深海の大決闘15
カッサーナの状態から当初アイシス達が予想した回復期間、しかしそれを過ぎても再度の出現兆候は全く見られなかった。これには流石のアイシス達も懐疑的であったが相手の出方を待つほか無く、黙々と対策準備を進めて待ち構えていた。そして遂にその時が、その現出の前兆を掴み取ることに相成ったのだ。
「間違いなく、明日現出するポね」
ポッコルが感じ取った前兆はかなりはっきりとした物らしく、予測はほぼ間違いないという話である。
「そこまではっきりしたものなのか??」
「間違いないポ。どちらかと言えば“明日向かいますので宜しく”と言われてる感覚ポよ」
「まぁー……恐らくは宣戦布告なのでしょうねー。明日決戦に向かう、止める気ならば止めて見せろ……って事なのでしょー。以外に律儀というか自信の表れというかー……」
エルマの推察にポッコルとアイシスも頷き合う。ついにカッサーナとの決着の時が来たのである……来たのである、が、
「よりにもよって、平日か……」
正宗は大きく溜息を付いた。申し訳無さそうに顔色を伺うエルマ。
「マー君、悪いんですけどー……」
「わかってるよ、明日は急に熱が出たことにして学校休むことにするよ」
「私の方もパートを休めるよう連絡を入れておかなくては」
アイシスとしてもシフトに穴を開けるわけだから仕事場への報告が必要であった。明日ということで急にドタバタし始めた状況である。対する準備自体も万全……とは言いがたい。こんな事で世界平和が護られるのか??甚だ疑問に思えてくる。
「一応最終確認です。エルマ、ジュエルの方はどうなってます??」
「いま全体の5割方を組み上げたところですー、戦闘投入はやはり無理と考えて欲しいですねー」
アイシスはその返答に頷きを返し、視線を正宗に向けた。
「聞いての通りです正宗。すみませんが貴方の力を貸してもらいたい」
「わかってるよ、実際二度目だしな。それにトンテッキの時にしてもそうだが俺の所に直接、学校とかに来られるのは正直勘弁なんだ、やるしかないだろ」
「ええ……それでも、貴方にまた実戦をさせなければならない事には本当に責任を感じています、申し訳ありません」
頭を下げるアイシスつられ、エルマも正宗に頭を下げた。だが正宗は首を横に振る。
「いいって。この世界の為でも……あるのかな??というか、もういっその事、不可思議な力の存在に常識から覆させられこの世界自体生まれ変わった方がいいんじゃないか??と思える時もあるんだけどな……」
昨今の腐敗した世の中に、そう感じ考え、そのように思えてしまうのも仕方がない。しかしエルマは苦笑しながらもそれを否定した。
「でもー、実際それは世界の大混乱を生み出しますよー。世界規模での戦争は勿論の事ー、主権の交代すらありえる話になっちゃいますよー」
その回答に首を傾げる正宗。
「主権??」
「人がこの地を統括している事を指すポよ正宗。つまりエルマは聖力の開花により人とは違う動物が進化発展し、この星の主権を奪い去ってしまう可能性すらあると示唆しているポよ」
「マジで!?ありえるのかそんな事??」
「そうポよ。実際人が動物に勝っているのは知能と言う点が大部分ポ。チンパンジーですら握力は300kg、肉体スペックだけみれば歯が立たないのはわかりきっているポ」
「チンパンジーってそんなに握力あったんだ……」
チンパンジーの握力に驚愕している正宗であるが、その脚力は350kg、跳躍力は4mにも及ぶといわれるチンパンジーとでは筋力に大幅な差があるのは歴然なのだ。チンパンジーですらそうなのだ、人が多くの動物に肉体だけで勝利するのは至難な事なのであるという認識を忘れてはいけない。そう、もしそんな動物達が人並みの知力と応用力を有したのなら……地球の主権が移り変わってもおかしくはない。人の造り出した文明も武器も既にそこにある。彼等がそれを奪い、活用したのなら、肉体的に劣る人が動物に敗北する事は十分に有り得る事なのだ。
「……動物に支配されるのは嫌だな」
「食肉などに散々してきたのです。逆に使役され、家畜とされる場合すら十分に考えられる」
「というか動物とも限らないポよ。昆虫である場合も考えられるポ」
アイシスとポッコルの言葉に想像してみたが、稚拙な想像力では想像しきれない部分が多すぎる。夢生獣が動物の姿を模しているのもそういった主権の奪取としての意味合いがあるのだろうか??いずれにせよ想像の域を出ないので正宗は頭を振り意識を切り替えた。
「よしっ!!その考えは却下して、兎も角カッサーナとの決戦だ!!絶対勝利するぞ!!」
「そのイキです!!というか現状で我々は既に背水の陣なのです。絶対勝つどころか負けることも絶対に許されない……わけですが、残念なことに友軍や援軍も期待はできません。それぞれ心して挑むように!!」
「アイちゃん、そんな言い方したらマー君が萎縮しちゃうでしょうー!?」
緊張はすべき事柄だが緊張しすぎて硬くなっては動けるものも動けなくなってしまう。正宗はアイシスと違い戦いに慣れているわけではないと慮ったわけであるが、
「エルマは過保護すぎるポ!!この!!畜生である正宗が!!そんな繊細なワケないポよ!!」
いいながらポッコルが正宗をバシバシ殴りつけた。
「どうせなにも感じてないポ!!意味も、その重責もっ!!」
「だって負けたら俺死んでるんだろ??そうなった時の事考えたって意味ないじゃん」
「まぁ、それはその通りなのですが……そういう考え方でいいんです??」
「安心しろ。死ぬ時は一緒だぜ、アイシス!!」
キリッとした表情で言えばアイシスの顔が一瞬で赤くなった。
「なっ!!……こんな時に何を――」
「まぁタンデム操縦だからポね。アルヴァジオンが負けたらそりゃアイシスも一緒なのはあたりまえポね」
「ですねー」
「………………」
単なる事実であった事を突きつけられ、アイシスは顔を両手で覆って蹲ってしまった。実際問題として正宗にはそこまで恐怖があるわけでもない。前回を通してわかったことは確かに痛みもあるがそれは、アイシスのフォローで痛覚などは激減したりする。そして自身のイメージどおりに動くアルヴァジオンの機体。それは本当に着ぐるみを着ている感覚に近いものもあるのだが、それ以前にスケールの違う街並みや体感などから感じ取れた事は、ゲームをしている感覚に近かった……という点であった。自身が手を下しているわけではなく、鋼の肉体というワンクッションを置くことで人形を操っているような……一歩引いた視点から物事を見られるのだ。直接的でない、直感的に動く機械がやっている事、そう思えることが精神的な負荷を相当に和らげている。
「直前になればそりゃまた別の不安が鎌首上げるんだろうけど、今はもうなる様になるしかないんだろ??」
「ですねー。マー君が断固拒否の姿勢を示したところでー、もう他に手立てはありませんからー」
それはイコールアイシス達の敗北、そして夢生獣によるこの世界への席巻である。その後はどう転ぶかわからない……であるのだから、やりたくなくてもやる以外に選択肢はないのだ、故に行き着いた先は諦めの境地だ。
「……だったらもう、なるようにしかならないんだから……負けたときのこと考えても仕方ねーだろう??」
「ふむ、確かにそれもそうポね」
こうして気追うことなくカッサーナの現出を待つ正宗達であった……筈であった……のだが、実際に現実というものはそう都合よく事が進むこともあれば、進まない事もまた、多々あるのである。余裕を持っていた先の自分達はどこに行ったのか??日の明けた翌日、そこには既にパニック状態となった正宗達の姿があった。
「もうカッサーナはとっくに現出してるポよおおおっ!!何をやっているポかあああ!!」
広場に木霊するのはポッコルの罵声である。空は巨大な機械仕掛けの時計が被っており、眼下の街並みは刻一刻と水の中に沈んで行っていた。海がその領域を広げんと嵩を増して来ているのだ。
「そうは言うがな!!何がいけないのかはっきりしねーんだからしょうがねーだろうがっ!!」
「クッ……やはり不確かな術式に望をかけたのは間違いでした」
「終ったー、詰みましたー」
正宗はポッコルと口論しつつ、アイシスが現実逃避している中、エルマは半笑いで呆然と空を見上げ……グダグダな展開をその場に広げていた。
「もう……もう結構な時間がたっているポよ!!ヤツの領域も随分と広がってきているポし……このままではヤツを倒す時間すら危ういポよぉぉ!!」
アワアワしながらポッコルが海に飲まれた街を見下ろしている。
「まったく、あの魚野郎は本当に川魚の気持ちを全くわかってません。淡水に塩水があんなに混じっては同じ魚である淡水魚達は一体どうなってしまうと思っているんだ」
「……そんなことより現実を見るポよアイシス!!戦いから関係ない事に思考を持って行った所で“この現状”はどうにもならないポよ!!」
遠い眼をしているアイシスにポッコルが切実に訴える。既に正宗達は致命的な時間の浪費を抱えていた。少し前まではしっかりと朝食をとり、いつでも来いっ!!とばかりに気迫十分であったにもかかわらず、蓋を開ければコレである。しかしながら、かれこれアルヴァジオン変化に三回も失敗しており、焦るなと言う方が無理とも言えた。だが問題は回数ではない……その工程に致命的な欠陥があったのだ。カッサーナの現出を感じ取ったポッコルにより正宗達は即座に応戦する準備に入った。カッサーナの展開した因夢空間に突入すると同時に正宗達も兵装術式を励起し展開、速攻をもって圧倒し勝ちを得る……その予定であった。あった、のだが、
「毎回服が爆ぜるとこちらの懐具合に支障が出る。服脱いでの起動でいいか??」
正宗のその一言が悲劇の始まりだったのだ。無論その案には同じく服から下着まで駄目にされているアイシスも同意を示した。お互い事前に裸になり、バスタオルで身体を覆っての術式の励起である。……が、
「これはー……駄目っぽいですねー……」
いざ!!となったら正宗の頭に呪文は思い浮かばず、記憶していたエルマの言うとおりに唱えても術式が励起しない。
「んー……やはり“服を着ている”という点をー、“兵装を装着している”と書きかえれない為に駄目なんじゃないでしょうかー??」
金導夢兵装はその衣服を法衣と化す技術の延長線上のものだ。“服”というものを“鋼の体”という物に存在自体を書き換えている、いわば世界へとそう信じ込ませ騙しているのに近い。世界にとっては“服”であろうが“鋼の体”であろうが差異でしかない。「鉄正宗は○○を着ている」、その○○を入れ替えただけなのだ。故に、バスタオルではその用件を満たせられなかった……そう言う話である。
「巻いてあると着ているの差か??」
「ああああ……コレじゃあまるで私が野外でバスタオル姿で徘徊する痴女みたいじゃないかっ!!」
「そう言っている間にもカッサーナが現れ術式展開し始めたポっ!!急ぐポよっ!!」
ポッコルが叫ぶ。見れば海のほうから青白い粒子が昇っている。カッサーナが現れ金剛魔導夢想兵装を展開しているに違いなかった。
「……やり直しですーっ!!あまり時間はありませんー!!すぐに初めからやり直しますよー!!」
切り替えるようにエルマが声を出し即し、正宗達はいそいそと着衣を身につける。その正宗はTシャツにトランクスパンツ姿。アイシスも下着の上にYシャツという格好だ。エルマはその格好を見てすこし眉を捻らせる。
「んー……最低限は“服”と言えなくもないですが……大丈夫でしょうかー??」
「兎も角やってみるポ!!正宗っ!!」
ポックルが正宗へと向けば、正宗は難しい顔で首を横に振っている。
「いや、まったく反応ない。やっぱりちゃんと着ないと駄目なのか!?」
「毎回服と下着が駄目になるのは勘弁願いたいのですけど……」
「ん??ちょっと待つポ??最初の時アイシスは全裸だったじゃなかったポか??」
そう……言われてみればトンテッキに追い詰められた時に既にアイシスは全裸だったのだ。いや、
「いえ、そうでも……ない筈ですー。アイちゃんはあの時辛うじて……ですけどー、シャツを着ていたかと思いますー」
「あー、そういえば俺が貸したな。俺は下にTシャツ着てたし……ならTシャツはOKなんだよな??そっちは裸YシャツでもOKなのか??判断基準どーなってんだ!?」
手元の金珠を睨みつけながら正宗は愚痴のように漏らした。しかし時間は更に刻一刻と過ぎて行っている。
「まずいですよ、カッサーナめ……いよいよ大改変し始めました!!」
焦りを含んだアイシスの声に釣られ視線を向ければ、確かに淡い青白い光を上げ、海が街を飲み込み始めていっていた。道路や街路樹は次々に水の底へと沈んで行く。もの凄い速さで水位上昇していく水面。
「なんと!!周囲はいたるところがフジツボだらけに!!木々は珊瑚に若布、建物は岩塊と化して行ってるポよお!!人は魚卵……ああ魚になってマーマンになるポね。あえて海豚にしないのはやはりトンテッキがらみポか??それとも海豚が哺乳類だからポか??」
眼をギューンと伸ばした望遠仕様のポッコルが言う。
「……ウワッ、変な顔、キモッ」
「地味に傷つけるのやめてほしいポよ、アイシスっ!!これは望遠能力のせいポよ!!」
思わず出てしまった正直な感想だっただけにその切れ味はポッコルの無敵の心を容易く深く傷つけていた。
「それどころじゃないですよー!!急いで服着て下さいーっ!!最初からー!!最初からですよー!!」
再び切り替えるべく声を上げたエルマによって仕切りなおされる。正宗達は脱いでいた服をしっかりと着て、アイシスとふたり並び立った。そして正宗が金珠……“聖魔導大全の書”を突き出し吼え上げる。
「リヒカバイフィ=ニショケミューコン=カインゼロイカ=ユメソウサ!!」
金珠に光が灯り、眩く輝くと正宗達の衣服が弾け飛んだ。
「よーしっ!!来たポねっ!!解錠術式承認ポッ!!顕現!!アルヴァジオン……ッポー!!」
正宗の呪文に反応し、ポッコルの手の中に光の鍵が現れる。吸い込まれるように金珠に飲み込まれたソレが術式の封印を解錠し、押し広がるように幾つもの紋様が展開して散って行く。
「では改めて説明いたしますよー!!予定よりも大分遅れてしまいましたが最早逆の意味で突撃するしかありませんー。相手の虚を突くためではなく時間的余裕が無いからですー。戦場もー、こちらが準備し想定した優位な環境は最早微塵も無くー、相手側に優位になりつつあるように改変が進められていますー。だからこれ以上不利になる前に突っ込まねばなりませんー!!」
「「…………」」
エルマが作戦を再確認すべく離す間、全裸で突っ立っているのもなんなのでバスタオルを身体に巻いて聞きに徹する二人。
「遠距離攻撃はどうポ??カッサーナがこちらに気付く前にこちらから超強力な一撃をあたえるポ!!」
「それが出来ればいいのですがー……」
視線をアイシスに向けるエルマ。アイシスは一旦視線を逸らし黙考した後、エルマを見つめ返す。
「難しいですね。正直まだアレの操作法が今一わかってません。正宗自身も体感で動かしている感覚操作で手一杯でしょうし、多くは望める状況じゃありません。前回の終盤も何故あの武器を出せたのかわかっていないんです。是非ともポッコルにもう一度――」
「不確かな事に時間を割く余裕はないポね。現に今不確かな励起法を試した為に窮地に陥っているポ!!今は揺ぎ無く!!最速で!!余計な策を弄せずに確実に突撃を敢行してカッサーナの改変阻止へと向かうことを最優先にすべきポよ!!」
「いや、だからもう一度ポッコ――」
「あー!!あああー!!試している時間なんてないポねー!!確実な方法を取らないとポねーっ!!」
何かを提案しようとするアイシスを遮り声を荒げるポッコル。されど――、
「……ちょっと待つポ。一向に風すらも起きないポね??」
「ん?そういえばそうだな」
ポッコルに指摘され自身の身体をチェックする正宗。腰に巻いたバスタオル以外に映る物もなく、それは場所が外であるがために馬鹿な姿にしか映らない。と、いうことは身体から発生すべきである物が出ていないことを示している。
「……ってー、あれー!?術式消えちゃってませんー??」
待てど暮らせど正宗から金色の風が発生し始める事もなく、不思議に思ったエルマがチェックすればこの通りである。流石にアイシスにも焦りが出始めている。
「どうしてです!?今度は何がいけなかったんです!?私の服は弾けとんだままなんですよ!?」
「そーだよ!!ちゃんと起動したぞ??頭の中にちゃんと呪文が思い浮かんだし、俺の服も弾け飛んだ!!」
二人で顔を突き合わせているが事態は一向に解決へは向かわない。
「ひょっとしなくとも、ソレのせいじゃないポよか??」
ポッコルが正宗とアイシスの身体に巻いているバスタオルを指して言う。
「何を馬鹿な」
「たったコレだけのもので??」
アイシスと正宗は鼻で笑ったわけであるが、エルマは顔を青くさせたままポッコルの意見に同意した。
「きっとそーですよー!!折角術式が起動準備に入ったのにソレで塞いから種火がきえちゃったんですよーっ!!」
「なっ……ということはアレですか??術式が発動するまでは全裸で待機しなければならないんですか!?」
「なんつー微妙な使用ブッ込んでくるんだこの金球わっ!!」
驚愕の叫びと金珠に文句を言う正宗達。だが事ここに至ってはそれは致命的なロスを生み出している。最早口論している暇すら惜しい。
「なんでもいいポ!!兎も角さっさと変身してあの魚野郎をぶちのめして来るポよ!!」
「しかし、着替えが!!」
アイシスが慌てたのは無理もなく、着ていた服は弾け飛んでしまったままなのだ。その場合で術式がキャンセルされても衣類は帰ってこないらしい。
「急いで部屋に戻って着替えてくるのーっ!!可及的速やかにー!!」
エルマの叫びにアイシスと正宗が慌てて鉄家へと駆け出していく。鉄家を破壊しないよう外へと出て術式展開へと及んだことが裏目に出ていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ーっ!!もういまから変身してたらー……間に合うんですかー!!」
確かにアルヴァジオンはユメミールのエルマ達からしても規格外のスペックと言えていた。だが相手はあのやり手のカッサーナである。更にヤツは再現出の期間を延ばしてまで力を溜めてきていると来た。単純に考えるだけでも難敵であり戦闘とてスムーズに事が運ぶとは到底にして思えない。だのに既にカッサーナは世界改変を初めその地盤を固めつつ……いや、固めるというよりも浸ける、文字通り海にしつつあるのだ。全てにおいて“不利”であると言えていた。
「さてっと、ポッコルはここにいてもやる事もないから妖精界へと帰らせてもらうポよ」
立ち上がるぬいぐるみを無言で掴むエルマ。たとえ八つ裂きにしたいぬいぐるみとて、戦力の一つに相違ない。改めて解錠する為の鍵を用意してもらわねばならないのだ。
「離すポよっ!!ちょっ!!無視するなポ!!エルマ!!こっちを見るポ!!」
「アイちゃんーマー君、早く帰ってきて下さいよー」
エルマは強く握り締め、二人の帰りを待つのであった。
「ちょっ――ギブ!!ギブポッ!!中……ワタが出ちゃうポーッ!!」




