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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
夢生獣大戦争
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夢生獣大戦争4

 エルマは準備をそそくさと進めていく。中古ショップで安く買ってきた設置タイプの電話機に、これまた中古ショップで買ってきたPCボックスが繋げられている。しかしその内部はエルマが手を加えた謎装置満載で、それら集合体である世界間通信装置はこちらの技術とユメミールの技術を融合させた未知の機械であった。エルマはこちらの世界に来てからの短い時間でこちらの技術を解析し、理解し融合させるまでに至っているのだ。防甲システムの開発をへて更にソレを発展させてきたという所だ。


「まぁある程度の技術は睡眠学習で知識を入手できますしー、ネット環境に知りたい情報は溢れていますからねー」


 ネットを十二分に活用し現代科学を理解吸収応用するエルマは、流石技術職の聖士といえた。こちらの世界ではユメミール技術用の部材や資材がほぼ入手不可能な所もあり、あちらの技術を再現しようとするのであれば必然的にこちらのモノで補わなければならない。補うといってもそこはそれ、根本的な技術体系や法則に差異があるのだからおいそれと容易に組み替え合わせるというワケにはいかない。代用や流用をするにはこちらの物がどう動いているのか、なぜそう動くのかなどを詳細に理解する必要があった。ソレを実際に実行してみせているのだから舌を巻く以外にない。


「聖技士だったか??大したもんだよな」

「エルマは実に優秀だからポね。戦闘面以外ならなんなくこなすポよ」


 そうこうしているうちに設置された世界間通信機、そこから伸びているコードの先をアイシスが握っている。手の中には宝玉がありそこからアイシスの聖力を送り込み通信装置稼働させるのだとか。勿論装置は別口のコンセントからも電力供給を受け動作に使っているらしい。流石に電話部分などの電子部品などは電力でないと動かないだろうし納得の理由である。通信装置の設置を終え一通り確認すれば、今度は紋様術式入りのマットを床に敷いた。


「マー君はこの中から出ないようにしてくださいー」

「これは??」

「正宗はユメミール語がわからないでしょう??これはそれをニホン語に翻訳してくれる敷物と考えて下さい」


 アイシスの説明に頷いて理解を示し言われるままにその上に座る正宗。敷物の上には日本語の辞書ともう一冊が異国語で書かれたような辞典らしきものが置かれていた。それがユメミールの辞書か何かなのだろう。推察するに双方の辞書なり辞典をベースにして翻訳してくれるもののようである。


「さてー、では、いよいよまいりましょうかーっ!!」


 エルマが緊張した面持ちで振り返りながらそう告げた。一瞬、居間に静寂が走る。


「なんだ??自分で作ったものに不安があるのか??」

「そうではないのですよー。なんといいますかー……やはりお母様ががどのようにおっしゃるのかー、そのことばかりに不安がよぎりましてー……」

「そうですよ正宗。はっきり言えばそれ以外はないと言えるのです」

「ホント苦手なのな」


 心の準備が整えばあとは始めるだけ。頷き合うとアイシスは聖力を流し込み始め、いよいよ通信装置の機構がその動作を開始する。PCボックス内に押し込められた紋様盤がフライホイールのように旋回を開始し、描かれた式が淡く輝きを増していく。内部は正にブラックボックスであり、甲高い音が一層鳴り響いていく。


「それじゃあー、繋ぎますよーっ!!」


 タッチパネル液晶の電話帳からユメミール城の番号を選び出せば、エルマは決定ボタンを押し込んだ。途端、数字と英語に記号の羅列が表示され、更に電子音と共に中空に術式紋様が展開されていく。それと液晶に映し出された表示をエルマは真剣表情で眺めていた。


「世界間航路の状態は76と言ったところでー、通信は何とか可能な状態ですー。術式展開、各部連動励起、世界間通信──接続ですー!!」


 PCボックスが唸りが高まり廃熱ファンが荒ぶるように旋回するば、エルマは再び決定ボタンを押し込んだ。ともすれば電話機のスピーカーモードのスピーカーから擦れるような音が鳴り始める。ノイズにまみれラップ音にも似た雑音が響き、次第にそれが次第に静かなモノへとなっていく。


「こちら夢聖士エルマ=マーナ=リトールー。ユメミール、聞こえますかどうぞー」


 エルマが声を上げ呼びかけた。電話機のタッチパネルを覗き込めば通話時間とは違い、逆にカウントダウンが始まっていた。


(残り接続可能時間およそ4分42秒か)


 その数字を確認しながら正宗はアイシスの方をチラリと覗いた。アイシスはコードを手に真剣になって電話機の方を見ている。エルマは通信に結構な量の聖力を必要といっていたが、いまのところ見る限りでは彼女の余力的には十分のようであった。


<……士エル……マー…リ…ール…息災…何よりで…。…こち…はユメミ…ル、通信は届いております>


 次第にクリアになっていく返答。その声を聞きエルマとアイシスとポッコルが、無言となって通信機の前に立てひざを突いて頭を垂れた。


(おおおっ!!ソレっぽい!!)


 そのただならぬ雰囲気にのまれ、正宗も習って立てひざを突いて頭を下げる。


「どーもー、久方ぶりですお母様ー」

<はぁ……もう少し言葉を選びなさい夢聖士エルマ。しかし今は時間が惜しいですね、早速報告を>


 間延びするエルマの声にあからさまに脱力した溜息が聞こえてきたが、その後の凜とした声に即されエルマが簡潔にこちらでの事を伝えていく。


(お母様って事はユメミールの女王陛下か)


 言葉の内容を理解すれば緊張するなという方が難しい。それを少しでも解そうとしているのか、あるいはただ天然なだけなのか、エルマのふわふわした物言いで少し平常心が戻ってくる。女王もそれを知ってか知らずか、あえて直させようとはしなかった。


(ただ話し方を注意して、直させるのに時間を食うのを避けただけかもしれんが……)


 それとは別にエルマの思惑で、ゆったりとした報告で少しでも時間を浪費したいのであろう。しかし、簡素にまとまった内容により一分弱で伝え終わってしまう。エルマによる概要報告が済めば、一瞬の静寂がその場を支配していた。


<……成る程、状況は理解致しました。まずは謝罪をせねばなりませんね。協力者である鉄正宗様、そちらにおいででしょうか??>


 唐突の名指しにびっくりして顔を上げる。通信機の向こうでは女王が返答を待っている、だが急に話を振られるとは思ってもいなかったのだ。返答につまり助けを求めるように視線を移せば、アイシスとエルマがジェスチャーで通信機に向けて指を振っていた。


「は……い。鉄正宗といいます、宜しくお願いします」


 正宗が返答すれば何か予想外だったのか、ざわめきがスピーカー越しに聞こえて来た。だがそれも束の間で、女王が咳払いをすれば直ぐに沈静化されたようだ。


<この度は我等ユメミールの不手際に巻き込んでしまい、誠に申し訳御座いません。謝罪のしようもありま

せんが今はそちらの世界の大事、今ひと時のご協力を、何卒宜しくお願い致します>


 思わぬ女王直々による感謝の言葉であったが、動転している正宗は正直に述べてしまう。


「いや!!それはお断りしたくて、正直早く援軍を送ってもらってそちら様の力でなんとか解決して欲しいんですがっ!!」


 本来相手を前にして、それこそ衆人環視の中のような状態で一国の、いや、一世界のトップの人物との会談などであればそんな愚行は出来なかったであろう。場の雰囲気などに飲まれ、その重圧に緊張ししどろもどろになっていたに違いない。しかし、自分の家で電話機からの声だけという状況が、正宗にそれを可能とさせてしまったのだ。正直すぎる物言いに横で見ていたアイシスとエルマの顔色が一気に悪くなり、口の前で指で×印を作っていた。


<勿論直ちに……と、返答したい所なのですが未だ世界間航路の状態がよくありません。夢生獣の行なった

妨害術式は思いのほか強く、また効果持続が長いようです。もしかしたらそれを維持している夢生獣がい

るのやもしれません>


「そんなっ!!てことは今後も補給もままならないって事なんですか!!僕もう戦うの嫌なんですが……」

<そこを何とか……>

「いやいや、それこそ何とかそちらで……」

<…………>


 刻一刻と時間が過ぎる中、貴重な時間を使った沈黙が訪れる。女王と正宗のやりとりにアイシスやエルマは顔を青くしながら視線を正宗と通信装置の間で彷徨わせた。出来れば協力を取り次ぎたい女王と、なんとしても拒みたい正宗。


<夢聖士アイシス、先程夢聖士エルマが申したとおりそちらの協力者が聖魔導大全の書に認められたことは本当なのですね??>

「ハッ、それに関しては嘘偽りなく。また金剛聖導夢想兵装術式による戦闘では我等の想像を超える力を発揮し、夢生獣相手にも圧倒できる力を有している様を確認しております」


 沈黙を破った女王の声に即座に返すアイシス。だが、その内容に通信機の向こう側がまた騒然なっている。


<……夢聖士エルマ、わかっておりますね??>

「もちのろんですー。今やこちらの生命線ですのでー」

<宜しい。先にも申しましたが依然こちらからの救援は望めない物と考えなさい。よって夢聖士アイシス、並びに夢聖士エルマはなんとしてもそちらの協力者を手放さぬよう考慮なさいっ!!その戦力は非常に得がたい物ですっ!!>

「なぬっ!!」


 反論しようとした正宗だが、即座にアイシスとエルマとポッコルに押さえつけられた。


<夢聖士アイシスにエルマ、並びに妖精ポッコル、ご苦労でした。支援のない中での夢生獣三体の再封印、実に見事な手際です。この先も気を抜かぬよう勤めてください>

「もったいないお言葉、ますます精進いたします」

「了解ですーお任せ下さいお母様ー」

「ポッコルに任せておけば安泰ポっ!!帰ったら褒賞を希望するポよっ!!」

「モガーっ!!モガモガ……」


 もがく正宗を組み伏せアイシス達が返答する。いよいよ時間がなくなり話は纏められてしまった。


<こちらもなんとか出来ぬか尽力は続けますが、それはそうと夢聖士フラウニが居ないようですが…を…外し………で…>


 急激に通信にノイズが入り始め展開されていた術式が赤色に変わり崩れていく。連鎖的にスピーカーから漏れ出る音も砂嵐のようなノイズから電子音なども混ざり始め、術式が弾け飛ぶと同時に無音となった。


「……え??フラウニ??フラウニもこちらに来ているのですかっ!!陛下っ!!陛下っ!!」

「ダメですー、界間状態が40を下回ってしまっているのでー、もー暫らくは通信も適いませんー」


 エルマが即座に通信機に駆け寄り確認すれば、


「ちょーっ!!エルマ何離れている……ボッ!?」


 ぬいぐるみが潰れる音を持って壁に投げつけられる。エルマが離れたことで拘束を解かれた正宗がユラリと立ち上がった。


「待てっ!!落ち着け正宗っ!!落ち着くんだっ!!」


 アイシスの悲鳴に近い声にエルマが恐る恐る振り向けば、狂気を帯びた目をした正宗が仁王立ちしているではないか。


「は!?何か??お前らは結局共謀して俺を巻き込むわけかっ!!」

「マ、マー君、とりあえず今のところはこれで勘弁願いませんでしょーかー」


 エルマが顔を引きつらせながらもこっそりと謎の布切れを差し出す。が、正宗はそれをバシッと払いのけた。


「あああ、私のパンツ……」


 泣きながら布を拾うアイシスにエルマが力強い言葉を放った。


「ええーい!!こうなったら仕方ないですー、アイちゃんっ!!マー君にわからせてやっちゃいなさいー!!」

「なんでいっつも私のパンツを使うんだエルマっ!!しかし、了解したっ!!覚悟しなさい正……」


 言い終える前にアイシスの顔面は正宗の手により鷲掴みにされる。


「だから、なんでこれは避けられな……アイダダダダ……イダアアアアアつぶれ……中身が出るうぅあああアアア!!」

「ヒェ……」


 絶叫と共に膝が落ちる親友を見てエルマの背筋に冷たいものが奔り、堪らず転がっていた屍のようなぬいぐるみを拾い上げ投げつける。少しでも隙を作り逃げ出す算段であった。しかしそれはダイレクトシュートのように正宗の蹴りで弾き飛ばされる。


「……酷いポ」


 無残に散ったぬいぐるみの断末魔を聞き後ずさるエルマであるが、その背中は直ぐに部屋の壁へと接してしまい絶望を知った。


「嫌ですー、堪忍ですー、出来心なんですー。ああああああ来ないで来ないで来ない…ギャア中身が出るぅぅうう!!」


 鉄家の中から再び乙女の絶叫が木霊した。


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