表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
65/108

夢生獣大戦争23

 思案顔を見せつつも刹那も思案などせず、既に結論は出ている。


「良い案じゃないかな!!一端引き、戦力を改めて整えて再戦する。俺は賛成だな!!」


 正宗はそう解答した。そもそも世界の命運を自身に託されて困っている状況であったのだ。例え進む道が全ての根底が覆るような理力の覚醒などと言う茨の道であったとしても、わざわざその責任を一人で抱え込み突き進む必要があるだろうか??茨の道から逸れる為に、正宗ただ一人だけが犠牲になる謂われはない!!その道に進むのなら全人類皆同じ思いをしてもらわなくては割に合わないっ!!そんな正宗の心の表れである。


「……正宗貴方、そうすれば自分で闘わなくて良いからとか安直に思ってませんか??」


 半壊したウルフェンから聞こえてくるラブリーアイシスの的確な突っ込みに反論を無くす正宗。そう、このままではまたなぁなぁに世界を救う為の戦闘に巻き込まれてしまう。前回はそのせいで変な病気だが症状が発症し死にかけたわけだ。だからこそ正宗も必死である。


「リスクを回避して何が悪いっ!!せめて闘うにしても、もっとこう、優性な状況の場面にしてくれよっ!!」


 そう怒鳴られてはラブリーアイシス達としても立つ瀬がない。なにせ切り札的使い方、或いは失敗した作戦の為の帳尻合わせとしての便利道具としての使い方をしているのには変わりがなかったからだ。


「で、結局どう致しますの!?撤退するなら絶好の状況ですわ、決断は素早く致しませんと」


 正宗とエルマイールを見おろすナイトオブユメミールからフラウニーナの声が響く。エルマイールが先に言った通り、暢気に離していられる時間はあまりないだろう。撤退するにも夢生獣に勘づかれてからでは遅いのだ。


「ウルフェンってのもそんな状況だしこの際仕方がねーだろ。撤退すべきじゃね??」

「ですがー、仮に撤退するとしてー、夢生獣側に橋頭堡を築かせることとなりますよー。それによって彼等の改変がどれほど広げられるかわかりませんしー、その影響でこの星や世界が刺激されー、聖力や魔力を強く生み出すような環境に変貌でもしたらー、わたし達に夢生獣はもう抑えられないかも知れませんよー」


 エルマイールの指摘は尤もなことであった。正宗達の済むこの地球、そして銀河や宇宙といったこの世界は聖力や魔力といったものが発達しなかった世界である。陰と陽のように、ユメミールなど聖力や魔力が生ずる世界と対になる世界という話であった。アイシスやエルマが言うにその数は聖力や魔力が生ずる世界より極端に数が少ないという話である。だがその特性故に聖力や魔力が生ずる世界の者達からは手が出し難く、その為に独自発展する傾向が強いのだという。だが逆にそんな世界だからこそ夢生獣達の力はいまだ抑えられているわけであり、その状況に変化が訪れたのならその世界そのものの状況が一変するなど大いにあり得ることであるのだ。


「それは、そうなのですけれど……」


 フラウニーナもその事が解るだけに言いよどんでしまう。もし仮にこの世界にも魔力などが溢れ出るようになったのなら、夢生獣達は一気に力を取り戻し、最悪のコル全ての夢生獣が一斉蜂起する可能性すらある。全力の夢生獣同士の潰し合い。そんな事にでもなればこの世界は焼け野原どころではなくなるだろう。結局の所撤退か戦闘継続か、どちらの意見にも決定打がない。


「それにー、この世界は特異点的存在ですー。周囲の陽の世界をこの陰の世界で引き止めているような世界ですー。絶界域であるこの世界を礎にして周囲の異世界は繋ぎ止められているのですよー??その世界が聖力や魔力などの理力に溢れる世界に反転したのならー、最悪他の世界間を繋ぎ止めれなくなって弾けてしまうかも知れませんよー」


 まさに同極になった磁石のように反発し会う可能性があるというのだ。そうなれば世界間がどうのどころの話ではない。宇宙以前に世界が離反する程の衝撃なのだ。その世界の中がどうなるのかは前代未聞なので想像が付かない。


「だけどそれも可能性の話だろう??この世界が理力溢れる世界になっても、……その、なんだ??抑止力っての??そういうのが上手く働いて何とかなるかもしれないじゃないか」

「それはー……確かにやってみなくてはわからないのですがー」


 正宗の意見に言いよどむエルマイール。彼女とて、所詮は計算上の想像でしかない。見落としがあるかも知れないし、彼女の知らない何かが作用して正宗の言う通り事なきを得るかもしれないのだ。だが、だからと言って「試してみよう」と気軽にいえる話でもなかった。


「その前に一つ忘れていることがあるポよ??」


 沈黙する正宗とエルマイール、それを見下ろしていたウルフェンとナイトオブユメミールをあざけ笑うように発言する影がある。


「いまさら出てきてご挨拶だなポッコル」

「そういうなポ正宗。それよりポッコルは重要なことを教えに来たポ」


 煙と共に出現したポッコルが正宗の前に降り立つ。ポッコルの姿を見て正宗はなんの話かとエルマイールに顔を向けた。彼女も首を振るだけで良く解っていないらしい。逆にその姿を見たポッコルが肩を落として嘆いているようである。


「エルマイール達も馬鹿ポね、コイツにそんな正義だ世界の命運だと言っても尻込みするだけポよ??もっとコイツには今闘わなくてはいけない理由があるポ」


 指さされてたじろぐ正宗。


「な、なんだよ??」

「正宗、今引けばお前の家は消滅で確定するんだポよ??」


 そのポッコルの一言に、正宗の血の気がサーッと引いた。


「あー……、稜線の向こうは壊滅と言ってましたものねー」


 正宗とエルマイールは連なる山々を盾として先の爆発から身を守ったのである。稜線に弾け上げられ衝撃は上空へと逃げのだ。では盾の表面……直撃を受けた山の向こう側にあった鉄邸は??世界の趨勢や展望の話なのだ、鉄邸がどうのなど本当に小さい話だ。本来ならそんな事無視して話を進めるべきなのだ、べきなのだが、そうするとなんか正宗としては損をした気分になってしまうのだ。


「ちょっと待ってください、撤退したとして……政府が夢生獣を認識して対策会議なりを開いて……つまり、人並みの生活が出来るようになるまでいったいどれだけかかるんですっ!!」


 ウルフェンの眼に力が籠もる。動き出そうとするその巨体の各部が火花を上げ軋みを上げた。


「それ自体は結構直ぐかとー。この現状を目にしてわたし達が名乗り出ればー、拘束なり監視下等に置かれるでしょうがその場合は一応の待遇は待っているかとー。ただー、政府なりがその真偽を確認するまでにー、夢生獣側が世界を塗り替えなければの話ですけどねー。それ以前に名乗り出た所で精神疾患者と思われて放逐される、あるいは病院送りにされる可能性の方が高いですけどー。政府も国の一大事にそんな戯れ言言ってる者達の相手などしてられないでしょうしー」


 昨今の国会なりを見るに、あれこれ言い合って専門家の意見を聞いているうちに夢生獣の汚染が進行、敗北に至る過程は想像に難しくなかった。そして後半の話の内容も容易に想像できた。気づいた時には一都市が跡形もなく消滅した事になるのだ。そんな不可思議な状況に政府は対処に、国民は恐怖を覚えパニックとなるだろう。そんな大混乱の中「地球は夢の世界で勝手する怪物達に狙われている」と言って出た所で、誰がその相手をするというのか。最悪他国から元凶排除の為、夢生獣目掛けミサイルの雨が日本政府など無視して飛んでくる事すら考えられる。


「い……因夢空間が解ける瞬間に、修正すれば……」

「マー君も知ってる通りー、改変事項を修正するのにはタイムラグが発生しますー。つまりー、一瞬で全部直るワケじゃないですからー、修正している間に夢生獣から妨害を受ければそこまでですー。彼等もこうして侵攻を仕掛けてきている以上、妨害してくると思いますー」


 夢生獣側が世界を元に戻すその間を都合良く待ってくれているわけがない、彼等は世界を塗り替え、混乱が広がった方がやりやすいのだろうから。現状ユメミールからの増援が送られて来ていない以上、ユメミールは手が出せないと見るべきなのだ。ならば、無茶を承知でくるに違いない。


(いやいやいや、現金判子に通帳……資産全般に俺の部屋の物に思い出はプライスレス!!焼け野原となった土地って所有権とかどうなるんだ!?市役所もぶっ飛んでるんだろ??法務局……権利書とか再発行なんて出来たっけ!?)


 脳裏に走る“資産喪失”の文字。全人類が未知のモノに闘いを挑んだとして、正宗が家などを喪失した事には変わりない。良ければ政府が生活を見てくれるかも知れないが、そうでなかった場合、世界が新たな認識に塗り変わるまでプレハブ住宅や避難場所での集団生活などを被災者生活を余儀なくされるであろう。別段正宗は悪くないのに、一方的に家を失い苦労の生活を強いられる、損な生活をさせられるわけである。


「よしっ、殺るぞっ!!ポッコル、金玉出せっ!!」


 確かに決定打を受けた正宗は即時即決する。


(損はしたくないっ!!他の場所ならいざ知らず、今まで頑張って守ってきた物を失うのは忍びないっ!!)


 選択肢が残されている以上、そちらを選ぶしかなかった。勝てば官軍、負けた場合は負けてるのだから知った話ではない。ただ、撤退という選択肢だけは受け入れられなくなっていた。ともなれば後は、またも時間との勝負となる。前回と同じ時間切れで四苦八苦などという二の舞はごめんであった。


「なら以前決めた通り……」

「その事ですが、役割は変わって頂けませんこと」


 無理矢理立ち上がろうとするウルフェンを制すのはナイトオブユメミール。


「どういう事ですかフラウニーナ??」

「正直な所、わたくしもそれ程聖力が残っていないのですわ。今現在ここで一番余力があるとしたらエルマイールさんでしょう」


 ナイトオブユメミールからの声にエルマイールに視線が集中する。が、彼女も首を高速で横に振るだけである。


「エルマイールは以前励起に失敗しているです、だからここは……」

「でしたら尚のこと、貴方は残るべきですわ。兎も角、こちらのことは貴方達にお任せしますわ。わたくしは時間稼ぎで手一杯でしょうから」


 先程エルマイールが言ったようにフラウニーナがアルヴァジオンを励起できるとは限らない。となれば実績のあるラブリーアイシスを残すことは可能性を残すことになる。フラウニーナの言い分は当然の話なのだ。しかし──、


「だからといって……無謀すぎますフラウニーナッ!!」

「そんな状態の貴方がおっしゃいますの??……それにわたくしだって策がないワケではありませんわっ!!」


 そう言ってフラウニーナはナイトオブユメミールを立ち上がらせる。既に彼女自身も聖力は枯渇しかけていた。ウルフェンの様に爆心地にいたわけではないが、カンピオーネゾウールとウルフェンの起こした理力爆発に巻き込まれ想像以上のダメージを負ったのだ。防御術式は瓦解し、爆圧の衝撃を受け装甲ごと大破する機体を修繕回復させた代償は大きすぎた。


(だとしても、引くわけには参りませんわ)


 操縦室のフラウニーナは赤い宝石を取り出し、撫でた。すると赤い宝石はヌルリと姿を変え額に宝玉を輝かせる齧歯類に似た姿に変わる。キューキューと鳴くそれが頬ずりをしながらフラウニーナの肩口へと駆け上る。緑色の毛並みに包まれた、まるでリスのような生物。しかし額に収まった宝石がその生物がこの世界の物でないことを明確に物語っている。その宝石が赤く輝けば、その生物から多量の聖力が溢れ出た。


「ガープ、付き合わせて悪いですわね」


 申し訳なさそうに告げながら手で紋様を描き出す。肩の生き物が鳴き声で返しフラウニーナが頬ずりで返答すれば、彼女はナイトオブユメミールの紋様盤へとその術式を転写させる。紋様盤に幾何学な紋様が浮かび上がり、それに転写させた文字群が絡みつけば輝きを増して肥大化していく。


「追加術式、接続確認。精霊獣認定、機体設定値上限解放……完了っ!!いきますわよ、ガープッ!!」

「キューッ!!」


 ナイトオブユメミールの理力が膨れあがる。それは彼女の切り札だ。ナイトオブユメミールはユメミールの最新型金導夢兵装だが、その量産性と搭乗者確保の為に妥協された部分があることは確かである。本来の金導夢兵装とは、勇者なり力ある者、伝説の武器、そしてそれを補佐する強力な神獣なりの三つの力を兼ね備え、三位一体とすることで能力を跳ね上げる究極兵器として作製されたものである。しかしそれも時代の流れから、質より量を、一人の英雄より多数の兵を、そういう思想の元に変化を辿り今の姿となった。


「ガープを霊獣として識別、聖力回路コネクトッ!!」


 フラウニは確かに優秀な聖士であるが、アイシスのように真なる金導夢兵装を扱える程の才能はない。神獣に見初められるだけの能力も無く、エルマのように術式に長けているわけでもない。それでも、彼女には女王候補に挙げられるだけの才能があるのだ。それこそが使役獣達との親和性だ。彼女はその扱う騎獣や霊獣の力を十二分に発揮し、更に彼等とリンクすることで通常以上の力を引き出すことが可能であった。それは地味な能力であろうか??そんな事はない。例え伝説のスレイプニールが居なくとも、通常の馬だとしてもその能力以上のモノを引き出し人馬一体と成れる騎士が役に立たないわけがないのだ。そしてそれは金導夢兵装であっても同じ事。ウルフェンと呼ばれる白狼の神獣のような存在が居なくとも、カーバンクルという少し珍しい霊獣の力を十二分に発揮できるのであれば、金導夢兵装の本来持つ筈であった“騎獣”という要件は十二分に果たせるのであるっ!!


「ガープッ!!」

「キュッ!!」


 白銀の騎士が赤い輝きを纏って飛び出していく。追加した術式は量産機から省かれた“騎獣”に関する記述である。タイトでカリカリにチューニングしてある真なる金導夢兵装ではこのような増設術式による即興構造改変などは受け入れられない。しかし、量産型で汎用性が高い為にそれらも受け入れられる柔軟性が量産型下位互換金導夢兵装の強みであった。フラウニーナとガープが駆る今のナイトオブユメミールは、“擬似的”な真なる金導夢兵装といえる状態となっている。本来の真なる金導夢兵装力には到底にして及ばないが、通常の機体よりは遙かに高いスペックをたたき出せる。無論、汎用性や柔軟性が高いからといって本来の想定以上の出力をたたき出すのだ、当然にして機体がその力に耐えられる筈も無く、それはフラウニーナの聖力にも言えることであった。ガープから供給される聖力にも限度はある。かき集めた可能性のピース、それらを夢世界の話、“イメージ”で補強しつつ迫り来る夢生獣を向かい討つ。


「わたくし達はっ!!まだまだ戦えますわよっ!!」


 その言葉には彼女とガープの事だけではない、別の者達も含めて……そういう意志が込められていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ