関係と少女
俊隆くん、どうなるのか。
「返せよ」
まだキレてはいなかった
ほぼキレてたが。
チラッと見たが俊隆は暴行はされていないようだ。
すこし安心だ。
「お前ら、なんでこんな事してんだ」
「おめーら2人共、俺のエマと仲良くしてるよなぁ!?」
やっぱりなぁと、ほぼ予想出来ていた言葉が飛んできた。
しかし、「俺の」という言葉が気にかかった。
「俺のって、どういう意味だよ」
「エマは…俺と結婚するはずだったんだ!」
「何言ってんだお前」
「初めて会った時に!落とした財布を拾ってもらってから!俺とエマの愛は!永遠なんだ!」
手を広げたりしながらエマへの愛を語る変人
正直ここまでヤバいやつとは思っていなかった。
「それなのにおめーらは俺のエマに近づいて
仲良くしやがって!許さねぇ!」
「そんな下らない理由で俊隆を攫ったのか」
こいつの言い分を聞いてから安心したのか
何故か俺は冷静になってきていた。
「それで、俺を攫ったらエマが自分に
惹きつけれると思ってんのか、バカだな」
急に俊隆が話し始めた、大丈夫なのかこいつは。
「これは普通に犯罪だ、1年以上10年以下の
懲役だぞ」
「言ってろ、朝になったら
おめーらはもう、2度とエマに会いたくないと
思っているはずだ」
それは脅し、またエマに近づけば俺らは拷問でもされるのだろう。
男が殴ろうとした時、俺は気付くのが遅れた。
俊隆が殴られる、その時
エマの声が倉庫に響いた。
「やめなさい!」
「俺のエマ…」
「下民ごときが私の名前を口に出さないでくださるかしら」
エマは、見たこともない表情をしていた。
本気で怒っていた、俊隆のために。
「な…なんで…」
エマの圧に押されたのか
男の表情は青ざめていた。
「この方達は、私の心なの
私の、全てなの
それをあなたが奪おうとするなら
私は容赦しない、あなたを殺す」
「私はこの方達と一緒にいたいだけ
私は高く評価されたくもない
大手企業の社長の娘という看板もいらない」
「だから、悪評を立てるのも勝手にすればいい
そんなものに興味はない。私の全てはこの方達なの」
エマは、自分の言葉を崩してまで
男にそう言い放った。
そして男は泣きながら倉庫を去っていった。
この場に残ったのは俺達だけだった。
「俊隆様!ごめんなさい!
私のせいで…あなたがこんな危険な目に…」
エマは泣きながら俊隆に抱きつき
必死に謝っていた。
「謝るなエマ、お前のせいじゃない。あの男が悪いだけだ」
「勝手に両思いだと思い込んでこんな誘拐したんだ
お前はただ、俺たちと関わりたかっただけ…一緒にいたかっただけだ、お前は一つも悪くない」
俊隆はエマの頭に手を当てて話した。
「ですが、私が関わっていたから…自分の気持ちを優先していたから…一番大切なあなたを…それならもう…」
「そんなこと言うなエマ。俺たちと関係を切ったところで、何も変わらないさ。それに、俺たちはまだお前と関わっていたいんだ」
「ああそうだ、それより早く足の縄を解いてくれ、痺れてきた」
俊隆が言うと、エマは笑った。
笑顔が戻って良かった、それにしても…凄い疲れたな。
「ははは、もう1時だ、帰ろう」
その後、エマを家まで送り、家に帰る前に
眠子間さんに電話した。
「眠子間さん、遅くなってすいません
少し用事がありまして、今から帰るので
猫丸を家に入れておけますか?」
合鍵はもう渡してある、たまに家に帰れない時があるので渡してあるのだ。
「わかったわよ〜お疲れ様!加藤君の件、大丈夫だった?」
「はい、かなり大変でしたが」
「よかったわ〜、じゃあ猫丸ちゃん家に連れて行くわね」
電話を切り、俊隆と話す。
「ごめんな俊隆、助けれなくて」
「良いんだよ、結果は助かってんだから」
「あの男の言い分を聞いて、安心してしまったよ、コイツは暴行できるような奴じゃないって」
俺は気付けなかった、アイツが相当おかしい奴だと、ただの勘違い野郎だと思ってしまっていた。
「そんなこともわからなかった、親友失格だな」
そう言うと、肩を叩かれた
俊隆の方を見ると、笑っていた。
「なーにを言ってんだよ、お前は電話を聞いてからすぐに向かったんだろ?騙されたとしても挫けずにこっちまで来た、よくやったと思うよ。エマが言ってたぞ、凄い必死だったって」
こいつはどこまで優しいんだろうか、男の俺でも惚れそう。
その後俊隆と別れ、部屋に入ると。
「あら、やっと帰ってきたのね」
聞き慣れない声が耳に入ってきた。
奥に入ると、少女が部屋の隅に膝を抱えて座っていた。
そして、猫丸の姿が見えなかった。
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あの女の子は誰?