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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
深海の大決闘
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深海の大決闘21

 気がついてぼんやり見つめる天井は、見慣れたものであった。寝ていた視線を移し周囲を確認すれば間違いなく鉄家の正宗の自室である。身体を起そうとして彼方此方に走る痛みに顔を顰める。なんとか起き上がり、

 

「なんじゃこりゃあっ!!」


 妙な圧迫感に視線をやれば自身の身体を包み上げているのは謎の包帯。まるでミイラ男のように全身に巻きついており見た目的にはアニメや漫画でよく見る重症患者のようである。


「お??起きたポね正宗」

「ポッコル、こりゃいったいなんだ??」


 声に方へと顔を向ければ、ポッコルが机の上でスマホを使いネットサーフィンしている。ポッコルは構わずにスマホを使い続けながら返答してきた。


「まぁまぁそうあせるなポ。正宗はどこまで覚えているポ??」

「どこまで??……ああ、確か……アイシスに言われてカッサーナに必至にしがみ付いて……そこまでだ」


 記憶を辿ればそこ辺りから曖昧になっている。酷い眩暈や全身を襲う刺す様な痛みに意識が朦朧としていたのを覚えている。


「……成る程、ポ。まぁ詳しい話は反省会をしながらポ。丁度二人共起きて朝食をいただいているところポ。正宗も来るポよ」


 そう言えばポッコルはスマホの画面を消し、机から飛び降りるとポコポコ足音をさせながら台所方面へと歩いていった。と、首だけをドアから出し、


「あー、その包帯は取っちゃ駄目ポよ??説明はするからその上からなんか着てくるポ」


 そう言い残しポッコルは去っていく。起きてみれば確かに空腹感で一杯だった。いそいそと軽く服を着て台所へと向かう。やはり全身に巻かれた包帯が邪魔くさい。台所へと顔を出せば、


「おふぁようございまふ正宗。昨日はご苦労さまでふた」

「あー、おはようございますー」


 正宗に気付いたアイシスとエルマが気軽に声をかけてくる。二人とも雑な格好で頭も寝癖で酷い状態だ。どうやら彼女達も起きたばかりの様子で、その上で身だしなみを整える余力も無い程に疲労が堪っている証明であった。正宗も適当に自分の朝食を作ると卓に着く。


「それではー改めてー、カッサーナ封印おつかれさまでしたー」

「したー」

「本当に今回は疲れました」


 エルマの音頭に正宗とアイシスが続き、互いに麦茶の入ったコップをぶつけ合った。


「それで一体全体なにがどーなったんだ??この全身ミイラ男にはなんの意味があるんだ??」

「その辺りも含めましてー、アイちゃん経緯をお願いしますー」


 単刀直入に正宗が聞けば、エルマもそれをアイシスへと流す。エルマ自身海底で何が行なわれていたかは全然定かではなく、アイシスも帰還後報告も無く泥のように眠りに落ちてしまったため事の経緯を知る由も無かったのだ。そうしてやっと全員無事に揃ったということでアイシスも全容を話し始めたわけである。変身後飛び出し海底で交戦が開始されたこと。カッサーナが分体を呼び出しその包囲網を突破すべく乱戦になった事。


「それでエルマに連絡を取り実世界へと戻って来たわけなんですけど、ここで新たな問題が生じました」

「問題というとー、これですかー??」

「ええ、正宗に聖力制御不全の症状が現れたんです」

「聖力制御不全??」


 正宗が聴きなれない言葉に首を捻る。


「普段からあまり聖力使用をしない方々がー、突如として全力に近い聖力の排出等を繰り返した場合に起きる症状ですー。いわばいわばウォーターサーバーなどのコックをガチャガチャしすぎたためにコックが壊れてしまいー、水がダダ漏れになっちゃってる状態ですねー」

「しかしそうなると水がなくなっちゃうだろ??」

「そうですー。生きるのには聖力が必要不可欠ですしー、いくらこちらの世界と言えどそれは同じですー。そのまま聖力を消費しつくせばー、衰弱死──という具合ですかねー。それにそれ以前としましてー、壊れてるコック部分がマー君自身であると言う点が問題なんですー。壊れてるのに更に水が流れっぱなしでー、それを止めようと一層強い力でガチャガチャしますからねー。壊れてるコックは一層壊れますー、つまり壊れてるマー君も一層……」


 エルマの言動にゾッとして身体の具合を確かめる正宗。


「その包帯はそれを抑制するものです。正宗の症状は軽かったので、今は広がりかかった聖力の排出口、その症状を包帯に含まれている術式で締め付けている状態です。安静にしつつそうしてればそのうち自然治癒で治ります」

「ですねー。その包帯はいわば門を閉めた際に掛けた閂なので暫らくは外さないようにお願いしますねー。うざったいからと取ったりしていると治らずマー君の制御機構が完全に壊れちゃう場合も考えられますからー」


 彼女等の言葉に正宗はコクコクと頷きながら、とある事実に気付く。


「ということは、数日はこの状態……と??」

「はいー。ざっと3日から5日は見たほうが良いですねー」


 生死が関わってくるのなら致し方がない、正宗は暫らく急病という事で学校へはいけない事を理解した。


「話を戻します。正宗の状態は時間が立てば立つほど悪くなりますし、はっきり言えばそれだけカッサーナに優位に戦況は進んでました」

「確かにー。カッサーナからすればいつでも逃げられる状態ですからねー」

「しかしそのせいで私の方は逆に冷静になれました。結果、今まではアルヴァジオンの操作で手一杯だったのですが、ちょっと視界が開けたことでアレを少し理解することが出来ました」


 アイシスは麦茶を一口して喉を潤すと、視線をポッコルへと向けた。それに気づき、ポッコルが股下へと手を突っ込む。


「これポね??これはスイニーギョの水掻きという聖法具ポ。その昔アオアーシス海を横断したといわれるスイ──」


 解説を始めるポッコルから水掻きを奪うと、アイシスはそれを机の上に置く。


「アルヴァジオンは聖法具等をインストールすることによって多岐にわたる様々な機能を追加する事ができるようです。ようは、その聖法具の能力を引き出し装備として扱う事ができるようです」

「それがあの形状変化ですかー。頂いたデータだけ見るに確かに水中などの戦闘に特化していましたー」

「そんじゃあこれからは水中戦も問題なく、あの浮遊感と水圧に悩まされないってことなんだな??」


 だが正宗の言葉にはアイシスは首を縦に振らなかった。


「そうです、と言いたい所ですが、全部が全部そうとは言えませんね。これらはいわば追加装備です。使用するにはその都度装備しなおさなくてはなりません。無論、無闇にいろいろ装備しまくる事も出来ないようでした」

「ですよねー。それが出来るなら出撃後にポッコルの持ってる聖法具を片っ端から装備させれますものねー」

「更に言うと追加装備にはやはり現界させるのに相当量の聖力が必要となるようです」

「となりますとー、下手に装備させるといろんな改変や術式に回せる聖力量に不安がでてきますよねー」


 エルマの言にアイシスも頷いて返す。夢へ干渉し事象や物質を改変させたり、或いは障壁や術式を展開するのには聖力が不可欠である。またアルヴァジオン本体の強化にも聖力を回す必要があるため装備にそれだけ聖力を裂くことは一長はあるが一短もあるのであった。


「やはり使う場や機会をしっかりと判断しなくてはいけないな。ま、それ等を含めて改めてわかった特性ですが、アルヴァジオンといえど金剛聖導夢想兵装と同じく法術を根幹として形成されているものなのだと再確認できました」


 そのアイシスの表現にまたも首をかしげている正宗。話が良く理解できていないので口を挟まずにいる。


「つまり、です。アルヴァジオンのキーが何か、覚えています??」

「えーとー、聖魔導大全の書、ですよねー??」

「そうです。聖法、魔法、ありとあらゆる全ての術式を内包するという書物……それが聖魔導大全の書と言われています。つまりアルヴァジオンという形態は聖魔導大全の書が術式により組み上げている龍人型の金剛聖導夢想兵装と言って過言ではありません。だからでしょうね、あの形態の副座においては要求する術式が即座に大全の書から引き出せるようになっているよう……なのです」

「────っ!!」


 その一言にエルマは絶句して身を乗り出していた。


「今まで私は制御操作に手一杯でしたが、ある程度であれば要求に対し術式提供してくれるようです。なにせ全ての術式が内包されているんですから」

「ということは、アイちゃんは聖魔導大全の書から術式を引き出せた──と??」

「ええ、一端ですが。それを利用してカッサーナを討ち取ったわけです」


 エルマの問いに、アイシスは笑顔で頷いた。聖術に関しての事柄なだけにエルマが高潮した顔を見せている。


「と、いっても自発的にという意味ではありませんよ。こういったものがあれば……と思っていたところにアチラから術式を提示された、そんな感じですね」

「つまり意識的に──自在に引き出せるわけではない、と??」

「ま、そういうことですね。何かしら、あの機体、聖魔導大全の書の意志によるものかと」


 そのアイシスの返答に落胆を示すエルマ。


「兎も角、カッサーナを捕まえたのなら後はカッサーナを討つだけでした。正宗の容態が良くなかった為策を弄して勝利を呼び込みました。まぁ最悪でも相手に深手を負わせて痛みわけの域にまで持ち込む腹積もり……でいましたけど。討てたのは幸いだったといえます」


 そういってアイシスは指を三本立ててみせた。


「まず、正宗の排出している聖力を三等分することから始めました。あの莫大量の聖力であるからして三等分してもその容量は桁外れです。そしてその一つをポッコルに付与しました。アルヴァジオン、つまり正宗の聖力をポッコルの聖力へとする……これには大全の書から借りた聖力変換術式を使いました。他者の聖力は変調し同調させないと反発し合いますから。聖力量が量だけにエルマのではなく大全書からの術式を用いたわけです」

「スーパーポッコルの爆誕だったポ」

「ポッコルには離脱させる正宗を護りつつ、症状が悪化しないよう術式で縛り付けてもらう必要があったわけです」

「成る程ー。それで強力な聖力による障壁結界で水圧から護らせ浮上させー、その後の施術をわたしに丸投げしたわけなんですねー」


 なんのやり取りもなくズタボロの正宗をまかされた事にエルマが皮肉を言うが、アイシスはアイシスで決して視線を合わさない。


「……ポッコルに渡した障壁術式や正宗への症状緩和術式もも大全の書から持ってきたものです。下手をすればカッサーナの攻撃を受ける場合もありましたし、聖力量が聖力量でしたから」

「もの凄く扱いやすい術式だったポよ」


 エルマは納得したように頷いた。正宗は無言で傍観である。


「次に残った機体と残りの三分の一の聖力、この二つの聖力を使った近接自爆です。これは以前のトンテッキ戦での奴の分体爆破から思い付いたものです」

「構造体を聖力で作り出している金剛聖導夢想兵装ならではの戦術ですねぇー。……やはり術式は大全書からですかー?」


 その問いかけに頷きを返すアイシス。金導夢兵装は術者の力を元に現実化させるモノである。それ故に自壊したからと言ってリアルの物質がなくなるわけではない。術者の力が回復すればまた構築できる代物なのだ。その利点を突いた凶悪な戦術ともいえる。しかしながらエルマとて金導夢兵装の自爆術式なぞしるよしもない。金導夢兵装はユメミールでも虎の子であるが故にそのような使い方は考えられてこなかったのだ。


「三分の一と機体の構成残留分とはいえ密着状態でのあの爆発でしたからね。いかに夢生獣の金導夢兵装体とはいえ、無事で済む筈がないと考えていました」

「ほぇぇぇー、でもあと三分の一残ってますけどー??」

「それが今回最大の切り札、です。アルヴァジオンの自爆で仕留められなかったなら……或いは、私達のように脱出したのであったら??……もう一手用意しておくものでしょう??」


 そうしてアイシスは残りの聖力を自身に付与したのである。アイシスも度重なるアルヴァジオン起動のための起爆剤として使われたため聖力はカツカツに近かったのだ。それを補い、更に追撃の一手とするにはそれだけの力が必要であった。


「でもー、聖力があってもアイちゃんには手立てがー……」

「ええ。そこも聖魔導大全の書から引き出した術式です。ウルフェンの剣を使った簡易聖法衣術式、それで逃走していたカッサーナを討ちとりました」


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