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出会い

初投稿です。

緊張してます。

「お疲れ様でーす、お先に失礼しまーす!」


と、店長に挨拶をして店の扉を開けた。


俺の名前は斎藤愁(さいとうしゅう)。高校から大学に進学して、一人暮らしをしている。居酒屋のバイトをして大学の学費を稼ぎながら家賃も払っていく、バイトを掛け持ちせずに済んでいるのは住んでるアパートが安めだからなのと、バイトの時給が高いからだ。動物OKなアパートだから、猫を飼いたいなと思っている。動物OKな上に安い、事故物件でもない…裏も無さそうだし、運が良かった。


「雨か…俊隆が傘を持ってきれるから運が良かったな」


疲れているのに雨かと、少し憂鬱な気分になるが。雫がアスファルトに当たる音…水たまりを踏んだ時の音、雨も案外悪くはない。洗濯物が乾かないのは勘弁してほしいが。


店の屋根で雨宿りをしていると、霧雨の中から傘を二つ持った黒髪の男が一人、こちらにやってくる。


「おつかれ。傘持ってきてやったぞ」


緑色の傘を手渡してくれたのは加藤俊隆(かとうとしたか)。入学当初に知り合い、以降ずっと関わっている。言わば親友と呼べるだろう。


「おーありがとありがと、わざわざ届けてもらっちゃって悪いね」


「いいのいいの、風呂入る前だったから少し運動になって良かった」


「じゃあ帰ろうか」


この街は夜が賑わう、現時刻は22時30分、一番店が繁盛する時間だが、店長は「今日はあまり来ない日」と言い、帰してくれたのだ。


…左手には止まることのない車たち、右手には少しだけしつこいキャッチ…少し治安悪い気もするが、俺はこの街が好きだ。


俊隆と駄弁りながら帰路を辿っていると、俺の耳に弱々しい鳴き声のような音が聞こえた。雨や車の音でうるさくても弱々しい声は案外聞こえるもの、子猫の声だというのはすぐにわかった。


「猫の声だ、探そうぜ」


「えぇ、この時間に路地は変なのいるしなぁ」


「いいから、探すぞ」


「へいへい」


だるそうに返事をしながらも一緒に探してくれる俊隆は優しい。これだからモテるんだ。明るい街といえど、路地までは明かりは届かない。携帯のライトで照らしながら探すこと数分、ダンボールに置かれた一匹の子猫を発見した。


「おー結構かわいいな」


子猫は雨に打たれ、震えている。第一印象はかわいいが、なにか他と違う…?疲れてるのかな。なにかが違う感覚がある。まぁ今はどうでもいい。


「寒そうだ」


「保護施設にでも預けるか?」


傘を立てて、俺と子猫を雨を避けさせながら俊隆は言った。だが、こんな状態も見てしまえば、答えは一つしかない。


「いや、俺と暮らす」


猫と住みたかったし保護施設に預けてもずっと飼い主が現れないと殺処分されると聞いたことがある。さすがに時代が違うからしないと思うが。


「アパートは動物OKだけど金は足りんの?」


「なんとかするよ」


かなり貯金もしているし、別に欲しいものも無いから大丈夫だろう。すると俊隆がしょうがねぇなと呟きながら携帯を取り出す。


「実家で猫飼ってたんだけど死んじゃったから、余ったキャットフードはやるよ」


「いいの?それはマジで助かるわ」


「どちらにせよ保護施設に渡すとかしてただろうからいいよ。ん?紙が置いてある」


俊隆が箱を物色していると紙を見つけたらしい。


「読んでみるな」


俊隆が紙に書いてあることを音読してくれた。


「1歳半の雑種のメスです、この子を飼ってあげてください。だってよ」


飼ってあげてくださいとか言いながらこんな人気のない狭い路地に放っておいて。本当に飼わせる気があるのかと、無責任な元飼い主に少しムッとしていると、俊隆が呟いた。


「雑種でこの色はキジトラだな」


「キジトラってなんだ?」


キジトラ、知らない単語だ。単純だがキジと虎ってことかな?


「全身茶色を基調として、黒色の縞模様がある猫のことね。日本で1番多い種類だった気がする」


日本にどれだけの種類がいるのかは知らないけど、1番ってことは相当多いんだろうなぁ。俺、猫飼いたいとか思ってた割には、俺は知らないこと多いんだな、調べないと。


「詳しいんだな」


「まぁ飼ってたからな」


「ヨシ!じゃあ帰るか、おいでー」


俺が手を広げると、子猫が凄まじいスピードで引っ掻いてきた。コイツ、できる…


「イッテェ!!」


めっちゃ痛い、猫ってこんな凶暴なもんなの?もっとなんか舐めてきたりを想像したんだが。


「警戒してるんだな、大丈夫か?」


なんか笑い混じりに言われた、ほんとに心配してんのかこいつ。


「いてて…どうすりゃ警戒解いてくれるんだ…?」


こんな強く引っ掻かれたら仲良くなれる気がしない。猫と住んでた人はすごいな、これに耐えながら一緒に暮らすんだから。

毎日傷だらけになる未来が見えるぜ…


「さっき俺ら見下ろしちゃってたからな、かなり警戒しちゃってんだ、敵意が無いぞって感じで抱いてやれ」


「了解」


これは、あの技を使うしかないな。


「さぁ…おいで?」


居酒屋で鍛えた俺の必殺技だ。コンビニの0円スマイルとは違う、この技を俺は100万スマイルと読んでいる!

これで気分が悪くなった客などいなかったはず、酔って暴れている客にも有効だ。



目を開けて見てみると、さっきまで睨んでいた猫がポカンとした顔をしているじゃないか。これはもう一押しだな。人間の優しさに触れろ、猫よ!数秒後、子猫は完全に警戒していない顔だ、傘のおかげで雨に当たらず、震えも止まったみたいだし。


「どんなもんよ!」


これ以上無いくらいのドヤ顔をしてやった。


「あぁ凄い凄い、相変わらずの眩しさだったよ、動物にも効くんだなそれ」


すると、どこからともなく低い声の音が近寄ってきた瞬間、子猫は「シャー」と声を出し始めた。


「おぉおぉ…大丈夫大丈夫、ただの酔っ払いだから」


俺が優しく撫でてあげると、興奮は治った。怖かったな、とっとと帰ろう。


「怖かったね。じゃあ、帰ろっか」


猫を抱き、帰りに自分の夕食と猫の水を買い、家に帰った。これからこの猫との生活が始まると思うとニヤケが止まらない。俊隆に見られていたのか少し引かれた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思えば、ブックマーク、評価をよろしくお願いします。

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