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街灯のない道は先が見にくい

お久しぶりです。

「にしても猫に恋をするとはなぁ。誰に恋するとかは自由だけどよ、動物に恋する人を見たこと無いからなぁ。どういうアドバイスをすれば良いとかわからないんだよなぁ」


左右にある家を視界に収めつつ、後頭部で手を組み、独り言を言う俊隆の声を聞き流しながら、さっき俊隆に教えてもらったアプリをインストールしようとしているところなんだが…アドバイスとかの前にお前は誰かと付き合ったことないだろ。


「うわぁ…マジか…」


「どうしたよ」


少し動作が鈍くなってきたと思ったら最悪のタイミングで充電が切れてしまった。黒い画面に一つ映る乾電池のマーク、今日以上にこのマークに恨んだ日はこの先来ないだろうな。充電はしっかりしておくべきだった、20%で出歩くもんじゃないな。


「充電切れた…モバイルバッテリーとか持ってない?」


「残念ながら、持ってないね」


両手を広げて持っていないですよアピールをしてきた。別に疑わないし、さっきからどこかアメリカ人を彷彿とさせるようなジェスチャーはなんなんだ?割と影響されるタイプだからなんか映画とか見たのだろうか。

まぁ俺も音楽に影響されることは結構あるけど、若さなのかな。


「はぁーじゃあ一度帰るしかないか」


来た道を戻るべく振り返ることにする。


「どこだここ」


明らかに見たことのない道、見てわかる情報は住宅街であることのみ。


「俺はお前についてきただけだからどこかは知らーん」


マジか、最悪すぎるな。アプリに注目しすぎたせいで適当に歩いてきてしまったようだ。ここは俺も歩いたことないぞ、どうしようか。


「この辺、猫丸と歩いてなかったの」


「見覚えないから歩いてないと思うんだけど」


散歩と言ってもあまりに遠いと時間がかかるので、あまり遠くまでは行けていない。俺も大学とか、バイトとか色々あるし。そういう部分でもこれからはたくさんいろんな場所にいくつもりだった。


「どうすっかなぁー」


こういう時は考えても時間が過ぎるだけで、大して良い考えは浮かばない。考え始めて1時間、案の定良い考えは浮かばなかった。


「暗くなってきたな…はぁ〜…」


「こりゃ帰るの無理かねぇ、ビジネスホテルか、それともネカフェか…いや俺金持ってきてないからな…ヨシ!」


少し屈んで考えたと思ったら指を突き立て、頭にピカピカ光っている電球があるかのように超いい案思い付きました顔をしている。


「ヨシって、なんだよいきなり」


「とりあえず今来た道頑張って思い出して帰ろうぜ、走って」


そんなことだろうと思ったよ。来た道わからないんじゃないのか、思い出すとか無理があるだろ。そして今はもう暗い、しかも街灯も少ない、もし見失えば携帯の充電もないからそこで立ち往生になるだろう。


「たしかに…ここで立ってても何も変わらないしな…走るとか久々だな…いやこの前のアスレチックでだいぶ走ったか」


あ、俊隆の一件でも全力疾走してたなそういえば。まるが人になっていたのも、その日のうちの出来事か…あの日は色々起こりすぎてたな。


「じゃあ一直線な、迷ったら迷ったでしょうがない、野宿!朝になったら誰かに道を聞けばいいさ」


そんな簡単に野宿とか言わないでもらいたい、今真夏だぞ、多分起きたらこの世にいないよ。寝てる自分を上空から眺めてるところ起きて数分経ったら自分が死んでいることに気づくんだ。


「競争しようぜ、もう夜だから人もいないし迷惑はかからない」


「わかった。やったろう」


電柱の横に、俺たち二人は立つ。

「よーい」の声で右足を後ろにして、強く蹴れるように左足にかなり力を入れる。ただ力を入れすぎるとあまり良くないというのをどこかで聞いたことがある。

「スタート」と同時に力を込めていた左足を蹴り上げる。


次に地面を叩くのは右足、力を入れすぎたか足の裏が痛い。タンタンタンと夜の住宅街に響く足音は二人の人間から出ている音には聞こえない。


「はええー…」


さすが元野球部…全盛期ほどじゃないんだろうが追いつける感じが全然しない。どれだけ本気で走っても1mは離されている。今俺はめちゃくちゃ早い俊隆に追いつこうとしてめちゃくちゃ早く走っている、この調子だと全然家に帰れそうだ、道も見覚えがあるところまで来ることができた。 

家から2キロくらいは離れていたんだな、結構歩いていたのか。


数分もすればもう俺のアパートだ。俊隆はスピードが速すぎて止まる時に「キキィィ」となっていた気がした。


「はぁ…さーすがに勝てねぇなぁ…」


膝に手をつくくらいには全力だったけど、中高ずっと文化部だった俺は体育会系に勝つことなんて一生ないんだろうな。まるが来てから運動増えたから体力は増えたと思うんだけど。


「まだまだ現役よ」


「まだ20だろ、現役じゃないとこの先怖…あ」


顔を上げて水でも飲もうとした時、持っていたペットボトルを落とすほどの衝撃が俺の目に映った。それはまるを連れて行ったあの黒猫。車もそれほど通らない道路に、その猫は座っていた。

時間が空いてしまって本当に申し訳ないです。これからも不定期ではありますが、更新された際には読んでいただけると嬉しいです。

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