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顕現っ!!アルヴァジオンッ!!  作者: 当世杞憂
始まりの物語
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始まりの物語1

 それは世界を作るという世にも珍しい植物の種である。発芽すれば世界に根を張り、その世界そのものを養分として新たな世界を造り出すという危険極まりない植物である。その世界の破壊と新たな世界の創造、その根幹となる摩訶不思議な樹木……世界樹、その種である。伝説に聞いたその種が、今、目の前にあるのだ。その昂揚たるや、例えようなどあるわけがない。それを所有し、自身のコレクションと出来るのだ。その機会が、今まさにっ、訪れようとしているのだっ!!


「…………」


 手にすれば強い存在感、軽いようで……果てしなく重い。それもその筈だ、なにせ手にしたその種は世界を造り出すのだから。しかしその力は今、とある封印の維持の為に使われていた。人の脅威とされ、人類の敵としとて封じられた怪物達。


(は??──知った事ではない)


 ただ一度の“生”である。やりたいように生き、望む通りに進むのだ。それを妨げるのであれば、いかなる邪魔な存在だとて……例え他の世界を敵に回そうとも、例え人類の敵を解放しようとも、生きて……生き残ってみせるっ!!故に、


「……さぁ、目覚めるのじゃ。そして暴れまわれっ!!この時を、この世、数多の世界をかき回し、ワラワの生に享楽を捧げるのじゃっ!!」


 己が欲望と、それに翻弄される世界を夢見て笑い、その手を引き抜いた。手てには強烈な存在感を放つ世界樹の種。それを失い、力の元を断たれた何かが砕け、綻ぶ。そして解き放たれるのは未知の可能性達。彼らはまるで天駆ける流星のように封印から解放され歓喜を挙げて散っていく。そしてそれこそ、とある物語の産声であったのだ。



*************************************



 少年の名前は鉄正宗(くろがね まさむね)、ただの高校生だ。容姿は……そこそこマシな方ではないであろうか??そう彼は自負しているわけだが、決してモテるわけではない。それなりと言った方が世間一般的な評価なのであろう。名前負けしていると感じることもあるが、それは仕方がないといえていた。正宗なんて名前、刀剣好きの母親が盛り上がってしまって名付けた結果だと知っているからである。そんな正宗であるが、どう考えても現在、奇妙奇天烈な事態に襲われていると声を大にして言えるのだ。


「どうして、こうなったっ!!」


 四時限目は体育だった。適度な運動で身体を動かし、その後昼休憩で昼食を取ったのであれば、満腹感も相まって自ずと眠気が襲ってくるのは当然と言えた。事実、授業中とはいえウトウトしていた事は認めよう。なんと言っても授業内容が古典である。こう言っては何だが刺激的な授業とはとても言えず、眠気をかえって促進させた……と言っても過言ではないだろう。それでも、だ。それでも、こんな事態を体験した事はいまだかつて一度としてない!!……いや、ないとは言えないであろうか?寝ぼけた頭の妄想で、果たして現実と夢の境界で、自身に特別な何かが起こる…そんな非現実的な妄想……夢うつつをしたことがないか??と問われれば、はっきりと「ない」とは言えなかった。そう、それでも、だ。


「こんな夢はありえねーぞっ!!」


 ダッシュで廊下を駆け抜ける。階段へと急ぎ、手すりを支えに勢い良く十数段下の踊り場へ向け飛び降りた。激しい衝撃と共に折り返しの床に着地すれば、一端息を整えつつ視線を上げて仰ぎ見る。間を置かずして廊下を重量のある何かが爆走してくる豪音と、それと共に現れた二足歩行する豚の親玉のような……、それでいてゆるキャラ然としたコミカルな体型をした物体が勢いを殺すように階段前へと滑って来たのが見えた。


「ブヒブヒブヒーッ!!お待ちになってくんなましっ!!お待ちになってくんまなしっ!!」


 口から涎を垂れ流し、全身ピンクのコミカル豚がそのまま飛び降りようと迫り来る。這い上がる悪寒に追われ身体を動かし、急いで飛ばし飛ばしに階段を跳ね下りて、そのまま靴箱目指して加速した。靴、なんて言っていられない。学年ごとに決められた色のスリッパを履いたまま、靴箱の横を抜けて校舎の外へと走り出る。


「お待ちになってくんなましっ!!お待ちになってくんまなしっ!!」


 絶叫するコミカル豚の声が響けば、背後から響いてくるのは破壊音。その音に身を屈めれば、金属の拉げる音と共に校舎外へと靴箱であったスチールロッカーがぶちまけられていく。中にしまわれていた靴達は乱舞して、スチールロッカーはクズ鉄の塊と化してそのまま校庭の方へと転がっていった。振り返り、後ずさりながらその惨状に目を見張る。朦々と立ち上る煙の中からゆったりと現れる特徴的なシルエット。その影がゆっくりと、されど暴力的な速度で加速しながら飛び出してくる。想像以上にコミカル豚の足は速い。それもその筈だ、


「……なんて……なんて美しいフォームなんだよっ!!」


 それはまるで陸上競技のアスリートそのもの。短距離走選手の如き流麗なフォームで走る豚。だからといって指をくわえているわけではない。反転し持てる全速で走り、逃げるのみなのだ。されど相手は豚、流石は動物というワケか。その速度は二足走法の癖にバイクにも勝るとも劣らない。されば、見る見るうちにその距離は詰められて……、


「さあさあっ!!捕まえるブヒよっ!!観念するブヒっ!!」

「緊急回避っ!!」


 有無を言わさずに横っ飛びに転がった。捕まえようとしたその豚足をギリギリでスカらせて、コミカル豚は体勢を崩しながら通り過ぎていく。その勢いづいた速度は止まらず、遂に転倒しそのまま転がるコミカル豚は勢いそのままに正面ある武道場へと激突し制止する。いや、コンクリートの外壁を突き破り、破片をばらまきめり込んだ事でようやく停止したようである。


「ブ、ヒっ!!してやられたブヒっ!!……っと、さてどこブヒ??探すでブヒっ!!」


 自身の上に乗った瓦礫を押しのけ身震いすると、何事もなかったかのように立ち上がるコミカル豚。ズンズンと足音を響かせ、豚は周囲を探し回っている。


「…………」

(相手はこちらを見失っている。ならば、息を殺しやり過ごすのみ)


 そう考え、身体をドサクサに紛れ既に武道場内へと転げ入れておいた。緊張の中、気配と音だけに集中しジッと動かず身を潜める。そうとは知らないコミカル豚は鼻息荒く臭いを嗅ぎ建物の外をグルグル探し回っているようだ。コミカル豚の様子を警戒しつつ、身じろぎもせずに暫く武道場内で蹲って息をひそめて隠遁する。暫くすると重量級の低音を響かせる足音は次第に遠のいて行くのであった。


「……ハァ……一体どうなってんだよ」


 緊張が解け弱音を吐く。一気に吹き出した疲労感を引きずりながら、慣れ親しんだ部室のドアを開けた。剣道部の部室の中のいつもの椅子に座り、全体重を預けるようにしてやっと一息付けた感じとなった。念のために部室の竹刀置き場に置いてある木刀を手元に寄せておく。木刀如きでどうにかなるものなのかわからないが、それでも何も得物がないよりかはマシであろうと考えたのだ。スマホを取り出してみれば明らかにホーム画面の表示がおかしかった。デジタル表示の秒針が0と1を行き来しているのだ。秒がたち、1に表示が変わった時には0に戻っている、そんな感じだ。それなのに電源ボタンを押せばホーム画面はついたり消したり出来るのだ。


(……アプリの故障だ、こんな事はあり得ない。……って、言いたいんだけどなぁ)


 正直な所、あの異形のコミカル豚がいなければ「全て夢だ」と自身に言い聞かせる事は出来たのだ。これは夢なのだ……と。いや、それでもいろいろ疑ったに違いない。授業中、ウトウトして気がついた時にはまるでタイムストップしたようにみんなの動きが止まっていた。教壇に立った教師は黒板に板書中のままで、クラスメイトは黒板を見る者もいれば、ノートに書き取りしている者もいた。だが、皆そのまま動かない、時が止まってしまったようであった。ストップモーション??クラス全隊で仕掛けたドッキリ??フラッシュモブ??様々な考えが過ぎったが、それら考えは突如として中断させられる。ガラリと音を立て扉が開く。そして入ってくるのは異形の影。


(……なんなんだよあの豚は)


 頭を抱えて思い出す。そう、皆が動きを止めてしまった事に動揺している……まさにその時に、あのコミカル豚が突如入り口扉を開けたのである。「失礼しますブヒ」といって入ってきたその豚は、暫らくブヒブヒ臭いをかいでいたかと思えばそのまま教壇に近づくと大きく広げたその口内に、板書中の中野先生を手掴みで放り込んだのだ。カートゥーンのように拡大する口がモゴモゴと動き、成人男性を一口で丸呑みにした豚は暢気にゲップする。続いて獲物を変え、手当たり次第にクラスメイトへと手を伸ばす豚。


「んんー??やはりどうも……、何か臭うブヒね??」


 と、首を捻りながらブヒブヒ鼻を鳴らし何やら周囲の臭いをかいでいる。流石に動揺して身じろぎすれば、それに気づいたコミカル豚と視線が合ってしまった。その瞬間、豚の口角が上がるのが見て取れた。


「珍しいブヒっ!!これはレアブヒねっ!!この臭い、お前の臭いブヒか!!」


 と歓喜を挙げ涎を垂らし迫る豚。そんな怪物ににじり寄られたのなら、そりゃもう一目散に逃げるしかないであろうというもの。そして勢い良く教室を飛び出した結果、今に至る。部室の天井を見上げなら息を吐く。


「ていうか、なんなのよコレ!!夢だよなぁ……夢じゃないと困るんだけど……」


 明晰夢というものだろう……と考えるも、それにしては現実感が半端でない。しかしながらあんな夢でしかない事柄や生物(?)の登場に、これは現実ではないと思うしか理解が追いつかない。グルグル廻る思考に最早途方にくれるしかなく、


「……見つけた……ブヒよっ!!」


 背後の磨りガラス越しに見えるピンクのシルエット、それに気がつくのに一瞬遅れたのだ。息つく暇なく咄嗟に部室の外へと転がり出る。ガラスもサッシも、はてはコンクリートの壁面すら砕き侵入してくるコミカル豚。その衝撃にあてられガラスやコンクリートの破片と共に転がりつつも、何とか四肢を動かし剣道場を抜けて隣の柔道場へと必至で逃げた。


「……もう観念するブヒィ~!!」


 コミカル豚がゆったりと脚を進め迫ってくる。一足ごとに剣道場の床材が割れ、その重量の重さを否が応にも想像させる。


「な、なんで俺を狙うんだっ!!他にも一杯いるだろうっ!!そっちいけよっ!!」

「この因夢空間(いんむくうかん)の中で動けるのは見た事無いブヒっ!!レアものブヒ!!その内に来る夢聖士(むせいし)達との決着のための、栄養となるブヒ」


 はっきり言って何を言っているのか意味不明であった。


(淫夢空間の中で無精子と闘うってなんだよっ!!)


 どう考えても尻の穴を狙われているとしか考えられない。夢としか考えられない。ではどんな夢なのか!?夢という物は自身の望んでいる物が強く表れるという。


(どういうことだっ!!尻の穴を豚に犯されるのが俺の願望なのかっ!!馬鹿言うなっ!!しかし夢にまで見ると言う事はコレが俺の本当の望み、俺の根底にある願いだとでも言うのかっ!!)


 そうこうしている内に距離を詰めてきたコミカル豚。


「フッフッフッ、もう観念するブヒね。さあ今こそこのトンテッキの栄養と……」


 語るトンテッキとやらに問答無用の面を叩き込み、更に巨大な鼻の穴目掛け木刀で突きを放った。頭部への一撃はまだしも、流石に鼻の穴に棒を突っ込まれたのは応えたらしく鼻を押さえ卒倒するトンテッキ。


「名乗りの最中に攻撃するなんて……、なんて礼儀知らずブヒィーっ!!」

「黙れ知るか馬鹿っ!!」


 捨て台詞を残し豚の横を駆け抜ける。怒れる豚は身を起こし、


「トンテッキは馬でも鹿でもないブヒっ!!誇り高き豚でブヒよっ!!」

「漢字に詳しすぎるだろう畜生がっ!!」


 猪突猛進の牛の如く走る来る豚。


(この際馬でも鹿でも牛でも豚でもなんでもいいから夢なら早く覚めてくれっ!!)


 武道場にトンテッキが開けた穴から抜け出して、再び校庭目指し走り足を動かす。走って走って……脚を動かして、いよいよ校庭へと躍り出れば、


「……鬼ごっこは、終わりブヒィ~っ!!」


 先回りして行く手を遮るコミカル豚。どうやら柔道場側から出て武道場を回り込む形で校庭へとやって来たらしい。こちらは走りすぎて息も絶え絶えなのに対し、コミカル豚は余裕その物だ……あきらかに生物としての力量に差がありすぎている。


(豚人間ってこんなにも凄ぇのか……オーク凄ぇっ!!そりゃ姫騎士もクッ殺言う筈だっ!!)


 真剣に自身の貞操の危機を覚え始めた時、コミカル豚にかかる影を見た。次第に大きくなるその影に、ハッとして視線を上げれば空から猛烈に降り立つパンツの姿。


「ちょっ!!覗かないっ!!」


 怒声が聞こえるより速く、コミカル豚の頭上に剣を突き立てる少女が落下した。何かを砕きすり潰したような鈍い音、そして一拍おいて正宗を叩いた風圧にその落下速度を思い知る。正宗がよろめきながら目を開ければ、そこには豚の頭にズブリと根元まで両刃剣を突き立てた少女の姿があった。


「滅びなさいっ!!」


 少女が気合をこめれば目や鼻、口に耳から強烈な閃光を放ち強烈な破裂音と共に爆圧を撒き散らすコミカル豚。それに当てられ正宗は後方へ吹き飛ばされ校庭の上をゴロゴロと転げ回った。耳鳴りと眩暈の中顔を上げれば、爆発の反動で一気に剣を引き抜き空中で華麗に縦に一回転しながら音も立てずに正宗の横にスタリと着地する少女の姿。その向こう、頭部は煙に包まれたまま仁王立ちしている為、コミカル豚への効果はわからない。だが、


「いったーっ!!痛いブヒーっ!!いきなり酷いコトするブヒィ~っ!!」


 コミカル豚のトンテッキが頭部を両手で押さえながらのたうち文句を言い放つ。少女は血振りするように剣を一振りると、再び構え切っ先を豚へと突きつけた。


「ユメミールが聖士アイシス=ニール=ダイキス。夢生獣トンテッキ、討たせて貰いますっ!!」


 その容姿は絢爛可憐、正に魔法少女といって過言でない。ホワイトブロンドの髪をなびかせた、翡翠の瞳を持つ少女。纏う衣服は至ってファンシー。リボンやレースで飾られ彩られ、煌めく鎧と両刃剣がよく映えている。その宝石の鏤められたような装飾はおもちゃチックなくせに、光る金属の光沢がそれをおもちゃと感じさせない重さがある。それでいながらそれらに負けない彼女の美貌。スラリとした肢体は女性特有の柔らかさを感じさせながら、それでいて引き締まった俊敏さと力強さを感じさせている。濡れるような瞳に整った顔立ちは妖精のようで、流れる銀糸の髪が艶やかに日に溶けていく。……しかし、総合的に見て、あらゆる物を加味してみても……、


「コスプレ戦士……」

「コスプレ言うなっ!!私だって恥ずかしいんです!!」


 顔を羞恥で真っ赤にさせながら怒鳴り返された。


(うん……美少女になじられる、それもいいっ!!)


 正宗の変態的思考は余所に、コミカル豚トンテッキが不敵に立ち上がる。


「フフフ……やはり来たブヒね夢聖士!!」

「その当て字も止めなさいっ!!ホント恥ずかしいんですっ!!せめてドリームセイントナイトとか、ドリームパラディンとかにして欲しいっ!!英語!!英語に変更を希望しますっ!!」

「訳のわからない事をいうなブヒっ!!しかし夢聖士相手となっては準備不足ブヒね、今回は引かせて貰うブヒっ!!戦術的撤退ブヒっ!!次を覚えとくブヒよっ!!」


 残念な負け惜しみを残しながらトンテッキの身体が粒子となって消え始める。が、


「逃がすわけがない、覚悟しろ夢生獣っ!!」

「アーッ!!ブヒィィイッ!!」


 少女の身体は流れるように加速して、瞬く間にトンテッキを斬り付けるっ!!腹を割かれ絶叫するトンテッキ。


「バラ肉っ!!バラ肉になるブヒっ!!不意打ちとか卑怯千万!!この借りは必ず返してやるブヒよっ!!」

 しかしトンテッキはそう追加で言い残し完全に粒子となって消えていった。霧が散るかの如く粒子は空へと散っていく、その幻でも見せられたかのような光景に正宗はただただ目を見張るだけである。コミカル豚の塵の欠片も残っていない、青く澄んだ空を見上げていれば少女がチラチラと正宗を見ている事に気がついた。


「……あ、その、助けてくれて有り難う御座います……無精子さん」

「止めてくださいっ!!大声でその名称で呼ばれるとホント恥ずかしいんだ!!私はアイシス=ニール=ダイキスっ!!お願いだからアイシスって呼んでくださいっ!!」


 呼びかけに必死で手を交差し×の字を造りだすアイシス。全力で無精子呼びは拒否されてしまった。アイシスは赤くなった顔を冷ますように自身の顔を片手で扇ぎ、それでいながらも意を決して剣を構え直した。


「目覚めの時よっ!!因夢は散り、正しき夢へと戻りなさい……そして時は動き出すっ!!」


 祝詞と共に剣を天へと掲げれば、彼女の全身が輝きを上げる。足下から全身を貫いた幾何学な紋様の陣が剣先に収束し、強烈な閃光を放ち始める。それを空高く掲げれば、光は剣から放たれ空高く昇ると輪を広げ、波紋が広がるように弾け飛んでいった。いくつもの光の粒子の波が脈打つように世界に広がっていく。やがて空が一瞬強く輝けば、何事もなかったのかのように静けさがまた空に戻ってくる。呆然とその空を見上げ続けていれば、


「それで貴方は……どこのどなたなのです??」


 アイシスが不思議そうな顔で正宗の顔を眺めて来る。


「は??ちょっとまってくれよっ!!いってる意味も何もかも、全くもって何が起きてアレが何だったのかわかんないんだけど!?さっきのヤツはなんだよ!?先生達はどーなったんだよっ!!ていうかアンタは一体なんなんだ!?」


 その反応を見て、アイシスは首を捻り、耳に手を当て何やらウンウンと頷くと、ポンと手を打った。


「ああっ!!もしかして貴方、……本当に現地の人なのです??私達とは別枠の世界の住人でなく??」

「げんち??別枠??つまり、どーいう事??」


 そう問い返すのだが、アイシスは眉を顰めた表情で悩むと耳に手を当て一人でウンウンと頷き始めた。そうこうしている内に彼女は身体を宙へと浮かばせていく。その光景に正宗は目を見開いた。そのまま空高く浮かび上がって行くアイシスを視線で追う。


「このスケベっ!!スカートの中は見ないのが礼儀でしょう!?」


 そうは言われてもそんな痴態を見せられては仕方のない事である。アイシスはヒラヒラ舞うスカートを手で必死に隠しながら言う。


「……そうですね……はい、そのように伝えます。そこの方、後で色々説明します。いや、そうすれば私達の現状も打開出来るかも……。兎も角、あと30秒程で元の正常空間に戻りますけど??急いで教室に戻らないで……大丈夫ですか??このままだと授業中にいつの間にか抜け出した事になってしまいますよ??」

 そう言い残すと、正宗が何かを言う間もなくアイシスはもの凄い速度で彼方へと飛んでいってしまった。それを眼で追い見送りながら考える。


「30秒……30秒かぁ。ここから30秒で教室に行くのは……まぁ無理だろうなぁ」


 もう見えなくなった彼女が飛んでいった先を見つめながら、そうして諦めた。


(とりあえず…戻るか)


 校舎の昇降口を見れば、モザイクが動き回っているのが目に入った。果たしてさっきの出来事は何だったのか??正直な所は判らない。そのまま昇降口へと移動していけば、大破した玄関まわりは既に元の姿へと戻っている。割れたガラス戸も、砕けた靴箱も、全て何もかも、だ。狐に化かされた…そんな心境であり、アイシスという少女も、さきほどまでのコミカル豚も、全ては夢幻だったのかと疑心暗鬼に駆られてしまう。だがそれよりもいまは留意せねばならない事態があった。


「……なんて言い訳して教室に入ればいいんだ??」


 アイシスの話が本当なら、自分は授業中の教室に入室せねばならないのだ。言い訳に悩みながら、正宗は落胆したまま教室に向かうのであった。

作品コンセプトは「主人公機がラスボス機体」です。

テンポ重視で日常描写は少ない形となっています。


このような投稿サイトも初なので至らぬ所はあるでしょうが、目に留まって楽しんでくれたらのなら幸いです。


仕事も生活も上手くいかず現実逃避で「そうだ、小説でも書いてみよう」と書き始めました。ですので小説書きの「イロハ」も知りませんので間違った事していても暖かい目でお願いします。


誤字脱字、特に設定の矛盾など色々あるでしょうがご了承下さい。

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