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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
龍獅子相搏つ
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龍獅子相搏つ8

 幾千、幾万の猩猩達の叫び声が上がる。彼等が放つその威嚇の裏には隠しきれない恐怖が見て取れる。そう、激烈な熱風と圧倒的な存在感に当てられて、理性を失ったかのように半狂乱となって叫んでいる。……無理もない、テリトリーへと侵入してきた狩人の殺気を浴びているのだから。逃げ場などない、命じられた使命のために震える身体で肉壁となる。それでも、彼等の芯にある野生が「逃げろ」と告げてくる。絶対的な使命と死への恐怖という二者からの板ばさみ。


「キーキーと五月蝿い猿共レオッ!!少しは獅子の威厳を見習うべきではないレオかっ!!」


 侵入者であるレオライガーが吼える。木々に囲まれたような隠遁の地に響き渡る猛獣の咆吼。それは野生を残す者達にとって死神の声である。鋭い牙を持ち、強靱な爪を持つ強者。自然界における狩る側の者、捕食者達の殺意そのものなのだ。故に根幹が震え出す。己の、生物としての芯が恐怖するのだ。恐怖で腰を抜かし、その身を縮め上げる猩猩達。レオライガーは覇気をそのままに、彼等のテリトリー奥深くへと突き進む。その先は巨大な切り株の舞台を囲む木々の回廊。レオライガーは底まで進むと舞台の上で降りそそぐ光を眺め上げた。そこへ──、


「五月蠅いウホよ、さっさとでていけこの糞猫野郎っ!!」


 レオライガーの遙か頭上、神木の股に備え付けられた玉座から飛び降り来たのは白毛の巨躯。その双眸には明確な知性があり、その表情には明瞭な相手への嘲笑が現れている。巨大なファンシーゴリラが筋肉ライオンの着ぐるみの前に着地し、顔をつきあわせるようにして対峙する。


「ネコ科を侮辱するなレオ、猿がっ!!その首かっ斬るレオよっ!?」

「バカにするに決まっているウホッ!!こちとら霊長ウホよっ!!」


 額をぶつけ合い互いに怒声をあげるレオライガーとコンゴリ。強者同士の気配が激突し、周囲に破壊と狂乱を奔らせる。猩猩達は狂ったように恐怖し木の陰へと姿を隠し、放たれる気配の激突に枝葉が舞い木々の表皮が砕け飛ぶ。


「大体、一体全体どういうつもりウホ!!夢生獣協定では互いに不干渉の協定である筈ウホッ!!それがこのコンゴリの支配領域に土足で踏み入って来るとは、一体どういう了見ウホッ!!」

「その口が不干渉というレオかっ!!では先の干渉は何だっ!!我が挑んだ決闘に、干渉どころか散々介入してきたのは貴様でわないレオかっ!!」

「誰がっ!!何時っ!!貴様の戦闘に介入したというウホかっ!!」


 視線を逸らし、馬鹿にしたように鼻息をならすコンゴリ。レオライガーとしては怒髪天だ。


「どこを!!どうみてもっ!!アレは貴様の仕業であろうレオがっ!!あの猩猩共はどう説明するレオッ!!」


 橙のたてがみが炎のように色めき、瞳孔を鋭くするレオライガー。放たれる怒気は衝撃波となって周囲一体に撒き散らされ、再び木々の枝葉が砕かれる。姿勢を低くしつつ唸り続けるレオライガー。遂に猩猩達は恐怖を抑えられず、悲鳴を上げて逃げ初め森がパニックに包まれた。しかし、それすらそよ風のように受け流すのがコンゴリ。レオライガーの怒気など何所吹く風のコンゴリは、再度鼻で憤り迫るレオライガーを笑い飛ばした。


「だから、何時コンゴリの方が遅れて手を出したのかと言っているウホッ!!文句を言いたいのはこっちの方ウホッ!!」

「な、何!?貴──」

「コンゴリは先手を打っていたウホッ!!クリスマスとかいうイベントに浮かれて油断している奴等に先手をとって痛手を与える!!……と、密かに動いて罠を張っていたウホ。そこにレオライガー……貴様の方が遅れてやってきて、勝手に有無を言わさず決闘を挑み始めただけウホッ!!」

「勝手に、レオッ!?」

「どうせ貴様の事だから正面から挑む事に気を取られ、出て行くタイミングと台詞回しに注意が行っていたウホ??コンゴリ達が罠を張っていた事、気づいてなかったウホよね??」

「ぐぅっ……」


 コンゴリが覗き込むようにレオライガーを見る。確かにレオライガーは力が戻り、強者と相対する事に心が逸っていた事は否めない。出て行くタイミングを見定めてジッと相手の動向を眺めていた……それも事実なのだ。それだけにレオライガーは言葉につまってしまう。


「自分の事だけにかまけているウホから、こちらが事前に仕掛けていたというのにそれを見落とすゴリ。それを貴様は遅れて出てきた癖に自分の方が先であったとこちらを非難しているだけウホ」

「っ!!」

「コンゴリとしては逆にこちらの奇襲を台無しにされ、その上で介入された事に不満を上げたい所ウホゴリ」

「言わせておけば貴様ぁっ!!相変わらず口だけは達者な猿レオッ!!」


 ニヤニヤと笑うコンゴリにこめかみを痙攣させるレオライガー。レオライガーは確かに自分の事で一杯であった、しかしコンゴリが言っている事もまた嘘なのだ。コンゴリはやはりレオライガーの闘いに介入したのである。その言い訳を言葉巧みにしているだけなのだ、しかもあえてその真意がレオライガーに伝わるように。


「事、実。事実を伝えているだけウホよ??」

「ならば落とし前は付けねばならんレオね……」


 挑発するようなコンゴリに、レオライガーは静かに応答した。その闘志が急激に収束していく。レオライガーを中心に灼熱の炎が渦巻きはじめ、遂にコンゴリの隠れ領域を焼き払い初めていた。耐火性能極めて高い神木達が燃え上がっていく。走り回る炎に焼かれた猩猩達が絶叫を上げ、隠れ領域は更なる狂乱に飲まれつつあった。


「……ゴリ。いやはや、夢生獣レオライガーに気づかせなかったこのコンゴリの手腕が凄すぎてしまったという事ウホね、反省ウホ。ま、仮にもレオライガーの決闘を台無しにしてしまった事は確かでもあるし、……ここはお互い無かった事で手打ちとするゴリ」

「……それで??どうするレオか??」


 言葉で一歩引いたコンゴリ、それはレオライガーの闘志に怯えたのではない。その本気度合いに引いて見せたのである。両者が激突すればどちらに勝利が転ぶかはわからない。しかし、その愚を犯してでもレオライガーはコンゴリと決着をつけようとしている。コンゴリとしてもレオライガーの存在は無視できない。しかし、その一言によって走り回る闘気の炎が霧散していく。互いに視線を逸らさないレオライガーとコンゴリ。


「……レオライガーがやるというのであれば、こちらとしては手を引くゴリよ」

「よいのか??我が奴等を打ち倒し、先に存在格を上げるやもしれんレオよ??」

「その時はその時ウホ。尤も、コンゴリに先を譲るというのであれば……美味しくいただくウホよ??もしくはコンゴリを倒した後の、相手が疲弊したその時を狙った方が“お得”というものウホよ??」


 甘言で誘惑するようなコンゴリの笑み、しかしレオライガーの決意は決まっている、眼がそう言っている。


「……いや、我は先にいかせて貰うレオ」


 話は終わったとばかりに踵を返すレオライガー。言う事を言い、決める事は決めた。最早用はないから領域を去ると背中が語っている。しかし、その進める歩みを止めると振り返らずに声にする。


「ああ、勿論理解してると思うレオが……コンゴリ、再度同じような事があれば我は奴らと手を組んででもお前を討つレオよ」

「心配ご無用、委細承知したゴリよ」


 そうしてコンゴリは自身の隠れ領域を散々に破壊していった猛獣を見送った。暫くしてその気配が消えたのを確認すると、溜息をつくコンゴリ。王の間でもある回廊は砕かれ焼かれ、猩猩達も相当数が消し飛んだ。その凄惨な爪痕を見回しコンゴリはもう一度深いため息をついた。そして視線を猛獣の消えていった彼方へと向ける。


(──勿論、このまま引き下がりはしないウホよレオライガー)


 姿を消した同胞を思い口角を上げる。力を取り戻し、夢生獣達が数を減らした今なら好き勝手が出来る。策謀を巡らせていては真っ先に目を付けられていた可能性もあるし、それを疎ましく思う同胞達に討たれる可能性すらあった。だが、もはやその心配も無い。


(頂点に立つからこそ霊長。最後の勝者はこのコンゴリウホッ!!)


 その光景に、勝利のイメージに興奮し胸を叩く。世界に響き渡るドラミングに猩猩達は身をすくめ怯えきった。興奮のまま神木へと登り、声高に吠えるコンゴリ。浮かべる邪悪な笑みは人のそれそのものに見えた。

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