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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争21

 ぶつかり合うエネルギーは混じり合い、抗い合い、急速に高め合って蓄積されていく。高濃度エネルギーにさらされ、両機の装甲すら変形し融解し初めていた。大地さえも溶け出し、二機は両機を中心に徐々に沈んでいく。周囲の物々がそのエネルギーに当てられ溶けて蒸発、更にはこの世界には存在し得ない奇っ怪なものへと変貌していく。しかし二機が纏う濃厚すぎるエネルギーは不安定であり、何かの刺激で破裂する風船のような状態でもあった。その切っ掛けが両者のガンの付け合い、頭部のぶつかりあいであったとしても例外ではない。


「ゾウア……」


 眼を焼くような閃光、全身を巨大な鉄の壁で殴られたかのような衝撃を受け、カンピオーネゾウールの巨体は吹っ飛びながらその中へと飲まれて消えた。その超重量の機体が吹き飛ばされる程の破壊力たるや、気がつけばカンピオーネゾウールの機体は前面を完全大破させられ仰向けに転がっていた。爆心地とは程遠い場所へまで飛ばされ、辛うじて機体を維持出来ている状態であった。カンピオーネゾウールとウルフェンの力の暴発は都市一つを消し飛ばし地形を塗り替え、その地を破壊し抉り飛ばす威力を放ってみせたのだ。──どの程度気を失っていたのか、ゾウールに正気が甦ってくる。


「……パオーン……、どウなった、ゾウか??」


 ゾウールの身体から狂気が抜け、やっと正常な思考力が甦りつつあった。細く、弱くなった魔力を注ぎ込み、慎重にカンピオーネゾウールの機体を修繕させていく。やがて壊れ真っ暗だった視界が復活し、なんとか機体を起こし周囲を見渡せば、


「焼け焦げた大地が続くだけ……これはっ!!ゾウールの勝利だゾウッ!!」


 マストパワーにてスーパーゾウールとなったカンピオーネゾウールの超絶パワーの発露、それにより夢聖士どころか同志達も吹き飛ばしてしまったと言う事であろう。空には轟々と天まで昇る煙の柱が聳え立ち、降り注ぐ砂や石が装甲を叩き乾いた音を奏で上げる。日差しは遮られ暗闇に染まる世界が鬱陶しく、カンピオーネゾウールがサッと手を振ればそれらはイメージ通り、箒で掃かれたように上空の埃も土煙も一斉に姿を消して行った。そう、夢の中なら何でも出来る、天候を整えることも自由自在。深く息を吐きつつざっと見回しても、抉り飛ばされた地平に立つのはカンピオーネゾウールのみ。


「まさに怪我の功名ゾウッ!!つまーりっ!!ゾウールこそが天下人そのものと言……」

「あ、あぶなかったベアー。死ぬかと思ったクマよ」


 いやいやいや、ゾウールの視界の隅に土煙が起こり、中から鋼の巨熊がノソノソと這い出て来るではないか。しかしそれはどこからどう見てもベクマーの金導夢兵装、ベクマーワイズマンに他ならない。ブルブルと全身を振るわせ、全身に付いた土砂を落とすベクマーワイズマン。


「…………」

「鉄壁の穴熊戦法で穴の中に隠れなきゃ死んでた所クマよ??……ん??どうしただクマ、ゾウール。なんか微妙そうな雰囲気が機体表面にまで現れてるクマよ??」

(……コイツ生きてたのかゾウ!?まぁ、それならそれで別に良いゾウ)


 深呼吸し動揺した心を落ち着かせるゾウール。先程はぬか喜びしてしまったが、未だ夢聖士側の秘密兵器の存在は確認できていない。ゾウール自体マストパワーの影響が抜けきっておらず、まだ感覚が完全に戻ってきたとは言い難い。油断は禁物だ。


「ひとまずオラ達が完全勝利したと確信に至るまで、気を抜くことはしないゾウ。……それにしても、ワニゲータには悪い事をしたゾウね」


 ワニゲータは夢聖士の封印術式を受け拘束状態にあった。その状態であれ程のエネルギー爆発を生身で受けたとならば存在すら消し飛んでしまったに違いない。


(夢聖士側の初手をまんまと食らってしまったゾウね。しかもその初手が能力の封印系なのだとしたら、抜けようもなかったかもしれないゾウね)


 自身も虚を突かれただけにワニゲータを馬鹿にすることは出来ない。もし仮に初手で、現界している最中に力や能力、魔力などを次々に封ぜられたとしたならば、そこから脱出するのは困難を極めただろう。


(ともなれば、きっと術者がつきっきりで封印していたはずゾウ。其奴もろとも吹き飛ばせたと考えるなら、致し方のない犠牲だったんだゾウ)


 ゾウールが空を見上げる。幾つもの歯車が浮かぶ空には、笑っているワニゲータの姿が幻のように見えていた。


「……ふう、死ぬ所だったワニ。何とか冬眠の秘技のおかげで助かったワニよ」


 突如、ベクマーワイズマンの隣に土塊が盛り上がり、中からデストロイワニゲータの機体が姿を表した。ゾウールはそれをゆっくりと確認し、再び視線を空へと向けた。その表情は鋼鉄の機体でわからな……いや、なんとも言い難い顔をしている。


「……無事、のようゾウね」

「……そうでもないワニ。鰐の冬眠宜しく鼻先だけ出して土に潜ったワニ故、鼻先が溶けてしまったワニ」

「でも金導夢兵装の鼻先だけで済んだベア??無事でよかったクマよー」


 笑い合うベクマーワイズマンとデストロイワニゲータの二機。機体同士でハグしているが、その感覚は本体にしっかりと伝わっている。その横で表情を殺してこめかみを押さえるカンピオーネゾウールの姿。


「ちょっと待つゾウ、いつの間にワニゲータは金剛魔導夢想兵装を展開したゾウか??」

「ん?ゾウールとあのオオカミ金導夢兵装がぶつかっている時クマよ??」

「……ゾウール氏がその相手を転ばした時、ベクマーに向けて放とうとしていた技が暴発したワニ。その煽りを食らって我を封じていた夢聖士も崩れたワニ。その隙に拘束から脱出して金導夢兵装術式を展開したワニよ」

「気づかなかったクマか??まぁ、その時ゾウールものっ凄い迫力だったクマものね、実際助けて貰って感謝だったクマ。ところでアレなんだったクマ??」

「ああああああ……」


 感謝を述べるベクマーに、ゾウールは頭を抱えた。実際全く気づかなかったのだ。マストパワーは瞬間的に暴力的なパワーを手に入れる禁術である。凄まじい破壊力を得る代わりに、その抑えきれない破壊衝動に駆られ我を忘れてしまうことが玉に瑕なのだ。しかしその威力はご覧の通りであった。軒並み続く焼け野原には動くものも何もない。


「と、兎も角っ!!やったゾウ、完全にオラ達の勝利ゾウッ!!」

「あ、良くないフラグを立てたクマ」


 天を仰ぐゾウールの感嘆にベクマーがさらりと言う。案の定、回復してきたセンサー系が五感に訴えかけてくる情報に、別の存在達の生存を知らせてきた。どうやら聖士達もあの爆発を防ぎ生き延びたらしい。


「……ああー、フラグ通りワニ。ヤツ等も生きているワニよ!!こうなればコチラから出向くワニ。さすればヤツ等は数分後に死ぬワニ」

「トドメクマー!!いよいよ決着クマよっ!!」


 語るデストロイワニゲータとベクマーワイズマンの機体が盛り上がっている。しかしその横で、カンピオーネゾウールは肩を落としていた。とっておきの秘術を使用してのこの結果、不甲斐なくて仕方がなかったのだ。


「オラの切り札の一つだったゾウが……まさか誰も脱落しないとは思わなかったゾウ」


 ゾウールとしてはマストパワーにかなりの自信を持っていたのだ。しかしいざ切り札として切ってみたのだが結果として誰一人として倒せていない。特に直撃を受けたオオカミ型の金導夢兵装すら生存しているというのだから気落ちするなという方が無理な話であった。


「……それは仕方がないワニ。相手がやり手だった、本物の金導夢兵装の使い手だったという事ワニよ」


 ゾウールのぼやきにワニゲータが口にする。返答など期待してなかっただけに、カンピオーネゾウールは顔を上げてデストロイワニゲータを見た。


「本物とは、どういうことゾウ??」

「……ゾウール氏は金導夢兵装というものがどういうものか知ってるワニか??」


 金導夢兵装とは人が強大な魔物などに勝利する為に開発した術式兵装である。装備するべき武具までも術式下にまで落とし入れ、聖力で編み上げた物を存在詐称、変換顕現させ物質兵装として身に纏う物だ。術式兵装を創り上げた人間であるが、それを更に発展させ巨獣や巨大魔獣にも対抗しようとした。その結果生まれた物が金導夢兵装であり、夢生獣達は人間が開発したその術式技術を失敬し利用しているだけ、便利な武器として扱っているのだ。


「……もともと人間共は魔物と闘う為に防具や武器を使って戦っていたワニ」


 それこそが人類の本来の姿であった。食す為、生き抜く為に狩りをする。自分達人間より強い生物である獣達を狩る為、人が手段として編み出したものが“道具を使う”という行為だ。そしてそれがより強い獣や魔物、敵へと対応する為に研鑽が積まれ発展し武器となった。村人であれ街の警備兵であれ、戦士であれ勇者であれそこに変わりはなく、武器を手にして闘うのだ。そう、彼等は鉄の剣や伝説の剣、革の鎧に魔法の鎧を身につけて闘った。その武具、装備を術式で創りだしたものが“法衣”であり、そしてそれは“金導夢兵装”へと繋がっている。


「……しかしワニ、それだけが人類の対抗策ではなかったワニ。金導夢兵装にはその別の要素も組み込まれているワニ」


 それは他者の力の有効利用の事であった。牛を使った戦車、馬に跨がった騎馬、果てはドラゴンライダーやペガサスライダー、或いは召喚術者などは人類の力とは別の力、即ち使役する獣や魔物、契約精霊と言った“人類とは別の共闘し得る存在の力”を借りる事により、強大な獣や魔物を狩ったり戦力とする事を可能にした。自分達とは別の存在の力を借りる事で人以上の機動力なり力を獲得し戦果と成す、その視点も決戦兵器たる金導夢兵装には必要な要素であった。


「……金導夢兵装とは“人類が闘う為の究極装備”として開発されたワニ」


 即ち“強力な武器や防具”に“人類とは別の共闘し得る存在の力”というファクターを取り入れ、一層の力を発揮させたのだ。


「……伝説の剣を手に魔法の鎧を身に纏う勇者、それが天翔る天馬に跨がって現れたら……どうワニか??まさしくして最強過ぎる姿といえるワニね??金導夢兵装はその考えを体現させた法術兵装というわけワニ」


 武具として、防具として、騎獣として、それら全てを実力ある扱い手が使いこなす。それが金導夢兵装なのだ。


「それはわかったクマが、それら全てを揃えるのは容易ではないクマ??」

「……正しくその通りっ!!と、言いたい所ワニが、実のところ“人類とは別の共闘し得る存在”が居ればあまり苦労はしないみたいワニ。ほら、強力の聖獣の力の宿った武具とかあるワニ??共闘できる強者の存在が居るだけで、あとは質のよい武具を用意すれば力を付与するなりして直ぐに武具は調達できるって話ワニよ。勿論居れば……の話ワニけど」

「ほう、ではあのオオカミ型を駆っていた夢聖士が持っていた剣こそが“そういった剣”だったクマね??」


 ベクマーの問いにワニゲータは頷いた。


「……伝説の武器と防具、そして騎獣を一機の機体兵装へとパッケージングすることで、金導夢兵装は操者が乗り扱うだけでそれ等全てを意のままに、一心同体となることを可能としたワニ」

「つまり、いまし方相手したアレこそが本当の金導夢兵装ということだったゾウか??どうりでオラのとっておきに耐えるわけゾウ」


 カンピオーネゾウールが放った異次元の力に拮抗して見せたのは、天翔る天馬に跨がり伝説の剣と魔法の鎧を纏った勇者がそれ等総ての力を一つにして全力以上の力を発揮した状態……真の金導夢兵装となったからこそ出せた出力であったのだ。強力な武装、神話的な騎獣、それ等を着こなし、扱いきって、人馬一体となって力を発揮する。それは言うに容易なことではなく、だからこそマストパワーと同等レベルの力を発揮し防ぎきったのだとワニゲータは結論づけた。マストパワーに自信を持っていたゾウールだけに、どのようにして防がれたのか疑問が残っていたのだが、確かに相手が本物の使い手であったという話なのなら納得もいく。


「……そういった意味では我等やあの騎士の金導夢兵装はまがい物ワニ。およそにしてあの騎士の金導夢兵装はユメミールの現行正式採用機。我等の金導夢兵装と同じ“人類とは別の共闘し得る存在の力”という要素を簡略化し金導夢兵装を展開しやすくした劣化品だワニ」


 人類の最強兵器が金導夢兵装となったのなら、人類同士の闘いもまた金導夢兵装同士での闘いとなるのは仕方がない流れだろう。その際には数を用意した方が優位となり、そうなると神獣や精霊といった高位存在や、その力を付与された武器達が圧倒的に足りなくなるのは自明といえる。故にパートナー、或いはブースターとなる“人類とは別の共闘し得る存在”という要素を最小化し、量産性を高めた下位互換金導夢兵装が開発される経緯に至るのは当然と言えた。強い武器、強い防具、そして巨大な騎獣としての要素があるだけで金導夢兵装は十分に戦力たり得るのだから。術式の改良進化により、“人類とは別の共闘し得る存在の力”がなくともその威力をそれなりに出せるようになった結果である。


「……そういう意味では、真の金導夢兵装にも、下位互換の金導夢兵装にも、一長一短があるワニ。どちらが優れているとは一概には言えないワニよ」


 目標に向けてズシズシと歩く三体の金導夢兵装達。相手は瀕死なのか、その反応は微動だにしない。そこに辿り着くまでの暇つぶしの話題としてはなかなか面白い話ではある。その為かゾウールの興味は雑談の方に向く。


「どういうことゾウ??さっきの話では真の金導夢兵装の方が凄そうだゾウ??ならオラ達もそこいらで名のある獣でもとっつかまえてきて利用すればもっと強くなれるはずだゾウ??」


 精霊、神獣、なんて事はない。因夢空間内では相手は何も出来やしない。仮に因夢空間内でも動ける奴が居るとして、夢生獣であるゾウール達が劣るとも思えない。


「……だからいってるワニ、一長一短があるワニと」


 真の金導夢兵装は確かに強い。しかし、それはまさに人馬一体、神話的騎獣と伝説装備と扱う者、それぞれの技量や力や強度や強さ、様々なモノが相互作用し一体の強者となるからこそ強いのであって、それがバラバラであっては意味がないのだ。個の我の強い夢生獣達にとっては神話的騎獣、扱い手を選ぶ剣や鎧の意志や気持ちなどはノイズや邪魔な意見にしかならなくなってしまう。他者の力にすがって強くなるなど、基本彼等のプライドが許さない。


「……不協和音は破綻するワニ。我等は唯一であるが故に真の金導夢兵装が使えないワニ」


 更に言えば真の金導夢兵装の方が燃費が悪い。圧倒的なパワーを持つ代わりにその術者にも想像以上の負荷を掛けるのだ。その上で扱える者が少なすぎる。伝説の装備を自在に操り、神話的騎獣や霊獣神獣に認められ、且つ人馬一体並に息を合わせられないといけないのだ。その域に達せられる者達はなかなかにして貴重である。


「……対して下位互換の金導夢兵装は融通が利くワニ。ワンオペなために意志決定に邪魔は無いし、個体に合わせて術式の調整が効くワニよ」


 個人カスタマイズに富む汎用性、なにより使用術者に合わせた出力調整や使用容量の調整などが出来る。低燃費でそれなりに高性能。最高出力などは到底に及ばないが、その幅の広さにより多くの操者に展開励起の窓口を持っているのが下位互換型の金導夢兵装なのだ。何せ強力な霊獣神獣を用意せずともよく、使い手を選ぶような武具も必要ない、そして気むずかしいソレ等と息を合わせなくとも良いのだ。励起可能条件は下がり多くの術者が使用できるようになり数を準備できる。汎用性と量産性、それでいながら必要十分な性能を誇る兵器として重宝、採用化されるには当然の帰結と言えるデチューンのされ方であった。


「しかし、人間もよくもまぁ頑張って色々開発するクマね。奴等の繁栄が凄いのもその知識、頭脳故って言うのに納得クマ」

「それをオラ達は苦労することなく使わせて貰っているわけだゾウ。感謝の代わりに変質させて支配やるしかないゾウね」

「……人間の敗因は複雑な術式が自分達にしか扱えないと傲慢になっている所ワニ。自分達の開発した物で滅ぶのならきっと本望ワニよ」


 ゲラゲラとわらう三体の金導夢兵装。人が培ってきた技術や知識には他の生物が到れない境地である。だが、それを扱えてしまうのが夢生獣。人の知識や理解力を持ちながら、魔物や幻獣の肉体スペックを誇る怪物であった。その怪物達が、一斉に足を止める。


「な、何クマだこの気配っ!!」

「……とんでもない聖力ワニね」

「いよいよお出ましだゾウ」


 緊張を含め一点を見つめる夢生獣達。その視線は焼け禿げた山の先に、そこに現れた異質な存在に向けられていた。


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