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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争29

 土と泥を巻き上げて、金の龍が突撃をかける。その蹴りつける力に地面の方が耐えきれていない。野菜畑として開墾されていた大地は捲れあがり、蹴りつける力を減衰させながらも……それでも龍を加速させていく。


「なんつープレッシャークマッ!!」

「……迎え撃つワニよっ!!」


 それはハイエナに突進してくるバッファローの群れのよう。夢生獣達へと巨大にのし掛かってくるような圧力、それに争うべく彼等は牙を剥く。金龍はその勢いのままに龍頭を振りかぶり、猛然とキメラエクスマキナへ殴りかかってくる。ケンタウロスのような体躯をしたキメラエクスマキナもまた、その熊の巨腕を空中へと伸ばし手の中へ武器を造りだして龍に挑む。


「……キメラトゥマホークッ!!」


 ワニゲータの雄叫びと共に振り抜かれたソレが龍頭と激突する。あまりの衝撃に機体ごと弾かれる両者。だが、蹈鞴を踏む金龍に対し、キメラエクスマキナは四脚にて安定感は抜群。即座に姿勢を整え間髪入れずに追撃へと移行するキメラエクスマキナ。繰り出したるは力にモノをいわせた重い一撃。姿勢の崩れている金龍はそれをガードするので精一杯の様子であった。そのまま鍔迫り合いへと移行し超重量にて圧し掛かる。結果は圧倒的、二脚と四脚では生かせるパワーが段違いだ。圧し負け体勢を崩す金龍に、鍔迫り合いのままキメラバーストフレアを浴びせ放った。キメラエクスマキナの吐く熱線の中へと龍は消え、そのまま突き抜ける熱線は彼方まで焼き払っていく。


「……や、やったワニかっ!?」

「馬鹿、それはフラグだクマッ!!」

「押してる、こっちが押してるゾウッ!!このまま押し切るんだゾウッ!!」


 眼前が朦々と蒸気と土煙で埋め尽くされている。その中に、目測で再度キメラバーストフレアを放つべくエネルギーを溜めるキメラエクスマキナ。


「──ッ!!」


 嫌な気配に咄嗟にトマホークを盾にすれば、眼前の爆煙を突き抜けてくる金色の体躯。横凪ぎに振るわれた龍頭は刃物とかそう言うレベルのものでなく、ただ単に在る鉄塊……鈍器そのものであった。その豪撃を受けたトマホークは一撃の下に折れ曲がり……否、そのガードごとキメラエクスマキナの脇へとメリ込んだ。脇腹装甲を潰し砕きつつ、それでも何とかトマホークを捨てた熊の豪腕が抱え上げ受け止める。


「だ、大丈夫ゾウかベクマーッ!!」

「まだ……いけるベアーッ!!」


 抱える腕に力を込め、必死に龍頭の動きを封殺する。そんな場合、鍛え上げられた戦士であれば武器から手を放すなりして得物には執着しない。──しかし、


(案の定、躍起になって武器を引き抜こうとしたゾウねっ!!)


 アルヴァジオンは藻掻き、鉄塊の拘束を解こうとしている。得物に固執して隙を晒すのは素人の所作そのものだ、ソコこそが勝機の基点となるっ!!


「ここだっ!!ここで決めるゾウよっ!!マストパワー、オンッ!!」


 ゾウールの魔力が暴力的に膨れあがり、呪いとなってロマンスハートへと注がれる。それを起爆剤としてロマンスハートは吠え上がり、そこから吐き出される超常的な力にキメラエクスマキナの全身が侵されていく。膨れあがるパワーにモノを言わせ、抱えた龍頭を引っばり金龍ごと引き寄せる。


「熊掌打クマッ!!」


 龍頭を抱えた腕とは別の、もう片方のクマの手が破壊的な掌底となって龍の鱗を粉砕する。腹部へと突き刺さる熊の豪腕。たまらず後退し膝を折り沈んだ龍に、キメラエクスマキナの巨大な影がのし掛かる。


「……踏んでぶっ壊すワニッ!!」

「ゾウアアッ!!」


 ゾウの前足を大きく振りかぶり、叩き付けるように金龍の上からストンピングすれば、巨大なクレーターを造りながらその底へと龍の姿を沈み込ませた。二度、三度と全重量を魔力ごと叩き付け、その度に龍は穴底深くへと埋まっていく。


「サーモンハントッ……クマッ!!」


 それを水中の鮭をすくい上げるように、地中の龍を大地ごと大きく捻った熊の豪腕が吹き飛ばす。必見すべきは龍を土砂ごと数百メートル抉り飛ばすそのパワー。水平に飛んだ龍は田畑の上を強かに転がって、マンションへと突っ込みやっと停止した。猛追するキメラエクスマキナは田畑をその豪脚で抉り飛ばし、土煙を上げながら超重量の巨体を爆走させる。そのまま起き上る龍の直前で180度ターン急旋回し、十分な加速と遠心力を乗せた超重の尾が弧を描き龍へと襲い掛かる。


「……クラッシャーテイルワニッ!!」


 一拍後に振り抜かれるのは鰐の尾。殴打の衝撃に周辺民家一帯が消し飛び、龍の体躯はマンション住宅を束で粉砕しながら叩き飛ばされた。派手に転倒しながら瓦礫と土砂の中へと沈む龍。キメラエクスマキナの超パワーによる連撃を受け、流石にダメージを受けたのかその動きが止まった。その時を待っていたかのように、キメラエクスマキナが天を仰ぎ咆吼を上げる。


「「「消し飛べ化け物がっ!!」」」


 夢生獣達の声が重なり意志が融合する。欲しかったのはその間隙、大技を決める為の溜め一時。異常出力を出すロマンスハートからポンプされた超魔力が、キメラエクスマキナの全身隅々へと駆け巡る。バックステップで距離を取りつつ、両腕を掲げ遙か上空へと跳び上がった。


「「「行けっ!!敵を砕けっ!!我等が鉄槌よっ!!」」」


 その上空で、改変させた夢想を形にしながら直下の龍へと振り下ろす。さすれば、突如として現出するのは街を覆う程の超質量。燃えながら落下するソレは、倒れる金龍目掛けて落ちていく。一撃で国ごと消し飛ばすであろうその塊、落下しながらも質量を増大させ続け巨大となっていく。流石に体勢を立て直す金龍、だがもう避ける手立ても時もない。直撃を確信した夢生獣達、しかしその龍のとった姿勢に戦慄を覚えた。


「ポッコルさんー、直ぐに出して下さいーっ!!」

「えーと、これこそルルグランテに伝わる“シルバのキッチンミトン”っポー!!これはあのシルバ婆が──」

「──そんなのどうでもいいんですー、マー君っ!!これで受け止めますよーっ!!」


 見る見るうちに金龍の手にしていた龍頭が塵のように消え、その強靱な両の手に巨大な装甲が覆い被さっていった。人型をしているとはいえアルヴァジオンは龍の姿をしており異形である。その二の腕から下が巨大な籠手、アンバランスな巨大なガントレットを着けた腕へと変化していた。その腕で落ちてきた烈火の質量を──受け止めに入ったのだ。さもありなん、直後衝撃波などとは生ぬるい爆裂のような波動が広がった。運動エネルギーが一挙に熱量へと変換され、大地を焼く炎となって燃え広がっていく。必死に支えようとする抵抗もむなしく、次第に圧し潰されていくアルヴァジオン。本来、落下してくる隕石を受け止め、押し返そうと耐えるなど有り得ない出来事だ。落下は一瞬、その瞬間を耐えたるなど本来有り得ない……有り得ないのであるが、夢の中でなら可能とするのが夢生獣と金導夢兵装だ。


「ま、まるで漫画の世界クマッ!!」


 押しつぶそうとする巨大隕石、否、島の如き質量を金の龍が支えている。踏みしめた脚は大地へと埋まり込み、それでも耐えられず地盤ごと大きく沈み込みクレーターが広がっていく。基礎から砕かれた建造物が周囲に舞い、質量に押され暴れ狂う風に巻き上げられ燃え飛び散った。引きちぎられた電線がのたうち火花を咲かせ、水は竜巻となって踊り狂っている。灼熱の隕石が放つ熱量に地表は焼け焦げ、そんな中落下を押し返そうと龍は腕に、足腰にと力を込めている。


「……しぶとい……ワニッ!!」


 上空にて技を繰り出すキメラエクスマキナもまた、龍の抵抗を受け押し切れない事に焦りを感じていた。これだけの改変、力を使って放った一撃なのだ、徒労に終わった場合夢生獣側の損失は計り知れない。世界の夢に介入し、龍を殺す為の攻撃を創りだしたのだ……魔力も体力も、そしてイメージを扱う精神力さえもつぎ込んだ攻撃なのだ。拮抗している事自体、有り得てはいけなかった。力を絞り出しすぎた夢生獣達の身体は震え痺れをきたしてきている。それでもその身体を叱咤して、龍へ質量をぶつけるべくその腕を、深く深く押し込んだ。連動するように勢いづいた超巨大質量だが、押し潰し……爆発するには至っていない。この一撃で龍を下し、その爆発で地上総てを焼き滅ぼし、溢れ塗れる怨嗟と魂を糧に同胞達を出し抜こうとするものの、ギリッギリで凌がれている。


「……なんというパワー、なんという底力ワニッ!!あと一歩、あと一歩が押しきれないワニッ!!」


 理由は単純だ。イメージで創り上げたメテオ、それを金龍アルヴァジオンもイメージで弾き返そうとしているのだ。堪え忍ぶ龍から猛り狂う聖力の波動を感じている。


「……砕けろクマ!!この星ごと砕けてしまうクマアッ!!」


 天を覆う質量は落下しさえすれば地球そのものすら粉砕する超質量だ。夢生獣達の必殺の一撃。全てはイメージ……目の前の金の龍、それを殺す為なら星すら破壊するという夢生獣達の決意の塊である。それを、潰されながらも耐える龍の姿がある。


「つ……潰れる……デカ過ぎる……」

「ポアアア!!しっかりするポ馬鹿正宗がっ!!もっとイメージするポッ!!その隕石はそんなにでかくないポッ!!せいぜい大玉転がしの大玉位だポッ!!」


 ポッコルの言葉に反論する余裕もない正宗。潰され行く龍はまるで釣り天井に潰されて死ぬ役者のようだ。空が落ち、圧し殺しにかかってきている。アルヴァジオンの全関節が火花を上げ──もう、持たない。夢生獣達に自然と笑みが浮かんでくる。このままならば“勝てる”流れになっている。


「……重い……潰れる……重いっ……」


 その呟きに、龍を圧し潰す質量がさらに拡大していく。


(勝てるっ!!勝てるゾウッ!!奴はココでの戦い方に慣れていないっ!!勝機だゾウッ!!)


 他の夢生獣も同じようにほくそ笑む、相手は選択を間違ったのだ。──だが、アルヴァジオンはタンデム機、搭乗者の選択を補助できる者が傍にいた。


「マー駄目ですーっ!!重いと思ってはー、この淫夢空間の中では本当に重くなってしまいますーっ!!」


 イメージを再現するのが夢の世界。それは良い事ばかりだけでなく、悪い方向へも作用するのだ。事実、正宗が支え重いと思ったが為に、一気に龍を潰す質量は超大化していた。


「無理でも口にして下さいーっ!!馬鹿げているとしてもー、何の意味もないとしてもイメージして下さいーっ!!それが切っ掛けとなる筈ですーっ!!押し上げているのは大玉転がしの大玉ですーっ!!」

「──お、大玉──」


 その一言で、一気に巨大質量の大きさが小さくなった。質量が減ったと言う事は、軽くなったと言う事だ。軽くなれば、圧し掛かってくる物体はそんなに大きくなく、重くないのかも……とイメージが好転していく。忽ちにアルヴァジオンから立ち上る聖力に絡め取られ、天を覆う質量が一回り、また一回りと小さくなっていくっ!!実際に縮小化し軽量化していくのだ、その度にイメージも明確に、より強い改変となって加速していく。


「……させない、ワニよっ!!」

「無力化される前に一気に決めるクマッ!!」

「ゾウアアアアアアア」


 危機感を感じた夢生獣達も質量を維持しようと魔力を込め抵抗し、そしてその破壊力がある間に質量を叩き付けようと躍起になる。イメージとイメージの上塗りの描き合い。自身のイメージを現実化させようとする妄想のぶつけ合いだっ!!


「……落ちろ、ワニィィイイッ!!」


 四の五の言わずにぶつけることに全力を注ぐ。勝負の時なのだっ!!勝利の刻なのだっ!!ならば這ってでも、泥水を啜っても、強引にたぐり寄せねばならないっ!!拮抗している内に……拮抗を維持できている内にっ!!でなければ──、


「……ゾウ……ァ……」


 強引な力業の持続に、無理がたたる。ゾウールのマストパワーが限界に達し、ロマンスハートに……ヒビが入る。


「おも……苦しい、どけっ!!ぁぁぁあああ、どけーっ!!どけどけどけどけーっ!!どけよっ、どけっ!!この、デカブツがああああっ!!」


 龍の咆吼と共に聞こえる叫び声っ!!暴力的に膨れあがった聖力で無理矢理に灼熱の質量を押しどかすっ!!“どかす”という純粋なイメージだけを暴走したように溢れさせた正宗。それが凶悪な聖力の後押しにより、弱まった抵抗を一気に上まわれた。圧し潰すまでもなく、押し返されたような質量に亀裂が走り……粉砕四散させて消し飛ばしてしまう。爆炎が広がる中、流石に力を使い果たしたのか這いつくばるように崩れ墜ちる龍。しかし、ゆっくりと地上へと戻ったキメラエクスマキナもまた、膝を屈して力なく項垂れていく。


「や……やぶられたゾウ……」


 膝を付くキメラエクスマキナは限界に近かった。もともとが無茶な合体だった上に、短期決戦へ向けての限界以上に及ぶ裏技ドーピング。それをフル活用しての有り得ない規模の改変攻撃、機体にガタが来て当然だろう。無理を通した結果メイン出力機関のロマンスハートにヒビが入り一気に出力低下している。関節という関節が悲鳴を上げ、各機体を構成する夢生獣達もまた、肩で息をするように疲弊しきっていた。各部を修繕補修する力はもう、残っていない。そのキメラエクスマキナの眼に、陥没したその底にいる龍がその身を起こす姿が映る。


「……奴はまだ、……動けるクマか!?」

「……大概にしてバケモノワニ……」


 陥没したその場へと至る所から地下水が流れ込み、焼けて熱せられた大地が蒸気に隠されていく。その中を、歩み、更に走り加速してくる金色の怪物。白い蒸気を突破してくる獰猛な蒼の眼光、ゾウール達の命を取るべく一心に突貫してくる。


「体勢を立て直すクマよっ!!」

「来るゾウッ!!」


 土砂をはね除けながらヨロリと起き上がるキメラエクスマキナ、しかしその動きは重鈍過ぎた。先程までの精彩さは一気に鳴りを潜め、力の衰えを隠すことすらできないでいる。瞬く間に襲い掛かってきたのは巨塊のような龍の拳。かろうじて立ち上がったキメラエクスマキナも負けじと残る力の豪腕で迎え撃つ。激突する両機の拳、しかし──、


「っ!!」


 声を上げる間もなく龍の拳が熊の爪を砕き折り、その腕ごと粉砕し突き抜ける。キメラエクスマキナの腕を爆散させた龍の拳は、その勢いのままにキメラエクスマキナの胴体へとめり込んだ。歪み、変形し、血潮のように黒の魔力が流れ出る。


「グ、マ゛ァ゛……」


 そのパワーは今までの龍のソレではない。先程の超質量を支えたパワーと熱耐性。装着されたガントレットによって文字通り破壊的に引き上げられたパワーが、拳の一撃にしてキメラエクスマキナの胸部を破壊しつくしたのだ。搭乗していたベクマーの安否は……ブラックアウトして機体内のゾウールとワニゲータからは確認できない。


「大丈夫かゾウッ!!ベクマーッ!!」

「す……少しばかり、まずいクマ、ね。本来クマは、最強なのクマが……」

「……最強の割には苦戦しているワニね、ベクマー氏はもう下がった方がいいワニ、後は任せるワニよっ!!」


 ワニゲータが合体を解き、ベクマーを待避させようとする……が、それはベクマーワイズマン側から拒否されていた。


「そりゃあそう、クマ。最強たり得るには、ベクマーには、あと一つ足りない要素があると、さっき気づいたクマ、よ」


 よろめくキメラエクスマキナだが、その腕と胸部が修繕修復されていかない。キメラエクスマキナが龍とタメを張れた根源、その圧倒的な魔力出力が急速に失っていっているからである。


(ロマンスハートの限界、ここまでかゾウッ!?)


 夢生獣の金導夢兵装の三機合体には、やはり無理が過ぎたのだ。ロマンスハートにヒビが入り出力を維持できなくなったことで、合体した巨体が全てデッドウェイトと化してきていた。同等の闘いが出来ていたのはここまで、これ以上は──不可能なのだ。


(どうするゾウ……手詰まりだゾウッ!!)


 三体の夢生獣達が一丸となっても消し飛ばせない怪物が目の前にいる。金龍──アルヴァジオン。聖力の塊、力の化身たるその龍は、自身のその力を再び振るうべく、巨大な腕を振りかぶる。しかしもう、キメラエクスマキナには避ける力さえ残っていない。


「緊急分離……クソ、間に合わないゾウッ!!」


 迫る殺意に機体が言う事を聞いてくれない。激戦の負荷が一気に吹き出していた。


「そう、ベクマーには……美少女要素が足りなかったクマーッ!!」


 その迫る凶器に向けて、ベクマーは敢えてキメラエクスマキナを前進させた。


「グゥ…マ゛ァ……」

「「ベクマーッ!!」」


 龍の腕がキメラエクスマキナの胸部を容赦無く貫き粉砕する。片腕と胸部、ベクマーワイズマンの大部分を抉り飛ばされたと言ってもよかった。というよりも、ベクマーワイズマンの原型すら解らぬほどに破損、変形してしまっている。そんな状態でもキメラエクスマキナの残る左腕が動き、身を貫いた龍の腕を掴み、逃がさない。最後の力で、その腕だけは放しはしないと掴み上げる。。


「美……美少女要素さえそろえば、キュートさも兼ね揃えるクマは最強だったクマよ。……後は、……後は頼むクマ……よ……」


 ワニゲータとゾウールに届く声と共に、グシャグシャになったキメラエクスマキナの胸部から茶色の粒子が解き放たれた。


「ベクマァアア!!……了解したゾウッ!!」


 そう応えるゾウールだが意志に反してキメラエクスマキナは動かない。ロマンスハートの出力は下がる一方で、それに注ぐエネルギー源も三分の二となった。もう、逆転の芽は──無い。動けぬ合体獣を屠ろうと、龍がその拳を引き抜きにかかる。だがベクマーの残したその腕が、龍の力に抗っていまだその腕をつかみ上げている。それはベクマーの意志と、彼が残した最後の改変の力。それを強引に、有り余るパワーで振りほどこうとする金龍。


(このままだと胴体ごと真っ二つだゾウッ!!)


 全力を込めたアルヴァジオンの力に既にひん曲がったフレームは耐えられる筈もなく、内部を引きずり出されるように分解する未来が見える。未だ合体を維持できている事自体が奇跡に近く、分離し単体となっては怪物を倒せるだけの破壊力を絞り出せない。


「……だったら、借りてくれば良いワニよっ!!」


 ワニゲータの叫びとともに、溢れんばかりの魔力がキメラエクスマキナの身体を駆け抜けていく。突如として異次元な魔力がロマンスハートに注ぎ込まれ、焼け焦げひび割れたロマンスハート内に再び火が灯り始めていく。強制的に流入された超魔力が強心薬のように作用して、爆縮膨張し炉心たるロマンスハートが一瞬息を吹き返す。二度はない。その一瞬、灯る炎にガソリンをぶちまけるかの如く、超魔力という燃料をぶち込んで臨海寸前以上にまでその力を膨れ上げさせる。


「ワニ……ゲータ……」

「……ちょっと100日分程前借りしてきたワニよ」


 そんな奇跡が起こったのは、それが夢生獣の起こしたものだったからであろう。自身の事も厭わない、確固たる決意在る妄想。その命の力で壊れたハートが一瞬息を吹き返し、ロマンを叶えるべく炸裂するという格好いいイメージだっ!!


「ワニゲータア!!!!」

「……ゾウール氏、後は任せるワニ。TSしたかったベクマー氏とは違い、こっちに来るのは借金取りワニ。……あ、反動が来るワニ、さらばワニよ」


 決して相容れぬ、それでも共に戦った同胞達はすべてを託し、散っていった。あり得ぬ力を噴出するキメラエクスマキナ。臨界を超えた力は制御の域を超えている。自壊しながらも龍へと食らい付き、掴み上げた腕を放さない。そして──、


「ベクマァアアアアッ!ワニゲタァァァアアアアッ!!」


 ゾウールの慟哭と絶叫を残し、下半身であるカンピオーネゾウールを切り離すと閃光と化す。デストロイワニゲータとベクマーワイズマンの残骸を利用した臨界超魔力の開放。音もない、破壊もしない、ただその閃光は触手のように蠢いて、龍へと纏わり付き覆いしつくした。それは呪いの光、質量を持たぬ意志とイメージの塊。倒れ藻掻く龍だが光は剥がれず、その体内にまで光は浸透し始めているようであった。


「…………」


 ゾウールは目を瞑り黙祷を捧げた。目の前に立ちはだかったのは理不尽な存在であった。ゾウールは今、巨悪の前になすすべ無く横たわる正義の使者達の心境だ。仲間達と協力し、全力を出し切った上で、尚もその上を行かれる程の絶望的なまでの力量差。個であったのであれば、そこで心折れていたに違いない。物語の主人公にはなれず、その圧倒的な暴力と力の前に散っていたに違いない。……しかし、今のゾウールは違う。あの光は仲間達の輝きである。光に纏われた龍はその力の大部分を封じられているように弱体化している。二体の夢生獣の魂身を込めた術式が、戦友の残した力が道を造ってくれている──勝利への道をっ!!されどいかな100日分の前借りの力をロマンスハートで増幅したとはいえ、あの怪物を長時間弱らせておけるとは思えない。これは仲間達が残してくれた最後のチャンスなのだっ!!主人公補正が、刻が“勝て!!”と言っているに違いないっ!!


「行くゾウッ!!破滅の龍、アルヴァジオンッ!!」


 見開いたゾウールの眼に映るのは手負いの龍っ!!全ての想いと共に、今こそ龍殺しの偉業を成すべく決死をかけるっ!!

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