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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
53/108

夢生獣大戦争11

 相対するその者は明らかに余裕を持っていた。苛立ちか威嚇の為か、低く唸る殺意の塊。しかしそれを歯牙にもかけない表情で身体に付いた汚れをはたき落としている。


「やれやれ、俺ともあろう者が油断した」


 そう言いながら少年は颯爽と上着を脱ぎ捨てると構えをとる。半身になり、軽やかなステップワークを踏む姿はまるで歴戦を潜り抜けた格闘家だ。


「牛刀でもあれば足を切断し、動けなくなったところで止めを刺すんだが……無いものは仕方が無い、悪いがコレでいかせて貰うっ!!」


 少年は拳を握り締め突き出し示してみせる、自分の最強の武器はコレである……と。高まる緊張感に両者が睨みい間合いを詰める。 そう宣言し、人である少年は自分よりも巨大な熊との距離を詰めていく。ただ、予想外であったのか、それを呆然と眺める巨体達がいる。


「はっきり言おう、オラ人間を侮っていたゾウッ!!熊に素手で挑むとかまともじゃないゾウ!!」

「……我等の影響ワニかね??明らかに常軌を逸しているワニ。しかしあの自信、あるいは……」

「負けるなクマーッ!!今度負けでもしたら一族の名折れクマーッ!!」


 少年と熊を囲むように、マイクを持ったワニと、レフ版を持ったゾウ、そしてカメラを持ったクマという、どれもかしこもゆるキャラのなれの果てのような異形の者達が観戦しながら声援を送っている。その中で、本物の熊を中心に円を描くように華麗なステップワークを見せるいるのは人間の少年だ。時折肩でフェイントを入れつつ、滑るように足の左右を入れ替えながら熊の周囲を旋回していく。


「おかしいクマッ!!この国の奴等はおかしい奴等ばかりクマッ!!縦回転しながら突っ込んでくる犬達とか、眉間を殴って怯ませてくるご老体とか、眷属共が負け続けクマ!!」

「凄いステップワークだゾウ!!だけど熊の方はまったく興味をしめしていないゾウ」

「眷属め、警戒を解いて自身の足元の臭いを嗅いでしまっているクマー。このままじゃまた敗戦を期するクマよっ!!」

「……おおおっ!!しかし何故かあの人間、わざわざ正面で足を止めて殴りに行くワニかっ!!」


 旋回した意味は何だったのか、少年はわざわざ熊の正面から仕掛け、ウィービングをしながら突っ込んでいく。せめて背後から、いや、それでも熊に有効打を与えられるかは定かではないが、せめて死角から仕掛けるべきではないのか??兎にも角にも意味不明な動きをみせつける人間の少年に三匹は興奮し、その注意が最高潮に達した……その時、


「なんだゾウ??認識阻害術式が吹き飛んだゾウ??」

「魔力霧散術式もだクマ」

「……っていうか、コレ、因夢空間が展開されたワニよっ!!奴等が、聖士共が来るワニよおおっ!!」


 三者異変を感じ取り、即座に空を見上げて痛感する。それは慣れ親しんだ夢生獣達の本領の場、因夢空間の中であった。ともすれば、そんな事を出来る者達など絞られる。同胞達か、あるいは……。


「フッ!!しかし奴等がいずれ気付くなどは百も承知っ!!そもそも影響がでかくなってくれば自ずと露見してた事クマーッ!!」

「おおっ!!……で??対応はどうするゾウか??」

「はぁ??何を言ってるクマか??それくらいお前等で考えてあるんじゃないクマか??」


 ゾウールの視線を受けベクマーは自分は考えてないとばかりに首を振った。自ずと両者の視線がワニゲータに向く。ワニゲータは皮肉そうな笑みを浮かべるだけである。


「……はやくも我等の欠点が露見したワニね。基本単体行動を主としているから、こうした連帯行動の時にどうしていいのかわからないのワニッ!!」


 その通りであった。作戦の詰めが圧倒的に甘かったのだ。三匹が対等なだけに指示を出すリーダー的存在も欠如しているのが徒となった。しかし三匹が個々に個別の対応を取ったのなら、そこにはなんの連携もなく共同戦線を張った意義が薄まってしまう。そんなことで“アノ化物”を相手取ることが出来るのか??前途多難な状況に三匹は顔を見合わせた。


「っ!!強烈な聖力反応っ!!ヤバイクマーッ!!」


 その時、感じ取った迫り来る力に天を仰ぐ。右往左往している時ではない、


「しかたがないゾウッ!!こんなこともあろうかとっ!!日頃人間のMMORPGに紛れて協力冒険者プレイをしていたのだゾウッ!!」

「おおこれは期待をもてるクマッ!!」

「……流石、ゾウールだワニ」


 三匹が見上げるのは迫り来る流星っ!!二匹の視線を受け、ゾウールは頷き声を上げた。


「ワニゲータッ!!ベクマーに防御バフと支援改変だゾウッ!!」

「……心得たワニッ!!防御力強化するワニ」

「ゾウゾウ、こちらも防御強化術式展開ゾウ」


 ベクマー一匹に二匹の夢生獣による防御強化が施されていく。ワニゲータとゾウールが展開した術式の紋様陣がベクマーを包み、そこへ、


(今日のベクマーは無敵、絶好調だゾウッ!!なんとこの一瞬ながらいつもの倍の力を発揮するゾウッ!!)

(……男前、ベクマーの筋肉仕上がってる……仕上がってるワニよ!!)


 ゾウールとワニゲータの囁きによる認識改変補強が行われた。


「キタキターッ!!何か来たクマよおおおおおおっ!!」


 途端にベクマーの全身を虹色の輝きが覆い尽くす。


「さぁ、いつもの倍の助走距離、倍の加速からの、両手殴りで迎撃すんだゾウッ!!」

「うおおおッ!!ツインベアークローだクマーッ!!」


 ダッシュし爆走するべクマが、ー両手を突き出して飛び上がった。


「防御術式で硬さ2倍っ!!夢生獣二匹による因果改変により4倍っ!!いつもの倍の加速距離で8倍っ!!更に倍の加速度で16倍っ!!そして両手によるベアークローにより32倍!!脅威の32倍ツインベアークローだゾウッ!!」

「……行け、夢聖士など撃ち落とすワニ!!ベクマーッ!!」


 謎の計算式により輝きを放つベクマーは、ツインベアークローによる突貫で流れ落ちて来る流星と激突した。直後、爆ぜた何かが周囲一帯を吹き飛ばす。ゾウールやワニゲータはもとより、熊や少年をもぶっ飛ばす大爆発。余波だけでも凄まじく。その流星、いや、アイシスのラブリーハートフルボンバーとの衝突により瞬く間に河川敷は崩壊してしまった。“無敵のベクマー”、それに対してラブリーアイシスの放つ“ぶっ壊れろ!!”という概念やイメージや因果が鬩ぎ合いぶつかり合った結果だ。更に荒れ狂う聖力や魔力もが衝突し、瞬時にして堤防を砕き地形を破壊し粉砕したのだ。荒れ狂い砂煙巻き上がる中、仁王立ちする人影がある。


「これを受けきるか……夢生獣っ!!」


 鬼気迫る表情をしたフリフリを纏った鬼が吼えている。ベクマーはと言えば、夢生獣二匹からのバフを受けたのにもかかわらず全身から蒸気を上げ大の字に寝っ転がっている程にまでダメージを受けていた。それをみたゾウールが身を起こしつつも警戒を強める。


(相殺した……と言いたいゾウが、またとんでもない夢聖士が来たものゾウね)


 今は封印されていた為弱体化しているとはいえ、その瞬間的破壊力は夢生獣を凌駕しているのだ。ゾウール達が単体であったのなら今の初撃で粉砕されていた可能性すらあった、それ程の一撃だ。目の前に相対している者は“所詮そこらの人間、只の聖士一人”と馬鹿にしてもいいような弱者ではない。今も尚、射殺すような眼光でゾウール達を射抜いてくる。


「夢生獣が……三匹??……三匹同時顕現だとっ!?」


 だが、そこには一瞬の動揺が見えた。


「ワニゲータは攻撃を、オラがフォローするゾウッ!!ベクマーは回復に専念だゾウッ!!」

「……死を、くれてやるっ!!デスロールクラッシャーワニ!!」


 その期を逃す夢生獣ではないっ!!ワニゲータが夢聖士の側面から飛び掛かる。身体を超高速にスクリューさせながら空間を穿ちつつワニゲータは襲い掛かった。即座に回避行動を取った夢聖士に向け、


「カカボンバッ!!」


 ゾウールが鼻を使い黒色の塊を投げ飛ばした。しなやかな長い鼻から投擲されたそれは聖士目掛け飛翔し、至近距離で炸裂する。それに巻き込まれた土は朽ち、草木は腐り崩れていく。しかし、回避し続ける夢聖士にはその爆風すら掠りもしない。


「またウンコ!!またウンコですかっ!?」

(ゾウ、なんかしらんけど地雷を踏んだ気持ちだゾウッ)


 更にぶち切れたような顔をして圧倒的速度で動くその標的。その動きは汚い物に触れたくない拒絶感の表れのようであった。ゾウールは必死になりつつそれを追い、黒色弾の連投で追い詰めていく。


「ちぃっ!!」


 夢聖士が堪らず反撃に出ようとしたその瞬間、避けられた超拘束スクリューが折り返し、再度夢聖士目掛け襲い掛かった。牙を向くドリルの如きその突撃を、剣の背と障壁を持って受け止める夢聖士。踏ん張る足を大地へとめり込ませながらも、夢聖士はワニゲータの突貫力のある一撃を完全に止めきってみせた。しかし──、


「ボディがっ!!お留守だっ!!ゾウッ!!」


 その真横へとゾウールが突貫し、重量級の三連打を夢聖士の肉体に叩き込む。その衝撃は如何ほどのものか、夢聖士の身体がゴム鞠のように吹き飛び転がっていった。


「やったゾウッ!!」

「ラブリィィフラアッシュッ!!」


 歓喜するゾウールだが、吹き飛ばされながらも即座に体勢を直した夢聖士が極光を撃ち放った。それは大地を抉り飛ばしながら超高速でゾウールに迫る破壊そのもの。まともに受ければ大ダメージは免れないっ!!


(ガードするゾウ。あ、間に合わ……)


 光に目を焼かれゾウールに直撃するかに思われたソレは、割って入った影に受け止められ弾け跳ぶ。クロスアームブロックで極光を防いだ者は、


「ベクマーッ!!助かったゾウ」

「なんてことはないクマ。それよりも油断するなクマ」


 息を呑む二匹の下へ、追撃を仕掛けたワニゲータがパラディンソードの一閃に弾かれ戻って来た。それを冷静に、隙無く構え凝視してくるフリフリを纏う鬼。


「……本当にトンテッキやトットリッキーと戦っていたあの夢聖士ワニか??以前から戦闘センスはあると思ってたワニが……パワーが段ちワニよ??」

「あちらは連戦後だというのに、よく体力も聖力も持つゾウね」

「しかし今のでわかったクマ。数的有利で現状は此方に分があるクマ。ノコノコ出てきたところ悪いクマが、逆に討ち取らせて貰うクマよっ!!」


 それはベクマーの言うとおりであった。パワーや破壊力はさて置き、現状では仮初の連携であっても夢生獣側が優勢なのは間違いない。


(過去の戦闘を見ても聖士側の戦闘の根幹はコイツだゾウっ!!ならば叩ける時に叩くのは定石というものゾウッ!!)


 最早目の前の夢聖士の力量はタイマンでも油断なら無い程にまで、成長してきている。“アノ化物”を除いたとして、目の前の相手が強敵であり、そして敵側の要であることには変わりないっ!!この場で潰せたならば、聖士側の大幅な戦力低下は確実であるのだ。


「行くゾウッ!!」


 ゾウールの飛び出しに合わせ、ワニゲータとベクマーも続く。包囲し三方向から畳み掛け、圧倒的な武

力で磨り潰すのだっ!!しかし同じく夢聖士も飛び出した。


「ゾウッ!?いや、これはっ……」


 ゾウールは視線で夢聖士を追い、足を止め勢いを殺す。夢聖士は外側に外れるように高速移動しながら、大外のベクマーに対しのみ肉薄していく。あえて自ら、それも端の相手の……更に外側に回りこむ。ベクマーを盾にし、三対一ではなく一対一の戦況を創り上げたのだ。ゾウールとワニゲータはベクマーに攻撃を仕掛けないようベクマーを避け、回り込みながら攻撃を仕掛けなくてはならなくなっていた。


(流石聖士っ!!乱戦での戦い方などはお手の物ゾウかっ!!)


 常に圧倒的“個”を持ってして単身戦いを挑む夢生獣達はそういった位置取りや立ち回りなどに慣れていない、明らかな経験不足が隙を呼んだ形となった。


「トランスフォームッ!!ラブリーアイシスモードグラップラー!!」


 夢聖士の全身が一瞬輝き、手にしていたパラディンソードが形を変えて鋼の小手となってその両手を包み上げる。その間に間合いに入ったその夢聖士へ向けて必殺のベアークローを突き出すベクマー。しかしスルリと懐に潜り込んだ夢聖士は流れるような動きでその腕を掴み上げ、自身の数倍はあろうベクマーの巨体を弾丸の如く投げ飛ばしてみせた。


「……ワ、ワニーッ!!」


 ベクマーを自身に向け投げつけられ、正面から受け止めたワニゲータはたまらず尻餅をつく。


「ワニゲ……はっ!!」


 そちらに気をとられた一瞬、空間を跳ぶかのように夢聖士がゾウールに差し迫る。咄嗟に得意の鼻で迎撃を試みるゾウール。鞭のようにしなり針のように刺すその自慢の鼻の連打を、夢聖士は踊るように避けながらパーリングしつつ掻い潜って来た。


「ゾウがっ!!」


 完全に懐へと入り込まれ、下から突き上げてくるように迫るその拳っ!!ボディーを狙ってきたそれをゾウールは両の手でクロスするようにそれを受け止め、驚愕した。その衝撃は爆裂の如き威力を含み、全身を貫いて尚も勢いを殺すことが出来ない。ゾウールの超重の身体が浮き上がる程に集約された力と聖力の爆発。ガードしたとは言えそれで手一杯、浮き上がったゾウールの身体は既に死に体だった。


「ゾゥッ!!」


 その瞬間、自身のクロスアームの向こう側、それより更に上へと立ち昇る影を見る。ゾウールの視線が動き、見上げた視界に映り込むその姿。足を高々と振り上げ跳び上がった、冷徹な視線を持った夢聖士の形をした鬼の姿であった。天に昇るその足は、正しく死神の鎌そのもの。振り上げられたならば──振り下ろされ、刈り取られるのみっ!!


「──ッ!!」


 気付いた時にはゾウールの視界は台地の中にめり込んでいた。岩盤を砕き、ゾウールごと踏み抜くほどの猛烈なかかと落とし。メリ込んだゾウールを中心に亀裂が蜘蛛の巣のように奔り、一斉に揺らぎ吹き上がって、瓦解する。痛みを通り越し、あまりの破壊力に麻痺し身体が言うことが聞かない。ピクリとも反応しないゾウールに対し、軽く距離をとった夢聖士は腰溜めに両手を構える。


「ラブリィッ!!エナジィーブラスタァアーッ!!」


 踏み込みながら聖士が両手を突き出せば、高エネルギー体が濁流となって噴出したっ!!倒れたゾウールに押し迫るソレを、横から跳び込んできた影が遮る。


「……べクマーシールドワニッ!!」

「ちょっ、まっ、クマアアアア!!」


 熊の威嚇のポーズ、両手を掲げ挙げた仁王立ちのベクマーを抱えたワニゲータであった。万歳状態で直撃を浴び黒こげとなったベクマーを他所に投げ捨てると、ワニゲータは倒れていたゾウールを助け起こす。ゾウールも頭を振りつつなんとか体勢を立て直したがダメージは隠せない。


「……ヤバイワニ。正直手に終えんワニよ??剣から拳に変わった分小回りが利いて投げも関節技もある上、人数差を手数で埋めてきてるワニ」

「……いや、よく見るゾウッ!!いかにヤツとてコレだけの破壊力を出しているんだゾウ??平気なはずが無いんだゾウよ!!現に今も肩で息をし始めているゾウ!!」


 いかにラブリーアイシスとて無尽蔵に力があるわけではない。蓄積し爆発させた力だが、三対一という劣勢さを覆すためにどの技も全力を持って放っていたのだ。故にその破壊力に疲弊していたのは夢生獣側だけではなく、ラブリーアイシスの消耗もまた嘘偽りのない事実であった。緊張を高める二匹と一人、そこへ真っ黒の物体が一歩近寄って来た。何事かと視線を向けるのはラブリーアイシス。


「ま、待つクマーッ!!お前には人の心は無いクマか??熊なんてなんて愛嬌のある生物なんだと思わないクマー??殺害ではなく、静かな山に帰してやろうとは思わないクマかっ!!」

(待て待てベクマーっ!!今はくっちゃべって時間稼ぎをする時じゃないないゾウッ!!なんとかコイツを疲弊させることが肝要なんだゾウッ!!)


 全身からブスブスを黒煙を上げながら朗々と人情を語るベクマー、彼は日和ったのだ。なんとかして情に訴えかけこの場を切り抜けようとしている。しかし一息入れられ、ラブリーアイシスに調子を取り戻されてはゾウール達としては迷惑なのだ。


「野生動物なんて危険な敵でしょうがっ!!そんな事を言う輩は動物の怖さも危なさも知らない者達が吐く台詞ですっ!!」


 寄り付く島もないその一言に、


「んだとこの猿の劣化毛なし共がっ!!野生動物だ!?お前等が勝手に住処を主張して押し広げ、オラの同胞達から住処を奪ってるんだゾウが大概にしろゾウ!!象牙が欲しいとか高く売れるとか、下らん理由で殺生するとか頭おかしいとおもわんゾウかこの低脳猿っ!!」


 ゾウールですら憤怒する。人間の勝手な言い分には以前から一言物申したかったのだ!!

「……そうだそうだワニ!!鱗も生えてないような猿が皮欲しさに同胞を狩るとは許せんワニッ!!貴様のそのたるんだ腹の皮でも使ってろワニ!!」

「そうだクマーッ!!尤も??そんなブヨブヨのしわしわの気持ちの悪い白い皮なぞ、なんの価値も無いだろうがクマーッ!!」


 続く二匹であったが、突如として膨れ上がった殺気に即座に黙り込む。


「誰が……ブヨブヨの……シワシワの……BBAだとこの畜生共がっ!!」


 膨れ上がり、抑え切れなくなってあふれ出した聖力に、ゾウール達は息を呑んだ。


(……ヤバイワニ。また何かの地雷を踏んだワニ!!)

(こうなってはしかたないゾウ。オラがトッテオキを出すんだゾウッ!!)

(おうっ!!流石はゾウールッ!!してどんな策だクマ??)


 起死回生の一案があるというゾウールに期待を込めた視線を送る二匹。


(それはまずオラの耳を大きくするゾウ!!そしてこう空へ……)

(……止めるワニッ!!それ以上はまずいワニッ!!)

(何を言っているゾウ!?これはこの世界のアニメを見て得たヒントを元に考案したゾウ!!)

(アニメって……尚更まずい気配クマ!!とってもヤバイ気がするクマッ!!)

(ヤバイゾウかっ!!青いタヌキが出るアニメゾウよ!?)


 首を傾げるゾウールに、話が合わないと同じく傾げるワニゲータとベクマー。


「最後の言葉は言い合ったか食肉共がっ!!」


 飛び込んでくる鬼の形相の夢聖士っ!!四者が縺れ合うように肉薄すれば、一方的に夢生獣達だけがボコボコに殴り倒される。その一撃一撃に莫大量の聖力が込められており打撃と共に内部へと打ち込まれ、身体の内で破裂する。外傷とは違いソレは確実に蓄積する類のダメージだ。案の定、徐々に夢生獣達の動きから精彩さが失われていく。あまりのダメージに膝を笑わせ後ずさる三匹。三匹共ボコボコに殴殺されかねない勢いだ。


「一匹ずつ、確実に、滅殺っ!!撲殺っ!!撃滅してから──封印してやるっ!!」

(これは……想像以上にヤバイ奴だゾウッ!!)


 何とか立ってはいるものの、正直足どりがおぼつかない、三匹共フラフラの千鳥足だ。それでも歯を食いしばって頭を上げれば、手刀に聖力を集中させている夢聖士が死神のように立っていた。しかし、


「ッ!!ワニゲータッ、ベクマーッ!!」


 それは、正に起死回生のチャンスであった。

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