばならない戦い。ともなればどうあっても慎重さは出てくるものだ。それでも──カンピオーネゾウールはその重圧を跳ね除け突撃を敢行してきた。


「その上で相手もここが最後のチャンスと解かっているんですーっ!!この纏わり着いている光、弱体化の呪いは長くは継続しませんーっ!!それを理解しているんだとおもいますーっ!!」


 だから間隙を与えられない、休ませるわけにも行かず攻め倒さなければ勝機はないっ!!そういう気迫を持った突撃である。


「だからマー君、距離をとって時間を稼げれば──」

「簡単に、言うなっ!!」


 燃料的要素、いわば持久力と回復力で勝るこちらが耐久しつづければ自ずと勝つ……そんな事は百も承知なのだ。が、現実はそんなに甘くない。たちどころに懐まで踏み込まれ守勢を余儀なくされる正宗。ピーカブーのようにガードを固めれば即座に横から回り込むようなボディブローが襲い掛かってきた。人で言う肝臓を殴られれば、弱体化している為に装甲にひびが入り砕け一部は粉砕されていく程の威力となる。


(肉を断たせて骨を絶つ……事すらさせてくれねー)


 敢えて相手の攻撃を受け、その隙に致命打を入れる……それすらも不可能であった。呪いによって肝心要の防御力を封じ込まれ、ここまで戦闘技術に差がある状況では肉を断たせて骨も絶たれる恐れがある。ダメージと共に警告マークが増えて視界を埋めていき、その邪魔さ加減に消えろと念じ消し飛ばす正宗。このままではジリ貧なのには違いは無く、防戦一方であるにもかかわらずダメージだけが増えていく。耐久回復どころか削り取られて行っている具合だ。どこかで反撃に転じなければ、狩られるのは時間の問題となっていた。


(どこかに隙は!?どこかで隙を……)

「ノーズフリッカーゾウッ!!」


 シュババっと残像を残すように放たれたカンピオーネゾウールの鼻が、防御の隙間をスルリと突いてアルヴァジオンを滅多打ちにする。機体のそこら中に亀裂が入り、遂に内部構造術式までもが露わとなり、そこから聖力が漏れ出し始めてしまう。


「あーっ!!あああーっ!!聖力流出ー、このままだと機体維持がぁー」

「逃げるポよっ!!ポッコルをここから出すポよおおーっ!!」


 ヨロけるアルヴァジオンに向け、カンピオーネゾウールがトドメを放つべく両手を広げて両の手の中に漆黒の弾を創り上げる。


「ゾゥアパオォォーン!!カカ、ボンバッ!!」


 最後の力を振り絞り、カンピオーネゾウールの魔力玉がアルヴァジオンに向け──しかし、その魔力収束と照準、そこに生まれた一瞬の間、


「ここですー!!シルバミトンーッ、発射ー!!」


 有無を言わさず、エルマが紋章盤を操作する。正宗の意思を無視してアルヴァジオンの両腕が突き出され、巨大なガントレットごとカンピオーネゾウールに向け射出したのだ。


「っ!!」


 驚愕の表情を見せながらも漆黒弾を撃ち放つカンピオーネゾウール。間合いもない、至近距離でのガントレットと漆黒弾の撃ち合い。双方の片方が互いに激突し相殺され、もう片方が互いの機体に突き刺さる。その漆黒弾の直撃に左腕ごと粉砕され、広がる爆圧に肩部と左胸部、更には左頭部も半壊させられてしまうアルヴァジオン。対し、腹に直撃を受けたカンピオーネゾウールはその巨大なガントレットに胴体を粉砕され機体の形が変わるほどにまで変形してしまう。胸にガントレットを抱えつつ、全身に亀裂を走らせながらフラフラと姿勢を崩す鋼の巨象。


「マー君ー!!今ですーっ!!根性、出してくださいーっ!!」

「……ぁぁぁあああっ!!ああーっ!!」


 正宗とて砕ける機体をそのままに、残っていた意識を必死に繋ぎ止めて瀕死の巨象へと走り出す。

「対弱体化抵抗術式強制解除ーっ!!更にシルバのキッチンミトン装備も解除ーっ!!全身にわたる補助、補正術式を強制停止ーっ!!ついでに機体維持に回していた聖力も全カットーっ!!ポッコル接続後、浮いたそれら余剰聖力を全投入してドラゴンヘッドを緊急強制生成ーっ!!」


「ポ??って、……ぎゃあああああっ!!」


 抵抗術式が消え、忽ちにして纏わり着いていた光がアルヴァジオンを浸食し喰い蝕んでいく。ボロボロと崩壊しながらも振り上げるその右腕に、凄まじい速度で龍の頭部を模した鉄塊が作り上げられていった。ガントレットを生成し維持していた聖力を回収し、抵抗術式に回していた聖力も加え、更には機体を維持させていた聖力までもを注ぎ込んだ。火事場の馬鹿力のように瞬間的に搾り出した聖力を使い切って、最後の一撃を放つっ!!機体は持たない、踏み込むだけで装甲が剥がれ落ちフレームが崩れ墜ちていく。だが──それでもっ!!


「一振りだけならああああ、アルヴァジオン──」


 龍の接近に気付き、カンピオーネゾウールがその目を向けてくる。


「ベクマーッ!!ワニゲータッ!!……まだ、オラは負けるわけには……」


 慟哭にも似たゾウールの絶叫。膝をつきながらも、火花を上げるカンピオーネゾウールの機体が身を起こし、その巨体目掛け──、


「──イグニッションッ!!」


 倒れるように龍頭が叩き込まれた。鈍い重音と共に砕け散るカンピオーネゾウール。砕けた装甲と共に術式の塊は撒き散らされ、直後聖力という火種が奔り飛び埋め尽くすしていた術式という火薬に一斉に──着火させる。眩く花咲いた閃光は空間を殴り飛ばし、その威力はカンピオーネゾウールを塵も残さず浄化していくようであった。


「ゾウアァァァー、やっぱり主人公にはなれなかったゾウ!!所詮オラ達はかわいそうなゾ──」


 そしてその光の中で夢生獣ゾウールもまた、灰色の粒子となって散っていく。自身の放った強大すぎる一撃に残った右腕も弾け跳び、半壊したアルヴァジオンもまた、ゴミのように吹き飛ばされ内部構造をぶちまけながら崩壊し転がっていった。そして地上に咲いた極光の華は、双方の金導夢兵装を灰燼と化し散華していくのであった。

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