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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争18

 驚愕している、そう言っていい。確かに自身が覚醒したような力の高まりに寄っている事は否めない。その酔いの勢いに任せ、調子に乗って相手に侵攻の合図を送ったのも事実であろう。しかし、いよいよ現界して目を見開いたその瞬間、その身に襲い掛かってきた殺意に背筋が震え上がったのだ。


「ハァァァァ!!ファンシーキュート、ソーブレイカアアアー!!」

「ゾゾゾウ!!」


 真剣白羽取りの要領でギリギリ、寸前に迫る殺意を受け止める。鬼気迫る顔の夢聖士がそれに気づき、全体重をかけるように武器を押し込んでくる。同時に唸りを上げる夢聖士の聖法具が、その聖力の刃を暴れ狂わせゾウールの眼前を掠めるように旋回している。。


「出会い頭とは、卑怯だゾウッ!!」

「何を言ってますのっ!!闘いは始まっていますのよっ!!相手の隙を突くのは当然でしょうっ!!」


 夢聖士フラウニーナが両手で持ったチェーンソーを更に押しつけトリガーを握り込んだ。より一層出力を高めた聖力の刃は旋回力を増し、ゾウールを真っ二つにせんと牙を剥く。強引にそのまま突撃してくるフラウニーナの圧力をなんとか踏ん張って受け止めきる。そのまま体勢を立て直せば、ゾウールは体内の魔力を練り上げて反撃に転じた。


「ゾウイヴォワール」


 途端、天を突いていたゾウールの牙が蛇の様に蠢いた。その鋭い先端をフラウニーナに向けると狂ったように伸びて突進する。今度は白羽取りで相手を拘束している状態だ。たまらずゾウールからフラウニーナが跳び退けば、遠のく彼女を追うようにゾウールの牙は暴れながら追尾していく。その姿はまるでのたうつ蛇のようで、しなり、振るわせながらゾウールの眼前を薙ぎ払う。リーチの差に後退するフラウニーナへ目掛け追いすがる牙、更にその間隙を縫うようにゾウールは鼻を伸ばし、フリッカーのように穿ってフラウニーナに追撃を仕掛けていく。


「厄介な牙と鼻ですわねっ!!」

「それはこちらの台詞ゾウッ!!さては、我等各個に聖士をぶつけてきたわけゾウね??」

「その通りですわっ!!例えアナタ方が三匹で来ようが、個に別ければ一対一!!それなら十分勝機は御座いますわっ!!」


 夢聖士達からしたら夢生獣が三匹そろって闘った時の力は未知数である。ならばマンツーマンで挑めば一対一、対応する手立ても立つというもの。それが彼女達の作戦であった。


(やられたゾウ!!こう、合流する前に切り分けられるとは思ってもいなかったゾウ!!)


 夢生獣の戦い方は力押し、こういった想定外の事態に対する作戦、方針などは無論取り決めていない。


「しかしその作戦、ちょっと安直じゃないのかゾウ!!」


 ぶつかり合ったことでわかったことがある。流石に現界した直後を狙われ、虚を突かれた事に動揺し肉迫はされたが、落ち着きを取り戻せばなんて事はない。あの進化はゾウール達に別次元の力を、かつての自分達に迫る力を与えている。万全の夢生獣であるのなら、たかが夢聖士一人如きに負けるはずがあろうか??


(成る程っ!!心理戦も含めた先手だったわけゾウねっ!!心乱れたままであったならとんだ手痛いダメージを負っていたところゾウ)


 この聖士達の本当の狙いは先手を打ち動揺している所に痛撃を加えることであったのだ。初手に決定打を打ち込む事で夢生獣にダメージを与え、その後を優位に進める算段であったのだ。だが己の力の回復に、思いの外ゾウールには余裕が生まれている。


「貴様等の策は失策だゾウッ!!今度はこちらから行くゾウよっ!!カカボンバッ!!」


 ゾウールは両手に創りだしたウンコ爆弾である黒色玉を投げつける。咄嗟にフラウニールは横へと跳び退き、黒色玉は躱されると爆裂し破壊の波を撃ち放った。黒色玉の爆圧を受けた自動車や街路樹が忽ちにして砕け腐り崩れていく。チェーンソーを構えた夢聖士が滑るように着地するば、高回転するチェーンソーの切っ先から超高速の聖力の刃が発射される。その刃はマシンガンのように連続して撃ち出され、瞬く間にゾウールへと襲い掛かった。


「ゾウイヴォワール」


 しかしうねる牙がそれを許さない。突き貫き、腹で叩き弾き、ゾウールの牙は鞭の如く踊り数百発の刃を弾き落としていく。弾かれた跳弾が周囲を砕き、刹那のうちにゾウール周辺には蜂の巣が刻まれていった。それでも、ただの一発もゾウールの身体には届いてはいないっ!!


「っ!!」

「潰れろゾウッ!!」


 戦果に眉をしかめるフラウニーナ目掛け、ゾウールは手を掲げると追撃の一撃を“召喚”した。途端、フラウニーナの頭上に描き上げた術式陣から鋼の巨大な象の足が落下する。フラウニーナは驚愕し、転がるようにして回避。


「部分顕現ですのっ!?」


 その超重量に地面は陥没し、振動の余波で周囲の自動車は吹き飛び建物は傾きながらガラス窓を飛散させた。そう、動揺さえおさまれば状況は全て理解出来た。溜めた力を吸収したゾウールは最早全盛期に近い。いかな腕のある聖士とはいえ、夢生獣が手こずる存在ではないっ!!そして1対1、つまり“個”として戦う戦闘スタイルこそ、夢生獣本来の戦い方なのだっ!!


(だが、粋がるなゾウ!!所詮は前座っ!!この後にこそ本番が控えているんだゾウ!!でなければ……)


 ゾウールは両手を挙げ、それを勢い良く大地へと叩き付けた。その衝撃は瞬く間に周囲へと伝わり、その世界そのものを塗り替えていく。アスファルトの大地は草原へ、ビルや住居は岩塊や陸へと姿を変えていく。人は象の頭部を持った人のよう、まるで神話に聞くガネーシャ神のような姿へと変貌する。


「でなければ徒党を組んだ意味がないゾウッ!!邪魔をするならユメミールの夢聖士、貴様ごとき押しつぶすゾウッ!!」

「勝手を言いますのね夢生獣ゾウールッ!!貴方こそっ!!ここで撃破封印させていただきますわっ!!」


 フラウニーナは立ち上がると手から符を取り出し放り投げた。瞬間、煙と共にぬいぐるみが現出する。


「ポッコルさん、金剛聖導夢想兵装使用要請致しますわ!!」

「さっそくポねフラウニーナ。要請承諾、ナイトシールド、受け取るポッ!!」


 ポッコルが耳の穴から取り出した盾をフラウニーナ向けて放り投げ、彼女はそれを受け止めた。それは荘厳に飾られた騎士の盾。万人を護り己の誇りを護る守護の盾。


「我が盾は人々の為に!!我が槍はその悪を討つ聖槍なりっ!!」


 溢れあがる聖力が盾を包み揚げ、盾から術式が溢れ出る。それをみてゾウールも口角を上げた。


(敵も全力。なら、それごと打ち破るゾウッ!!)


 肉体が、細胞が吠え力が燃え上がる。大地に描いた幾何学な紋様がゾウールを照らし出し、その空へと巨大なゾウールの影となる術式を描き出す。


「オラこそがゾウールッ!!偉大なる世界を支えるゾウールだゾウッ!!」


 己の身体を心として内包し、鋼の巨象が限界する。幻からリアルへ。透明度のあった巨影は明度を増し、質量を持ってきたその重量に、大地は悲鳴を挙げ砕け、押しつぶされて砂塵を上げる。現れたるは40メートルを越す鋼の象。


「潰せっ!!カンピオーネゾウールッ!!」


 ゾウールの言霊に咆吼を上げる鋼の巨象。その巨大な獣へと相対するは白銀の巨人。その姿は手に盾を、そして槍を掲げる力ある騎士の姿。


「顕現っ!!ナイトオブユメミールッ!!」


 名乗りと共に騎士のその双眸に光が宿る。荘厳な意匠、堅牢な鎧、そして鋭利な槍。だが、


「恐るるに足らずゾウッ!!」


 カンピオーネゾウールの巨体を、その馬力にモノをいわせ猛然と駆けさせる。蹴り込んだ力に大地が爆発するかのように爆ぜ、されどその質量はゆっくりと加速していく。重量故に加速は鈍い、だが、内包するエネルギーは圧倒的であるっ!!


(所詮は象の蟻だゾウッ!!)


 襲い掛かる巨塊、対する騎士は腰を低く盾を前に構え守勢の姿を見せた。巨体とは言え騎士は20メートル程度でしか無く、巨象の実に半分近くしかない。両者がぶつかり合うその結果は目に見えているっ!!


「マンモスパンチ!!」


 超重量を駆使した拳の一撃が、騎士の盾へと直撃する。たまらずガード姿勢のまま地面に脚をめり込ませつつ耐える騎士。だがその拳のインパクトの直後に魔力の衝撃が拳から襲い掛かる。一瞬受けきった騎士であったが、その衝撃波に体勢を崩され吹っ飛んだ。


「まるで発勁のようですわね……」


 そう呟きながら空中で姿勢を整え、華麗に体勢を整え着地してみせる白銀の騎士は、無傷。距離の開いたその場所から、今度は騎士がその槍を突き出した。素早すぎる突き込みに空気は裂かれ、槍先から放たれた鋭利な聖力の矛が巨象を襲う。だが直撃するかに思われた聖力の矛は、寸前に激しい光彩となって砕け散る。障壁に阻まれたそれには目もくれず、距離を詰めるべく鋼の肉体を再加速させるゾウール。


「歯牙にもかけぬ威力ゾウッ!!このまま踏みつぶしてやるゾウッ!!」

「そうはいきませんわっ!!」


 ゾウールがその圧倒的な防御力とパワーにモノをいわせるのに対し、距離と速度、そして手数を持って応戦する白銀の騎士。アウトレンジからの連続刺突の雨だが、全てカンピオーネゾウールの障壁によって防がれる。相手の攻撃をものともせずにじり寄るカンピオーネゾウールだが、白銀の騎士ナイトオブユメミールは冷静に距離を取りつつ手を繰り出してくるだけだ。カンピオーネゾウールのパワーならば一撃さえ入れられれば相手は致命傷、そのプレッシャーに耐えながらも冷静に戦闘を組み立てるその立ち回りは歴戦の戦士を彷彿させる。


「やるゾウ、ユメミールの夢聖士っ!!」

「ユメミールが夢聖士フラウニ=ベルクーダですわっ!!貴方を封印する者としてこの名を覚えておきなさいなっ!!」


 冷静に繕ってはいるものの、その心根には焦りが募っているとゾウールは見る。


(この手数を持ってしてオラの障壁すら削り取れてないゾウ。と言うことはどこかで大技で打破を試みる筈だゾウ)


 ゾウールは相手の考えを読みつつ隙を見せ誘ってみるが、乗ってこない。追いつ追われつの膠着状態となっているように見えるが、その燃料容量に違いがあっては話は別だ。内包するエネルギー量は、どう足掻こうとも夢聖士が夢生獣に勝るわけがない。先に力尽きるのはナイトオブユメミールなのは明白な事実なのだ。


「ゾウゾウッ!!ホラホラ、休んでいる暇はないゾウよっ!!」


 ゾウールは周囲周辺へと強烈なイメージを込める。途端にして全ての物が、白銀の騎士もが引きずられるようにカンピオーネゾウールへと寄って行く。距離が離れているのなら、引き寄せればいいのである。


(ゾウゾウ!!接近戦っ!!オラ達は接近戦にて決着つけるんだゾウッ!!)


 夢の中では何でも出来る。ゾウールのイメージを実演させようと世界の夢が後押しをしてきていた。カンピオーネゾウールへ向かい、収束するように吸い寄せられていく白銀の騎士。


「この……でしたらっ!!こうですわっ!!」


 機体ごと引きつられる力、それを逆手にとって白銀の騎士はその勢いを上乗せして突貫する。虚を突かれたかのように急接近する騎士に目を向くゾウール。しかし、


「甘い、ゾウッ!!」


 突如、カンピオーネゾウールが勢い良く四股を踏むと迫り来る敵目掛け地面が隆起した。鋭利な先端を天高く、対象を貫かんと猛烈な勢いで伸びる岩塊。騎士は身をよじり、ギリギリでそれを躱しつつ更にカンピオーネゾウールへと突進する。が、二柱目を躱した時点で姿勢を崩し、三柱目の直撃を受け装甲の破片をまき散らしながら上空へと放り上げられた。


「カカボンバッ!!」


 カンピオーネゾウールの両手の先に黒色のエネルギーが集約し、容赦無く中空の騎士へと放たれる。逸れることなく直撃する黒色エネルギーが、サバンナの空に黒炎の花を咲きみだらせる。


「~~っ!!」


 その中から落下する白銀の騎士の巨体。崩れ墜ちるように土煙の中に消えれば、その周囲に甲高い音を響かせ幾つもの破片が四散する。


「よく耐えたゾウッ!!ユメミールの夢聖士っ!!」


 見れば盾は失われ、そしてその左手も半壊している。流石に決して無傷というわけにはいかなかったようである。落下点へ向け、カンピオーネゾウールを加速させるゾウール。騎士は起き上がりつつ、術式が煌めいてその左腕と盾を修復させようとしている。そこに雪崩れ込むのはカンピオーネゾウールの巨体。超重量にモノをいわせた突進を、騎士は槍を叩き付けるようにして迎撃した。激突。だが吹き飛んだのは騎士の巨体の方だった。手の槍は歪み、それを補正しつつもなんとか起き上がるナイトオブユメミール。カンピオーネゾウールは向きを変え、そのままナイトオブユメミールを押しつぶさんと突き進む。巨象は土煙を上げながら騎士へと迫り、


「さて、貴様は手痛いダメージを負ったゾウね!?まだ無駄な抵抗を続けるゾウかっ!!」

「この程度、どうということはないですのっ!!まだまだこれからでしてよっ!!」


 肉迫し合うのも一瞬、騎士の巨体がカンピオーネゾウールの突撃の威力を殺すように後方に後退する。直後にして再び降り荒れる刺突の雨。


「無駄なこと……ゾウッ!?」


 言い終える前にゾウールは頭部に衝撃を受けたように感じた。装甲は無傷だが、確かに今、障壁を貫いてきた。


「まだまだですわっ!!」


 騎士の一突きに、今までの3~4発分の光彩が四散する。しかし、その度にカンピオーネゾウールの装甲が叩かれる。分散させ全身を狙い撃っていた刺突を集約させることで、一点突破に近い形でゾウールの張る障壁を減衰させ強引に刺突を通してきているのだ。


「なんという技量っ!!なかなかやるゾウッ!!」


 強者を下してこそ、己が力量を実感できるのだ。ゾウールはその眼に映る強者を屠る為、歓喜の咆吼を上げるカンピオーネゾウールを駆り立てた。

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