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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
深海の大決闘
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深海の大決闘8

 フラグというものがある。フラグが立てばイベントは起こるのだ。つまりイベントは起こるべくして起きたと言っていい。


「ちょっと待ってくれよ……これで仮に因夢空間が解けたとするだろ??仮に俺たちが勝ったり撃退したとして、お前から逃げ回ってた俺にはその後問題を解く余力はねーぞ??お前も少しはこっちの都合考えて行動してくれよ」

「ギョギョ……それは申し訳ないギョ」


 正宗に言われ水気滴る身体で謝罪するカッサーナ。まぁ仕方が無い、正宗はフラグを立てたのだ。自分に危害が及ばないようにとアイシス達に言った時点で負けであったのである、……それはいい。その正宗の机の上にはペーパーが一枚、こっちの方がもっと問題である。周囲を見れば皆かじりつくように机に向かって止まっている。テストが始まって15分くらいか?突如として因夢空間に突入し、嫌な感じがしていたらガラリと入り口の引き戸が開け放たれたのだ。


「ギョギョ!!この間のつづきをしにきたギョ!!」


 開口一番にそう言ったカッサーナであるが正宗としては迷惑極まりなかった。とりあえず手で制し、計算中の数式に頭を悩ませる。悩んで導き出した答えを記入して、先の場面へと繋がるわけだ。


「もうちょっと待っててくれよ??せめて解答欄ぐらいは埋めおきたい。赤点とかになったらしゃれにならん」

「……わかったギョー。おっ!!コイツはここの欄もう計算し終わっているギョ」


 斜め前の女子の机を指しながらカッサーナが言う。どれどれと正宗はその解答を覗き込み、それをカリカリと自身の答案に書き込んだ。


「ん??伊藤君と佐藤さんの解答が違うぞ??……いや、これはもう運でいいかな」


 突如として成績がよくなりすぎても困りものだ。適当に問題用紙の解答欄を埋めていく。


「ギョー。人間はこんな数字を羅列して就学するでギョかー、大変ギョねぇ」

「まぁ……それが人間の一番の優位性だからな。発見し思考し発展させる。その積み重ねで金属の塊が海を渡り、空を飛ぶ。肉体スペックでは動物には敵わない……人の、人間の最大の強みは頭脳だから」

「ギョー!!ホントそれ全くのチート能力ギョ。人間は生身では泳ぎはドン臭いくせに、道具を用いて小生共より早く水上を走る。全く化物ギョよ」


 カッサーナが手に取っていた答案用紙を、田中君の机の上に戻した。水気を吸ってベチャベチャになっている。因夢空間が解けた時、もしも答案用紙がそのままだったのなら……、


(ご愁傷様だ田中君……)


 アレでは記入など難しいであろう、そうさせない為にもアイシス達には頑張って貰いたい。そうこうしていると、ドタドタとした足音が廊下から響いてきた。


「──っ!!無事ですか正宗!!」


 今度も勢い良く後ろの引き戸が開け放たれる。顔を見せたのはラブリーな法衣に身を包んだラブリーアイシスの姿である。


「おぉ、なんとか、な。ていうかお前来るの遅いよ、お前が来る間にどれだけ死ねるタイミングがあったと思うの??……ん、これで回答欄の記入も終ったし、外だ外!!もっと広いところでやるぞ!!」

「了解ギョ。それにしても夢聖士ってのは登場が遅いギョね。コレではライバルであったトンテッキも苦労した筈ギョ」

「は??ライバルだったのかお前等??」

「まぁそんな感じだったギョ。流石に海豚だけがここき来た理由じゃないギョよ??ヤツが失敗したのなら、小生が逆にヤツの失敗したこの地で成功してやりヤツを見返してやろうと考えていたわけギョ」

「そうならそーと、先に言えよー」


 呆然と見ているラブリーアイシスの横を通り、正宗とカッサーナが談話しながら教室から退室して行く。


「え!?何!?どーいうことです!?」


 状況についていけないラブリーアイシスは首を捻りながらも足早にそれに続く。和気藹々と世間話ししながら歩くカッサーナと正宗。と、それをジト眼で睨みながら歩くラブリーアイシス。市街地からちょっと外れた場所にある正宗の高校は、少し歩けば田んぼと畑で一杯だ。そこまで出れば問題ない、


「さぁっ!!やってしまえっ!!行け、ラブリーアイシスっ!!」

「ギョエエエ!!さぁさぁ、威勢よくかかってくるギョ!!」


 そうして向かい合えばやることは一つである。正宗がラブリーアイシスを嗾ければ、応戦すべくカッサーナが……、


「いや、待って!!ちょっと待って!!正宗っ、つい今しがたまでソイツと笑いあってたのに即討てと??貴方、人として何か欠如してません!?本当に人間ですか??実は正体は夢生獣側だったりしません!?」

「ラブリーアイシス……お前は一体何を言ってるんだ??」

「いやっ!!それはこっちの台詞ですよ!!今の今までオススメの釣りスポットの話で盛り上がっていた人達が、なんで唐突に敵対できるのです??……実のところ夢生獣と繋がりのあるのは正宗だったり……」


 ラブリーアイシスは正宗に食って掛かる。ガクガクと正宗の首根っこを掴んで揺らした後、急に神妙になってグローブの上から指を噛みながら思案し続けている。情緒不安定の様だ。


「ちょっと待ってください??……そういえばトンテッキとも意気投合していたし、そういうことなら因夢空間で動けるのにも納得が……」


 ブツブツブツブツと呟き顔色をなくしていくアイシス。仕方が無いので正宗はカッサーナに視線を移し、顎をラブリーアイシスに向けてひねった。


「ギョギョギョ!!もう既に戦いのゴングは鳴っているでありますギョ!!」


 がに股に似合わず素早い動きで接近するカッサーナ。まるで陸揚された魚のようにビチビチと跳ね上がり、おっさんくさい手をおもむろに突き出して襲い掛かっていた。即座にスウェーバックしながら距離をとるラブリーアイシス。


「っ!!今確かに正宗の指示に従いましたっ!!やはりグルだったのですかっ!!」

「うるせーっ!!くだらない事言ってるからだろうっ!!」

「ギョ!!小生共は貴様等夢聖士のような戦闘狂ではないギョっ!!戦時以外では互いを尊重する知的生命体マーマンであるギョ!!だが戦場に置いてはそれは脇に置くギョ!!ここから先は生存をかけた世界の奪い合い、その位の分別はつけるギョよこの脳筋女っ!!」

「お前等~ッ!!都合のいい時だけ結託しやがってぇ~!!ブッ殺してやるっ!!」


 しかしラブリーアイシスは踏み込もうとした瞬間、その寒気に咄嗟に踏みとどまった。激しい金属音を鳴らしカッサーナの攻撃をかろうじて受け止めるラブリーアイシス。瞬く間に眼前まで刺し貫いて来たその得物は、カッサーナの手の中に作り出された水で出来たトライデントである。息つく暇もなく、その連続突きがラブリーアイシスを貫くべく襲いかかる。カッサーナは両手の二槍を小気味よく振り回し、突き、薙ぎ、斬撃に殴打を織り交ぜラブリーアイシスを圧倒していく。剣と槍とではそのリーチの差は歴然である、防ぎながら後退するラブリーアイシスだがその顔は予想外の二槍の槍捌きに驚愕に満ちていた。両者の激しい攻防に正宗は巻き込まれないよう距離を取る。その間にも押され気味のラブリーアイシスが一層の間合いを取ると深く息を吐いた。真剣そのものの、今の彼女には余裕はない。


「クッ!!外見に反して、思った以上の使い手ですねっ!!」

「ギョッギョッギョー!!こちらとしてはとんだ興醒めギョ!!ユメミール女王候補筆頭と聞きつけ期待してみれば、小生の技にも及ばぬ猪武者ときた!!いやはや、これではトンテッキに申し訳ないギョね」


 カッサーナの侮蔑的な挑発にラブリーアイシスの膂力が跳ね上がる。しかしその気迫を込めるという“間”に打って出るのはカッサーナ。一足で跳ねるように間合いを詰めれば閃光のような突きを繰り出してゆく。片手で槍を繰り出すカッサーナとは違い、ラブリーアイシスのパラディンソードは一振りながら両手持ち。その一撃の重さに限るというのであれば、如実に差が出るというもの。カッサーナの鋭い突きを、ラブリーアイシスの剛撃が弾き飛ばす。弾かれたトライデントにバランスを持っていかれ、カッサーナの体制が大きく崩れ去る……それ程の一撃。武器を跳ね上げられ、カッサーナの懐がガラ空きになっていた。


「もらっ──」

「甘いギョ!!」


 そこに踏み込んだラブリーアイシス。無防備なカッサーナに決定打を打ち込まんとしたその瞬間、トライデントは水弾となって撃ち放たれ、踏み込んだラブリーアイシスへと直撃した。意表を突かれたカウンターにラブリーアイシスが後退する、そのまま膝を付くと堪らず血反吐を吐いた。ラブリーアイシスの障壁と聖法衣の防御力を持ってしてこのダメージ。


「ラブリーアイシスっ!!」

「大丈夫……です。ただ、想像以上だったのは否めないですね」


 正宗の声に応答しながらも、しっかりとした足取りで立ち上がるラブリーアイシス。口内の血をペッと吐き出す様は、ラブリーファンシーな魔法少女スタイルには似つかわしくない行為である。


「ヌ!?上半身消し飛ばせるかと思いきや……、いやぁなかなかどうして。女王候補筆頭というのも伊達ではないようであるギョ」

(ないのかあるのかはっきりしろ!!)


 正宗の感想は兎も角、ラブリーアイシスとしても流石に驚嘆せざるを得ない技量である。だが、


「ならば、私とて全力で行きますっ!!」


 その宣言と共にラブリーアイシスが剣を構え直した。決してラブリーとは言いがたいレベルの鬼の顔だ。下段の構えから、おもむろにそのパラディンソードを斬り上げる。


「なんだっ!?」


 直後、暴力的な波動がカッサーナ目掛け奔り飛ぶ。余波で起きた爆風が傍観していた正宗を吹っ飛ばす程の威力である。砂塵巻き上げ大地を削る斬撃波は一直線にカッサーナ目掛け襲い掛かる。流石のカッサーナも大きく回避行動に出た。脇を抜ける斬撃波動に身を煽られ、その破壊力を見てカッサーナがギョッとする。追撃すべく、次々に斬撃を放ちながらラブリーアイシスが突貫していく。回避し、相殺し、流石にその斬撃と特攻に戸惑いを隠せないカッサーナ。再び両者は肉迫すると、先程と同じようにトライデントとパラディンソードが激突し合い火花を飛ばし合う。


「聖力を剣に乗せ剣撃を飛ばすギョ!?とんでもない力技ギョ!?」

「うるさいですよっ!!三枚におろしてくれましょうかこの魚人野郎っ!!」

「いや、お前三枚おろしなんて出来ないだろう!?料理スキル皆無じゃねーかっ!!」

「あーもーっ!!貴方どっちの味方なんです正宗っ!!」


 ラブリーアイシスとカッサーナがぶつかり合う中、吹っ飛ばされ転がった正宗が冷静に訂正を要求する。出来もしない、いや、理解もしてない事をさも出来るように言われては腹立たしいっ!!


「魚がさばけるならお前も飯の支度手伝えよっ!!」

「今言う事ですかっ!!今はそれどころじゃないでしょうがっ!!」


 横からの正宗の野次が飛び交う中剣戟は繰り広げられ、ラブリーアイシスとカッサーナは互いに弾けるように距離を取った。しかし、それで止まるラブリーアイシスではない。後退しながらも切っ先をカッサーナに向け術式を紡ぎ、その先端に紋様陣を輝かせている。気づいたカッサーナは咄嗟に防御姿勢を取った。


「ラブリーシューティングスターっ!!」


 ラブリーアイシスのパラディンソードから散弾の如く放たれる流星雨。乱数軌道を描きながら、それら光弾が一斉にカッサーナ目掛け踊り狂う。即座に高速機動し振り切ろうとするカッサーナ。だが、


「ギョギョ!!追尾型ギョ!?」


 流星群は鋭角に折れ曲がりながらカッサーナの目掛け追尾する。仰天しつつもカッサーナはトライデントで迎撃を試みた。しかし、全ての数は捌けずにいくつかの流星が全身へとめり込むように到達すれば、強烈な閃光となって爆散する。高く打ち上がり錐揉みし落下するカッサーナ。全身から煙を上げ白目を向いていたが、震えながらもその身を引き起こす。


「な、なかなの威力ギョ…………だが、悪くないっ!!」


 ダメージに……いや、何故か少し紅潮した顔でハァハァと荒い息を吐くカッサーナ。


(アイツ……やっぱりドMなんじゃ……)


 離れて見ていた正宗は別の意味の脅威を覚えるのであった。

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