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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
深海の大決闘
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深海の大決闘10

「そこおっ!!」


 ウルフェンがその剣を振るう。如何なる合金か、剣と槍は互いに交差し強烈な衝撃を撒き散らす。互いが弾ける様に距離をとれば、両者睨み合い静寂が間隙を奔る。いや、微かにだが、カッサーナの方は肩を震わしているようであった。


「ギョギョ、失礼。いやな、相対してみて思う訳よ。これならばトンテッキもやられても仕方が無いのだと。認めよう、主らはなかなかに強敵ギョッ!!」

「それはこちらの台詞です夢生獣カッサーナ。その技量、その胆力、並大抵の者では至れません」


 互いに不敵に称えあう。なぜならば、その間にもエルマイール達の聖魔考察の話がダダ流れに聞こえてくるからだ。


「……それがっ!!一体どうなっているギョ!!これでも小生達は世界を賭けた戦いをしているのだギョよ??」

「すみません」

「だのに完全シカトで井戸端会議とか、全然盛り上がらないギョよ??」

「マジすみません」

「小生はまだしも、お前の応援すらしないとは……お前他の者達から嫌われているんじゃないギョか??」

「……えっ!?」

「ユメミールのご令嬢と聞き及んだギョが、皆に我侭し過ぎたのではないかギョ??」

「うっ!!……か、家事手伝いは確かに丸投げですが、一応生活費の足しにと給金は入れるつもりですっ!!」

「つもり??お前、それ駄目亭主、所謂パチンカスの言い訳に近い台詞ギョよ」

「っ!!」

「ご令嬢だからと言ってもそれはユメミールでの話。もうちっと家庭を顧みた行いをしないと、皆に愛想つかされてしまうギョよ??」

「そうでしょうかね……いや、そうなんでしょうね、ううう……」


 完全にラブリーアイシスは凹まされていた。致し方がない。


「ギョ。だが安心するギョ。そんな世界もこれでお仕舞いだギョから」

「それには及びません。私の立ち位置は私自身で切り開いてみせますっ!!」


 猛烈な突撃をしてくるケーニッヒカッサーナを、紫電の剣で受け流すウルフェン。轟音を響かせ二体の巨人がぶつかり合えば、数合を持って互いに距離をとった。再度飛び掛るケーニッヒカッサーナを冷静に捌くウルフェン。が、次の瞬間見たものは、着地した勢いのまま大地へと沈み行くケーニッヒカッサーナの姿であった。


「ギョギョ……小生こそ大海。すなわち小生の居るところすべて海っ!!であるのなら……潜れ泳げるのは道理であろう!?」


 陸地を雄大に泳ぐケーニッヒカッサーナ。背ビレをまるでサメのように突き出しながらジャンプし弧を描く。そのまま地面という水面の中に土砂という滴を蒔いてその奥深くへと消えていく。周囲を警戒するウルフェンだが、流石にその姿を捉えることができない。──途端、


「直下型エラ洗いギョッ!!」


 真下から飛び出してきたケーニッヒカッサーナの体当たりをまともに受け浮き上がるウルフェンの巨体。上昇、そして落下っ!!強かに地面へとたたきつけられれば、ケーニッヒカッサーナはそのまま身を翻し砂塵を上げて地面の中へと吸い込まれていっていた。


「このっ!!」


 ウルフェンが剣の切っ先をケーニッヒカッサーナの落下点へと向ければ、稲妻が奔りその地を焼き吹き飛ばす。煙を上げて赤熱化しているが抉られたクレーターからみえるものはただの土、そこには鋼鉄の巨大魚の欠片もない。


「厄介ですねっ」


 舌打ちする間もなく、地中から現れるケーニッヒカッサーナの尾びれ。


(距離を取って……どうするつもりなんです!?)


 警戒するウルフェン目掛け、鋼鉄の尾びれで水面を叩くように激しく地面へと叩き付ければ、土砂が津波のごとくウルフェンへと襲い掛かってくる。水とは違う凶悪な質量を瀑布のように叩き付けられ否応なしに後退するウルフェン。


「……くっ!!」


 体勢を整えようとしてラブリーアイシスは顔を歪ませる。既にそれ自体が困難となってきていたのだ。理由は明白で、ウルフェンの足下までも大地の液体化が進んで来ていたのだ。今は泥程度だが、やがて本物の水のようになりウルフェンをも飲み込んでいくだろう。


(カッサーナの改変能力ですかっ!?)


 目の前で巨大な背びれが鮫のように土をかき分け悠然と泳ぎ、沈んでいった。再び距離を取りウルフェンに襲い掛かってくるつもりなのであろう。静まりかえった水面……いや、泥沼の水面を無言で見つめる。


「……今っ!!」


 咄嗟にラブリーアイシスは吠え全身から雷鳴を上げた。直後響き渡るのは鈍く重い激突音。ウルフェンの眼下には隆起し、飛び出た岩塊とひび割れだけが広がっていく。それを見つつ、同時に力尽くで埋まっていた足を引き抜くウルフェン。パラパラと砂と土の破片を落としながらもしっかりとした地面の上へと両足を付けて立つ。


「クッ、地中に閉じ込めてやろうと思ったのですが抜けられましたか……」


 ラブリーアイシスは緊張を保ったまま周囲を注意深く観察する。ラブリーアイシスがやった事は簡単な事だ。ケーニッヒカッサーナがゲームやアニメのように大地を泳ぎ潜るのはカッサーナによる改変の為だ。カッサーナが言った通り、“カッサーナの望むところを洩れなく大海となる”よう世界の見ている夢に手を加えた結果である。それが出来るのが夢生獣であり、それの力を拡大する物が金導夢兵装なのだ。──だから同じ力を行使できるウルフェンを使用しソレで元の地面へと書き戻したのだ。そのために、大地という液体の中を泳ぎ、砲弾のようにウルフェンへと迫ったケーニッヒカッサーナであったがその思惑は突然現れた大地という塊に突っ込むことで失敗に終わったのだ。突如として現れたウルフェンが元に戻した領域、足下周辺だけの改変の為に泥沼に浮かぶ島のような状態となったのだが、その島に突っ込んできたケーニッヒカッサーナが激突した、という話となる。その突撃の勢いは強力でウルフェンの足下を隆起させる程であり、浮島そのものに亀裂を入れる程であったのだ。衝突したケーニッヒカッサーナのダメージとしては相当のモノであろう。ただ、ラブリーアイシスとしてはケーニッヒカッサーナごとウルフェンが元に戻した領域、すなわち浮島の地中の中に閉じ込めてやろうと考えていたのだが……少々タイミングが早かったらしい。


「さて、ここが勝負所ですね」


 舌なめずりしながらラブリーアイシスは神経を研ぎ澄ます、地の下に潜むカッサーナの次の手を読んでいるのである。


(距離を取ってくるか、再度下から来るか、あるいは飛びかかってくるか)


 下からの攻撃に失敗したとなれば、距離を取っての攻撃に切り替える……自然の流れであろう。それとは別に虚を突いて飛び出し、陸上で仕掛けてくるとも考えられた。


(……いや、あのカッサーナなら……)


 ラブリーアイシスはウルフェンで構え待つ。そして……、


「ギョッ!!読み切られたギョ!!」

「その通りですっ!!」


 再び足下、砕けかけた岩盤を突き破り直下から飛び出してきたケーニッヒカッサーナの突撃をサラリと躱しながら、跳び退きながらも雷刃で迎撃してくるウルフェン。ウルフェンの改変に防がれた先の直下からの突撃、だがそれによりラブリーアイシスが造り出した大地には亀裂は入れていた。脆くなったソコであるならば、ケーニッヒカッサーナの突破力をもってすればもう一度突撃する事で突き破ることは可能だろうとカッサーナは考えたのだ。カッサーナはラブリーアイシスの虚を付く為、あえて防がれた同じ攻撃を行う手を選んだ。しかしラブリーアイシスはそれを読み切って迎え撃ってみせた。振り抜かれた雷刃と吹き飛ぶケーニッヒカッサーナの片腕。ヨロヨロと下がるケーニッヒカッサーナを、今度は横凪にした雷刃が振り抜かれていく。雷撃により表皮を焦がし、内部を爆発させなから後方に叩き付けられる鋼の魚体。トドメとばかりにラブリーアイシスの聖力が唸りをあげる。


「聖力全解放っ!!術式展開っ!!必殺っ!!ライトニング──」


 ラブリーアイシスの叫びに答えるよう、ウルフェンが咆哮を上げ雷刃を振りかぶる。稲妻が全身から奔り、振り上げるその刀身へと集約していく。白く輝く刀身から伸びるのはまるで光の根、それがボール玉のように空間へと収束されていく。


「──ブリンガアアアーッ!!」


 ウルフェンが雷刃を振りぬけば、全雷撃を付与された光弾が打ち出された。眼前の地盤を砕きながら、猛然とその牙を向く雷光球。


「ギョ……ギョエイッ!!」


 超速で迫るソレになす術もなく、直撃した光球は全エネルギーである雷撃を解放する。放たれた電竜が唸り暴れまわり、その輝きは大地を焼き空を焦がす。昇雷し空を割り、眩く弾け飛んだ。


「……手ごたえはありました。……──なっ!!」


 溢れかえる蒸気と煙と砂煙、しかしその中から飛び上がる陰がある。


「アレをかわしますかっ!!カッサーナッ!!」

「ギョギョッ!!間一髪だギョ!!」


 ウルフェンの頭上を弧を描き跳躍していくケーニッヒカッサーナ。サッと視線をやるラブリーアイシス。ケーニッヒカッサーナの跳躍元には確かに残骸があった。


「そうかっ!!私が撃ったのは抜け殻っ!!」

「そうギョ!!脱皮だギョッ!!そしてこれが──」


 ケーニッヒカッサーナは黒くて長い紐状のモノを引きながら跳ぶ。ムリムリムリムリムリーッと勢い良くひねり出されていく。ウルフェンを飛び越し着地したケーニッヒカッサーナ……、その両足の間からたれ流れている紐状のモノはウルフェンにかかりつつ一直線に続いていた。


「ちょっ、貴方ッ!!これッ!!魚のフ……」

「ギョギョ!!ポワソン爆導策ッ!!」


 カッサーナの決めポーズと共にソレが一斉に励起した。ケーニッヒカッサーナから切り離された紐状のソレから這い出る術式紋様が周囲の空間を、肩にかかったウルフェンの装甲までも侵食していく。呪いの如くその手を伸ばし、より遠くまでその呪いを拡げようと広がった瞬間、連鎖爆発しウルフェンごと爆炎で染め上げた。


「う!!ぐっ……」


 その破壊力は火薬のソレではない。ラブリーアイシスの右肩は一瞬焼け落ちるかのように疼き、痛覚遮断機構がそれを瞬く間にその痛みを沈静化させる。着ぐるみといわれる金導夢兵装はまさに操者の身体と同議に近い。自身の体の如く動かせるということは、自身の身体のように感覚を共有しているといっても過言ではないのだ。右肩周りを持っていかれ、ウルフェンの右腕が雷刃と共にズリ落ちて転がった。


「どうギョ!!小生のポワソン爆導──」

「ふっざけんなクソったれ魚類っ!!マジ糞とかっ!!攻撃にしろ、もう少しTPOをわきまえろっ!!」

「──なっ、何をいうギョ!!糞を使うことは生物として当たり前のことだギョ!!」

「~~~っ!!」


 確かに生物にとって糞とは欠かせないものである。マーキングから始まり食糞、ゴリラや象に至ってはその排泄物を投げたりして利用する。人間もまた然り、一昔前では有益な肥料として利用してきた事もあれば、鏃などに塗り簡易の毒として武器に利用されたこともある。つまるところ生物と排泄物というものは切っても切り離せないものと──、


「そういうことじゃないんですっ!!そういうことじゃないんですよっ!!」


 ラブリーアイシスは大粒の涙を流して泣いた。ダメージ量が思いのほかデカかったのも拍車をかけた。


(こんなアレな攻撃でこんなダメージを受けて、こんな戦いをするために聖士になったワケじゃない!!)


 もっと崇高で、こう……聖と魔をかけた戦いをイメージしていただけに、でてきたのモノが糞である。


「ギョー……我侭ギョねぇ」

「うるさいっ!!私の失った何かを返せっ!!」

「弱っちい夢聖士には、糞まみれがおに合いギョ!!」

「言ったなこの垂れ流し野郎っ!!オムツ穿いて出直してこいやあああっ!!」


 大破部を修復させんとラブリーアイシスの聖力が唸りあがる。しかし、眼前には赤い警告紋様が展開され、ラブリー法衣からは煙が上がり、一気に出力が低下した。


「なっ!!嘘お!!オーバーヒートッ!?」


 一挙に増大した聖力がウルフェンに流れ込んだ……だがその流量にラブリージュエルのラブリー法衣が耐えられなかったのだ。ウルフェンの眼から輝きが失われ、力なく着座するように膝が落ちていく。装甲が次第に塵と化して行きその巨体が崩れ始めていた。


「ギョッギョッギョー!!もらった、もら…………ウゲエエエエ」


 歓喜し踊り狂い、そして突撃しかけたケーニッヒカッサーナだが唐突に転げるように四つん這いになるとおもむろに嘔吐し始める。口内から溢れ出るのは大量の土砂の塊であった。


「ギョ……ギョギョ。流石にエラ呼吸での地中遊泳は無茶があったギョか!?」

 ゲロゲロゲロと土塊という吐瀉物を撒き散らしながらケーニッヒカッサーナもフラフラと向きを変える。


「くそ、待ちなさいっ!!」

「勝負は……次回までお預け……ウェエロエロ……」


 吼えるアイシスを他所に、ゲロまみれ千鳥足のケーニッヒカッサーナは粒子となって消えていった。

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