夢生獣大戦争28
それは新たな結果を求めた故の着目であった。ワニゲータは考えていた……より強く、もっと強くなるにはどうしたらいいのかと。夢生獣の中にさえ自身の力を上回る奴がいる。この世界にはそれすらも殺せる怪物がいる。もっと強くならねば生き残れない、もっと強い存在へと至らねばならない。その為に考えに考えたのだ。
(……今、これまで以上の力を得るには何かブレイクスルーが必要ワニ。しかしそんな時はない)
夢生獣達は互いに牽制し合い、ユメミールからも自分達を狩りに追っ手が来るかも知れない。なによりも、逃げ込んだ世界には自分達を殺せる怪物が住んでいる。
(……ならば自身の力ではなく、道具の進化はどうワニか??)
それは夢生獣的視点ではなく、人間的な視点、着想であった。より強い武器を、より使いやすい道具に可能性を求めたのである。自身の戦力を正確に把握し、持ちうる武器を精査して、その上で必要な物、出来うることは何か??それを洗い出す。この世界へと辿り着き、潜伏している間に研究したものこそが金導夢兵装の知識であったのだ。元来“人”がより強者へと立ち向かうべく開発した術式。その有用性を見いだした夢生獣達は自ずとそれを取り入れ無意識に運用してきた。本来決戦兵装であったその術式を、人は更に通常の武器として運用できるまでに改良を加えた。ワニゲータが着目したのはそこであった。歴史を紐解いたことで解ったことは、ワニゲータ達が操るソレが本来の術式ではない物で、デチューンされたものであるという事。ならば本来の姿、真の金導夢兵装の術式を手にいれれたのならば自身を強化、より高みへと到れるのではないか??と考えたのだ。結果としてソレは無理であるという結論に達するのだが、その過程で別の可能性にも辿り着いていた。それはデチューンされているからこそ富んだその汎用性。追加、改変を柔軟に受け止めるその“汎用性”にもワニゲータは目を止めていたのだ。この世界の知識の中に、その柔軟性を行かせるものがある。しかし、それは夢生獣にとっては雲を掴むようなものであった。何故ならば彼等は群れる事のない、特出した個性の塊だったから。ロボットアニメに見る合体とは、他者が手に手を取って力を増すものだ。普段ならば夢生獣には無理な話なのだ。だが、共闘している今ならば、他者のその手を掴む事は不可能ではない。
「……確かに我等は三位一体とは成れないワニ。しかしっ!!“三本の矢”ならば実現は可能ワニッ!!」
先程も一機の障壁の力では防ぎきれなかったであろう龍の息吹も、三機の力を結集して防ぎきったのだ。相手が“三位一体”で来るのなら、こちらは三本の矢、即ち“三位一体”で挑むと言う事なのだ。そう、一本で折れるのなら三本で。足りないのなら、足せばいいっ!!
「……一体一体をつなぎ合わせ、より強い個体へと合体するっ!!ロボットアニメの定番ワニッ!!」
「いや、金導夢兵装に合体機能なんてないクマよ??頭おかしくなっちゃったクマか??」
興奮し吠えるワニゲータはベクマーの空気を読まない突っ込みにも動じない。そんなデストロイワニゲータの肩に手を置き首を振るベクマーワイズマン。
「考えても見るクマ。車の上にパワーショベルを乗せて、ショベルのパワーがアップするクマか??普通に考えて合体なんて強度が絶対的に足りなくなるクマ。接合部分は脆くなるクマし、重量が嵩む分駆動系や動力部に負担を多く掛けるクマ。ソレでていてパワー不足で重鈍とか、とんだ欠陥品って話クマよ??だったら完成された単体をもっとブラッシュアップして……」
「……黙れこの、喰い殺されてーワニか熊野郎っ!!」
「変な所でワイズマン要素出してんじゃないんだゾウッ!!」
動じはしなかったが怒りはした。
「……そんな事は諸々わかっているワニよっ!!つーかそれを何とか出来るのが我々という存在じゃないワニか??」
「ど、どういうことクマ??」
「察しも悪いゾウッ!!なにをもってワイズマン要素付けたんだゾウ??つまりだゾウ、現実で難しいのであればオラ達夢生獣なら……」
そこまでゾウールに言われればベクマーにも理解が及ぶ。確かに合体とか変形とかは現実的には難しいのであろう。いちいち変形させ合体する手間が必要となるし、それらの為の可動部や部品点数も多くなりメンテナンス性や強度も下がる筈だ。……やはり、変形合体などはロマン的要素の方が意味合いの方が強い。だがしかし、ロマン的要素が強いからこそ、この夢の世界では威力を発揮するのだ。合体することで何故か出力機関も強化されるのだ。そこには搭乗者の技と力と意志の協調が必要で、そうすることで何故かロボの力は増幅強化されのだ。ソレこそが“合体”なのであるっ!!
「……夢生獣超特急っ!!乗り遅れるなワニよっ!!」
デストロイワニゲータを先頭に、ベクマーワイズマンとカンピオーネゾウールが続く。稲妻の紐で連結された三機の金導夢兵装達は浮き上がり、そして遂に合体が始まる。カンピオーネゾウールを下半身に、ベクマーワイズマンを上半身に据え、デストロイワニゲータを……跳び上がってきた金龍の龍頭が叩き壊した。
「あっ!!」
「何するクマーっ!!」
ゾウールとベクマーの絶叫。突如として連結を解除された金導夢兵装達が自由落下で地面へと激突する。龍頭で叩き落とされたデストロイワニゲータに至っては背中が陥没変形し、腹側に衝撃が抜けたせいか内臓破裂するように腹に穴が開いてその内部から部品が転がり出てしまっていた。
「ちょー、マー君ソレは流石にどうかと思いますよーっ!!合体中に攻撃するなんてマナー違反じゃないですかーっ!!」
「マナー!?マナーってなんだよ!!お前等の言う様式美とかよくわかんないんだけど!?こういうのってもっとこう、隙を造ってその間にやるものじゃないの!?」
変身、合体や変形中に攻撃を仕掛けるなど聖士や夢生獣からすれば御法度なわけなのだが、正宗にはそれらの機微が解らない。昨今の勇者やヒーロー系アニメでは合体の隙は作る物なのだ。
「なんてことクマっ!!これが“感性の違い”ってやつクマかっ!!」
「合体中に襲うとは、ゴミにも劣る所行だゾウ」
「そーですよーっ!!闘いといえど礼儀作法はあるのですよーっ!!」
「いや、そんな事言われても、俺地球人だし。目の前でちんたら合体してる方が悪いだろ??」
「ポッコルは正宗の意見に賛同ポ。だから早くポッコルを自由にして欲しいポ!!」
暫く激しい議論が交わされ、合体からやり直すことで場は事なきを得た。一人貧乏くじを引いたのはワニゲータである。
「……まったく酷い眼にあったワニ。ソコ!!今度は大人しく見ているワニよっ!!」
改めてアルヴァジオンに釘を刺し、
「……夢生獣超特急っ!!乗り遅れるなワニッ!!」
デストロイワニゲータを先頭に、ベクマーワイズマンとカンピオーネゾウールが続く。稲妻の紐で連結された三体の金導夢兵装達は浮き上がり、そして遂に合体が始まる。それは夢生獣が持つ奇跡の力。夢の力を借りて成し得る、現実での不可能を可能とする事象。そう、夢の世界なら何でも出来るっ!!それは例え金導夢兵装の合体でさえもっ!!カンピオーネゾウールを下半身に、ベクマーワイズマンを上半身に据え、デストロイワニゲータが分割され頭部、背部を背びれに、尾っぽをカンピオーネゾウールの尻尾部分に接合していく。装甲が展開しフレームが伸びて噛み合い、油圧シリンダーが動作し配線が接続される。手首が回転しながらせり出し、ロックがかかるとその無骨な指を開いて閉じて見せた。そして現れるその姿は超獣、まさに幻想の合成獣。ゾウの四肢で体躯を支え、クマの力で目標を粉砕する。ワニの顎が食らい付けば、その超重を乗せた尾っぽで相手を圧壊させるのだ。
「「「超夢生獣っ!!キメラエクスマキナッ!!」」」
有り得ない事を可能とするのが因夢空間。ソレを操る超獣こそが夢生獣。今、ボッチ思考の単体生物の頂点共が、己達の生存権を賭けた戦いの為に立ち上がりなんとかコミュニケーションを取りつつ手を取った。その成果として誕生しうるは鋼の超獣、
「さぁっ!!行くんだゾウッ!!」
「我等の力を見せつけてやるクマッ!!」
「……キメラエクスマキナ、出撃ワニッ!!」
50メートルを越す巨体となった合体金導夢兵装が吠え滾る。それを動かすのは金剛魔力炉心ロマンスハート。いままでの金導夢兵装とは格段に違う出力をもって力の権化に相対する。猛るゾウの如き突進で、頑強豪腕なクマのような腕が龍に向かい襲い掛かった。迎撃する金龍の龍頭。横凪ぎに振るわれたソレをガッシリと受け止めると、キメラエクスマキナは勢いそのままに金龍にチャージを敢行した。はね飛ばされた金龍は山岳の斜面に激突し、大きくバウンドすると土砂と共に沈み込む。
「いけるっ!!いけるクマよっ!!」
質量、パワー、ソレを支える強固なフレームと装甲。段違いの力強さに歓喜するベクマー。
「しかし、わかっているゾウなっ!!」
「……想像以上に魔力消費が激しいワニッ!!短期決戦ワニよっ!!」
その代償は莫大に消費していく己の魔力である。正直に言ってゾウール達夢生獣ですら長時間の戦闘維持には無理が出る。三体の心は短期決戦にて満場一致してみせていた。
「……おおお!!キメラバーストフレア、ワニッ!!」
尾っぽの先端から青白く背びれが発光していき、キメラエクスマキナの口から魔力の熱線が穿たれる。倒れ込む金龍に向けられたソレは一瞬で走り抜け山岳を貫通し連峰を次々に消し飛ばした。莫大に舞い上がった土煙が天へと続く巨大な柱を何本も築き上げている。
「とんでもない……クマね」
それは山々を軽々と貫通して見せたキメラエクスマキナの力へ向けた物なのか、それとも、その直撃を受けて尚、煙から這い出てきた金龍に向けた物なのか。だがさしもの龍とて、その金の鱗にはヒビが入り所々に至っては砕けてさえいる。ダメージは与えたようではあるが、歩み寄る間にもその損壊を修復してみせている。
「なんてことゾウッ!!アノ怪物、更に一層装甲に魔力を注ぎやがったんだゾウッ!!」
堅く固く硬い金の装甲。その上であの回復力、
(消耗戦となったら勝ち目はないゾウッ。短期決戦で決めきるしかないっ!!)
より強度を増したというのだから、打撃を与えるにも相応の攻撃を繰り出すしかない。技巧的な闘いなど不要、一撃一撃に全力を込めて壊しきるしかないのだ。
「苦戦泥仕合などもとより承知だクマァ!!」
「……生存権を賭けた戦いワニッ!!こうでなくてはなっ!!」
伝わってくる同志達の気概にゾウールも口角を上げた。強い相手を下し、自分達の存在の方が強い事を証明したいっ!!
「その通りだゾウッ!!この戦いに勝ち、オラ達で雌雄を決するんだゾウッ!!」
唸りを上げるロマンスハート。キメラエクスマキナの全身に莫大な魔力が満ちあふれ、夢生獣達の意志も統一されていく。正に三位一体。それを見下ろす空のムーブメント達が少し、いま少しと身じろぎをし始める。因夢空間の限界点も近い。圧倒的存在感を放つ金の龍を喰らうべく、合成の獣が立ち向かう。怪物同士の決闘はついに最終局面へと向かい始めた。




