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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
深海の大決闘
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深海の大決闘20

 「余裕っ!!余裕ギョっ!!」


 水圧も、水流も、ものともしない。身体をうねらせ加速して、“貫け”とばかりに叩き付けたトライデントが金の鱗を突き破った。弾けるように押し流された金龍の身体だが、水の抵抗を受け一気に速度を殺しユラリと漂うばかり。はっきり言ってそれは特大の化け物であった。一般的なユメミールの金導夢兵装体は精々20メートル程の大きさのものが普通である。アイシスの駆るウルフェンや、ビッグトンテッキやケーニッヒカッサーナなど強力な術者、夢生獣達が操る機体となって初めて30メータークラスの大型の機体へと分類されるのだ。しかし、この金龍は40メータークラスという規格外の化け物サイズなのだ。ゴーレム技術と装衣技術から発展した金導夢兵装体は、人がモンスターと戦うための兵装でもある。その為大型のモンスターに対抗するためにその体躯は20メートル近くあるのだが、それにしても金龍の巨大さは異常の一言であった。その装甲、鱗の硬さとなるやいくら攻撃を仕掛けても削るので精一杯。それを今、見事に食い破って見せたのだ。


「このまま打ち砕いてやるギョッ!!」


 突き刺さったトライデントが、龍の内部に魔力波動を撒き散らす。龍はその傷口を大きく破壊されながら、それでも尚、腕を振るってきた。それを華麗に避けるカッサーナの機体。相手の動きは遅くとも、そのパワーだけは計り知れない。掴まったら負けである。だが、掴まるつもりも毛頭なかった。


「遅いっ!!遅すぎる!!この勝負貰ったギョ!!」


 踊る三叉の槍が龍の頭部を捉え、その威力に金色の破片が散った。勝敗は濃厚であった。最早カッサーナにも余力はない。大きな世界改変に莫大量のケーニッヒカッサーナの分体を造りだす事でカッサーナの魔力も底をつきかけていた。おまけに金龍の装甲を削り破る為にトライデントに必要以上の力を込めて攻勢に出ているのである。カッサーナもギリギリなのだ。だが優劣は圧倒的であった。カッサーナの動きを龍は捉えることは敵わず、その猛攻を防ぐことも叶わない。水中で重鈍な龍は防戦もままならない状況だ。そしてそれはカッサーナがいつでも撤退できることも示唆していた。勝敗決着の有無の決定権をカッサーナが握っているのである。龍が死ぬまでカッサーナは殴り続けられるし、いざ魔力の底がやばいとなれば逃げればよいのである。龍ではカッサーナに水中では追いつけない。つまり負けはなく、そして次第に傷つき動きをより鈍くして行く龍の姿に、カッサーナの頭の中には勝利の二文字以外は浮かんでこなかった。


「見よ!!見よ!!!!小生を見よ!!小生こそ、この世界の覇者となる、カッサーナであぁぁあるっ!!」


 ……ああ……、トンテッキよ、同胞よ、且つ目せよ、カッサーナの世界が今生まれる。龍を下し、それを取り込めばカッサーナのステージは大きく昇るはずだ。龍魚、魚王カッサーナの誕生だ!!


「……ギョ!?」


 ──その気配に、搭乗席のカッサーナは泡を食った。ケーニッヒカッサーナの外殻が感じた異変を、搭乗席のカッサーナは余すことなく受け取ったのだ。鱗が、皮膚が、側線が、五感以上のモノが……その変化を感じ取っていた。



*************************************



「あるんですね!?」

「あるポよ!!」


 ポッコルの返答に頷いてみせるアイシス。既に周囲は赤い紋様で溢れかえっている。モニターを埋め尽くすのは危険を示す赤い警告だらけだ。装甲も打ち破られ、機体へのダメージから正宗へのダメージまで増加していた。だがもう機体修繕に回せる余力はない。だが、


「逃げずに戦闘を続けたのは失敗でしたねっ、カッサーナ!!──ポッコル!!」

「ポーっ!!取り出したるは、スイニーギョの水掻きっポー!!」


 ポッコルが頭皮から取り出したのは水掻き……、ダイバー達が足にはめるフィンである。


「これはその昔アオアーシス海を横断したといわれるスイ──」

「どうでもいですっ!!解説はまた今度にしなさいっ!!」


 言うが早い、アイシスはそれをぶんどると紋様盤へと叩き付けた。青白く輝き、紋様陣に囲まれてスイニーギョの水掻きが浮かび上がる。


「最後ですっ!!正宗、今一時だけ、力を振り絞りなさいっ!!」

「了……解……」


 必至の形相の正宗が機体を駆る。突如として腕と足先の形状が変形、いや、変更された。腕から伸びた板はヒレのようで、海中での機動性安定性旋回性全てを飛躍的に向上させて稼働し、海水を叩く。足は正しくフィンの形状となり、強力に水を蹴り出すことで全身を魚雷の如く加速させていった。電磁誘導で水流が発生しているのか、全身の装甲が海水を操り姿勢制御と機敏さを補佐して更に加速を推し進めていく。右に左に、前に後ろに、上に下に、意思と寸分違わず動く機体。水龍となったアルヴァジオンは海中を縦横無尽に駆け、瞬く間にケーニッヒカッサーナに泳ぎ迫る。


<ギョ、エッ!!>


 形状変化に敏感に反応し、逃走の様子を見せたケーニッヒカッサーナ。だが最早その水中での機動性に優劣はなく、虚を突いた襲撃によりアルヴァジオンは見事にケーニッヒカッサーナを捕らえてみせていた。両者はもつれ合い、蛇同士の格闘のように激しく絡みあう。掴まれながらもトライデントで突き刺し、密着状態からのバブル攻撃で引き剥がそうとするケーニッヒカッサーナ。だが水龍はそのパワーに物を言わせ、装甲を爪で突き破りケーニッヒカッサーナの両腕を裂いた。金の破片が、銀の鱗が、両者の残骸が飛び散り海域を汚しながら尚も互いを潰しあっていく。


「ポッコル、用意はいいですねっ!!」

「いつでも大丈夫っポーっ!!っていうか早くして欲しいっポよー」


 全身の毛を逆立てたポッコルが悲鳴を上げる。金色に輝くオーラは逆立っている毛を先端からヂリヂリと焦がしてしまっている。


「では行きますっ!!ベイルアウトッ!!」


 アイシスの声と共に水龍の胸椎部分が爆ぜ飛び、金色の球形の紋様に包まれた人影が排出され急速浮上していった。


<ギョエエ!!まさか……>


 半壊した機体を震わせながら、カッサーナの恐怖を孕んだ声が響き渡る。それにあわせ死骸のような龍の金色が輝きを増し、炸裂した。アルヴァジオンを構成していた聖力を用いた大爆発はケーニッヒカッサーナを包み上げ、深海を焼き上げて強烈に攪拌させていく。龍の金色の装甲も、ケーニッヒカッサーナの鋼の鱗も、溶解し砕け散り藻屑と消えていく。それでも、大量の塵芥、泡と渦にまみれたその海域も、次第に静かに静寂を取り戻していくのだ。


「流石に──死ぬかと思ったギョッ!!」


 その中で、悠々と泳ぐカッサーナの姿。いち早くアルヴァジオンの自爆を察知したカッサーナは、自身もまたベイルアウト──緊急脱出する事で爆発からの生還を果たしていた。戦いは痛み分け、双方共にこれ以上の戦闘は無理と判断し撤退するという形となったわけだ。


「しかし必要以上のデータは取れたギョ。次は抜かりなく……」


 泳ぐカッサーナの側線が、急接近してくる何かを、その水流変化を感じ取る。現実と夢の狭間に逃げる間もない、振り返れば、金色の流星がカッサーナ目掛け、深海の闇の中を飛んで来ていた。


「ラブリーハートフル──」


 全裸の、しかし足にフィンをつけた人影が、


「ウルフェンボンバァアッ!!」


 銀狼の剣を振りかぶり、突き出された刃が一直線にカッサーナの眉間へと神経絞めの針ように突き刺さる。


「も……猛烈、だが、嫌いじゃないっ!!嫌いじゃないぞこの刺ゲ、ギョエアアアアアアアアアアアアアァァァァァ……」


 口から、鼻腔から眼腔、果ては鰓から肛門に至るまで、全身を持ってして金色のハート型の波動粒子を撒き散らし消失していくカッサーナ。白銀の剣が引き抜かれればカッサーナの姿は一気に薄れていく。それを待たずして紋様を築き振り上げ、人魚がとどめとばかりにその封印の術式を纏った剣を振り下ろす。


「夢生獣カッサーナ──撃破封印っ!!」


 魚人の身体は留まることなく蒼色の光の珠と姿を変え、肩で息をつくアイシスの眼前に浮かび上がった。アイシスが手首に紐で括り付けていたボールを突き出せば、その中へと蒼い光が吸い込まれ、暫らくブルブルと振るえると一瞬輝きを増し再び静けさを取り戻す。


「……終ったあああ……疲れましたあああ……肉体的にも、精神的にも」


 嘆息するように息を吐けば、重い体を酷使して海面目指し、上へと向かって人魚は泳ぎだすのであった。

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