記憶
お久しぶりです、また投稿再開します。
あたしを暗闇から救ってくれた、愛してくれた
その人の名前は、斉藤愁。
そして、あたしはそんな愁が好き。
「ここは…」
目を開けると見知らぬ場所に寝ていた。
「まる…起きたのね…」
あたしが呟くと、椅子に座っていた女が
こっちに向かってくる。
「誰、愁のところへ戻りたいんだけど」
「まさか…覚えていないの…?」
「残念ながら全く覚えてないわね」
「いろいろあったものね…
覚えていないのも無理はないわ
じゃあ、何があったか、思い出させてあげる」
少し思い出した、この人あたしを
人間にしてくれた人だ。
「そういえば、あんた、ゾクカエ小間って
名乗ってたあたしを人間にかえてくれた人よね」
「まぁ、それもそうね
でも私たちは親子よ、忘れているなら
思い出させてあげる」
そう言うと、小間はあたしの目に手を振りかざし
意識はそこで無くなった。
…………………
暗い視界の中、空からぼんやり見えるのは
2匹の猫、はっきり見えてきた
黒猫の隣にいるのはあたしと同じ柄の猫
「あなた!産まれた!産まれたわ!」
「よくやったなぁ…」
この2匹は誰、ここはどこなの
心の中で叫んでも、声は届かない。
「名前は…そうね、産まれてからずっと
丸くなってるから…『まる』にしましょう!」
「まる…うん、いい名前だ。
これからお前の名はまるだ、いいね」
わかった!お父さん!お母さん!」
あれが昔のあたし…当然だけど
今と全然違う、昔は素直だったのかなぁ。
今は素直になりたくても、愁の前ではなれない。
「少しは思い出せた?」
「黒猫から産まれたってのはね」
「まだ思い出せてないのね、わかったわ」
そして、時計の音と共に時間が進んだ。
心なしか少しだけ成長してる気がする。
「今日もまるはかわいいなぁ〜」
「えへへ…お父さんもかっこいいよ!」
「そうかぁ?照れるなぁ…
よし!まるから褒めてもらったし
今日もご飯、集めてくるよ」
「あなた、気をつけてね」
「あぁー!お母さんチューした!」
えぇ…昔こんなのだったの?
ちょっと気持ち悪い。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃーい!」
路地から出た瞬間、銃声と猫の鳴き声がした。
外に走っていった母猫とあたしは驚愕する。
そこには父猫が死んでいたのだから。
死体の前に立っていたのは
黒いスーツに身を包みサングラスをかけピストルを持ったいかにもな男。
その男を見た瞬間、母猫は顔色を変え
人間に変身し、男に問い詰める。
「誰…!」
「やはり人間に変身できる能力を持っている
ようだな、君らを捕獲させてもらう
発砲許可は出されているので
抵抗するならば即刻処分する」
「まる!逃げるわよ」
そう言うと母猫は猫に戻り
あたしを加え逃げ去ろうとしたが
男に脚を撃たれた。
「悪いが母猫は処分だな」
そしてもう1発、母猫の頭に発砲
動かなくなった。
空から見てるだけだけど、かなりえぐい。
「では一緒に行こう」
あたしを持ち上げ、どこかに連れ去られた。
「どう?なにかある?」
「まだ思い出せてはいないかしらね
こんなことあったんだって感じ」
視界がまた暗くなり
目を開けると元いた部屋に戻っていた。
「思い出せなくても無理もないわ
当時のあなたにとってはかなりのショック
だったと思う」
「そんなことより…
昔のあたしがあんな素直だったことに
驚きよ…成長というのは怖いものね…」
「一歳半で何言ってるのよ…
人間に換算すれば20歳だけど
猫だとあなたはまだ子供なのよ?」
「あんたは何歳なのよ」
「…10歳」
反応に困る年齢を言うのはやめてほしい。
「…へぇ〜」
「もっと興味持ちなさいよ!
まったく…でもこの感じ、凄く懐かしいわ…
それで、どうする?まだ出来事はたくさん
あると思うけど、見る?」
「今日はやめておくわ、また明日にする」
「わかったわ、じゃあ今日は寝ましょうか」
「…」
ここにいるのも楽しいけど
あたしはやっぱり愁と一緒にいたい。
愁と一緒に寝たい。
全てを思い出したら、すぐにここから出る。
待ってて、愁。
ここまで読んでくださりありがとうございます
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視点が変わりました。