売上
居酒屋行ったことない。
「バ先か?」
バ先というのはバイト先の略だ
最近の若者はよく使っていると思うぞ。
「バ先とはなんですの?」
「バイト先の略、最近の若者はみんな
使ってると思う。あと今日飲むのはバ先じゃない」
今した説明をそのまま言われた。
「そんなことより、お前ボロボロじゃねえか
なにしてたんだよ」
別にボロボロっていうほど怪我はしていない
多少の擦り傷と髪がボサボサになったくらいだ。
「いやぁ、1番になりたかったから
あそこの人口山から板踏んでスケボーみたいに
滑り落ちてたんだ。そしたら止まらなくなって板から離れたら転がりまくってこの様」
「1位になるためには怪我も惜しまない
その姿勢、尊敬しますわ愁様」
「それはありがとう、だけど真似すんなよ」
「大丈夫なの?」
「なんだ心配してくれるのか?」
「うっさいわね…」
そう言うと横を向いてしまった
横でエマと俊隆がニヤニヤしているが
なんなんだ。
「それで、バ先じゃないならどこなのかね
隆俊くん」
「俊隆だ、今日は俺の知り合いがやってる
とこに行く、そこのたこわさが美味くてな」
「それお前がたこわさ好きなだけだろ」
「いやいや、たこわさ以外にも
美味いんだよ、愁はポテトサラダ好きだろ?
それも美味いし、エマはなんか好きとかあるのか?」
こいつ飯の話になると元気になるな
大食いだっけ。
「申し訳ありません、私居酒屋というのに
行ったことが無く…」
「あぁそうなのか、じゃあ初居酒屋で
好きなの増やせばいいさ」
「猫丸も初めてだよな、やっぱり魚か?」
「実は猫丸、特別魚が好きってわけじゃない
みたいなんだ」
「そうなのか」
毎日焼き魚を出していたら
ちょっと怒られたのでそういうことだろう。
「でも刺身だしたら相当気に入ったみたいだから、生魚は好きらしい」
「へぇ、でも猫丸でも好きなのあると思うぜ」
「ていうかお通しだけじゃねぇか
普通に料理無いのかよ」
俺は少しの料理でゆっくり飲むのも
好きだが、4人ならば楽しく飲みたい。
あ、馬鹿騒ぎはしないぞ
飲みコールとかは俺は嫌いだ。
イッキ怖いし。
「普通の料理も美味いさ、まぁついてこいよ」
そう言うならついて行こう
俊隆の知り合いがやっている店に
……………
偉そうなこと言ってるがよく考えたら
俺はバイトだった。
「ここだ」
「小さいですが綺麗な店ですわね
ですが人があまりいらっしゃらないようですが」
こんな綺麗な店だと人は多いイメージがあるが。
「それがバ先じゃなくてここを選んだ理由だ」
「たこわさって言ってたのはなんだ」
「それもある、でも本命は
俺の知り合いの店の売上が悪くて
もう店を畳むみたいだから来たんだ」
いきなりちょっと重い話するなよと
思ったがそんなこと言うと殴られそうなので
言わなかった。
だがそんなことがあるとは知らなかったな。
「そうだったのか」
「あんまり重い雰囲気になるなよ
円満廃業ってやつだ。よし、じゃあ入るぞ!」
元気にそんなことを言っていたが
寂しそうな顔もしていた。
「よぉ!店畳むって言うから
最後に飲みに来てやったぜー!」
「おぉ!隆俊じゃねぇか!」
「俊隆だ、4人な」
店長は40過ぎくらいの男で
少し痩せていた。
「おぉ、隆俊も友達が多くなったなぁ!」
「俊隆だ、ボケてんのか?」
「で、注文は?」
「まず最初みんなビールで良いよな」
俊隆がそう言うと
猫丸は不思議そうにしていたが、皆頷いた。
「はい、じゃあこれな!サービスだ!
他のみんなはどうする!?」
出てきたのはたこわさ。
この店の話を聞いてからたこわさしか
脳に入ってこない、たこわさすげえ。
「俺はポテトサラダを」
「私、するめをいただきます」
「おぉスルメか、良いね」
「あ、猫丸は刺身を」
「了解だぁ!」
バイト以外で居酒屋に来たのは久しぶりだが
居心地が良いな、良すぎて腕を後ろに伸ばし
背伸びをすると背中からパキパキという
音が鳴ったので怖くなってやめた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今日寿司屋行ったけど美味しかったです。