夢生獣大戦争24
「フラウニーナが時間を稼いでいるポッ!!ほらほらエルマイールも根性見せるっポよっ!!」
「はぁぁぁああああああー………………やっぱり駄目っぽいですねー」
正宗の前で踏ん張るような姿勢で気合いを入れる魔法少女、しかし即座に音を上げる。彼女としては全力で聖力を練り上げているのではあるが、正宗は首を横に振るだけなのだ。
「全然反応しないぞ」
「やっぱ他の条件があるポかね??それともラブリーアイシスじゃないと反応しないってことポ??実は正宗アイシスのこと好きだったりするポか??」
「えっ……いやっ!?……そんな急にそんな事いわれてもわたしとしては──」
「ねーよこんなゴリラッ!!俺はもっとこう清楚でたおやかな大和撫子──」
ポッコルの戯れ言を正宗が否定した直後、彼めがけ落下するのは巨大な腕。正宗はそれから逃れるように横へと跳び転がり出る。拉げたウルフェンの腕だった物が突き刺さり、轟音と共に土煙を上げた。正宗が睨むように目を向ければ、半壊したウルフェンの破損した眼光もまた赤く正宗を見つめている。
「そういう所だぞっ!!そういう力で何でも解決しようとする態度がゴリラだって言うんだ!!」
「──んなっ!!この、ぶっ殺してやるっ!!」
怒りにまかせ本気で正宗を潰しに掛かるウルフェン。ギリギリ異音を響かせ、各部から異常な火花と液体を撒き散らし始めた。呆れかえったポッコルが強制的に正宗を引っ張り、双方を怒鳴りつける事で場を収めようとする。
「お前正気ポか正宗、本当に潰される所だったポよっ!!ここは嫌でも顔を青くして謝っておくところポ!!ラブリーアイシスもラブリーアイシスポよっ!!正直、人に向けて金導夢兵装でやることじゃないポ、聖士として恥ずべき行動ポよっ!!」
「金剛聖導夢想兵装な!!しかしお前等妖精族に正論言われると腹が立つっ!!」
「けどなポッコル、脳筋にはちゃんと言ってやらんと、俺の気がすまんだろう??」
何故か二人に攻められることに肩を落とすポッコル。正直こんな程度の低い喧嘩をしている場合ではないのだ。
「……こいつ等は駄目ポね。それはそれとしてエルマイール。ポッコルが思うにアイシスの時はもっとこう……、ゴソッと聖力が減る感じがしてるポよ」
「……あー、となると瞬間的な聖力放出量に問題点がある可能性がありますねー。確かにラブリーアイシスのソレは凄いですからねー……いや、でしたらー……」
少し考える姿勢を見せたエルマイールが符を取り出して放り投げる。符は地面に落ちるとエルマイールを中心として幾何学的な紋様陣を描きあげ、うっすらと彼女照らし上げた。
「聖力変換術式と聖力収集術式を用いて周囲の残留エネルギーから聖力を造りだして固定しますー。この際ラブリーアイシスも兵装解除して下さいー。ウルフェンを構成していた聖力も回収しますのでー」
半壊しているとはいえ金導夢兵装を造り上げていた聖力なのだ、その量はかなりの物といえる。ロスが出る為完全に回収できるわけではないが、その量はかなりの物となる筈だ。
「よく即興で術式ってのを用意できるな、予め準備してたんか??」
「いえいえー。マー君家で造った術式をちょっといじっただけですからー。地脈の力を聖力返還した術式の応用ですよー。周囲の地脈からエネルギーを取り出し、防甲へと転送していましたよねー??その転送術式を応用して周囲のエネルギーを聖力変調術式を介してわたしへと転送ー、わたしがフィルター代わりを努めてまとめ上げて放出する事で起爆の為のいわば前金を造りあげますー。もし、その溜めた前金にも反応がなかったならー、その集めた聖力を改めて変調術式を介してさせてアイちゃんへと送り込む算段ですー。無論ロスを考えれば本来はとるべき手段ではないのですけどねー。それでも駄目だった場合はもう手を上げるしかないですねー」
そう言って質問してきた正宗を下がらせると、エルマイールはウルフェンへと視線を向けた。彼女の視線を受けウルフェンも頷いて返す。
「……了解です、いきますよエルマイール」
「はいー、いつでもどうぞー」
途端、激しい光に包まれ正宗達を覆っていたウルフェンの機体が粒子へと帰っていく。その中から人影が降り立つが、そのアイシスは着地するなり地面へと倒れ込んでしまった。
「おいっ、大丈夫か」
「すみません正宗、少し肩を貸して下さい」
服の至る所が焼け焦げ、いや、その下の肌も焼けておりとても大丈夫そうな状態に見えない。夢生獣ゾウールの一撃は、法衣すら維持できなくする程までアイシスにダメージを与えていた。
「正宗っ!!どうポッ!!」
ポッコルの声に顔を向ければ、エルマイールの前に輝きが鎮座している。エルマイール、アイシス、ウルフェン、そして戦場に散って舞ったエネルギーをかき集めて作り出した理力の塊。まるで太陽のようなその輝きを目に、正宗が手に取った宝玉に意識を向ける。
「よしっ!!いけるぞっ!!リヒカバイフィ=ニショケミューコン=カインゼロイカ=ユメソウサ!!」
一瞬にしてエルマイールが形成していたその光球を吸い込むと、宝玉が太陽のような輝きを放って見せた。その光を受け、ポッコルも光り輝き、その輝きを腕へと収束させていく。
「解錠術式承認ポッ!!顕現!!アルヴァジオン……ッポー!!」
ポッコルの手に築き上げられた光の鍵が、今度は光球の中へと吸い込まれていった。忽ちにして弾け跳ぶ正宗の服と、エルマイールの法衣。
「あーっ!!法衣すら一瞬の抵抗もなく弾け跳んじゃいましたーっ!!これは凄いですねーっ!!」
しゃがみ込み顔を伏せる正宗に対して、自身に起きたことに興味津々でたまらないエルマイール。嬉々として自身に起きている事をデータとして目の前の紋様ウインドウに表示して眺めている。
「凄いー凄いですー!!一体どういった影響でこうなるんでしょー、そしてついにあの聖魔導大全の書に触れられるかと思うとームフフ……ムフフフフ……ハァアアアーハッハッー!!」
興奮する全裸少女、文字面に対して状況はマッチしていなかった。そして正宗から発生し始めるのは金色の暴風。パートナーであるエルマを絡め取り、それ以外の物を排斥しようと荒れ狂っていく。ボロ雑巾のように横でへたっていたアイシスが、その風に煽られてゴロゴロと藪の中へと追いやられていった。
「酷い扱いです……しかしこれでコクーンが形成されるんでしたよね。それまでフラウニーナが持ってくれるか……いや、ちょっと待って下さいっ!!それどころじゃありませんでした!!確かアルヴァジオン顕現の際コクーンが割れて周囲を吹き飛ばすんですよね??私このままだと巻き込まれるんじゃないですか!?ポッコル、ポッコール!!」
身じろぎも出来ないアイシスは、ただひたすらに救援を求める。しかし、そのぬいぐるみは我先にと既にその場を離れているのであった。




