わずかな希望
ほんとにすいません。
「今日暑すぎだろ、この部屋扇風機しかねーの?」
「無駄口叩いてないで手動かしてくれよ。
それに、扇風機は強にしてお前の方に向かせているし。アイスだって買ってやっただろ」
うちわを仰ぎながら俺は迷子のペット情報の
サイトをかれこれ1時間、画面に穴があくほど見ている。
「ずっと見ててもしょうがない、出るぞ」
「えぇ…もう出んの?」
暑いのはわかる、だが協力してほしい。ずっと頼ってばかりで本当に申し訳ない。
みんなに迷惑をかけるわけにもいかないし、1人で探すのが1番なのだが。それよりも早く見つけてあげたいという思いが勝ってしまう。
「勝手でごめんな、俺の注意不足が原因なのに」
「良いんだよ、お前が俺にやってくれた事の恩返しを、ここでやっているだけだ」
「そんな昔の話を」
「そんな昔じゃないだろ」
ちょっと前にとある事情で俊隆を救ったというか、助けた事がある。俊隆と絡み始めたのはその辺りからだ。
「まだ返しきれてないんだ、もうちょっとやらせてくれ」
俊隆の優しそうな顔を見て俺は少し笑って俊隆に言った。
「じゃあ、外で探しますぜ」
「よし」
外に出たは良いものの、どこから探すか。まるが攫われて、今日で丁度1ヶ月か。
エマも協力して屋敷の人間も探すのに手伝っているのに、何も情報が出ないのは、どういうことなんだ。
「愁様ー!!」
俺に向かって走ってくる黒服が1人。
「あ、田中さん、どうですか?」
「申し訳ございません、まだ有力な情報は見つかっておりません。では失礼します」
「とりあえず、歩くか」
遅々として進まない、こちらも体力が無限にあるわけではないので気を落としていると俊隆が肩に手を置き言ってくれた。
「この辺はもう探したし、あっちはもう行ったのかな、ほら、猫丸を探すんだろ。行くぞ」
そうだ、まるを探さなくては、自分の気持ちを伝えるんだ!
「ウォォォォォォォ!!俊隆、その言葉は俺を奮い立たせてくれるぜ!」
目には見えないが赤めのオーラが出ていたと思う。
「お…おう」
引かないでくれ。
「それにしてもお前が動物好きで、猫丸大好きなのは知ってるけど、なんでそんなに必死になるんだ?警察とエマのとこの人たちに任せたりはしないのか?」
「何事も自分から行動しなければならない。
それに、俺はまるが好きなんだ、愛してるからな、体が勝手に動いてしまうんだ。
さっきみたいに元気が無くなることもあるけどさ。あいつのことを思い出すと元気になれる」
「その好きってのはLikeの方?それともLoveの方?」
難しい質問だな。
「両方…かな」
「お前、猫に恋してんのか…?」
「ん?まるの心は、人間と一緒だよ。俺の心も猫と一緒なのかもしれない。愛し合うっていうのは、心と心が通じ合うってことなんだと思う。これは眠子間さんも言っていた。
猫は人に恋をするし、人も猫に恋をするんだ」
「何言ってんだお前…」
何か間違ったことを言っているだろうか。
常人からすれば意味のわからないことを言っているかもしれないが、恋ってそういうことだろ。
「あ、そうだ!!!!!!!!」
「ウワァッ!なんだよいきなり」
少し気まずい空気が流れているところを断ち切るかのように、俊隆の大声が響いた。鼓膜破れそう。
「忘れてたよ、このアプリ入れてみろ」
「なんだこれ」
犬と猫の絵が描かれているアイコンのアプリを見せられた。
「ペッター…?」
「迷子の犬と猫の情報しか無い、SNSだ」
「でもそういうサイトは散々見てきたけどこれといった情報はー……」
「このアプリはそこらのサイトとは格が違う。
5年以上なんの情報も無かった迷子の猫の情報もあった、そしてその猫は見つかっている」
「ということは」
「あぁ、もしかしたら見つかるかもしれない」
その言葉をを聴いた瞬間、俺には笑顔と少しの涙が出てきていた。少しの涙を手で拭い俺は。
「ありがとう、俊隆」
「どういたしまして、愁」
これなら、見つかるのかも。
だが、あまり期待はしないでおこう、このアプリにあるのははあくまで動物の情報。
人間になっているとしたら…情報は無い。
しかし、少しの希望の光が差してきた気がする。
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俊隆と愁は過去に何があったのでしょう。