サブクエスト
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なまえ:ねこやしき(猫王族)
えがお:F
こうげき:B
ぼうぎょ:C
すたみな:C
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すきる:むおんほこう
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「完全にカオスだな……もはやどう見ていいのかさえわからん」
アイテムもオヴリビオン・ダスクと同じ効果が発動するかさえ怪しい……。
自慢のラグナロクも、ラグニャロクになってやがるし……、うわっ!
柄の部分がモフモフになってる……これはこれでアリか?
ていうか、何をどうすりゃいいんだよ……。
アビス・ロードを倒せばいいのか?
しかし、以前の俺ならともかく、これじゃ倒せないだろ。
「ニャベル、そのー、仇を討つのはいいんだが、どうやってアビス・ロードを倒すつもりだ?」
そう訊ねると、ニャベルは手の肉球を一舐めし、頭の毛並みを整えた。
「この世界には五つの大陸があるのにゃ。大陸には、それぞれ勇者がいるにゃよ……魔狼族のヴォルフ、怪鳥族のトリスタン、破王熊族のベアード、魔猟虎族のジャスティン、そして猫王族のねこやしき! ……君にゃ!」
「あ、うん……」
何か変なのが混ざってるが、今は気にしないでおこう……。
しかし、君にゃ! とか言われてもなぁ。
まあ、考えても仕方がない。
大陸の勇者か……細かい設定は違うが、完全にオヴリビオン・ダスクだ、クソが。
「みんながともだちになれば、アビス・ロードを倒せるのにゃ!」
「ともだち……おいおい、戦闘は?」
「がんばるにゃ! ともだちをつくるにゃ!」
ざっくりしてんな……。
しかし、僅かに残ったモフモフ・オンラインの残滓が、思ったよりも厄介だ。
そもそも、ともだちってどうやってなるんだよ?
なかよしれべるをカンストすればいいのか?
でも、ステータスから項目が消えてるし、どうやって確認すれば……。
「まずは魔狼族の、ヴォルフに会いに行くにゃ!」
「お、おぅ……」
フラグが立ったのかな……。
急に歩き始めたニャベルの後を、俺は慌てて追いかけた。
*
村の中は、一見変わりが無いように見えた。
だが、家の壁に穴が開いていたり、芝生が一部枯れていたりと、良く見れば細かい部分に変更点がある。
んー、バグったにしては、統一性があるというか……。
「あ、そういや、くましーとか、まだ家にいるんじゃないの?」
「……」
ニャベルが立ち止まり、無言で首を振った。
「あ、そ、そっか、ごめん……」
そうだよな……あれだけの攻撃を食らったんだ、いくら熊でもひとたまりもないだろう。
はちみつの一つでも持っていってやれば良かったな……。
「たぶん、寝てるにゃ……」
「は?」
「くましーは大抵眠ってるにゃ、なぜかと言うと、今は冬眠の季節だからにゃ」
「こんな陽気で冬眠……、まあ、お前がそう言うならそうなんだろうな。てか、皆の仇って言ってなかったか?」
質問には答えず、ニャベルは深刻そうな顔で呟くように言った。
「くましーを眠りから覚ますには、はちみつが必要にゃよ……」
【サブクエスト:くましーを起こせ!】
「えー……マジか」
俺、フラグ立てた?
いちいちサブクエ消化してたら、時間がいくらあってもたりねぇわ。
これは見なかったことにして……、さっさと本編を進めた方がいいな。
「さて、魔狼族ってのはどんな奴なんだ?」
「はちみつは、この先にある『キラービーの洞窟』にあるにゃ……とっても危険にゃ場所なのにゃ」
黒い磨りガラスみたいな目で、ニャベルが答えた。
「うわ……不可避w」
あー、クッソだるいが、流れに身を任せるしかなさそうだな……。
「オーケイオーケイ、覚悟は決めたよ。じゃあ、はちみつを取りに行こう」
「……そこまでいうのにゃら、ボクも一緒に行くのにゃ!」
【ニャベルがパーティーに加わった!】
ん? パーティーに加わるとどうなるんだろう?
自分のステータスを確認してみる。
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なまえ:ねこやしき(猫王族)
えがお:F+1
こうげき:B+1
ぼうぎょ:C+1
すたみな:C+1
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すきる:むおんほこう
:かたぐるま
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ともだち:ニャベル(猫獣人)
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これは……、補正が付くのか。
だが、この数値が何を意味するのかがわからん……。
ん? 謎のスキルが増えているな……正直、全く意味がわからんが、『こうげき』や『ぼうぎょ』の項目がある以上、いずれ戦闘があると言うことだろう。
待てよ? 俺がこれだけ変なステータスになっているのなら、アビス・ロードも例外では無いはず……。
とにかく、戦闘システムや勝利条件が分かるまでは、以前のイメージや、勝手な先入観は捨てた方が良さそうだ。
次話、明日の12時に!
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