夢生獣大戦争7
自身が苦労することはない。一生懸命身体を鍛えなくともその同調率とやらが上がれば必然的にポテンシャルが上がる筈である。
(俺に聖法術とやらを理解しろと言うのは不可能があるからな、もうそれでパワーアップするしかないな)
そうすればアイシスとの地獄の特訓に付き合わされることはない、一石二鳥の考えである。
「それよりテッちゃんが見てたのは何だったんだよ??」
「えっ!!いや……アレはなんだったんだろうなぁ……」
近藤に問われて焦る正宗。実際は自身が闘っていたなんて言えるはずもない。誤魔化す為言いよどんだ正宗であるが、ハカセと近藤は正宗が見たとする作品を推理するに至ったようである。
「んー、主人公機はどんな感じのヤツだったの??」
「えっ!?こう、龍の形してて相手のロボよりでっかくて……」
「は??相手よりでっかいの!?」
「うん。いや、相手はそのあと更にでかくなったり分裂したりするんだけど」
アイシス達の話を聞くにアルヴァジオンは普通の金導夢想兵装よりはでかいとの話であった。
「龍の形……色は白色??」
「いんや金色だった」
「金!?そのパイロットロリコンだっりしない!?」
(そんなことはないっ!!お姉さんも大好きだっ!!)
正宗は即座に否定する。対して頭を悩ませているハカセに近藤。
「その龍ってディフォルメされた3から4頭身くらい??」
「いんやなんか50メーター位はありそう。んで、こう、相手の攻撃を受けながらもパワーでそれを圧倒するっていうか……」
「ちょっとまてよ??それスーパーロボットだよな??なんていうか話だけ聞いていると相手のボスとか中ボスの機体に思える内容なんだけど!?」
近藤も対象作品を思い浮かべれないのか頭を捻り初めていた。
「そうだよね。主人公機ってのはやっぱり小型で高機動且つ高出力ってのが映えるから。ともすれば、相手のボスとかになると主人公達が数機でも太刀打ち出来ない巨大兵器……ってのはやっぱり鉄板だからね。テッちゃん本当にそれ主人公機だった??」
アルヴァジオン一機でカッサーナ達魚群の飽和攻撃を受け、それをパワーで打開する、
(成る程、言われてみれば敵のボス的戦い方だった)
アルヴァジオンでの戦闘を思い出せばどう考えてもアニメや漫画で言う敵のボス的戦いをしている事に気がついた。カッサーナも、トンテッキも正宗のアルヴァジオンより動きは良く、より戦闘に慣れていた。その動きは控えめに言って歴戦の戦士。巨大で重鈍なアルヴァジオンを戦士の技で撃つ姿など、一歩間違えば勇者や救世主のソレであったろう。その攻勢を防御力という壁で封殺し、パワーという暴力で打ち破ったのだ、華麗と言うには程遠い戦い方をしている。
(正直どっちが悪か解らなくなるな。相手の研鑽の術をスペックで上回って押さえつけているって事なんだから)
正に力こそパワー、強さこそ正義と言わんばかりである。その理論は悪である者が振りかざすことが多いのでは無かろうか??
「わかったっ!!それ金色の車も出てくる話じゃない!?冒険は始まった??」
「いや、車は出てこないし冒険も始まってない」
「えっ!?うーん、そうなるとちょっと思い当たる作品がないなぁ??」
「マジかよ、ハカセでもわかんない作品か??」
(まぁ……アニメじゃないからありえないからな……)
正宗としては体験談を話しているだけなのだ。実際にある作品に当てはまらなくても仕方がない。
「……おっと、先生来たな」
悩むハカセの姿を見て近藤が驚いているのを見やりつつ、担任が入室してきたことで解散する事になった。軽く挨拶し自身の席へと戻っていく。
「……なかなか面白い考察だった……とか言った方がいいポか??」
「勿論だ、俺自身を鍛えなくとも同調率で何とかなるって言う結論が出ただろう!?」
「何言ってるポッ!!金導夢兵装にそんなものは関係ないポよ!!全くの時間の無駄だったんじゃないかポ!!現実、現実をちゃんとみるポよ正宗っ!!」
「うっさいぞこの糞ぬいぐるみがっ!!」
正宗とポッコルの声を殺したなじり合いをする。
(普通に考えて夢の中で巨大兵器で闘うとか、どっちが現実を見ろって話だよっ!!)
そんなことを正宗が考えている中、教壇に昇った担任の話は進んでいく。
「えーと連絡事項だが、東部の方で熊の姿が見られたようだから登下校の際は注意しろよ??それから河川ではワニに似た魚に食いつかれ病院送りになった人がいるようだ。ここのところちょくちょく見かけたと言う話が上がっているようだから野生動物を見つけてもむやみに近寄らないようにしろよ。特にテスト後は夏休みがあるからな」
その報に生徒達もざわつきを始める。すると、一人のヤンチャ系の男子学生が手を上げる。
「先生、熊にあっちゃったらどうしたら良いんですか??」
「そりゃあ目を見てタックルから入るんだ。そうするとテレフォンパンチをしてくるからソレをダッキングしてかいくぐり即座に熊の背後を取る、そのままチョークで締め落とせばなんて事はない。でもそれは先生だからできる事だからお前達は目を反らさずにゆっくりと刺激しないように距離を取ること」
その様をシャドーボクシングするようにささっと教壇でやって見せる担任教師。
「川でワニに食いつかれたらどーすんすか!?」
「ワニの場合も簡単だ、まずタックルで入る。当然相手は食らいついてくるからその顎をスウェーして閉じた顎の上から覆い被さるんだ。ワニの顎は噛む力は凄いが開ける力は強くない。相手もロールして振りほどこうとしてくるだろうがそのままチョークで締め上げれば鰐皮ゲットって寸法だ。だがクロコダイルダンディーな先生だからできる事なんでお前達は河川には近づかないようにしろよ」
袖をまくり上げ更にその動きをシャドーボクシングの如く再現してみせる担任。満面の笑顔で落としたカウボーイ・ハットのような帽子を拾い上げかぶり直す姿は実にダンディーだ。
「正宗、お前のとこの担任は頭おかしいポか??」
「止めてくれ、あんなんに教わっていると思うと寒気がする」
担任の川原教師は悪い人ではない。だがそのひょろひょろな身体は決して肉体的とは言い難く、どう言いつくろってもクロコダイルダンディーとは言えないガリ体型であった。何故だが毎日カウボーイハットを被ってくるのだがそれがどうやら彼のお洒落ポイントらしい。
「しかし、少々気になる話だな」
「なにがポ??」
「さっきの話が……だよ。この辺の土地じゃ熊とか出ないからな、聞いた事がない話なんだよ」
「その上で出たから注意しろって話じゃないポか??ワニの話もアリゲーターガーなんかの無断放流などによる外来魚の自然破壊の産物なんじゃないポか??飼えないんなら最初から飼うんじゃないポよ」
「妙にこっちの、しかも日本の環境事情に詳しいな。……まぁそういわれるとそうなんだが」
それでも気にはなった。学校の担任から言い渡されたと言う事はそう言った被害報告があったと言う事である。目撃例がちょくちょくあがっていると言う事はその頻度が増しているということだ。
「そんなことより正宗は今の内にしっかり休んどいた方が良いポよ??」
机の横にかかっている手荷物の中から気怠げな声が聞こえてくる。どうやらポッコルは正宗が授業に出ている間のんびりと寝て過ごすようである。はたして学校での警護役としてソレはいかがなのか??
「お前なぁ、一応は警護役だろう??」
「ポッコルは別段間違ったことは言ってないポよ??部活のあと、帰ったとして何が待っていると思うポ??」
ポッコルの言い分に首を傾げる正宗。
(帰ったら家事洗濯……は、エルマがやってくれているだろうから……あああ)
「気づいたようポね、アイシスとの訓練が待っているポよ??」
ポッコルが告げた宣告に急激にやる気がそがれていく正宗。授業に家事に訓練に……あきらかにキャパオーバーなタイムスケジュールにうんざりする。
「マジかー、授業中が一番何も考えずに身体を休めれるとは。なんでもいいからさっさと新戦力を探し出してくれよー」
「善処はするポよ善処は。それでも暫くはこの生活が続くと思うポよポッコルは」
そう言い残すと暢気に寝息を立て始める糞ぬいぐるみ。正宗は溜息をつくと机の位置を調整し、手荷物が窓からの日差しに晒されるように配置し直した。
「…………つい……あつい…暑い、熱いっ!!アツイポオオオオオッ!!」
一瞬あがった奇声に教室の視線が正宗の方に集中する。
「すいません、携帯の目覚ましです」
「くろがねー、世が世ならお前打ち首だぞ!?他のも授業中は携帯の電源切っとけよっ!!全く……」
担任からの叱責を食らいクラスメイトに嘲笑される。正宗は苦笑しそれを甘んじて受けつつも、元凶となった糞ぬいぐるみを手荷物の上から鷲づかみにし声も発せられない悶絶状態とした。
(精々蒸し風呂状態に苦しむがいいっ!!)
(地獄っ!!家にいてもこき使われここにいても蒸し焼きにされこの世は地獄ッポよおおっ!!)
ぬいぐるみの断末魔は今に始まったことではなかった。




