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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
始まりの物語
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始まりの物語19

 強大な膂力が鋼の爪を通して伝わり、大地を蹴り上げて抉りながら龍が疾走する。迫る金龍に鋼の豚も応じるような構えを取った。


「ピッグペルレッ!!」


 手にした巨大な真珠を輝かせ、鋼の豚からピンクの波動が放たれる。如何なる効力があるのか、しかしそれは龍に触れれば霧散してしまう。その事に多少の動揺を見せつつも、鋼の巨豚は更なる行動へと打って出た。


「トリプルポルチェッリーノ!!」


 真珠を掲げ叫び上げれば鋼の豚の巨体がブレ、三体の残像を築き上げる。いや、その残像は次第に縮小しつつも明度を増していき、実体化を完了させ巨豚の前に並び立った。まるで親豚を護る三匹の子豚。ビッグトンテッキの嘶きに、その中の一体がアルヴァジオン目掛け突撃を敢行していく。彼等はビッグトンテッキの分身体、小型化したとはいえ30メートルはあろう巨体である。各自が脇に抱える真珠がさながらアメフトのボールのようで、その様はラガーマンそのものだ。その突進してきた一体へ、即座に剛腕を繰り出した金龍アルヴァジオン。その一撃は正に龍の一撃、易々とビッグトンテッキ分身体の上半身を粉砕してみせた。砕け散る破片と拉げる金属音。飛び散る破片と洩れる魔力。その様を目にしながら、ビッグトンテッキの声が響く。


「──爆破、ブヒっ!!」


 破片となって飛び散る分体、その持っていた真珠がピンクの輝きを放ち上半身と下半身を巻き込んで連鎖爆発を起こした。その衝撃波に豚達が姿勢を崩す。しかし、その巻き上がる黒煙を貫いて来る金色の龍の巨体。流石にトンテッキは息を呑んだ。30メートル級の分体……いや、金導夢兵装の自爆を受けてなお無傷なのだ。


「お前等も行くブヒよっ!!」


 親豚に急かされ残る二体も飛び出していき、一体がアルヴァジオンの腰へとへばり付き、もう一体が上半身目掛けタックルを敢行する。しかし、拘束にかかったその両腕を力技で引きちぎるアルヴァジオンは、タックルしてくるもう一体をその尾っぽで砕き割る。直後、トンテッキにより自壊自爆される分体の大破壊。巨大なきのこ雲を派生させた彼等は、因夢空間においてトンテッキが生み出した強烈極まりない破壊波、そのイメージを乗せた殲滅自壊兵器であったのだ。しかしその中から……無傷で這い出てくる、龍の姿がある。


(なんと言うパワーっ!!そしてなんと言う防御力ブヒっ!!冗談じゃないブヒよおおお!!)


 大地を砕き、夢生獣の夢操作力をも加えた爆発の破壊力も歯牙にもかけない金色の龍。流石のトンテッキも顔が引きつっていく。全ての次元が半端ではない。その理由には見当がついていた。その機体、金導夢兵装に注がれている力の量が桁違いに違うのだ。魔力1で構成された装甲と、魔力10で構成された装甲では、強度や粘り等防御力の面で明確な差が出るのは当たり前であろう。魔力1で造られた筋繊維と、魔力15で造られた筋繊維では、その瞬発力も持久力も変わってくるのは当たり前だ。考えられない総量の聖力を注ぎ込められ造られた機神、力の象徴である龍を形どるのも頷ける。


(まさに“力”そのものの体現、神に等しい存在ブヒ──)


 このままでは、現状では勝機が──ないっ!!トンテッキはそう悟り、即座に逃げの手を打った。この段階、金導夢兵装を用いても勝てぬのならば、再度隠遁し勝てるだけの力が貯まるまで逃げる……それしか手立てがない。今はヘタにこの龍を刺激すべき状況ではないと判断したのだ。力が堪ったその後、容赦も遊びもなく全力で潰す──そう決めた瞬間、トンテッキは地球の表面を跳んだ。それは正に瞬間移動。因夢空間は夢空間である。ここは世界が見ている夢の中……夢の中であるのなら、たとえ地球の裏側へだろうと……一足飛びを可能とする。そんな事も全てイメージ次第。瞬きの間に、アルヴァジオンの眼前から忽然と消えたビッグトンテッキ。正宗が呆然とする間もなく、


「また逃げましたね豚めっ!!今度という今度は逃がしませんっ!!追いますよ正宗っ!!ここでヤツとのケリをつけますっ!!術式──展開っ!!飛び込みなさいっ!!」


 アイシスは吼えると手を走らせ、眼前の紋様盤を捜査して術式を築き上げる。そしその手で出来上がった術式を、紋様盤へと押し込んだ。紋様盤へと転写されていく術式。さすればアルヴァジオンの眼前に現れた幾何学の紋様陣、それに向かい正宗はそのままアルヴァジオンを突撃させる。眩い虹色の先、術式紋様陣を抜けたその先は──どこか知らない大都市のまっただ中であった。しかし、その視界の中には、


「逃がすかああっ!!トンテッキッ!!」


 正宗が吠え、高層ビルのど真ん中に出現したアルヴァジオンが身を乗り出す。コンクリートも鉄筋も全て引きちぎり、乱立する超高層ビル群を砕きつつ、後退し逃げるビッグトンテッキへと手を伸ばす。構造体の下部を破壊された超高層ビルはたちまちに崩れ始め、連鎖的に周囲のビルも倒壊を始め大崩壊へと向かっていく。


「ブヒィ!!しつこいブヒよっ!!」


 鋼豚が真珠を突き出せば、展開された法陣から凶悪な爆発や泥弾が撃ち出されアルヴァジオンへと襲い掛かった。暴れる二体の巨体とその戦いの余波により、瞬く間に壊滅していく超高層ビルの摩天楼達。その破壊的状況に大地も揺れ、空も嘆きを上げている。──いや、それはビッグトンテッキとアルヴァジオンとの攻防による物だけではない。遂に、世界が目覚めようと大地が、そして空が震えだしているのである。爆発も泥弾も物ともせずに突き進むアルヴァジオンだが、必死に下がり抵抗を続けるビッグトンテッキに今ひとつ手が届かない。ビッグトンテッキは後退しつつも遂にその身体を次第に粒子化し始めていた。


「ブッヒッヒー!!今回も、また今回もトンテッキの逃げ切りブヒよおおっ!!」


 嘲笑するトンテッキ。だが正宗達には反論する余裕すらない。


「まだ距離がある!!なんか武器はないのかアイシスっ!!」

「ちょ……ま、待って下さいっ!!」


 アイシスが紋様盤を捌くがその使い方も使用方法も今ひとつなのだ。


(駄目だ!!私ではエルマのように情報を捌けないっ!!今ひとつ……人手が足りないっ!!)


 歯がみしそうになるのを耐え、アイシスは手を上に掲げた。


「来いっ!!ポッコル!!」


 掴み上げればその手の中に握られる焼け焦げた人形。日本でのビッグトンテッキとアルヴァジオンの戦闘で丸焼けになりかけたようだ。だがそんなポッコルを加減なく握りこむアイシス。


「ぐえええ……なんだポ!!ポッコルをどう……」

「武器が欲しいっ!!その身をもって何とかしてくださいっ!!」


 アイシスはそのまま正面の紋様盤にポッコルを叩き付けた。


「ぎゃあああああああああっ!!」


 ポッコルの全身を激しいスパークが襲い、文字通り燃え上がる、しかし即座に正宗達のコクピット空間を紋様が埋め尽くした。同時にアルヴァジオンの右手の中に形成されていく巨大な鉄塊。ポッコルとポッコルの持つ聖法具を依り代にしたのか、巨大な塊が正宗の繰り出す聖力によって紡がれ物体と化していく。形成された巨大な龍の頭部のような鈍器、その顎が開き、正宗はそれをトンテッキへと向けた。


「食らえっ!!トンテッキっ!!」


 泥と破壊波に晒されながら、正宗が……アルヴァジオンがそのトリガーを引き絞った。放たれた奔流は聖力の濁流だ。それはビッグトンテッキの放つ幾つもの術式を飲み込み粉砕し、そのまま豚の巨体へと直撃、貫いた。あまりに強力な改変力──ブチ壊れろというイメージに晒され半身を消し飛ばされるビッグトンテッキ。金龍の放ったブレスが極太レーザーのように世界を穿ち、一撃で消滅させたのだ。


「嘘──ブヒ!?」


 金導夢兵装体の装甲を、自身のイメージごと喰われ愕然とするトンテッキ。暴力的な破壊力の衝撃に吹き飛び数転し、ビッグトンテッキは半身を失いなすすべなく倒れ込んだ。粒子化による逃げの一手も、その煽りを食らい中断させられた。いや、どちらかと言えば強制的に引き戻されたといった方がいい。それ程までに敵の放つ夢操作力が上回っている。機体を動かせば破損部分が火花を上げた。夢操る獣として、夢聖士でもない現地人に破れるとは露にも思っていなかった。


「た……立つブヒビッグトンテッキっ!!破損箇所を修繕っ…………アッ!!」


 魔力が表皮に流れ、徐々にその全身を補修していくビッグトンテッキ。しかし横に、鈍器を抱え上げた金龍の姿があった。


「待つ、ブヒ……ま、正宗えええっ!!」

「聖力最大解放っ!!全術式展開っ!!やってください正宗っ!!」

「アルヴァジオン──イグニッションっ!!」


 その鉄塊を、幾つもの紋様を纏った鉄塊を、幽気を纏った金龍が鋼の巨豚に振り下ろす。鉄を砕き、鋼の骨を折り潰す。その鋼の豚の巨体は、幾つもの破片へと粉砕され、粉々となり、飛び散る前に──龍の放った金色の極光の中に姿を消した。その輝きは全てを飲み込み無に帰していく。大破した街並みも、止まった時の中の世界も、音も起こさず総て輝きに変えていく。地上に現れた太陽はやがてその輝きを散らし、抉られた大地にはただ金龍の姿だけが残されていた。


「夢生獣トンテッキ──撃破っ!!」


 アイシスが叫び吠える。一撃の下に都市ごと消失させた金龍の前にピンク色の球体が浮かんでいる。大都市は見る影もなく抉り飛ばされ焦土と化し、地平が見渡す限り広がっていた。立ち上る蒸気と灼熱に燃える大地の中、金龍が勝利の咆哮を奏で上げる。


「な……なんでもいいからポッコルを解放して欲しいポよ」


 紋様盤に貼り付けとなっているポッコルがか細く声を出すが、アイシスとしてそれどころではない。モゾモゾすれば腰からソフトボール程のボールを取り出し掲げあげる。途端、ピンク色の球は溶ける様にアルヴァジオンへと吸い込まれ、そしてアイシスの手の中のボールの中へと流れ込んでいった。全て吸い込んだボールが数度揺れ動けば、一瞬だけ輝き、また只のピンク色したボールへと戻るのであった。


「よしっ!!トンテッキ封印、確保っ!!これで一仕事完了ですよっ!!」


 トンテッキ、ゲットだぜ!!とばかりに喜び振り返るアイシスであるが、


「“よし”じゃねーよっ!!早く目覚めさせないと──世界どーなるんだっ!!」


 焦る正宗の姿を見て、更に焦って直ぐに紋様盤へと向き直るアイシス。世界はいよいよ瞼を開けようとしている。目を覚ます前に全てを元に戻さねばならない。アイシスは即座に術式を描き出し、紋様盤へと押し込んだ。


「わーっ!!ホント、マジでヤバイっ!!緊急術式展開、目覚めの時よっ!!因夢は散り、正しき夢へと戻りなさい」


 そう唱えれば、鉄塊の先に紋様術式が展開されている。アイシスの視線を受けた正宗はそれを掲げ上げ、


「そして……時は動き出すっ!!」

「待て待て正宗っ!!待つポ……ぎやああああああ」


 トリガーを引いた。発動する術式、唸り上げた鉄塊の反動を受け、ポッコルが再び悲鳴を上げるのであった。

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