友達
ちょっと遅れたけど許してください。
どうやら猫丸は外に出るのが嫌いじゃないようだ。俺の中では外に出ずお家でゆっくり〜、みたいな感じだと思ったんだけど、案外そうでもないのか?俺も散歩が好きなので猫丸と一緒に歩けて嬉しいが何もつけずに歩くのは良くないと思うのでハーネスをつけさせている、自転車に轢かれでもしたら俺は死ぬからね。キジトラの模様が水色と合っててかわいいよ猫丸。いやーアパートは繁華街から少し離れてて緑が多いから散歩にはうってつけなんだ。冬は少し肌寒いが、今みたいな初夏はちょうどよく涼しいから俺のお気に入りコースだ。猫丸も気に入ってくれるハズ。
この辺りには小さい公園がある、いつも人いないし行ってみるか。
「よし着いたぞー」
緑の木に囲まれた小さな公園、きったないトイレと水が出てくるアレと…低い滑り台が一つ…あのトイレ使いたくないな。そもそも家以外であまりトイレを使いたくない。そんなことを考えていると俺の手から持っていたリードが消えているな…
「まさか道路の方に…」
いや、公園のほうに走って行ったのか、ヒヤヒヤさせてくれるぜ。怪我でもしたら可哀想だすぐに…
「ヤツは…」
俺の目に入ったのは、猫丸と同格のサイズ…!闇を飲み込むほどの漆黒の毛並み…!全てを包み込む可愛らしい顔…!ヤツの名は…
「ポメラニアン…」
犬と猫って会わせない方が良いんじゃなかったか?まずい、ここから走っても間に合わないぞ…頼む、生まれてくれ種族の壁を超えた絆よ。
「おお…案外仲良さそう」
良かった、駆け足を歩みに変更しても大丈夫そうだな。お、飼い主さんもいるな
「あら、あちらの猫はそちらの?」
「はい、どうも」
金髪にドレスとは、珍しい格好をしているな。お嬢様のコスプレ的なアレかな。
「あちらの子のお名前は?」
「猫丸です」
「まぁ、いかにも庶民らしいお名前ですこと」
初対面でいきなり小馬鹿にされたな、なんだこのお嬢様系の女性は。よく見るとこの人、凄い高そうなドレスを着ているな、それにお洒落なバッグ…この人…マジお嬢様か?
「庶民らしいお名前ですが、素晴らしいお名前だと思いますわ」
こんな喋り方の人実在するんだな。オホホホホホホって笑うのかな…保護者の方は語尾にザマスが付いてたりとか?想像が膨らみますなあ。
「あはは…ありがとうございます。ええと、あなたの犬の名前は?」
「ボーン・ザ・ダイヤモンドですわ」
おぉ、マジか。
「あはは、良い名前ですね」
下手な愛想笑いをしてしまった。バレたかな。
「当たり前ですわ」
バレてなかった。だがよく聴くと、ボーン・ザ・ダイヤモンドか…意外とかっこいいかもしれない。どういう思考で辿り着いた名前なんだろうか。
「それにしても…あの子があんなにはしゃぐのも珍しいですわね」
あー確かに、猫丸と会ってからすごいテンションの上がりようだな。うおお滑り台から飛び降りた、大丈夫かな折れてない?
「そうなんですか?」
「えぇ、あの子凄く臆病なの、自分より小さい子が来てもすぐ怯えて吠えてしまうの」
ポメラニアンって吠え癖があるってどこかで聞いたな。
「ですが、あんなに楽しそうなのは久しぶりで、私も嬉しいですわ」
嬉しそうに笑うお嬢様を見て俺も笑っていた。
「あら、私としたことが、自己紹介を忘れていましたわ。私の名前はエマ・レーザンよ。二週間前に引っ越して来ましたの。お見知りおきを」
ワタクシって一人称あまり聞かないぞ。ていうか、ガチお嬢様か。
まさかの仕草までがお嬢様だった。予想外の行動でびっくりしたが自己紹介をされたらこちらもするのが礼儀だ。
「斎藤愁です、よろしくお願いします」
「あっそうですわ!連絡先を交換しましょう!」
手をパンッと叩き提案するエマ
「ああ、良いですよ」
そして俺はエマと連絡先を交換した後、エマのダイヤモンドの話を聞いた、どうやらアメリカから引っ越して来て日本での引っ越しは二回目だそうだ。
引越しの理由は、ダイヤモンドが馴染める場所に住みたかったかららしい。エマも動物好きなんだろうなぁ。ん?引っ越しの動機それ?
楽しそうに遊んでいる猫丸を見ながらエマと雑談をしているとエマ様と叫びながら複数人の男が走って来た。
探しましたぞとか言われている。
ガチお嬢様じゃないか。SPってやつか、ちょっと羨ましい。
「愁様!また連絡しますわ!」
「はぁい…」
SPに連れ去られるエマとダイヤモンドに小さく手を振ってから帰った。
「ダイヤモンドと遊ぶの、楽しかったか?猫丸」
そう聞くと猫丸は、俺の靴に前足をぺちっとおいた。多分、楽しかったんだろう。よかったよかった。
ダイヤモンドがこれから猫丸の親友になるのかもしれないなぁ。いいな、親友。
月曜日 朝
家を出るときに猫丸を一人にするのが凄く心配だ。居酒屋のバイトもしているから帰りは遅くなるし、一応ご飯はボタン式のを買ったから、餓死するとかは無いだろうが。…ここまでお世話になってきた居酒屋を辞めるのも気が引ける。そんなことを考えながら大学に向かい席に着くと隣には豪華な服を着た女性がいた。そして金髪、こんな特徴的な人間すぐにわかる。
「エマ!!」
「あら愁様、ごきげんよう」
「ああ…ごきげんよう…」
まさかのエマと大学が一緒だったようだ。これからちょっと楽しくなりそうだな…
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僕は今エマが好きです。