休憩
当然のように遅れて申し訳ない。
「愁ー」
休日に家でゆっくりゾクカエ小間について
調べていると、扉の向こうから俊隆の声がした。
「どした」
「猫丸が人間になるっていう夢みたいな話に
焦るのもわかるが、あんま無理すんなよ」
「わざわざ心配しに来たのか?」
「わざわざって、隣の部屋だろ」
そういえばそうか
それでも俺の部屋に来るのはこいつが
優しい証拠だろう。
「まぁ聞け、俺が来た理由は心配だけじゃないぜ、居酒屋でも行こうぜ、エマも誘ってさ」
「エマも来てくれんのか?」
「別に良いんじゃねぇの?」
まぁいいか、そこまで制限する家でもないだろう。
「でも猫丸を置いていく訳には」
そんなことを話していると
奥の方から三角座りをして丸くなっている
猫丸がてくてくと歩いてきた。
「猫だと1歳半だったから人間だと20歳よ」
俺達と同い年に少しびっくりした。
「お前身分証とかあるのか?」
「あるわよ、ほら」
本当にある
苗字は…【小間 まる】
その文字を見た瞬間、俺の体に
痛みを感じるような鳥肌が立った
「小間 まるって、まさかお前…」
「さぁ、行くなら行きましょう」
「愁、やっぱり猫丸は」
「そういうことだろうな」
猫丸が人間になったのは
ゾクカエ小間がやった事だろう。
つまり、ゾクカエ小間は実在する。
「とりあえずエマを誘おう
探すのは飲んでからでもできるさ」
「まぁそうだな」
最近は寝る間も惜しんで調べていたんだ
少し休む日もあっていいだろう。
エマを誘い、居酒屋開店まで時間があるので
近所のフィールドアスレチックで
時間を潰すことにした。
「よく知ってたなこんなところ」
「小さい頃はよく行ってたんだ
あそこの水のところでたくさん落ちた」
たしかに難しそうだ
腕の力だけで紐を辿らなくてはいけない。
「エマ、その格好でいけるのか?」
「こんなこともあろうかと
しっかり軽装も用意してきたのですわ」
「じゃあトイレで着替えてくれ」
俊隆が言うとはーいと言いながら
トイレに走っていくエマ。
あの一件があってから俊隆とエマは
前より楽しんでるようだ。
ちなみに俺は自分の家以外のトイレで大は
したくないタイプだ。
「猫丸、どうだ?できそうか?」
「当たり前でしょ、運動神経舐めないで」
たしかに猫だしなぁ、凄いスピードで
クリアしそうだ。
「よし、エマも着替えたことだし
誰が1番先にゴールできるかだぞー
あと濡れるとめんどくさいから
水コースは今日無しな。
じゃあいくぞ…よーい、スタート!」
俊隆の合図で走り出したは良いが
猫丸以外俺と別ルートで行くみたいだ。
俺が走る真ん中のルートは
ゴールまでは遠いが、走るステージが多く
体力温存ができる。
そして俊隆が選んだ右のルートは
ゴールまでは近いが、体力を使う
縄系のアスレチックが多い。
ゴリ押しでいくのか。
そしてエマが選んだ左のルートは
上までに時間がかかるが半分以上は
ターザンロープで進める。
早く登れるかが肝だ。
猫丸は走りで俺を越そうとしているな…
猫丸の足の速さがどれほどかは知らんが
50m走最速6.31の俺が越せるか!!
6.31って割と普通か?
余裕こいていたが、猫丸が凄いスピードで
駆け抜けた、まるで陸上選手かのように。
「嘘だろ…あれ猫の時より速くないか…?」
俊隆の位置はわからないが
エマがちらっと見えた、まだ登っている
まだ大丈夫だ、あれ登られたら一発逆転で
負けてしまう。
「さて、どうするか…このままだと
猫丸にも追いつけないぞ…
これ猫丸1発でできたのかよ…」
雲梯をしながら考えていると
人口山を見つけた、大きい公園とかにある
木などが生えてない芝生だけの山だ。
「あの山ならすぐ登れる、よし」
あの山から滑って降りることを考えた。
登り切ると丁度良い感じの木の板を発見。
「これでスノボみたいに降りてやるぜ…!」
中学時代少しだけスケボーはやってたんだ。
多分スノボとは違うが。
「行くぜぇーっ!!!」
覚悟を決め板で滑り降りた。
「うおぉぉ…」
もう夏に入りかけだが
高さとスピードで寒い、あと怖い。
バランスが悪いので転びそうだ。
もう地面に着いているが
板が止まる気がしない、燃えるんじゃないかこれ。
板の方を心配していると目の前に壁があることに気づいた。
まずい、これに当たると多分死ぬ。
「やるしかねぇー!」
全力で板から飛び、転がった。
やはりスピードが出てるので痛かった
少し擦り傷がある。
「いてて…ここは…」
ふと目を開けてみるとゴールだった。
「あんた…なにしてんの…」
「いやぁ、無理するのは良くないな
どうだ!1位だぞ!」
そして続々とゴールに辿り着く者たち。
エマと俊隆はほぼ同時だった。
そんなことをしてる間にもう7時だった。
「もう開いてる時間だし、行くか」
そして俺たちは居酒屋へ向かった。
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猫丸は、ゾクカエ小間によって人間になったみたいですね。